既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
虎熊関連イベント継続中。
そこそこの時間を当主代行と天狗さんに怒られて、NINJAはガチ凹みしている。曰く、当主代行の奥さんが出て来なかっただけ温情との事。雰囲気は柔らかく感じたが、相当怖いタイプなのか。
いや、そういえば初めてあの人見たのって当主代行を後ろから殴り飛ばす場面だったわ。もしかして四葩の攻撃力って母親譲りなのでは? そう考えるとヤバそうだが、同時に四葩に舞を教えてる人で更に美しく舞うとも言っていた。そして何より、四葩が心から慕っている相手なのだ。ならばきっと、無闇に暴力を振るう人ではない。四葩が慕う母親ならそうだろう、俺は四葩を信じる。
「そういえば代行様、ちょっといいですか?」
『む、済まない身内での事に構い過ぎた。それで鍛冶師殿、どのような質問かな?』
「いえ、俺の家に転移門を設置するのは構わないのですがそちらの座標が分からないのでどう知れば良いのかなって」
『む? そこの雛菊から渡されておらんのか?』
「え」
「あ」
おっと、ここでまさかの天狗さんがミスしたのが発覚。いや、そもそも天狗さんは俺が『タタラ・ジュロン』だと分かって無かった節がある。
「そういえば、最初に天狗さんと出会った時に人探しをしていると言われたんです。が、質問をしても答えられないばかりでまったく進展しなかったんですよ。人相書きとか渡さなかったんですか?」
俺が少し誤魔化した報告をする、あの武力衝突は知られると二人に都合が悪いだろう。天狗さんはもとより駄狐も少し驚いた顔をしている。四葩を大切に思ってくれてるんだろ、なら俺はお前達を見捨てねぇよ。
『む、人相書き……人相書きなぁ』
「え、もしかして地雷かこれ」
「その、人相書きは奥様から頂いているのですが……その」
「分かった、それ以上はいい」
要は描いた人の腕前が『画伯』だったのだろう、そりゃ見つからねぇわ。
「いえ、一度見て頂いた方がご納得をいただけるかと」
「待って、失言で外交問題になりそうだから本気で見たく無いんだけど」
『いや、本人が居ない所なら大丈夫だろう。雛菊、見せてやりなさい』
何で今フラグ建てたの当主代行? それ、見たら居るやつやん。
「これです」
「コレは……え、浮世絵?」
出されたのは前世で国を代表する文化の漫画の源流と言われた浮世絵そのもので有る。コレを奥さんが描いたのか?
「つか、普通に上手くないか? 何だかんだ特徴掴んでるし」
多分、エテルや四葩が見たら誰かは判別出来るくらいには上手い。知り合いが分かる程度、くらいのレベルと言われたらそれまでだが。
「あら、凄くタタラって分かるわね」
「私も芸術には疎いが、ジュロンの人相書きとしては通じると思うぞ」
覗き込んだ都市長とカラムスさんも感心した雰囲気である。そして、この状況を信じられない様子なのが三人。
「そんな……奥様が描いた絵で人物を特定出来てる!?」
「この出来事に一番驚いてるのは拙者なんでござるよ……」
『そんな、あの華澄が描いた絵を判別出来る者達が居るだと……』
お前等、揃いも揃って失礼過ぎないか?
あと当主代行、後ろ。
『貴方』
『へ?』
ゴチン。何時ぞやと同じく金属質に似た打撃音が画面の向こうから響き、床に沈められる。前にも見たなこの光景。
『お久しぶりですね、タタラさん。娘はお元気ですか?』
「え、ええ……元気です。最近は家の家事を手伝いたいと言って楽しそうですよ、まだ洗濯物を干す程度ですが」
『あらあら、良い経験を重ねていそうですね』
口元を手で隠しコロコロと笑う奥さんであるが、その傍らには頭から煙を吹いて沈む当主代行の姿が有る。駄目だ、絶対この二人のやらかしはこの人に知られてはいけない。凄い折檻が待ってるやつだこれ。妖怪二人組も抱き合ってガタガタ震えている、もしやアレでも加減してるんじゃ……?
