※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中。


鍛冶師は戸惑う

 俺とダリアが主従になった後、都市長が入って来た。

 ダリアが服を着てない事に気付き目を釣り上げたが、その身体に傷一つ無い事にも気付き一先ず怒りを収めた。

 

「で、どう対処したのタタラ?」

「疑似霊核を使用しました」

「そんなものいつ……ああ、そういうこと」

 

 俺の言葉に一瞬疑問を浮かべるも、俺が『卵』を説明する際に告げた言葉を思い出したのだろう。

 一つ息を吐いてから顔を上げて、ダリアに向き合う。

 

「初めまして、この都市で最高責任者を務めさせて頂いてるわ。申し訳ないのだけど、事の経緯と都市への滞在の為の手続きをお願い出来るかしら?」

「はい。可能ならば永住権を取得出来る手続きがしたいのですが」

「あら、この都市で生きる事を決めてくれたの?」

「はい。条件付きでは有りますが」

 

 そう言って俺へと視線を向けてくるダリア、それに気付いて都市長も俺に目を向けてくる。なんとなく、またやったのかお前と言わんばかりの表情だった。

 

「……条件はタタラに関係するのね?」

「はい。マスターは私に『錬金術師の卵』を渡す条件として『幸せになれ』と命じました。ならば私は、マスターの側でその『幸福』を探します」

 

 都市長からの視線がなんとなく、仕方ない奴だといった感情が含まれた気がする。いや、生きる事を諦めようとしてた相手ならコレくらい言わないと。

 

「その『マスター』というのは?」

「はい。マスターから私に新たなる核を渡して頂いた際にマスター権をタタラ・ジュロンに定めました。その為、タタラ・ジュロンが私のマスターになります」

 

 都市長、そんなエテルはどうするんだお前みたいな表情しないで下さいよ。多分、今日の夜は俺がエテルの説得の為に搾られるんですから……運動着とブルマを着て貰えるか頼んでみよう。

 

「分かりました、では手続きでそのように処理出来るように書類を用意します。ダリアさん、貴方には家名はありますか?」

「ありません。私はダリアとだけ名を与えられました」

「……それなら、今日からジュロン姓を名乗るといい。ダリア・ジュロン、それがお前の今日から名乗る名前だ」

「Yes my Master。ダリア・ジュロン……いい響きです」

「ああ、見た目も似てるし兄妹みたいだな」

「……」

「……タタラ、刺されないように気を付けなさいよ」

 

 どういう意味だろうか。

 病院の受付で施術に掛かった金を支払う。手術に関わったお医者様は驚いた表情でダリアを見ていたが、命が潰えなかった事に心から嬉しそうに笑ってくれた。ダリアも自分を生かそうとしてくれたお医者様へ丁寧に礼を言っている、両親の躾がいいなこの子。

 保険が効かないので三桁万の施術費が掛かったが、インベントリから取り出して一括現金払いで済ませる。受付さんは顎が外れそうな程に口を開けていたが、お医者様は俺の事が分かっているのか納得している。

 病院から離れて最初にしたのはダリアの服を買う事だ。手続きするにしても裸にシャツとかとんでもない格好はさせられない、何時ものランジェリーショップに行き何時もの店員さんの話をして下着を売ってもらった。

 

「マスター、私のサイズは65のAです」

「堂々と俺に言うな、店員さんに言って対応して貰え」

 

 なんて会話が有ったが、この辺のやり取りは割愛する。精神的に辛い物が有るとだけ。

 次はランジェリーショップの近くに有った衣服の店だ。立地から考えて値段は高いが、一着か二着はこの手の服は持っておいた方がいい。何時意味の分からない権力者の会合に呼ばれるか分かったものでは無いからな。

 俺の好みを聞いてきたのでワンピースと答えたら、薄いピンクのワンピースと丈の短い白のカーディガンを持ってきた。

 試着させたらスレンダーなラインと相まって清楚さを感じさせて、いいとこのお嬢様にも見える。

 

「へぇ元が綺麗だからよく似合うな。コレにするか?」

「……Yes my Master」

 

 買うかの確認をしたら微妙に挙動がおかしくなった、どうかしたのだろうか?

