※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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コミュニケーションパート

 ゲーム『深く深い闇の先で』を出した会社の作品には共通している世界観が有る。その内に有るものが魔法や武器の名前だったり、信仰されている神だったり、国や地域だったり、登場する種族だったりだ。神話や伝承に残る神や魔神等の逸話はどの作品でも語られる場面が有り、転生した後で義務教育の一環として学んだりもした。

 そして、クリア後のイベントの内容も共通していたりもする。それがゲーム会社のマスコットである天使の存在だ。

 恋愛アドベンチャー以外の作品で彼女達が住まいに帰るための鍵を探したり、大事な皿が割れたので代わりを一緒に探したり、物凄く危険な神器が持ち出されたので回収に降りてきたりと様々だ。

 天使、と言っているが設定を観る限り世界観的には女神に相当し、過去作で最強とされる主人公等が苦労してやった事を片手間にこなしたり、気軽に空間というか次元をぶった斬ったりと意味不明な力を発揮する。

 イベントを終了させるとクリアまで仲間になってくれて、しかもどの作品においてもトップクラスの戦闘力を発揮する。

 唯一『エロゲーなのにエロ無ぇじゃん!』な事に不満が出たくらいだが、ゲーム会社としても思い入れの塊らしく最終作である『深く深い闇の先で』においてもエロシーンは無かった……その代わりかオールクリアをした時に歴代主人公や天使達が全員集合で感謝を伝えてくるスチルは中々に涙腺に悪かった。

 そんな天使だが、最初期のゲームの頃から登場し恋愛アドベンチャーの物にも顔出ししている。

 とはいえ、コンフィグや用語説明等のシステムウィンドウだけなのだが。逆説的に、こういった世界の理へ干渉可能で全てに対して説明出来る知識を持つ高位存在、と言えなくも無いのだ。

 目の前に居るのはその筆頭、何でも代表取締役の癖をぶっ込み生まれたと言われる最初期の天使。プレイヤー達からは『天使長』と呼ばれ、公式からもその呼び名を認められた者だ。

 

「お久しぶりですね、要件は武器の整備ですか?」

 

 気安く声を掛ける、幼い日の邂逅から目前の存在は畏まった態度を嫌がりフランクな対応を望んでいる。あくまで目上に対する様な口調なら目溢しされるが、他の天使族が望む様な平伏とかをされると泣きそうになる。初邂逅の時にそういった態度を取ろうとして、ガチ泣きされた実績が俺にはあるのだ。

 

《はい、今日も宜しくお願いします!》

 

 俺の言葉に一つ頷いて、背後に有る十三本の剣の中央に有る一本……丁度首の真後ろにある柄を握り此方へ差し出してくる。

 薄らと光を放つ、刀身から柄尻まで曇りのない白銀。一切の装飾が無く、しかし一目で分かる完全なバランスで成り立つ両刃剣。銘は分からない、ゲーム時代でも『天使の剣』としか称されて無かった物で……幼い俺が作ってしまった物。

 ゲーム『深く深い闇の先で』における彼女達天使のシナリオは、それまでのイベントとは全く違う物だった。

 それまではほのぼのとした、基本世界観が殺伐とした作品群の中で清涼剤となっていたのがクリア後解放される天使イベントなのだが、どういう訳かラストを飾るこのタイトルの時だけ邂逅の仕方から違ったのだ。

 全ては夜更け、原作主人公が町中で血の匂いを嗅ぎ取った事から始まる。商会へ依頼の品を納品した帰り道、血の匂いを追った先に居たのが血に染まり倒れ伏す『天使長』だった。

 急いで拠点へと連れ帰り、何とか治療をしたが……何と彼女達の特徴たる翼が失われてしまったのだ。しかも消失したとかでは無く、何者かにもぎ取られた形跡が有り、その影響で『天使長』は力を失ってしまったのだ。

 翼を奪った犯人を探す為、そして他の天使達の無事を確認するために原作主人公は『天使長』と共に行動をする……そんなシナリオだった。結局、犯人を捕まえ翼を取り返したは良いが、『天使長』は翼を失ったままになってしまうという後味の悪い終わり方だった。

 俺が出会ったのはそんな状態の『天使長』であり、時系列的には出会えるはずの無い未来の姿の彼女だった。背中に戻せない翼を抱いて、一人涙に暮れる姿が余りにも痛ましく……気付けば声を掛けていた。