『そういえばタタラさん、私の絵を判別出来るご様子ですね。此方では理解されない事の方が多いのですが』
「発祥から考えると普通逆では?」
『芸術とは何時の世も理解されぬ物、おそらく理解は私の死後でしょう』
何百年後の話だろう、その前に評価されると思う。
『あの、タタラさん。此方の絵も見て頂けますか?』
そう言って出された数枚の絵、画面越しだがそれらを見る。本当は手に取って見たいところではあった。
「コレは……四葩か、子供の頃のやつかな。此方は当主代行だな、花火を見に行った風景だな……綺麗な表現してるしいい感性だ。コレは知らない人だけど、四葩のお兄さんかな? 目元とか似てるな」
「……鍛冶師殿、何を言って……」
『あらあら、タタラさんは見る目が有るのですね』
「全部当たっていたでござる……」
普通に良い絵ばっかりだな、家族の絵が多いのはそれだけ家族愛が深いって事だろう。見ててほっこりする。
絵を眺めて自然と笑っていたら、奥さんから微笑ましい物を見る目を向けられていた。
「あ、すみません。家族関係の作品はどうしてもこう、和んでしまって」
『いえいえ、私もそう言って頂けるのは喜ばしいです』
「意気投合してるでござる」
「まさか奥様、鍛冶師殿へのあれは本人の願望込みでは……?」
俺と奥さんが和気藹々となってる傍らで、駄狐と天狗さんがついていけないと言う風に反応している。普通に分かると思うんだがな……。
『あら、そういえばタタラさん……そろそろ結婚のお相手などは?』
「あ、エテル……以前隣に居た彼女と婚約関係を結びました。学園の卒業後に式を挙げるつもりです」
『……そう、ですか』
やばい、コレ対応間違えたら大問題になりかねないやつだ。
天狗さんが言ってた不穏な発言、もしかしてこの人俺を虎熊家に取り込むつもりだったりするんじゃないか?
『ところでタタラさん、四葩はどうです?』
「あれ、近況の報告はしたような……」
『確かに豊満さは劣りますが、女としては劣っていないと自負が有りますが』
「あ、やっぱりそういう関係の話だった」
『アレで一途に相手を想う気質ですので、優良だと思いますよ?』
「いや、確かに四葩の事は大切な仲間だし幸せになって欲しいとは思いますけど」
『それならタタラさんの手で幸せにして下さいな、先ずは女にする事からでも構いませんし』
「いや構えよ、娘の幸せを考えるなら」
『最悪婚姻は無理でも子の一人でも仕込んで頂ければ』
「発想が最悪過ぎる」
『ですが、エテルさんより先に子が出来たら四葩を優先しますよね?』
「いや、流石にそれは各方面への裏切りになるから無理ですよ。四葩にもエテルにも不誠実に過ぎる、俺に複数の女を愛せるような甲斐性は有りません」
『そのように小さく自身の見解を狭めては駄目ですよ。乳房が好きならばそこのイチゲを伴にすれば満足出来るでしょう』
「何を言い出しやがりますか倫理観を拾い直せ」
「自然に拙者の貞操が交渉に使われてて困惑するでござる」
コレも外交になるのか分からないが、奥さんからの四葩推しが強くなった。躱してはいるがグイグイくるし、なんなら駄狐まで押し付けられる雰囲気だ。確かに大きいけど、そんなに見境が無いつもりはないんだけどな。
『どうしても四葩では駄目でしょうか?』
「仮に俺がエテルにフラレていて傷心してる中で彼奴に優しくされてたら転んでたとは思いますが、エテルは受け入れてくれたのでそんな未来は無いですね」
『そうですか……残念です』
なんでその残念が『娘の恋が叶わなくて残念』じゃなくて『同意を得られなかったことが残念』だって雰囲気なんだよ、まさか娘をそそのかして襲わせるつもりじゃないだろうな?
