※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中


鍛冶師は詰められる

「落ち着けタタラ! ダリアの冗談にしか過ぎん!! 妾達のところまで励み声は聞こえておらん!!」

「おや、ヨヒラ様は聞き耳を立ててマスターとエテル様の好意を肴に勤しむおつもりだったのでは?」

「無駄に現実味のある嘘はやめよ!?」

 

 梁にロープを掛けて人生に決着をつけようとする俺の外側で、四葩とダリアが何か盛り上がってる。うるさい、静かにしてくれ。

 

「頼む……静かに…でござる」

「お前はいきなり何を言い出すんだ」

 

 作者に死なせて貰えない愛されキャラの悲哀じゃねぇかな。

 うん、駄狐のお陰で精神が持ち直してきた。吊るのは一旦やめよう。持っていたロープをインベントリにしまい、俺を支えてロープに首が掛からないようにしていたタチアに声を掛ける。

 

「タチア、取り敢えず心は何とか通常時に戻ったから大丈夫だ」

「………本当か、タタラ殿? 手を離した瞬間に首元へロープを展開して括りに掛かる等は無いか?」

「どんだけ疑われてるんだよ俺は、信用されてないな」

 

 俺の言葉に渋々と言った表情で、ゆっくりと手を離すタチア。

 俺は椅子から床に降りて、騒がせた事を謝罪する。

 

「悪い、ちょっと精神が破壊されて死にたくなってた」

「それは純粋に致命傷なのでは?」

 

 タチア、ツッコまないでくれ。今でも傷口がジクジク痛んでるから。

 

「マスター、私に幸せになれと言いながら共に探す貴方が自死を選ぶとは何事ですか」

「選ばせたのはお前の言葉だけどな」

「天然爆乳美少女とは義妹プレイに勤しめて人形系のクール美少女とは出来ないと申しますか」

「お前は俺を死なせたいのか」

 

 夫婦の営みでマンネリ防止にシチュエーションを変えるなら兎も角、お前は違うだろ。つか、戸籍は義妹だけど実際にそうではないからな?

 

「戸籍では義妹でも実際は主従、ともすれば主と性奴隷では義妹は無理だと申しますか」

「性についてはエテルで間に合ってるから永遠に訪れないチャンスを待ち侘びないでくれ」

 

 エテル、さっきはああ言ったけど流石に心折れそうです。やっぱり俺に複数の相手を愛するとか無理だよ。

 

「そう言えばエテルはどうしたんだ?」

「お主が梁にロープを掛けて首を吊ろうとした瞬間に気絶したのじゃ」

 

 四葩に言われて指差された方を見ると、魘されたエテルがソファで横になっていた。いや本当にすまん、アレは耐えきれなかった。

 

「ところでマスター、この卑しい狐は何故マスターをご主人と呼んでいるのですか?」

「それは此方のセリフでござる。何故あざとい人形娘がご主人をマスター呼びしてるでござるか?」

 

 互いにメンチ切り合って威嚇し合うダリアと駄狐。

 

「私は命を救われました。マスターが作り上げた希少な発明で今を生きられている。ならばこの身を捧げるのも当然です」

「拙者も命を救われたでござるよ。街中で偶然ぶつかり、助けられたでござる。拙者の方が運命っぽさが上でござるな」

「あ゛ん゛?」

「お゛お゛?」

「威嚇し合うな」

 

 片や失われた霊核の代わりに『卵』を与えた機巧乙女、片や空腹で倒れた所で食物を与えた妖狐。なんだろうなこの変な対戦カード。

 

「私はマスターに服を選んで貰いましたが? 口説かれもしましたが?」

「拙者はご飯奢って貰ったでござるが? 美人の自覚持てと容姿を褒められたでござるが?」

「お主らそろそろやめよ、タタラが流れるように口説くのは何時もの事じゃろ」

「四葩、フォロー入れる体で追撃入れてくるのやめようぜ?」

 

 四葩にすらその反応されんのか俺は。

 

「……なぁ、普通に四葩と駄狐やダリアの容姿を褒める言葉は口説きになるのか?」

 

 思わず隣に居たタチアに質問をすると、難しい顔をされた。

 

