既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
ゲーム『深く深い闇の先で』では原作主人公が店を構えている。大まかなストーリーとしてギルドに所属する主人公が憧れていたクラフターとして生活していく中で、様々な出会いを経験し求められる物をクラフトして問題を解決するという前提が有る。
ヒロインルートに入ると他国との戦争や交易、水門にダムや浄水場の建設等の様々なイベントが発生する。
街の中で様々なクラフターや研究者から話を聞いたり、時には街を飛び出してクラフトのヒントと素材を集める事になる。
プレイヤーメイドキャラも同じ様に店を構える事が出来る。拠点として扱われ、同居するキャラクターが居れば探索中に店を任せる事も出来るし、施設を拡張して畑や温泉を作る事も出来たりと自由度が只管に高い。
自分としては温泉を作ると原作キャラや過去作キャラが遊びに来て温泉を堪能するイベントが発生する為によく建てていた。ダンジョンの70階層辺りで素材が集められるので、そこまで潜ったなら庭先に温泉を作ろうかと思っている。しかし、クラフトして作られたなら温泉というより露天風呂な気がする……開発がわかり易く温泉としたのだろうが、地味に当時から気になっていた点だ。
話が逸れたが、店を構えるという事は当然商売になる。ただ売るだけで無く、買い取りを頼まれる事も有る。
此処で鑑定を持ってないと偽物を掴まされたり、適正な価格で遣り取り出来ず信用を失ったりと何気なく後に響く要素が有る。
店を開く上では商会ギルドに登録すると認定店になり、ギルドに会費を払う代わりに様々な保険に入る事が出来る。
万引き等の窃盗に対する保険、火事等の災害保険を見た時は前世知識持ちとして思わず飛び付いてしまった。この世界ではあまり人気のない分野らしいが、時偶実験の失敗で家屋が丸々一戸吹き飛ぶ光景を見るから必要だと思うのだが。
そして、商会が定めた物品の値段表を貰えたりする。
内容としては基本的にゲーム内での売買の値段そのままなのだが、武具のオプションに対して細かい相場が書いて有ったりする。ショーケースに入っている儀礼用の剣もそれに沿った値段を上乗せしたもので、性能としては+1くらいなのだが値段は普通の物の5倍は付いてたりする。
性能として完全に詐欺と個人的には感じてしまうのだが、逆に此処まで上げないと商会から不当に安く売り他の店舗から客を奪うつもりの悪質店という印象を抱かれる。
因みに、ゲーム時代での売買は武器性能に関わらず売値が一律だった為に武器に+が付いていた場合『同じ値段なのに他店よりも高性能』という噂が立ち集客力が爆発的に上がる。その為に初期の武器に+を付けて売りまくり稼ぎまくるという金策が出来ていた。
現在は同じ事をすれば確実に商会から睨まれる、最悪罰金とか何かしらの罪に問われて逮捕される可能性も有る。開発者の影響なのか一部が日本っぽいのだこの世界は、下水道とか走ってるし卵とか生で喰えるし。
扱う商品は各種武器
『短剣』
『片手剣』
『両手剣』
『片手槌』
『両手槌』
『片手斧』
『両手斧』
『短槍』
『長槍』
『短弓』
『長弓』
『弩』
『魔導銃』
『杖』
の十三種。
防具は『布』『革』で作られた『軽装』と『金属』で作られている『重装』の鎧関係と『盾』。
そして特殊効果を持つ『指輪』や『首輪』等の『装飾品』である。
格闘戦を主とする人達は防具の『手甲』の硬さでぶん殴ってるイメージだろうか。ゲーム時代だと防御力がそのまま攻撃力になっていた。今では『格闘術』スキルが無いと上手く防御力を乗せられないが。
現状、『クラフト』のスキルレベルは関係無いが素材が足りずに作れていないが特殊な防具として『重装』の『全身鎧』属に『魔導鎧』という一種のパワードスーツも作れるようになる。