 当人も何故時を遡り俺と邂逅しているのか分かってはいなかったようだが、本来そうなった際に何とかする為の力は既に失われている。

 そんな姿を不憫に思い、思わず俺が取った行動は過去に存在した同じ会社のゲームから彼女の専用武器を再現する事だった。

 今思えば何故そんな思考をしたのか、しかもクラフトのスキルレベルは最低値。本来なら最大時にしか作れない武器の筈だ。

 なのだが、作れてしまったのだ。初代RPGに登場した彼女の最強装備が。作成する為には彼女達のイベントをクリアし、報酬としてその羽を受け取り素材とする事で完成する。そういった流れなのだ。

 俺がやったのは、未来で犯人を捕まえる時に使っていた剣に彼女の翼を使いクラフトを施した結果……まさかの武器が出来上がった。

 今手に取っている『天使の剣』と、彼女の背に侍る一二本の剣は1セット。本来の『天使の剣』はこんな仕様では無かった。

 そして、この十三本の剣は失われた『天使長の翼』の役割を果たした。彼女は天使の力を取り戻し、無事自分の家へ帰れたのだ。

 

 そんな出会いからかこの『天使長』、超越種に有るまじき頻度で地上に降りて会いに来る。

 

 地上で流通している金銭は所持していないが、希少な素材を金銭代わりに差し出して来ては武器の整備を頼んでくる。ぶっちゃけると、彼女自身でもあるこの『天使の剣』に整備は必要無いと思う。しかし、見てほしいのだと差し出される故に刃や柄等を点検する。何となく『天使長』なりのコミュニケーションの取り方なのだろう、もしかしたら地上へ降りる為の言い訳なのかも知れない。

 

「詳しく見たいので、工房まで一緒して貰っていいですか?」

《はい、わかりました!》

 

 工房で様子を見る為に『天使長』を伴って屋内に入る。

 作業机に置き、魔法陣を起動した際に見えたのは内部における魔力の淀みだった。余りにも意外な結果だが、見付けたのなら整備をするしかない。彼女にとって、俺は専属のクラフターなのだから。

 魔石で調整しようとするが、出力不足で内部に干渉が出来ない。天使族の霊核が有っても恐らくは不可能だろう、魔神の神格は根本的に相性がよくない。考え込んで居ると『天使長』が心配そうな表情をしているのが見えて、天啓の如く一つのアイテムを取り出す。

 インベントリから取り出したのは1枚の羽、この『天使長』が来る度に何故か落ちている『天使長の羽』だ。自らの魔力を通し、羽を『天使の剣』に当てる。すると内部の魔力が正常に流れ始め、作成した当初より効率的な流れへ変わっていく。

 

 あれ、コレもしかして強化じゃね?

 

《不思議ですね、前よりも手に馴染む感じがします》

 

 俺が返した『天使の剣』を手に、軽く構えを取った『天使長』は驚いている。余りにも気になり、情報量で脳がパンクしかねないのを覚悟して『天使の剣』を鑑定する。

 

 ■■剣『■■の剣』+1

 物理攻撃/250+25

射程/1〜■■■■

 特殊/『貫通Ⅴ』『吸命Ⅴ』『吸性Ⅴ』『■■■専用』『■■特■』『■命■断』

 

 瞬間、理解出来る範囲の情報で意味不明な性能が出てきた。

 読み取れる『貫通』『吸命』『吸性』はそれぞれ『確率で防御無視』『与ダメHP吸収』『与ダメMP吸収』である。ゲーム知識が間違って無ければ『貫通Ⅴ』は確定で発動だった筈、作中武器でそんな物存在して無かったのだが。『吸命』と『吸性』のⅤはダメージの50%を吸収する、何方か片方なら確か原作でルートに入ったヒロインの最終装備で取れた物だ。読み取れないが『■■■専用』とは『天使長専用』だと思う、というかコレが天使長以外に使えたら怖い。

 その後の二つは完全に分からない。特効が付くものか、特性を得る物か。それが何に対してかのヒントが無い。そして最後のは前世知識にもこの文字列に該当するスキルが無い、完全な未知である。

 そして何より、基本性能がおかしい。ゲーム時代の『天使長』の最強装備でも攻撃力は最大強化後でも150だった。コレは全武器で比較しても最高火力で、次に高い物が別の天使の最強装備で130だった。それなのに基本攻撃力が250とはいったい。あと、剣の射程も何やらおかしい。何故最大射程を読み取れ無いのか。

 次々に疑問が浮かぶが、鑑定による情報で脳が過剰に動いたのか鼻の奥でツンとした感覚と錆びた鉄の様な匂いがした。思わず俯き、鼻骨を押さえて鼻血の流出を防ごうとする。

 そんな俺に『天使長』は近付き、手で触れて来て魔力を送って来た。体内の不調が取り除かれ、鼻血も治まっていた。おかしい、元々の『天使長』は完全な前衛型で回復魔法など使えない筈。少なくとも出会って今まで回復魔法を使っている姿は見た事が無い。