 近くに居た店員さんからオススメとして渡されたのは、黒いドレスシャツと白いハイウェストのタイトパンツだ。ダリアに試着して貰うと中性的な魅力が出てコレも似合っていた。

 

「こういうのも似合うな。中性的な魅力ってやつかな、顔立ちは可愛いけど表情が凛々しいから惹き込まれそうだ。コレも買うか?」

「……い、Yes my Master」

 

 なんか挙動が更にぎこちなくなった気がする。店員さんは何やらクスクスと笑っていた。

 ダリアは店員さんのオススメを着て行くつもりらしいので、着ていく事を伝えた。店員さんはニコニコと笑ってワンピースとカーディガンを包んで渡してくれる。俺は追加で白いリボンを買って、ダリアの髪を纏めてやる。

 肩口までしか無いが、この手の服装にはこうやってショートポニーにする方が似合うと相場が決まっている。レースのあしらわれた可愛らしいリボンが、ダリアの黒髪に映える。コレには店員さんも小さく拍手を贈ってくれた。

 尚、此方も似合いますよと鮮やかな赤に金糸をあしらったリボンを勧められてそれも買ってしまった。あの店員さん、商売上手だな。

 買い物を終えて2人連れたって役所へ向かう、すれ違う人の殆どがチラチラとダリアを見ている。男女問わずなその様子にダリアはやや不安になったようだ。

 

「マスター、多くの人から視線を向けられています」

「だろうな、今のダリアは魅力的だから注目を集めるさ」

「……マスターは息をするように人を口説くのですか?」

「何故そうなる」

 

 当たり前の事を伝えて何故その反応。風評被害もいいところである。

 そんなやり取りをしつつ、自警団の詰所に辿り着く。

 丁度班長っぽい人が帰っていたらしく、俺の姿を見るなり飲んでいた物を盛大に噴き出した。目の前にいた人は不運にもぶっかかっている。

 

「た、たたたたたたたたたタタラさん!?」

「どうも、調書を取ってもらいに出頭しました」

 

 駆け寄ってきた班長っぽい人にそう言うと、めっちゃ丁寧に席へ案内された。どうやら本当にあの時の班の班長だったらしい、心の中で班長さんと呼ぼう。

 

「で、では改めまして」

「はい、よろしくお願いします」

 

 そうして班長さんともう一人の部下っぽい人に調書を取って貰う。途中、都市長から書面も送られて来たらしく、俺とダリアは問題なく調書を終える事が出来た。

 

「あ、そうだ。現場で働く自警団の人達に意見を貰いたいんですけど、今居る人達を会議室に集めて貰っても大丈夫ですか?」

「え、はい。声を掛けてみますね」

 

 班長さん人に頼んで会議室と団員の人達を貸して貰った、席の最前列は凄い取り合いが起きていたがそんなにか?

 いや、班長さんが言っていた事が本当なら俺が作ったトリモチランチャーが彼等や人々を護ってくれたのだ。そう考えると新しい装備に付いての情報は欲しいだろう。

 ダリアに魔導式ワードプロセッサを渡し、出力を上げて会議室の白い壁にプロジェクターよろしく画像を映して貰う。団員の人達は驚いていたが、本題はこれからだ。

 

「今回皆さんに意見を出して欲しいのはコレから作る新型のトリモチランチャーについてです」

 

 その言葉に会議室内がざわめく、反応して貰えて何よりだ。

 

「かねてより現場からは『連射が出来る個人携行品』が求められていました、現在は班員が揃って使用する事で弾幕を張って貰っています。が、複数の場所に人を割かなければならない時に手数が減ってしまう。今後、大人数での犯行が横行した場合にそなえ、それらの状況に対応する連射型を用意すると此方も検討させて頂きました」

 

 会議室内が明るい雰囲気で盛り上がる、良かった。

 

「そこで此方が用意する連射型は三種類、それぞれを確認していただきます」

 

 そう言ってダリアに表示を変えてもらう、最初に出して貰ったのは銃身の下部に複数の円筒が付いた回転式の装弾型だ。前世でもグレネードランチャーに類似の品が有ったので参考にさせて貰った。

 

「コレは携行性と装弾数を主に追求した物になります。装弾数は6、従来型に比べて大きさは二分の一、本体の重さは4割程になってます」

 