そんなやり取りをしていたら当主代行が身を起こした、助けてくれるかなこの人。
『痛つつ……なあ華澄、後ろから殴るのは流石にそろそろやめて欲しいのだが』
『貴方が暴走しなければやりません、もう少し落ち着いて下さい』
『いや、暴走って……』
『なにか?』
『いえ、なんでもありません』
「威圧で黙らされてるご当主様に悲しい現在」
「お前、恐れ知らずかよ」
不敬に過ぎるだろ、ここでその語録使うのは。
『タタラさん、日常で娘とは如何です?』
「家に来たので楽しく暮らしていますよ、エテルに頼んで家事も教わってます。最近だと此方の服を着たりや下衣を買ったりしていましたね」
『あらあら、お友達が出来て楽しそう。……タタラさん自身は何かしてないのでしょうか?』
なにかを探られている感じがするが、何を探られているのだろう?
しかし、最近俺がアイツにした事なんて装備を贈るか告白を断るかしか無い。そう考えて、胸の痛みを覚える。未練だぞ、タタラ・ジュロン。
「精々が食事の為に箸を作ったり、此方で使える装備を作ったり……頼まれて鉄扇を作ったくらいですかね?」
『あら、鉄扇をですか?』
「えぇ、此方の法としてですが『作成依頼は最初に鉄製装備の依頼をしないとならない』ってのが有りまして。装備一式作る上で最初に何か欲しいかって聞いたら鉄扇がいいって言われました、そこそこ気に入ってくれたと思いますよ」
『ふふ、修練は欠かしてないのねあの子は』
「ええ、見せて貰いましたが……綺麗だったな」
ふと、四葩の舞を思い出す。思わず溢してしまったが、やはり綺麗だった。本人は未熟と思っているのだろうが、俺には四葩が人生を掛けて研鑽してきた情熱が見えてとても好ましい物に思えたのだ。
『ふふ、あの子も舞を綺麗だと言ってくれる異性に出会えて嬉しいでしょう』
「……そういう物ですか? 褒めたら『母上の方がより美しく舞える』とか自分を卑下してましたが」
『ええ、間違いなく嬉しいでしょう。どうですか、私の舞も見てみますか?』
「いえ、結構です。俺が見惚れたのは四葩の舞で、虎熊家の舞では無いので」
『……それは、あの子に?』
「当然伝えました、心奪われたのはお前の舞だと」
「あの、この人大丈夫でござるか?」
「いずれ後ろから刺されかねんぞ……」
俺と奥さんの話を聞いていたお迎え二人が小声で失礼な事を言ってるが、取り敢えず無視だ。
何だか当主代行は感情の置き場に困ったような表情だし、奥さんは口元を押さえて目を細めてる。……なんだこの、妙な居心地の悪さは。
「……ご歓談中に申し訳御座いません。少々よろしいでしょうか?」
そんな空気の中で口を挟んできたのは外交長だった。そういえばいたなこの人。カラムスさんが管理局でやらかした駄狐について言いたい事が有るって溢してたか。
「そちらが我が都市に送ったお二人についてなのですが、入管管理局にて問題を起こされた事についてお話しをしたいのですがよろしいですか?」
今ここでそれを言うか。奥さんが居るから多分、話は出来るけど……あんまり良いタイミングじゃ無いと思う。
さて、外交長の所へ俺とカラムスさんが二人と交戦した情報が行っているか否か。俺の誤魔化しが上手くいかないと、この二人がやらかした問題が洒落にならない規模になる。
一人は都市内に不正に押し入り、更に仲間と共にその市民へと攻撃を仕掛けた。紛れも無い国際問題だ。正直、都市そのものへの多額の賠償を申し出されても文句が言えない。しかも、そこに俺が加わると更にややこしい。次期とは言え、都市運営での一部門の代表への攻撃だ。罪状が重くなり過ぎてどうなるか分からない、仮に俺が死んでた場合は開戦になっても仕方ないのだ。
名誉職の側面はあるが、都市の財産である技術者その最高位と認められる存在を害したのだ。都市の発展から見ても痛手に過ぎるだろうし、この都市の技術は都市長を通じて本国へ送られている。つまり、俺の特許は国の財産としてもかなり重い。
中には再現性を本国でも疑われている物が有るし、それを使える人材を増やす元を絶たれたら失伝する。