「タタラ殿の場合、裏も照れも無く真っ直ぐに容姿を褒めるのでそう取られてしまうのだろう」

「思ったとおりに言ったらその扱いって、俺はどうすれば良いんだよ……」

 

 思わず頭を抱えると、タチアが何かを思い付いたのか聞いてきた。

 

「タタラ殿、貴方の目には私はどう映るだろうか?」

「タチアは美人だよな。顔全体の作りは怜悧で凛々しい騎士を体現しているのに、笑うと柔らかい印象になって途端に親しみが増す。きっと人々が絶望してる時にお前が来てくれたのなら心強いだろうな、お前の笑顔とお前の背中で幾らでも安心出来るから」

「分かったぞタタラ殿、貴方が全て悪い」

「なんで!?」 

 

 なんか顔を反らしたタチアに全部悪いとか言われてショックなんだが。俺に聞いてきたのお前だろうがよ。

 

「素直に容姿を褒めるのが許されないのか……」

「ああいう事はエテル殿だけにした方が良い」

「それこそエテルなんて難しいだろ、The美人の代名詞みたいな顔してて例えが思い浮かばん。それこそ人の型に美って概念を詰め込んで出来上がったのがエテルの美貌じゃん」

「タタラ殿、起きようとしたエテル殿が沈んでいるのだが分かっているのか?」

 

 ソファに目を向けるとクッションに顔を埋めているエテルが見えた、髪から覗く耳が真っ赤だ。

 そういえば、あまりエテルの容姿を褒める事は無かったな。好きとか愛してるは沢山言っているが。

 

「エテルをあまり褒めた事が無かったな、悪いことをした……」

「賢明だと思うぞ、タタラ殿。多分、あまりやり過ぎると多幸感でエテル殿が使いものにならなくなっていたと思う」

 

 そこ迄言うか?

 

「エテルはタタラが絡むと優秀とポンコツを行ったり来たりするからの」

「おう、復帰したか箱推し鬼」

「一華とダリアが止まりそうに無いから避難して来たのじゃ。そもそも何故お主は人を褒める時に照れんのじゃ、普通は躊躇や羞恥が混じるじゃろ?」

「……事実をまんま言うのに照れるのか?」

「お主、何か大切なものを母君の肚に置いてきておらんかの?」

「そこまで言うか?」

 

 異常者みたいな扱いは酷いと思うんだが。

 

「まぁ、俺がお前の容姿褒めたのとか初日の時くらいか」

「……なんで覚えておるのじゃ?」

「逆になんで仲間の事を忘れると思ってるんだよ、大切な思い出だろ」

「……お主がそんなだから妾は苦労していると言うのに」

 

 何処か拗ねた表情を浮かべる四葩、エテルが言ってた事を伝えるのは後にするべきか。

 

「取り敢えずダリアの事は……その前にタチアが時間か」 

 

 俺の言葉に時計を見て、タチアが苦い顔をする。

 

「……私も、卒業後は此処に拠点を移したいな」

「部屋は空いてるから来るなら構わないぞ、家賃は入れて貰うけどな」

「特別割引きの条件は(めかけ)入りかの?」

「本当にそうなったら割引きもクソもなく住まわせるさ」

 

 俺の言葉が一瞬理解できず、少しして目を見開いて俺を見る四葩。冗談で言ったのだろうが、エテルとのやり取りで俺は少しずつ変えて行かなきゃいけないのだ。小さな一歩でも、少しずつ。

 

「タタラ殿、先程のは……」

「ほらほら門限だろ、余裕が有るうちに帰れっと」

「わ、ちょっ!? 押さないでくれ!!」

 

 玄関までタチアの背中を押していき、帰宅を促す。最後にそっと耳打ちをする。

 

「エテルに言われた事が有るが、それはもっと時間に余裕が有る時に話す。悪いけど今は帰ってくれ」

「……必ず話してくれるのだな?」

「ああ、必ず。大切な仲間だから伝えるよ」

「……分かった、覚悟をしておく」

 

 そう言って、タチアは帰って行った。少し強引過ぎたが、門限破りは彼女の騎士学校での生活で周囲に変な疑いを抱かせる可能性が有る。何とか俺達でタチアの価値観を人間に近付けられたのだから、あの選民思想に再度染まらせる訳にはいかない。