 会議室内はざわめく、そりゃ前置きは凄いよな。だがデメリットも有る。

 

「問題点としては整備性の悪さ、機構が複雑化するので必然的にメンテナンスが難しくなります。次に装弾する弾頭の新規開発費、従来の物に比べて一発辺りのトリモチの量を減らす形になります。更に今迄と同じ使い方は出来ないので新たに訓練をする必要も有ります」

 

 会議室内の反応は様々だ、メリットとデメリットを比べて議論する人もチラホラ居る。

 そんな中で1人手を上げた人が居た。

 

「はい、そちらの方。質問をどうぞ」

「ありがとうございます。弾頭を従来のままにして同じ機構には出来ませんか?」

「問題点が幾つか有ります。この機構で従来の弾頭にすると装弾数は3発が限界で有ること、弾頭の重さにより機構に掛かる負担が大きくなり不具合の可能性が上がる事、そして反動が大きくなり人によっては倒れてしまう事です」

 

 俺の言葉で驚いた声が所々上がる。ダリアに頼んで従来型の構造を呼び出して貰った。

 

「従来型はこのように、円筒そのものになっています。コレは砲口の反対側から同じだけのガスを噴射する事で反動を抑える機構とすることで無反動に近い状態を作っています。これもあり弾頭の大型化をしても問題は有りませんでした」

 

 こうして構造的な話をしていくと、一部の団員さん達が身を乗り出して聞き入っている。恐らくは整備関係の人達だろう、是非ともノウハウを手にして頂きたい。

 

「コレに対してこの連射型は携行性を高める為に本体の重量を軽くした為に大型の弾頭を撃つには軽く、反動が大きくなってしまいます。その為に小型の新型弾頭を用意する必要が出てしまいました。疑問は解決できましたか?」

「はい、丁寧にありがとうございます」

 

 質問をしてきた団員さんは丁寧に一礼をして席に着いた。

 さて、では次だ。

 

「それでは次のタイプが此方になります」

 

 そう言って映し出されたのは従来型に近いが、後部に下から差し込むカートリッジが増設されている。

 またもや会議室からざわめきが起きる。

 

「これは従来型に給弾機構を取り付けた物になります。下部から押し上げる形か、上部から下ろす形にするかはまだ迷っていますが大きな違いは有りません。装弾数は従来型のを5発、操作性はほぼ同じなので転向の訓練は必要有りません」

 

 会議室内は興奮気味だ、ここまでは良いことばかりだしな。

 けれどコイツにも弱点は有るんだ。

 

「問題点としては本体重量の増加、従来型より3割増で重くなっています。更に増弾した為に弾頭の重さも増えたのでざっと計算しただけでも全備状態で5割増の重さになります。更に言うと、カートリッジの為にバランスも悪くなっています」

 

 会議室から落胆の声が上がる。やはり従来型はその重さが嫌がられてたか。

 そうしていると1人手を上げて質問が有る団員さんが居た。

 

「はい、質問をどうぞ」

「ありがとうございます。全備で5割増と聞きましたが、具体的にはどのように重量が上がってしまったのですか?」

 

 その言葉を聞いて、ダリアに従来型と連射型の設計図を並べて貰う。

 

「具体的に言うと、この給弾機構の機関部に対してどうしても構造を頑丈にする為に素材を厚くせねばならなかった事と、パーツを増やした影響ですね」

「軽量化は無理なのでしょうか」

「出来なくは無いですが、そうすると別の問題が発生します」

 

 俺の言葉に会議室内がざわめく。問題の方はあんまり語りたくないなぁ。

 

「先ず1つ目、素材を変える。頑強さと重量からミスリルや魔鉄辺りに変更することで、重量は従来型よりも軽くなります」

「えっと、ミスリルか魔鉄ですか?」

「はい、値段がどうなるかは聞かない方が身のためだと思います、多分自警団を縮小したとしても十年間は予算出ないです」

 

 ミスリルもそうだが、魔鉄でも俺しか公式に作成出来る人間がいないので値段が上がる。機関部だけ魔鉄にしたとして、それでもトリモチランチャーの値段は十倍近い金額になる。元が3万くらいなのに概算で28万になるのは流石にダメだろう。

 