海を越えて戦争を仕掛けても仕方ないレベルだろう、状況からすればその害された人物は行倒れてる所へ食事を恵んだ上で殺されかけたという恩を仇で返されたのも大義名分として申し分ない。
多分、この場合は天狗さんが割腹して詫びるだろうけどそれがこの国に文化として受け入れるかと言えば……無理かな。責任逃れの自殺とすら取られかねない。
話を聞いていると、どうやら俺とカラムスさんが二人と交戦した情報は外交長へ届いてないらしい。コレなら何とかなるか、二人は四葩とも懇意らしいし出来れば四葩と過ごして欲しい。
後は、駄狐が不用意な発言で俺達が交戦した事を黙っててくれるかだ。チラリと駄狐を見れば、お口チャックと言わんばかりに口を閉じている。こういうのは分かるんだな、感心した。
対して、天狗さんがやばい。正直に言い出そうとしてる雰囲気だ。この人真面目過ぎるな、今あの事を言ったら完全に状況がマイナスに傾く事を考えてない。何か言い出そうとするタイミングで、駄狐が天狗さんの口をそっと塞いで耳元で何か囁いている。それをもって力を抜いた事からギリギリ説得は成功か?
外交長の説得と言うか演説は結構長かった。要約すると『勝手に都市に押し入った責任を取れ』だが、そこに正当性を持たせようと彼是言ってて長引いた感じ。途中、奥さんが飽きてるのを空気で感じつつ当主代行の判断を待つ。奥さんの方が腕力は上だが、最終的な政治判断は当主代行が決定する。説得はされているが、最後に決定を下した場合奥さんは逆らっていない気がする。
カカア天下かと思ったら、政治的な面では当主代行が全権を担っている。やはり代行とはいえ当主になるだけのモノが有るからこそのあの立場か。
『確かに、そちらの外交長殿の意見は正しい。此方としても、本来送る予定の無かった者を向かわせてしまった落ち度が有るゆえに賠償は行おう』
「では」
『して、その際に一番迷惑を掛けたのは誰になるのかね?』
「……は?」
『その者が所属する部門、部署への謝罪と賠償は行おう。それで、どの部門の何方がそうなのかね?』
うわ、エグい。入管管理局はその所属を法務が執り行っている。つまり、外交長では話が出来ないのだ。今から法務長を呼び、この3日間で駄狐を担当しなければならなかった職員達の確認その他を行うのは実質不可能だ。
外交長はあくまでも外交、協力の要請やらイベント開催の折衝で止まる。例えば貿易を始める交渉までは出来るが、そこに掛かる税金等は税務の領域になる。ここで有利な条件を引き出そうにも、その交渉テーブルに外交長は着けないのだ。
これ、もしかして陽出國と政治的な構成が似てるかも知れない。外交長が何を言われたか理解してない感じだが、はっきり言ってさっきあの二人について話題を出す上での準備がなさ過ぎた。
「それは法務における領分ですわね、確か第六部署の人間が対応していましたので後日書面にて謝罪を頂ければと思いますわ」
此処で動いたのが都市長だ。都市における最高決定権を持つ人、そして……この都市で最も仕事が出来る人。
『ふむ、賠償については如何か?』
「3日間の不法滞在ですが、傷害などの人的被害は発生しておりません。どれ程高くても500万には届きませんわ」
『ならば問題は貨幣価値になるか、為替はどのように?』
「まだすり合わせが出来ておりませんので、後日財務及び法務の代表とお話しをして頂ければ」
「あ、ちょっといいですか?」
「何かしら、工匠長」
「一部門への謝罪ならば、書面と菓子折りで手打ちに出来ないでしょうか? あまり国同士の関係を悪くするべきではないと口を挟んでしまいましたが、如何でしょう?」
『ふむ、此方としては悪くは無いがいささかそちらが損をし過ぎていまいか?』
「そうですわね、ですが少々色を付けて頂ければ」
『ふむ、例えば?』
「そちらの技術の一端の伝授、交換留学の受け入れ等で一つ」
俺が口を挟んだ瞬間、ヤバい形に政治が動いたっぽい。
技術や伝統と触れる事で相手への理解もそうだろうが、互いに人質を送り合う形で戦力や物資等での協力関係も築けるだろう。
都市長もしかして、騎士学校のクーデターの際に逃げる先か戦力が欲しいのか?