ゲーム時代だとクラフトレベルが7以降に作れるのだが、特殊な攻撃手段として『砲撃』が追加されてコレが正にロマン。スタッフもデザイナーも遊びに遊び、デザインが何処ぞの機動戦士だったり装甲騎兵だったりと童心に戻りそうな物が多数。
女性用は魔導機構が自動で防御するからとやたら露出高かったりしたのも有った。
ただ、一番安価な物を作るにしてもミスリルやオリハルコンを多量に求められ、動力として中位以上の悪魔族や天使族の霊核を求められる故に簡単に作れる物では無かった。ダンジョンの階層としては65階以降、とても挑める物じゃない。
尤も、遠征すれば天使族や悪魔族が溢れ返るダンジョンも有ったりするので長期休暇中に向かうのも有りだろう。
他にも武具の整備依頼や、製作依頼等も入る事がある。軽度の損傷ならば魔石でどうにか出来るが、破損が著しいと別途素材や追加料金の請求も必要になったりする。
現状、当店で対応出来るのは金属で鋼まで、モンスター素材なら20階層の物迄は重度の修繕が可能。持ち込まれたのならミスリル製でも直せる自信は有る。
製作依頼に付いては完全に素材持ち込みのみ受けている、若年層は先ず鉄素材を集めて持って来る事で最低限の実力を示さなければ作る事がギルドから許可されていない。中堅以上の探索者はそれぞれ贔屓のクラフターが居るだろうし、そのネームバリューから新規開拓の努力は必要無いそうだ。
俺はまだまだ駆け出しだが、両親の知り合いだった中堅どころの探索者達が時偶修繕や製作依頼を入れてくれるので大分助かっている。専任しているのは少女ともう一人原作キャラが居るくらいだが、何れは複数の探索者御用達なクラフターになるのが俺の夢だ。
さて、夢を語るは良いが実が伴わなければ意味がない。同年代では『クラフト』スキルレベルは頭一つ飛び抜けている自信は有るが、探索者としては一つの指標である30階層を越えられていない駆け出し扱いなのである。実情は兎も角として。
ゲーム知識を前提に効率的な探索を行っては居るが、それはあくまでもソロでの活動でしか無い。少女とコンビを組んでいると周囲から認識されており、それは間違ってはいない。しかし、俺と少女の間には10レベル以上の差が有り口さがない者にはパワーレベリングやキャリー、酷い物ではペットの散歩等と言われている。
少なくとも少女の実力は初心者を越えて中堅に入り始めるくらいには高いのだが、元々が荷物持ち扱いを受けていた過去が有るようでその印象が今でも残っているらしい。
正直、渡している装備一式の性能から考えれば20階層辺り迄なら単独で攻略が出来るステータスだけは有る。問題が有るとすれば、スキルスロットの5つに同種の基本ステータス上昇が入っていて、攻撃関連がレベル10の時に増えたスロットで選択した『銃適性』くらいしか無いことだろう。
手札が足りず、火力も固定ダメージ。20階層に控えるボスがオーガの強化種なので体力を削ろうにも再生能力でジリ貧になる可能性が高い。現状で考えられる攻略法は銃関係の攻撃技である『精密射撃』を取得して、開幕ヘッドショットで脳を完全破壊でもしないとスタミナ切れで負けるというのが見立てだ。
そうでなければレベルが20になるか『魔力上昇』スキルが最大レベルになり新たなスキルを取得するまでは無理だろう。因みに昨日俺と少女が目指して居たのが22階層、20階層のボスは俺が一人で何とか出来るのでその先の階層から取れるミスリルが目的だった。実は大量に集めるなら25階層から29階層までランダムで丁度いい敵が出て来るのだが、本来は特化装備を用意して挑まないと下手打つと死ぬ相手なので少女を連れて行けないのだ。
少女の耐久力と物理防御だとクリティカルが出たら一発で終るし、相手の魔法防御が高過ぎて現時点での『ロニセラ』では1ダメージも入れられない、そんな敵だ。