「もう一つの方法とは?」

「……俺が全て作る事です」

 

 実はトリモチランチャー、量産出来るように既存技術の組み合わせで作ってたりする。元からスキルで作れる砲型の魔導銃は有るが、必要魔力量の低下に伴う威力の低下や、当て易くする為にスコープを改良したりと手を加え、更に構造の簡略化を活用して本体の故障率を下げている。この辺りは結構徹底して量産出来るようにした為に、トリモチランチャーは『クラフトⅠ』で作製が可能だ。尤も、クラフターには最低限設計図を読める知識が必要になる。

 

「作製する上での素材の均一化や徹底的な寸法の管理等、一品作る上で芸術品もかくやというバランスで作れば素材の変更なく稼働させられます」

 

 尤も、コレをやると商会と都市長から思い切り怒られる。単純な技術だけで他人では再現性の無い武器を作る事になるからだ。

 

「これについての問題は、都市長に俺が全力で行った『クラフト』は再現性が著しく低いために禁止されている事です」

「え、禁止ですか?」

「はい。探索者装備等の依頼品なら兎も角、自警団が使う量産品でコレを行うと整備費その他が現状より嵩む形になります」

「……それほどなんですか?」

「都市長をして再現性に疑問が出るそうですよ。あの都市最高のクラフターとして名高い都市長が、です」

 

 整備関係の団員さん達を見れば、顔が青ざめてる。自分達には整備が無理な上、そんな精密機械がどんな雑な扱いで動作不良になるかも分からないのだから。

 

「現状、魔鉄を安価で用意出来ない事も含めて本体の重量を上げるしか解決策が無い。納得して頂けましたか?」

「はい、ありがとうございます」

 

 質問してくれた団員さんが座った後、にわかに騒がしくなる。

 そりゃそうか、俺が散々考えてそれでも解決出来ない問題にぶち当たってる。それも、俺では無く他のクラフターが使える技術に落としてコレという問題だ。

 

「それでは3つ目をご覧ください」

 

 次に映されたのは従来型と殆ど同じ。その事にざわめく会議室だが、班長さんがいち早く気付いた。

 

「……中折れ式?」

「はい、正解です」

 

 連射型と言われて装弾数を上げる方向に進んでいたのとは違い、装填を早める構造を意識したのがコレだ。

 従来型は単純な構造と本体の頑丈さの為に本体が一本型の円筒で作られているが、その為に装弾は先込め式だった。コレが中々大変であり、人によっては身長のせいで届かないなんて言われてしまった……主にドワーフ族やホビット族の人達に対して配慮が欠けてしまっていた。コレは三分の二を砲身として扱い、残りの三分の一に機関部を割り振る事で中折れして装填を可能としたモデルになる。

 

「先の2点とは違い此方は装填を早くする事で連射を可能とするコンセプトで設計しました。メリットとしては従来型そのまんまの運用が可能な事、コレにつきます。デメリットは整備性の低下、中折れ式という事でパーツが増えてしまいコレは解決不可でした」

 

 俺は会議室の人達一人一人の顔を見渡す。人種は様々だが、志は同じ。誰もが人々の平和を守りたいとしてこの場に居る。

 

「俺は、以上三種類の新型ランチャーの試作品を三丁ずつ自警団に納品しようと考えています。しかし、これらは試作品です。実際に使用して不具合を確認し、運用時に整備や不良に対しての意見が欲しいです」

 

 俺の言葉を真剣に聞いてくれて居る。一人一人がプロとしてここに居る、この人達が最高の相棒だと言ってくれるような物を贈りたい。

 

「この中の全てが採用される訳では有りません。恐らくは一種のみ、製造する為のコストを考えるならそうなるでしょう。その為に皆さんにはこの子達をお願いしたいんです」

 

 少しでも俺の熱意が届けば良いと思う。

 

「貴方達が……正義の味方が誇れる相棒を、俺に作らせてください。お願いします」

 

 そう言って頭を下げる。会議室から息を呑む音が聞こえた気がした。そして、一斉に歓声が上がった。

 

 

「あの、タタラさん!」

 

 会議室を後にしてダリアの手続きの為に役所へ向かおうとしたら、班長さんに声を掛けられた。

 