『それは、そちらの工匠長……タタラ殿と個人的に結んだ約定だった筈だが?』
「ええ、それを出来ればこの都市で大規模に行いたいのですよ。立場として工匠長は都市の外へ向かわせる事が厳しいですし、そちらも秘蔵の技術者を国外に出したくない……違いますか?」
重圧がヤバい。胃がキリキリしてくる……お迎え二人は隅っこで大人しく正座待機してる。外交長は口を挟もうと機をうかがっているが、とても無理だろこんなの。
最高決定権を持ってる人間同士の真正面からの殴り合いみたいなものだ、自陣の利益を得る為の腹の探りあいが怖い。
「あっと……ちょっといいですか?」
緊張感に耐えられず、思わず声を上げる。都市長と当主代行の視線が一気に此方へ向き、重圧で挫けそうになる。援護になるか分からないが、一応手は尽くそう。インベントリから一つのアイテムを取り出して手に握って画面に向ける。当主代行と奥さんが俺の手のものを見て、奥さんが目を見開いた。咄嗟に『鑑定』を使ったんだろうが、その癖を利用させて貰う。
「もし、交換留学や技術交流を認めてくれるならば……此方の物の特許使用を認め使用料を可能な限り値下げします」
『はて、それはそれ程の価値が有るものなのかね?』
「それは、貴方が信じる隣の奥方に聞いてみるのが一番かと」
『なに?』
当主代行が奥さんに顔を向けると、驚愕と言った表情を浮かべた。目を見開き、何処か青褪めた表情の奥さん。此処まで余裕を無くすのは滅多に無いのだろう、当主代行ですら一瞬思考を止めたようだ。
『た、タタラさん……そちらを自力でお作りになられたのですか?』
「ええ、思い付きと研究で作りました。コレの有用さ、ご理解頂けますね?」
『まさか、そのような物までお作りになられるので有ればこの技術交流はまさに値千金でしょう』
『あれはそれ程までの代物なのか?』
『はい。タタラさん、私の口から申しても?』
俺は一つ頷いて了承の意を送る。奥さんは姿勢を整え、一つ深呼吸してから俺の手の物を言った。
『鑑定した名は『錬金術師の卵』と出ていますが、その本質は錬金術師の悲願……賢者の石。そうですね?』
「御明察です」
『寡聞にして知らぬが、それ程の物なのか?』
「伝説・仮説の域ですが、生命の創造や死者の蘇生を叶えるとも言われている仮想の物質でした」
正直、生命の創造や蘇生を叶える程の力は無いと見ている。しかし、コレは人工的な霊核でもある。つまり、擬似的な不老不死や死者の蘇生は理論上は出来なくもないのだ。その為の方法は考えるつもりは無い。多分、コレを突き詰めると問答無用で世界から弾かれる。なんとなくそれが分かった。
『仮想を現実に落とし込む……タタラさんは世界から追放されそうですわね』
「それ、実は四葩からも言われてしまいました。やはり親子は似るんですね」
『あら、それはそれは』
何やら嬉しそうな反応を返す奥さん、家族と似てるってのはやはり褒め言葉になるのか。
「……あれは反則だろう、あの眩しそうに細めた眼差しと慈愛のこもった言葉は」
「な……なにっ照れがまるでない」
なんかお迎え二人が言ってるけど、なんか反応したら不味い気がする。それはそれとして駄狐にツッコミを入れたくなる、その語録はルールで禁止ですよね。
『それ程難しい物であるのは理解した、そしてそれは我が国に何を齎すのか。それを論じて欲しい』