 尤も、最上は学校から離して此処に匿う事だとは思うが。いっそ、虎熊家直通の転移門を守る役割とか貰えないかなタチア。

 

「……タタラ、先程の事を聞かせて欲しい」

 

 そんな俺の背中に声を掛けたのは四葩だ。ただ一人、周囲には誰も居ない。

 

「ああ、今はお前にだけ話す必要が有るな」

 

 そっと、深呼吸をする。エテルに言われた事を伝える、単純な事なのだ。

 

「エテルから言われた、私以外の人も受け入れてくれと」

「……お主は、それを受け入れたのかっ!?」

「条件付きだけどな」

 

 俺の言葉に四葩が近付き、胸倉を掴んできた。そりゃそうか、エテルと俺の箱が好きで見守ると決めている四葩にこんな事を言えば怒りを買う。

 

「ふざけるな! お主、エテルに言われてホイホイ決めたのか!?」

「そんな訳ないだろ、俺は嫌だって何度もエテルに言ってる。それでもエテルは俺が生きる上で一人で支えられないって言ってきたんだ」

「それで! 何故納得した!!」

「納得なんてしてねぇよ、俺はエテルが他の男と浮気したら死にたくなるだろうから他の女を愛する事は出来ないって伝えた。それでもエテルは受け入れろって言ったんだ……お前とタチアを受け入れろって」

 

 四葩が驚き、下唇を噛んで感情を抑える。血が滲んでるのが見えた。

 

「巫山戯るな、妾への同情のつもりか!」

「俺だってな、お前の高潔な在り方を損なうこんな選択をしたくねぇよ! アレだけ真摯に俺へ告白してくれて、エテルが居るからって断ったのに都合が変わったから受け入れる!? そんなの、俺が許せる筈が無いだろ!!」

 

 怒りで顔が赤くなっている四葩が、目の端に涙を溜めて言ってきた。俺も感情が昂り強く言い返す。

 思えば、俺に『一途でしつこい』と言ったアレは俺への心遣いだろう。最後に強く抱き着いて来たのは諦める為だったのだろう。

 

 それが今更、どの口を叩くと言うのだ。

 

「妾がお主を好いている事は変わらん、だが諦めたのじゃ! 諦めたのに……なんで? なんで今更……妾は期待しちゃうの?」

 

 四葩は泣きながら俺の胸元に縋り付く。前とは違い、今回は抱きしめ返す。

 

「……初めて会った時、お前は俺に『エテルに振られたら慰めてやる』って言ってくれたよな」

「……それも、仲間との大切な思い出?」

「ああ、俺に初めて告白してくれた女の言葉だから覚えてるよ」

 

 酔ったエテルに『夢は君のお嫁さん』と言われた事が有ったが、あの時のエテルは意識が混濁していた。直接俺に告白したのは四葩が最初なのだ。そんな相手の言葉を忘れる筈が無い。

 

「正直、嬉しかった。こんな俺を好きになってくれる相手が居てくれた事に。あの時エテルに振られてたら頼ってたかも知れない」

「……嘘。多分タタラは妾に振られた事を黙ってて、普段通りに過ごすよ。それで無理して……妾が押し倒してた」

 

 なんでそんな考えになるかな、俺だって男だぞ。

 

「エテルとの姿を見てれば分かるよ、本当に大事な相手だとタタラはその選択を尊重して踏み出せなくなるって。自分より相手の幸福が前提だから、自分よりも幸せに出来るなら苦しんでも構わないって。初めて出会った日、『ハイオーガ』を倒した時に言ってた事がタタラの恋愛観だって納得したよ」

「……そんな事、覚えててくれたのか」

「好きな相手の言葉だから、ね」

 

 そんな戯けた答えを返してくる四葩に、思わず笑ってしまう。

 俺に言ってる事、そっくりそのまま返ってくるじゃないか。

 

「それで、タタラが妾を受け入れてくれる条件って何なの?」

「俺の一番はエテルが占めてる、そこは揺るがない。だから、それを納得出来る相手じゃないと受け入れられない」

「……それは、辛いなぁ」

 