「何故、貴方は俺達に協力をしてくれるんですか!?」

「……何年も前になりますけど、俺の両親は大規模討伐で亡くなりました」

 

 班長さんの言葉に理由を答える為に言葉を紡ぐ、胸の奥に感じる痛みを無視をする。

 

「遺体は綺麗な姿で帰って来ました、現場で両親に助けられた人達が頑張ってくれたのだそうです」

「それは……」

「自警団の人達が犯人を捕まえようとして殉職している話を聞いて……その仲間の遺体の前で泣いている団員さん達の姿を見て、俺は子供の頃の自分を見ているようでした」

 

 俺の言葉を聞いて、班長さんは黙っている。当然か、憧れのヒーローがこんな弱い心でいただなんて。

 

「だから俺は、貴方達に生きて帰って欲しくて安全に相手を捕まえられる物を考えました。確かに初めはホイホイに使う物でしたけど、相手にぶつける事で簡単に捕まえられるように球状の入れ物で最初に作って。それを遠距離から高速でぶつけられる砲に発展させて……そしたら消火用にまで応用してくれて」

 

 班長さんは黙って聞いていてくれている、心の弱い子供の自分語りなんて聞きたく無いだろうに。

 

「俺が貴方達に協力するのは、両親達への代償行為が根本です。そして、貴方達がこの都市の笑顔を守ってくれる光景を見れたから全力で支援をしたくなった。貴方は俺をヒーローだって言ってくれたけどとんでもない、貴方の姿こそ俺にとって理想のヒーローです。だったら、応援するなんて当たり前じゃないですか」

 

 俺は笑って班長さんへ言う。

 

「班長さん、コレから辛いお願いをしますが聞いてくれますか?」

「はい」

「コレからもこの『ワールウィンド』の平和を守ってください、その為の道具は作りますから……どうかお願いします」

「はいっ!!」

 

 頭を下げる俺に、班長さんは力強く答えてくれる。

 顔を上げてた俺が見たのは、班長さんの後ろにズラッと並んだ自警団の団員さん達。その中で恐らくは団長だと思われる逞しい壮年の男性が声を上げる。

 

「総員、気を付け!」

 

 屋外だというのに、よく響く声だ。その声に合わせて、団員が揃って姿勢を正す。

 

「タタラ・ジュロン次期工匠長に対し、敬礼!」

 

 その声で、一斉に団員の人達が敬礼を俺に向ける。

 ああ、やっぱりこの人達は格好いいな。

 俺は、見様見真似で不格好な敬礼をヒーロー達に返すのが精一杯だった。

 

 

 思いの外時間が掛かった自警団の人達との会議だったが、想像以上に意義のある時間だった。俺は俺が出来る全力で、彼等を支える事を誓い直すいい機会だ。

 

「マスター、嬉しそうです」

 

 そんな俺にダリアが声を掛けてくる、そんなに顔に出ていたか。

 

「嬉しいよ、俺が作った物が誰かを支えて守ってるのが実感できたから」

「マスターは謙虚なのですね」

「俺が謙虚? そんな訳ないだろ、俺程傲慢で強欲な人間なんてそうは居ないさ」

「……コレは一種の病気でしょうか」

 

 ダリアの何処か呆れを含んだ言葉に心外だと思いつつ、並んで歩く。そう、俺は傲慢で強欲だ。あの人達に誰一人として死んで欲しくないって思ってしまうし、俺の作った道具ならそれが出来る筈だと考えている。コレが傲慢で強欲と言わずになんて言えばいい?

 

「それはそれとして、ダリア」

「はい」

「そろそろ役所だから記入する内容はキチンとしろよ?」

「はい、大丈夫です。続柄は妻にする準備もバッチリです」

「全然バッチリじゃないだろ、俺の妻はエテルだ」

「……」

「おい、無言で目を逸らすな」

 

 初めは無感情かと思ったら、想像以上に我が強いなダリア。

 

「ならば続柄は奴隷にします」

「ふざけるなよ、この『ワールウィンド』で奴隷制は廃止されてるんだからんなことされたら捕まるわ」

 

 悪びれずそんな事を言ってくるダリアに思わずツッコミをいれる。そりゃ裏とかならそういう市場やらが有るかも知れないが、少なくとも表ではそれらを見付けたら逮捕される。

 