さて、本国で成されてるかは分からないが……コイツの使い方を求められるならばコレだろう。
「コレは計算上、一つで『ワールウィンド』の一般家庭の1200世帯の魔道具を動かすだけのエネルギーを内包します。制作にそれだけの魔石が必要である事からの逆算ですが、少なくとも1000世帯は賄えると思います」
『それ程になるのか……』
量産が中々出来ない理由がコレとしか言えない物だからな。小さな魔石で作ろうとしたらそれだけの数が必要になる。
「そして、コレはその内包した魔力により魔力万有引力の法則を持ちます」
『……なんだね、その法則は』
「高密度の魔力塊が有る場所に魔力は引き付けられる、そういう性質だと思って下さい。つまりコイツはかなり長い期間魔力を収集・放出する機能を持っています」
『つまり、それを使えば』
「一つで1000世帯を賄えるエネルギー源が作れますね、これらの魔力を伝達する為の工事は必要になると思いますが何年も先を見据えるならば」
『発展する事は叶う……その使用許可を、技術交流と交換留学で格安にて認可される』
さて、俺個人が出せる一つの領地に対する最大の札がコレだ。
俺は交渉に慣れてない故に、コレを蹴られたら後は格が落ちる物を小出しするしかない。製作の解説付きの此等をもってしても叶わないなら、都市長に丸投げするしかない。
『……正直、魅力的な提案ですな』
当主代行はかなり熟考していた様子だ。奥さんは技術としての有用性を伝えてくれたが、やはり最終決定権は当主代行が握っている。どうだ、俺の札は通じてくれたか?
『しかし、まだ条件としては弱い』
半永久的な稼働をする魔力炉でもまだ弱いのか、すみません都市長……あまり力になれなかった。
『そこで、我々が提示する条件を考えて頂きたい』
「お聞かせください」
都市長は俺を労うかのような視線を向けてくる、無い頭絞った結果気を使わせる事にしかならないとは。
『我が娘、虎熊四葩が宿として住まうジュロン家の防備強化。その資材や人材を送らせて頂きたい』
それは、条件としては余りにも此方に有利な物だった。
「そちらから此方へ人材の派遣、及び資材の用意をする……それが条件でしょうか?」
『そうだ。我が子可愛さを押し付ける形で申し訳無いが、外国に住まうというのは此方としても不安なのだ。故に、その居候先の強化を許可して頂きたい』
「だ、そうですよ工匠長。貴方はこの条件でどうかしら?」
「え、俺は全然構いませんが……こんな此方が有利になる条件で良いんでしょうか?」
『有利、とは一概に言えませんよタタラさん。何故ならこの条件、そちらの防備を疑っていると言っているような物ですから』
俺の言葉に答えたのは、発言を控えていた奥さんだった。しかし、俺はその言葉に疑問しか持てない。
「親が子を心配するのは当たり前では?」
『……そうですね、当たり前ですわね』
何処か慈しみすら感じる視線を奥さんから送られる、真面目な顔をしていた当主代行すら苦笑いといった表情だ。
『人材としては先ずはそこの二人を護衛として駐在させて欲しい、生活費は此方から出そう』
「最終的な金額は私と財務の人間で受持させて頂きますわ。工匠長、それでいいかしら?」
「その手の交渉は俺では無理なのでお願いします」
素直に頭を下げた。都市長はそんな俺の頭を何故かひと撫でしてきた、なんで?