鈍重な相手なので少女が『速力上昇』スキルを取れば撹乱が出来るだろうし、類似の敵が出た時の為に『ロニセラ』以外にも物理攻撃が出来る魔導銃を用意するつもりでも有る。
その為にも、ミスリルをある程度集めなければならない。店に売りに来てくれる探索者が来てくれる事を願いつつ、カウンターでアクセサリーを布で磨いていよう。
「店主、傷薬が欲しい! 有るだけ出してくれ!!」
「かしこまりました、現在お出し出来るのは1748個になります」
「すみません20個でお願いします」
「では150が20個で3000になります」
「はい、すみませんでした」
開店早々に来たのが貴族被れの成金さんって印象の探索者だったな、何処か肩を落として……何やらショーケース内の儀礼剣をジッと見て退店していった。値段は高いがそれよりも普通に鋼の剣を買って行った方が良いぞ、何なら+3くらいの売ってあげるから常連になって稼ぎを落としてくれ。
「よう、邪魔するぜ」
「邪魔するなら帰れ」
「おう、またな……っておい!」
「いらっしゃい。で、何が欲しいんだ?」
「お前、何事も無かったかのように……切れ味の良い剣有るか?」
「鉄か? それとも鋼?」
「あー……5000で鋼って買えるか?」
「5000だと無理だな、駆け出しのクラフター作でも7500が相場」
「うげ、じゃあ鉄かぁ……」
「魔石有るなら買い取りとかするぞ?」
「いや、取り敢えずは鉄の剣にしとくわ。もう少し潜れるようになったら改めて鋼のを買う」
「了解、鉄は4500だ。うちで買うなら渾身の一本を売ってやるよ」
「はい、4500。渾身のを打ってくれるのか?」
「……お望みなら。素材持ち込みするならミスリルでも打てるぞ。ホイ、鉄の剣。出来の良いヤツ選んだから。それと、整備は格安で受け付けるからウチに持ち込めよ」
「お、ありがとよ。新進気鋭、噂の若手が渾身のを打ってくれるとか普通はねぇからな。20階層越えてミスリル拾えたら頼むわ」
「鉄の技術料は3000な、ミスリルは1000万。毎度あり、油断はすんなよ」
「駆け出しとはいえ安くねぇかなそれ……また世話んなる、それに油断なんざ出来ねぇよ」
2人目の購入者はクラスメイト兼幼馴染の男だった。
そういえば俺と少女の身分はまだ学生である、都市内にある国営の学園に通っている。一般常識を学ぶ初等教育、応用過程を学ぶ中等教育、専門過程を学べる高等教育が一貫になった大規模な学舎だ。
もっとも、中等教育迄は義務では有るが高等教育は選択式だ。中等までの義務を終了すると共に働きに出る子供の方が圧倒的に多いくらいで、高等教育まで進んで学ぶのは実家が太いか専門教育を受けてでもなりたい職が有るかの何方かだ。
因みに自分と少女は何方も高等教育課程の2年目である。先程のクラスメイトも探索者としての専門教育を受けている、中堅の探索者並の知識量を持っている優等生だ……あんなバカなやり取りを俺としているが。
「店主、後ろの壁に架かっている剣はどういう代物だ?」
「此方はゴブリンの素材から作成した剣ですね。『剣適性Ⅱ』以上のスキルを必要としています」
「……偽物ではないのか?」
「商会から鑑定を受けていますが、間違いなく本物です」
「貴様の様な青二才があの様な物を打てるとは思えん、どうせ盗品だろう。盗人猛々しい」
「そう思いたければそう思って下さい。それ以外に無いならどうぞお引き取りを」
「まぁ待て、ソレを貰おうではないか」
「……50万ですね」
「何を言っている、貰おうというのだ」
「……あ?」
三人目、元は上等だったのであろう小汚い服を来た汚っさんが寝言をほざいて来た。元貴族で落ちぶれたタイプか?
俺が打ち、商会から認定を受けた間違いなく俺の作品だ。それをなんだと?