 静かに言う四葩の姿に、申し訳無さが湧く。コレで拒絶されても、仕方が無い事だと思ってる。相手の善意を踏み躙る事なのだから。

 

「でも、妾には丁度よいのじゃ」

 

 四葩の口調が普段のものに戻った。

 

「妾は変わらず、タタラとエテルの関係が好きなのじゃ。そこへ偶に、タタラが妾に時間を割いてくれるだけで嬉しいのじゃよ」

 

 優しい笑みを浮かべる四葩が居た。本当に強いヒトだ、こんな風に相手を思いやれるなんて。

 

「すまんが、妾からも一つ頼みを良いかの?」

「ああ、言ってくれ」

「口吻を願いたい、この国では誓いの意味もあるのじゃろ?」

「……分かった」

 

 葛藤は一瞬、それでもその言葉に応える事に決めた。

 そっと頬に手を添えて、顔を近付ける。緊張か恐怖か、四葩が目をギュッと瞑る。その表情に可愛いと感想を抱きつつ、唇を重ねた。なんでもない、ただ触れるだけのキス。5秒程合わせて、離れる。四葩は目を開き、やや俯いて指先で自分の唇に触れる。

 

「……不思議じゃの。ただ触れ合っただけだと言うに、胸の奥が浮ついておる。顔が熱い……泣いちゃいそう」

 

 口調が作りきれず、本来のものに戻ってしまう四葩が可愛と思ってしまう。

 

「泣くなら胸を貸すが?」

「……なら、少しだけ」

 

 胸に軽い衝撃。ふわりと四葩の髪が宙に踊った。

 エテルよりも低い体温に今更気付いて、そっと温めるように抱きしめた。緊張しているのか身体が硬い、そして胸元が濡れていく感触は気にしない。今は四葩が笑えるまではこうしておこう。

 

「……抱けーでござるっ! だけもが!?」

「お前はどうしてそうなんだ、駄狐!!」

 

 駄狐がノスタルジックな爺さんみたいな叫びを上げた瞬間、天狗さんの声が響いた。視線を向けると、口をアイアンクローよろしく片手で正面から塞がれた駄狐と押さえている天狗さんが居た。

 四葩は二人の姿を見て驚き、やがて大笑いし始めた。空気が何時もの日常に戻る、四葩の身体から緊張が抜けていくのが分かった。離れようとする気配を感じたので、最後に少しだけ力強く抱きしめて髪をひと撫で。そして身を離す。護衛二人へ振り向く直前、四葩が俺に撫でられた所に触れて顔を赤くしているのが見えた。

 

 

「……ちゃんとトラッちゃんを受け入れられたんだね、タタラ」

 

 リビングに戻った俺達を見て、エテルが察した様子でそう言った。やはり一生勝てる気がしない相手だな。

 

「すまんのじゃエテル、お主ら二人の間に挟まるような事になって」

「ううん、私が許可したことだからね。でも! お嫁さんは私だからね!!」

「……この街ではエテルに譲ろう。しかし、陽出國にタタラを連れて向こうで式を挙げれば妾も妻じゃ!」

 

 うん、何かバチバチにやりあってない?

 おかしいな、俺の言った条件どうしたよ四葩?

 

「わ、私はタタラにドレスのデザイン考えて貰ってるもんね!」

「妾とて向こうで着る白無垢を用意して貰う上に、紋付袴も仕立てさせよう!」

「子供の名前だって考えて貰ってるもん!!」

「そんなの、妾だって考えるのじゃ!!」

「……御二人は何故競っているのですか、マスター?」

「女の考えが俺に分かるはず無いだろ、非モテなめるな」

「あれ程クリティカルに口説くマスターが、女心を分かってない……?」

「あれれーおかしいでござるぞー?」

「おう、文句があるなら言ってみろ」

 

 エテルと四葩のキャットファイトを他所に、何故かタッグを組んで俺を貶めてくるダリアと駄狐に対して抗戦の構えを取る。

 

「私のおっぱいはタタラが育てたんだもん!」

「わ、妾だってそのくらい……その……無理じゃ」

「おう、いきなり俺に飛び火させるな」

「マスター、私のスレンダーラインは希少価値をもつステイタスです」

「悪いが、お前の身体に性的興奮は覚えない」

「ご主人、ストレートにひどいでござるよそれは」

 