「仕方ないですね、どうすればいいのですかマスター」

「義妹にでもしとけ」

「……Yes my Master」

 

 すげぇ不満そうな返事だった。

 

「そういえば、機巧乙女で気になってた部分が有るんだが質問いいか?」

「はい、私達機巧乙女は女性しか生まれず他種族の雄と交わる事で子を成します。生まれるのは主に母胎と同じ機巧乙女が主になりますが、極稀に父側の種族になる事もありその場合子供は男に生まれるのが……」

「すまん、その生態については今聞いて無い」

 

 いきなり何を語りだしてるんだこのメカ娘。

 

「俺が聞きたいのは主に食事についてだ、人間と同じ物でいいのか?」

「はい、大丈夫です。好き嫌いは特に有りませんので、なんでも食べられます」

 

 てっきりネジとか鉄製品食ってるんじゃないかと思ってたが、普通の有機生命体と同じだった。やはり偏見はダメだな。

 

「それと、武器とかはどうする? 俺が作るつもりだが」

「マスターの腕が分かりませんのでなんとも言えません。先程の会議室で提示していたのは武器というよりも捕具でしたので」

 

 確かにな。なら少し見せてみるか、周囲を確認し特に人が居ないことを確認してからインベントリから一つ取り出す。

 以前、オリハルコンゴーレムを真っ二つにした杭打機『オウトエイズル』である。

 

「いま手元にある最大火力はコレだな」

「……」

 

 俺から『オウトエイズル』を受け取ったダリアは無言、手にした魔導具の構造を読み取っているのだろう。火力に特化させたら近接用武器だが、一発辺りのエネルギー消費量が多い。ダリアも嫌がるかなコレは。

 

「……素晴らしい、やはりマスターは私の運命です」

「おっと?」

 

 何処か目をキラキラさせてそう言ったダリア。

 

「一撃一撃に中型魔石一つを消耗する代わりに得る大火力、並の筋力では扱いきれないであろうこの重量。高硬度かつ高密度の金属で作られた杭を、加速術式で瞬間的に音速を越える速度で打ち出す事で発生する衝撃を敵に余すこと無く伝える事で点と面、外部と内部を同時に破壊する無駄のない機構……素晴らしい、これ以上の近接兵装は無いでしょう」

 

 なんだろう、この前世のとあるゲーム会社の作品に脳を焼かれた人達みたいな言動。

 

「……気に入ってくれたならそれ、やろうか?」

「本当によろしいのですか?」

「ああ、俺の切り札だが基本使える場面が限られるし」

「ではありがたく」

 

 言うが早いか『オウトエイズル』をインベントリに格納するダリア、服を買い与えた時より満足そうだ。

 

「それと、ダリアの魔導鎧も作らないとな」

「私は普通の服で十分だと思いますが」

「よくねぇよ、せっかく気に入って選んだ物がダメになったら悲しいだろうが」

「……そういう物ですかね」

 

 なんというか、反応が微妙だな。俺の『黒鐵の鎧』をベースに霊核を搭載した場合の設計思想を盛った砲撃可能なモデルのテストをダリアでしようと思ったのがバレただろうか?

 

「それと、物理火力は遠距離に魔導加速砲を用意するつもりだ。後は魔法火力だが……」

「でしたら近接は剣でお願いします、以前使っていたものがそうですので使い慣れています」

「分かった、新しく作るとするよ」

 

 ついでに魔力砲も作製しようか。ダリアのステータス如何では『リッチ』に挑めるように成るだろうし、そうすれば装備の幅も広がるだろう。

 

「そういえば、ダリアのステータスを確認してないな」

「確かにそうですね。私の戦力を把握するのはマスターに取って安心に繋がると思考します、今ステータスを開きますね」

「いや、俺が『鑑定』を使うよ。いいか?」

「Yes my Master」

 

 許可を貰えたのでダリアに向かって『鑑定』を使用する。

 

 戦力   100/100

 体力   800(800)

 魔力   500(500)

 技力   500(500)

 物理攻撃 300(300)

 物理防御 300(300)

 魔法攻撃 300(300)

 魔法防御 300(300)

 速力   300(300)

 運    100(100)