「どうせタダで手に入れた盗品だろう? 黙っててやるから寄越せ」
「……死ぬか、お前」
ゴミに向けた目が自然と細まる。苛立ちから声が低くなり、インベントリから愛用のウォーハンマーを抜けるようにしている。
「ふはははは! 高々鍛治士風情が、探索者である私を殺せると」
言い切る前に俺が抜いたウォーハンマーが、汚物の横っ面に叩き付けられ──
「落ち着け、坊」
……る直前に止められた。聞き覚えの有る男の声、両親と古い付き合いの有る中堅の探索者で時々様子を見に来てくれるのだ。
ウォーハンマーを握った俺の物理攻撃力は50に届く、それを止めるとなると武器無しで物理攻撃がこの状態の俺より上って事だ。
そんな風に考えて居ると、死にかけた事に気付いたのかカスがその場で尻餅をついた。
「ひ、ヒィィ!? き、貴様ぁ! わ、私に今何を」
「クラフターの仕事を馬鹿にしやがったクソを潰そうとした、それだけだ。若輩者だろうと誇りを持って仕事をしている、その誇りを汚したなら殺される。それくらい覚悟はした上での狼藉だよな?」
探索者を名乗る塵芥は震えながら俺に何か鳴いて居るが、正直頭に入って来ない。転生してから今まで確かにゲーム知識を下地に色々して来たが、クラフトが心の底から好きになり今に至るのだ。何より、今は亡き両親からも誇りを持って仕事をしろと言い含められ、それが胸の奥で今も生きている。
少女の『ロニセラ』もクラスメイトに売った『鉄の剣』も等しく魂を込めた一品、背後の壁に架かっている『ゴブリンキラー』もそうだ。何一つとして誇りと魂を掛けていない作品など無い。それを──
「坊、コイツは俺が衛兵の所まで連れて行く。だから落ち着け、深呼吸しろ」
低く、落ち着きの有る声が俺に呼び掛ける。荒い呼吸を数度、そこからゆっくりと深呼吸に変える。ダンジョン内で役立つと言われて仕込まれた呼吸法、冷静で在らねばダンジョンは容赦なく命を奪う。この人は何時も俺に確かな導きをしてくれる。
「すいません、おっちゃん」
表面上だけ、何とか冷静さを取り繕う。まだ呼吸法は続けている、速くなっていた心臓も少しずつ落ち着きを取り戻し始めた。
「気にすんな、やんちゃなのも子供の特権だからな」
口の端だけ上げるニヒルな笑顔を此方に見せ、ヒトモドキの首根っこを掴んで扉まで歩いて行く。糞は抵抗するように暴れているが、おっちゃんは意に介せず歩みは止まらない。と、そんな後ろ姿に一つ思い出し、カウンターの下に設置されているある装置から一つ物を取り出した。
「おっちゃん、ごめん! コレ、自警団の人に渡して!」
そう声を掛けて下手投げでおっちゃんに放る。横目で飛んでくる物を見て、空いている手でキャッチした。物は中サイズの魔石を加工して作った結晶で、中には今起こった事が録画・録音されている。商会でも共通規格で流通している防犯システムである。
おっちゃんは手に取った物が何かを確認してから納得したのか、インベントリにしまってから再び歩み始め退店していった。何だかドッと疲れた気がする。
その後、トラブルは起きず傷薬が複数売れて本日は店仕舞いになった。売上は1万、可もなく不可もなくといった所だろう。
扉に架けられている看板を裏返し【閉店】にし、内側から施錠する。目的の人物は来店しなかったが、そもそも低確率の来店なので気持ちを切り替える。少女はまだ帰って来ていない。
ふと、庭先が気になり向かう。庭は広いが草刈りをするくらいの手入れしかしておらず、現状テーブルや椅子といった物も置いていない。少女が共に暮らす様になってから下着泥棒対策に洗濯物は2階で干すようにしたので、物干し台も置いていない。
そして、そんな庭の真ん中にソレは立って居た。
金糸の如き美しき髪に、豊満で在りながらも艶を感じさせない肢体をクラシカルなメイド服で包む。その背に十三の剣で構成された刃鐵の翼、頭上には光の円環。天上の美貌を讃えた一柱の天使。
待ち人である相手が、そこに居た。
元貴族っぽい汚っさんはその後、同じ手口を複数の店でやっていた事が発覚し御用となった。
後に主人公はウォーハンマーで殴ろうとした事が商会から厳重注意された。
主人公とヒロインに名前って要りますか?
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両方に要る。
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両方とも要らない。
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主人公のは要らない。
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ヒロインのは要らない。