 あの駄狐が語録を使わずにダリアへ同情している、言われたダリアは完全に停止してしまったようだ。

 

「妾にも育つ未来が……可能性があるはずじゃ!」

「ごめん、夢魔の力で見てみたけどトラッちゃんが成長する事は無いみたい」

「そんな、おっぱい聖人のタタラを満足させてやれぬというのか……」

 

 地面に膝をついて項垂れる四葩、いやお前なら多分そのサイズでもヤれるから安心してくれ。

 

「あーっと、ダリアについて説明しようと思うんだが」

 

 思い思いに行動していた面々が一斉に此方を向く、いつの間にか移動していたダリアが俺の隣で心做しかドヤ顔を決めている気がする。コイツ、無表情な割に感情読み易いな。

 

「四葩、聴取するって言ってたがどれだけ聞いた?」

 

 俺の言葉に対して項垂れていた姿勢を正し、真っ直ぐ視線を向けて答える四葩。

 

「分かった事はこの『ワールウィンド』に来る直前に何者かの襲撃を受けた事、その際に生命活動に必要な核を奪われた事、転移して来たことは偶然であること……タタラに命を救われた事じゃな」

 

 基本的な事は教えている、と判断して問題は無いだろう。

 

「取り敢えず、都市長が病院に来て永住権を取得したいと言うダリアの後見人になってくれた。その際に永住権を取得したいと言うダリアに一番手早く手にする方法として『ワールウィンド内の住人と縁故を結ぶ』事にした。俺の義妹として書類を提出してダリアが俺と同じジュロンを名乗ってる……コレが現状だな」

「……なんで永住権が欲しかったの?」

 

 俺の説明にエテルが疑問を持ち、ダリアに質問をした。

 

「私が助けられる条件だったからです」

「……え?」

「ダリア、端折りすぎだ。ちゃんと説明しろ」

「Yes my Master」

 

 コイツ、妙にエテルに当たりが強い。俺の婚約者って所が気に入らないのか?

 流石に目に余るなら赦さんぞ。

 

「私が生存する為にはマスターが持つ『錬金術師の卵』が必須でした。そして、マスターが『錬金術師の卵』を譲る条件が『幸せになれ』でした。私は『幸せ』を知らない故、探す必要が有ります。その為にマスターであるタタラ・ジュロンと共に居る事を選択しました」

「ふむ、その為の『永住権』と『ジュロン姓』か。筋は通っとるのじゃ」

「……ダリアもタタラに救われたんだね」

「……エテル様、貴方もマスターに救われたのですか?」

「うん、そうだよ」

「……それなら仕方ないですね」

「うん、仕方ないよ」

 

 ダリアの話を聞いて、エテルが納得した。ダリアもエテルの言葉で何かを察したらしく、シンパシーを感じているらしい。

 

「……最初にマスターに救われ、共に在るのならば仕方が無いですね。エテル様、貴方を正式にマスターのパートナーとして認めましょう。以後奥様とお呼びしますのでご了承下さい」

「え、あの……うん」

 

 奥様呼びに面食らったエテルだが、顔を赤くして俯き了承の意を伝える。マスター権は俺にだけで、エテルはサブとしての登録は無し、といったところか。

 

「取り敢えず、俺の心配事を伝えさせて貰っていいか?」

「……心配事、かの?」

「ああ、ダリアにも通じる事だ」

「私にもですか、マスター」

 

 四葩もダリアが反応した俺の心配事。

 

「ダリアを襲撃した犯人が、ここに来る可能性だ」

 

 俺の言葉にダリアが息を呑む。失念していたのだろう、獲物を追いかけて来る可能性を。

 

「ダリアは相手についての記憶を、本来の核を奪われた際に無くしている。相手の種族もなにも分からないが、少なくとも機巧乙女を問題なく無力化出来る戦闘力を持っているのは確かだ」

「ふむ、場合によっては妾達も危うい相手か」

「マスター、その場合私が対応します」

「『オウトエイズル』一つで何とかなる相手か? 当たれば必殺に近いが、当て難さも相当だぞアレは」

 