 移動力  10 (99)

 特殊能力 『体力回復Ⅴ』『技力回復Ⅴ』『魔力回復Ⅴ』

 

 意味不明な数字が出て来た。え、何これなんなのこの数字。

 

「如何がなさいましたか、マスター」

「いや、ステータスが異常に高いなって……」

「ふむ、それ程ですか? 確かに以前よりは身体は軽く感じますが」

 

 ダリアはそう言ってステータスを確認したのだろう、そしてそのまま固まった。

 

「……敗北した時に比べてステータスが5倍くらいに増えてます」

「そうだよな」

 

 正直、このステータスの半分だったとしても勝てる存在の方が稀だ。武器如何ではドラゴンすら単独で撃破出来る。

 

「コレではマスターの魔導具を使う快感が少なそうですね」

「いきなり何いってんだお前」

 

 確かに普通に殴ってもオリハルコンゴーレムにダメージ通せる物理攻撃力持ってるけどさ、多分お前が『オウトエイズル』使ったら真っ二つだぞ?

 

「しかしコレで分かりました、今度またあの敵が現れても今の私なら勝てる」

「……慢心はするなよ」

「慢心では有りません、これは余裕というのですマスター」

 

 何処ぞの二代目人斬りみたいな事を言うなよ。

 

「それに、マスターから貰ったこの胸の奥の『卵』は絶対に奪わせません。たとえそれが我が創造主『機械神』様相手だろうと」

 

 そうして決意を抱き胸元で拳を握るダリアの姿は、決意に満ちていた。

 

 

 役所で手続きを終えて帰路に付く。ふざけた言動をしていたダリアだが、書類記入時は真面目な態度だった。どうやら後見人は都市長がしてくれるらしく、俺では未成年者なので不可である事は役所で言われるまで忘れていて焦った。あの人には本当頭が上がらない。

 

「まるで要塞ですね」

 

 家を見て最初に言ったダリアの台詞がコレである。どうやらミスリル製の門扉や、張られた結界を見て解析したらしい。

 

「まだ設置して無いが、不法侵入者には結界の穴を感知してそこへ攻撃を撃ち込む非殺傷の自動魔導銃で対策しようと思ってる」

「それは素晴らしいですね」

 

 ダリアは感心してくれているが、都市長は頭抱えたんだよなコレ。

 

「ただいま」

「おかえり! 大丈夫だっ……た?」

 

 俺の声に真っ先に反応して来てくれたのはエテルだったが、傍らに立つダリアを見て固まった。

 

「此奴が転移門から不法侵入かました機巧乙女、名前はダリアだ。ダリア、目の前の女性が俺の婚約者のエテル。挨拶を」

「Yes my Master」

 

 俺の言葉に返事を返したダリアが、エテルに対して最敬礼の角度で腰を折る。

 

「初めまして、本日よりお世話になります機巧乙女のダリア・ジュロンと申しますどうぞよろ」

「ダメ〜!!」

 

 ダリアの挨拶を遮って、エテルが大声を上げた。え、どうした?

 

「タタラのお嫁さんは私なの! ジュロンを名乗るのは私が先なの!!」

 

 泣きながらそんな事を言い出した。え、どういう事?




【ワールウィンドの自警団】
街のおまわりさん、『ワールウィンド』の平和を守る為に志の高い人達が集まる。
原作ではスケベで暴走する主人公のスミスを捕まえたり、注意したりと常識的な行動が目立つ。
原作開始の数年前に起きた事件により、その人数が大幅に減ってしまった。
市民の盾になる者、武器は無くとも果敢に悪漢へ挑んだ者など数多くの勇気を持つ正義の味方が犠牲になった。
原作開始時には再編されて人員は増えていっているが、志が高い者達が多く失われ腐敗が始まっている。

この小説は……

  • エテル・ネル=バーラルとの物語
  • 虎熊四葩との物語
  • 騎士タチアとの物語
  • 探索者パーティハーレム
  • 聖人カラムスとの物語
  • 都市長との物語
  • 熟女ハーレム
  • シャムスとの物語
  • エストとの物語
  • 後輩二人との物語
  • 探索者ローガスとの物語
  • 『天使長』に愛されて夜も眠れない
  • 異世界追放
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