『それで、タタラ殿。何か必要な物資等は有るだろうか?』
「正直、今日ちょうど家の防衛強化を行ったので……」
『む、具体的には何を?』
「ミスリルの支柱で結界を展開し、特殊な塗料で魔法耐性を上げたオーク材で作った柵を用意しました。正門には分厚いミスリル製の門扉も作りましたのでそう易々と突破は出来ないと思います」
『なにそれこわい』
都市長も制作現場見てるからツッコミすら入れない。最早諦めの色すら見える。
「あ、そうだ」
『む、なにか有るのかね?』
「その、人が増えると設備的に辛くなるので檜が有れば多めに頂きたいのですが」
『檜、かね……?』
まぁ、防御設備だと思ったら疑問になるよな。でもそっちじゃ無いんだ。
「男は俺一人で女性多数だと、風呂入りたくなったら大変ですから……新しく檜風呂でも作ろうかと」
『大分此方を便利に使うな君……』
「え、四葩が故郷の味を懐かしんで悲しんでるなら味噌や醤油に味醂も贈ってくれるって言いました?」
『厚かましいな!? 送るけども!』
娘の健康的な生活を盾にされたら乗らざるを得ないだろう、親バカ気味なこの人なら尚更。
「あ、それと」
『まだ有るのかね!?』
「四葩が帰ったらちゃんと『おかえり』をお願いしますね」
『……もう本当に君、そういう所だぞ』
顔を両手で覆った当主代行を、口元を隠して笑いながら見詰める奥さん。なんだろう、とても自分の立場が危ない気がしてきた。
隅っこに控えてたお迎え二人がそっと近付いてくる、状況はきっちり聞いていたと思うが。
「然りげ無く拙者達が帰れなくなってるでござる」
「主命に従い、お世話になりますタタラ殿」
……うん、体よく押し付けられたかコレ。
しかし、この二人の実力を知っていてはちょっと不味いか。誤魔化す為にとぼけよう。
「あの、この二人っていったい?」
『そういえば説明をしていなかったな、我が国の帝……君達の国での皇帝を守護する近衛に勤める我領有数の腕利きだ。雛菊はな』
「……なんて人を送ってくるんですか貴方」
強いとは思ってたけど、想像の5倍くらいヤバい所から来てた。なんでそんな所から人を送ったよ、親バカどころじゃねぇぞ。そういえば、カラムスさんはそんな天狗さんよりも駄狐の方をヤバいって見てた。コイツはいったい?
「あの、此方のNINJAは?」
『ふむ、そいつは我が領の諜報員……なのだが問題が多くてな。次期頭領に相応しい腕は有るのが、破門された逸れみたいなものよ』
「誠に遺憾でござる」
「お前を押し付けられた俺が遺憾だよ」
それでは、アンケート第三段を終了します。
分かりづらいとの声を多数頂いたので、表記を変えて再アンケートをします。申し訳ございません。
なんか選択肢が増えてても多分気の所為です。
↓アンケート結果
この小説は……
(156) 永遠と愛の絆→エテルルート
(151) 寛容と一途な愛→四葩ルート
(8) 信念と翼→タチアルート
(139) 鎚を包む花束→パーティハーレムルート
(12) 誠実と誇り→カラムスルート
(130) 都市長いっとけ都市長→都市長ルート
(26) 年増園→熟女ハーレム
(5) 太陽の笑顔→シャムスルート
(7) 星の微笑み→エストルート
(31) 太陽と星→後輩ハーレム(?)ルート
(109) 娘さん、親父殿を俺にください→ローガスルート
推移を見てて一時期都市長がトップ張ってるのを見て爆笑してしまった作者です。一応名前のポエム解説。
永遠→エテルの名前の元。愛の絆→愛銃『ロニセラ』の花言葉
寛容と一途な愛情→何方も白い紫陽花の花言葉、四葩は紫陽花の古語
信念→タチアオイの花言葉の一つ。翼→鎧『アーラ』の意味
鎚→タタラのイメージ。花束→ヒロインやその武器が基本的に花に関係しているため。
誠実→花菖蒲の花言葉の一つ。カラムス(菖蒲)とは別物だがアイリス(花菖蒲)だと名前が可愛らしすぎた為。 誇り→愛剣『フィエルテ』の意味。多分、コレが一番分かりづらい。
都市長行っとけ都市長→都市長。
年増園→タタラより年上2人による囲い込み。完全に遊んだ。
太陽→シャムスの名前の意味。
星→エストの名前の元ネタ。
娘さん→タチア。親父殿→ローガスの呼び方。
この小説は……
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エテル・ネル=バーラルとの物語
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虎熊四葩との物語
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騎士タチアとの物語
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探索者パーティハーレム
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聖人カラムスとの物語
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熟女ハーレム
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エストとの物語
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後輩二人との物語
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探索者ローガスとの物語
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『天使長』に愛されて夜も眠れない
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異世界追放