 そう言ってから考える、対空迎撃用に魔導銃も必要だろう。高火力で長射程の魔導銃、俺が作れる物はやはりアレだろう。

 

「ダリア、魔導銃の狙撃型は扱いきれるか?」

「愚問です、マスター」

「ならアレもイケるよな……エテル、ダリアに『エリンジウム』を見せてやってくれ」

「うん、分かったよ」

 

 俺の言葉に応えて、エテルがインベントリから魔導式加速砲『エリンジウム』を取り出してダリアに渡す。

 ダリアはエリンジウムを調べ、やがて興奮し始める。

 

「コレは! なんと素晴らしい! 今迄見たことが無い特殊性! 炸薬では無く、魔術による弾頭の多段加速により初速が圧倒的になっている!! コレも……コレもマスターの発明ですか!?」

「ああ、そうだ。コイツをもう一丁作るから使ってくれ」

「Yes my Master!」

「……大興奮じゃの」

「ああ……それはそれとしてコイツの魔導武具を用意する、人の手で作られた物の性能を上げるって言ってたからな。必要なのは魔力砲型の魔導銃と近接武器の魔導剣……それに魔導鎧だ、俺もまた潜って手伝うよ」

 

 俺の言葉を聞いて難しい顔をする四葩、何か心配事だろうか。

 

「それは良いのじゃが……ダリアは大丈夫なのかの? 病み上がりじゃろ?」

「……コイツ、多分ステータスだけなら現在の『ワールウィンド』で一番だぞ」

 

 心配事は真っ当な物だったが、生憎とダリアのステータスを見た俺は欠片も心配していない。『オウトエイズル』を使わなくとも、普通にぶん殴るだけでもカラムスさんやおっちゃんに大ダメージを出せる。

 探索者登録が済んでないので連れては行けないが、家の留守番は任せられるだろう。

 

「ふむ、それ程までか?」

「素の物理攻撃が四葩の3倍、物理と魔法防御がタチアの3倍って言えば凄さが分かるよな?」

「ふむ、過剰戦力じゃな」

 

 俺達が挑んでいる階層迄なら確実に過剰戦力だ、今のタチアが突っ込んでいくスタイルだけでも余裕なのにダリアを連れて行くのは戦略シミュレーションから無双ゲーにジャンルが変わる。

 俺が知る中でダリアを正面からの殴り合いで何とか出来るのは『天使長』くらいのものだろう、あの人基礎ステータスの上限500だった上にスキルも乗るし。挙げ句、武器有りでも効果が解明出来てない剣も有る。50階層のクソボスをギミック無視して斬り殺してるのだから意味不明過ぎる火力だ、『オウトエイズル』を叩き込む前にダリアが両断されるのが先だろう……ゲーム時代はどう言う理屈か遠距離攻撃を無効にするしな『天使長』。

 

「魔力放出系の武器が出来たらダリアも連れて、31階層以降を探索しようと思う。普通の『ワイト』だけなら良いが、レアの『リッチ』が出て来たらダリアの火力頼みになるだろう」

「それ程までか、『りっち』とやらは」

「魔法を使う物理耐性持ちのゴーレムみたいなもんだからな……」

「成る程、面倒この上ないのじゃな」

 

 比較的通る魔法でも防御が60越えてるからな、弱点の火属性や特効の聖属性攻撃が無いと高い体力と魔法攻撃も相まってゲームでは詰みかねないレベルだった。

 

「新規設計は今ちょっと出来ないから、従来品の作成かカスタマイズに落ち着くな」

「……何故新機軸の物を作れないのじゃ?」

「神様に止められてる」

 

 下手したら異世界追放だ、エテルや四葩を置いてそうなったら悔やんでも悔やみきれない。

 

「遂にタタラの出鱈目さもそこ迄行ったか……」

「ある日めっちゃ明るい声で『このままだと世界から追い出されます』とか神託貰ったら笑うぞ?」

「妾としては笑えんがな、お主を失うなど」

 

 少しだけ、内心を零す四葩。強いと思っているが、やはり繊細さも持つ女の子だな。

 

「何かしら乗り越える目処が立つまでは自重するよ」

「そうせよ、お主のハッチャケで沢山の人間の胃が破壊されておるからの」

 

 主に都市長とかかな。

 

「ま、以前作った物を使ったり再度作ったり応用したりは問題無さそうだから取り敢えず新しい『卵』の作成と『魔力炉』の完成もさせなきゃならないしな。それに自警団に渡す新型トリモチランチャーの試作品の用意もしなきゃだし。なんだかんだ仕事が尽きない」

「苦学生じゃの、タタラ」

 

 俺の状況に四葩が苦笑いする。次期工匠長になってから仕事がどんどん増えてる気がするが、俺はまだ学生なのだ。もう少し青春したい。

 エテルの存在で性春には事欠かないが、本当は水着デートとかしたいんだよな……この近くに水精が豊富で綺麗な湖とか無いから諦めてるが。

 

「所でマスター。私の装備について話しているようですが、私を交えずに話すのは違うと思うのですが?」

 

 ダリアが『エリンジウム』をエテルに返したのだろう、此方へ寄ってきた。メカ属性だからかこの手の話題は外すつもりは無いんだろうな。

 

「そうだな、ちょっと構想は有るんだが一通り聞いてくれるか? それと、魔導鎧も見せるから俺の改修案を聞いた上で希望を言ってほしい」

「Yes my Master」

「エテル悪い、ダリアに諸々見せる為にちょっと工房行ってくる。夕飯の用意頼めるか?」

「いいよ」

 

 エテルに了承を貰い工房へ、設備を見たダリアが目を輝かせている。

 

「マスター、見たことも無いモデルの設備が!」

「全部俺が作った俺用の設備だからな、外では見ないだろうさ」

「コレだけでご飯5杯はイケそうな光景です!」

「変態かな?」

 

 機巧乙女ってそういう種族なのだろうか?

 

「さて、先ずは魔導鎧からだな」

「む、私にそのような物は必要無いのですが。嵩張るだけですし」

「取り敢えず物を見てくれ」

 

 そう言ってインベントリから『黒鐵の鎧』を取り出してダリアの前に置く、するとダリアの目が鋭く細まる。

 

「未確認の装甲素材を確認、データ参照に類似1件」

「ああ、コレは俺が子供の頃に作った失敗作の素材の魔鉄だ。鉄の2倍の性質を持つぞ」

「……マスター、そんなものまで作っていて何故学生をやっているのですか?」

「卒業資格の欲しさから」

 

 表向きの理由を言っておく、『クラフト』関係の前世知識とのすり合わせは言う必要は無いだろう。

 

「……布かと思いましたが、コレも金属素材なのですね。此方も未確認の素材です」

「コレも子供の頃作った失敗作の形状記憶合金と、それを応用した人工筋肉だ」

「本当に何故マスターは学生を続けているのですか? 然るべき研究機関で新規技術を作るべきだと思います」

「俺が出来るのは『クラフト』と『錬金術』が主で、研究は趣味の範囲だ。専門でやるには頭の出来が足りないさ」

「……此等を作っておいて?」

「狙って作れたのなら良かったが、生憎と全て失敗作だ。応用出来る技術だったから良かったが、そうでない可能性だって高かったんだ。この鎧で期待通りに作れたのなんてこれくらいだ」

 

 俺は言いながら鎧を開き、内部の術式を見せる。ダリアは目を細め、正体に気付いたのか目を見開いた。

 

「着用者の魔力を循環させて魔導鎧を稼働させる術式!? こんな物も作ったのですかマスター!」

「コレは自分で研究して作れたから成功作だな、霊核を必要としないから技術的ハードルが下がってコイツみたいな簡易魔導鎧なんかも作れるようになったし」

「本当に何故、この都市はマスターを学生にして遊ばせているのか……」

「ひどい言い草だな」

 

 そりゃ、都市長には『卒業したければ言え』なんて冗談を言われたが。

 

「ま、この鎧をベースにダリア専用の魔導鎧を作成しようと思ってな」

「それは有り難いのですが、砲撃機能の無い魔導鎧は魔導鎧なのでしょうか?」

「簡易の此奴には動力無くて着用者の魔力依存だぞ、砲撃機能なんて積んだら干からびるわ」

 

 『卵』のお陰で大分作りやすくはなったと思うけどな、希少な霊核よりも数さえ揃えれば作れる『卵』の方が魔導鎧作成の難易度は下がる筈だ。

 俺は魔導ワードプロセッサを取り出して、『黒鐵の鎧』の発展案を表示する。

 砲撃機能、タチアから読み取った飛翔術式、『浮遊石』の浮遊術式、流体魔石式ジェットエンジン、魔力結界式空力制御機構を搭載した現状俺が作れるハイエンド魔導鎧。

 

「開発名『グラジオラス』、俺が目指している強襲型魔導鎧だ。砲撃機能を省いた下位モデルとして『サーシアム』の設計も終わってる」

「……」

「……おい、ダリア?」

 

 俯いてプルプルと震えているダリアを見て不安になる、気に入らなかっただろうか?

 

「素晴らしいです、マスター!!」

 

 顔を上げたと思ったら物凄い声量で言われた、思わず耳を塞ぐ。

 

「このような魔導鎧を作ろうとは! ああ、何故今ここに実物が無いのか!? 強襲型魔導鎧、そんな物は今迄無かった! 精々が乗馬するに留まっていた機動力を、自ら空を飛び解決する!? いったいどのような発想力が有るとそうなるのですか!! 魔力結界式空力制御機構だけでも凄まじいのに、天使族の飛翔術式に浮遊石の浮遊術式! 空を飛ぶ為にこれ程の物を用意する、その執念!! まさに!! 天才!!」

「お、落ち着けダリア、怖いから」

 

 大興奮と言った具合で熱弁してくる、『オウトエイズル』の時もそうだったが魔導具関連で暴走し過ぎである。

 

「問題は、フルスペックで作成しようとすると素材が致命的に足りないんだよ。流石に人工オリハルコンとかだと制御機構にするにも伝達率が貧弱だし、ミスリルもかなり使うからな」

 

 計算上は20kgくらい使う、一応蓄えが何故か有るが内部機構を全てミスリルで作って魔力の伝達率を高めなければならない。それに合わせて、意思による制御を容易にするため10kgはオリハルコンも必要になる。霊核を必要としなくても作る上でかなりの希少素材を集めなければならない。

 

「砲撃機能の弾頭はどうなのですか!?」

「い、一応作ろうとしてるのはこれだけど」

 

 迫ってくるダリアにビビりながら、設計図を呼び出す。一般的な弾頭に近いが、その中には流体魔石を積載している。直撃して燃えたなら大ダメージ確定だろう。他にも流体魔石の代わりにトリモチを積んだ物も有る、捕獲目的では此方が活躍する筈だ。

 

「素晴らしい、本当に素晴らしい! コレがマスター! 悪魔の力!!」

「勝手に悪魔にしないでくれ」

 

 天災とは言われて来たが悪魔は初めてだぞ。

 しかし、そろそろ夕飯が出来るだろうにまだ魔導鎧だけでコレだ。オウトエイズルに代わる近接魔導武器の『チェーンソー』とか『魔力剣』の話も出来てないが……後日に回すか?




【好感度発表ダリア】
「機巧乙女ダリア・ジュロンが、タタラハーレムの好感度を発表します。今日は此方」

『虎熊四葩:100/100』

「元々は80〜95の辺りで踏み止まっていた所を、マスターが奥様の言葉を得て踏み出した為に達成した模様ですね。元々あと一押し有れば完落ちしていたのを鋼の理性と矜持で保っていた所、マスターの言葉で我慢をやめた形になります。身体の関係は少なくとも騎士学校の反乱後、さらに一度帰省した後になります。それまではキスをするたびに真っ赤になる鬼っ娘を提供するに留まります。なにやらメモには『アンケートがブッチギリの探索パーティハーレムなのでネタを仕込む必要が出た』との事です……富と岡と義と勇を失いましたね」

この小説は……

  • エテル・ネル=バーラルとの物語
  • 虎熊四葩との物語
  • 騎士タチアとの物語
  • 探索者パーティハーレム
  • 聖人カラムスとの物語
  • 都市長との物語
  • 熟女ハーレム
  • シャムスとの物語
  • エストとの物語
  • 後輩二人との物語
  • 探索者ローガスとの物語
  • 『天使長』に愛されて夜も眠れない
  • 異世界追放
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