 

「ありがとう、ございます……?」

 

 顔を上げて礼を述べ際に見たのは、不思議そうに己の右手を見詰める『天使長』だった。

 

《……何で回復させられたの?》

「自分でも分かって無いんかい」

 

 もしかして、武器強化の影響だろうか? そもそもあの『天使の剣』自体が『天使長』そのものでもあるし、それを強化したら本体も強化されたとか? 完全に謎な現象である。

 

「その、まだ時間は大丈夫ですか?」

《え、はい。まだ全然余裕は有りますよ》

「なら聞きたい事が有るんですが」

 

 原因不明なスキル取得は脇に置き、彼女に会いたかった目的を果たす為に質問を始める。少女がレベルアップした時の発情の原因と、その解決策。この死活問題を解決しなければ、俺の未来はミイラのそれだ。

 

《あ、それは多分夢魔として不完全だからですね。取り敢えず『性魔術』を取得すれば弱まりますよ》

「俺の苦悩は何だったんだ」

 

 あっさりと答えが返ってきてちょっと困惑している、今朝少女が言ってたスキル取得に付いてはもしかしたら本能的に解決策が分かっていたからかも知れない。

 いや、この世界の設定を知っている人物からの確定情報でも無いととても取らせる気には成らなかったが。

 

「スキルレベルが上りきっててくれれば、レベルアップを待たずに安全は確保出来るんだが……」

《干物が先かのチキンレースですね!》

「不穏な事を言わんで下さいよ……」

《でも、学生さんっていう立場では子供の面倒は見れないでしょう? 夢魔の特性が強くてある意味助かりましたね》

「え、なにそれ」

 

 夢魔という種族は性を糧に生きている関係上、膣内に放たれた性を魔力に変換して吸収出来るのだそうだ。暴走状態だった少女に幾度となく膣内射精をしているのに妊娠を回避出来ていたのはそういった理由らしい。マーキングをする程に好意を向けた異性に対して妊娠確率が跳ね上がるというのも夢魔が持つ種族特性なのだそうだ。

 

「あれ、そうなると暴走状態じゃ逆に妊娠しやすいのでは?」

《レベルアップによる器の拡張に必要なエネルギーが不足していた影響の飢餓状態ですから、栄養接種が最優先になります。そうすると新たな生命を宿す様な余裕は母胎に有りませんよ》

「なんだこの綱渡りみたいな流れ……」

 

 次々に明かされる衝撃の事実に段々と胃が痛くなって来た。暴走した翌朝には落ち着いたというより、俺から搾り取ったから翌朝は問題が無くなったという事になる。

 

「あれ、コレ俺が居なかったらどうなってたんだ?」

《好きでも無い相手を生かそうとも思わずに吸いきっていたでしょうね、多分吸血鬼騒動みたいになってたのでは?》

「想像した事は有ったけど悪夢でしかない……」

 

 過去作主人公辺りなら性魔術勝負で勝って隷属させられていたかも知れないが、一般人というかモブではただの餌扱いだろう事が想像出来る。血筋としての潜在能力から、下手したら高位の悪魔族並の強さを得れていたかも知れない。

 

《そろそろ時間なので帰りますね?》

「あ、長々とすみません。色々教えて貰って有りがとうございました」

《いえいえ! 私もお喋り楽しかったので!》

 

 日の位置を確認した『天使長』が帰宅の意思を見せる。必要な情報は得たのでこれ以上拘束するのも悪いので礼を述べて見送る事にする。

 

《それではまた、剣の調子が変になったら伺いますね!》

「分かりました、その時もまた誠心誠意整備させて貰います」

《はい! お邪魔しました!!》

 

 にこやかに笑顔を見せた『天使長』はそのまま転移門を開き、帰って行った。次に顔を見るのは果たして何ヶ月後になるやら。

 そういえば慣れていたので気にして居なかったが『天使長』を筆頭にマスコットの天使達は人間と同じ声帯を持っていないのだった。過去作の主人公達もそうだが、あくまで彼女達の表情や身振り手振りで伝えたい事を察していた。

 対して俺は『天使長』だけにしか出会っていないので他は分からないが、少なくとも彼女の考えている事を思念として受け取れるのだ。理由は分からないが、恐らくは先天的な体質なのだろう。コレが有ったが故に『天使長』と仲良くなれ、バーラル氏の残留思念と対話が出来たのだろう。

 

「ただいまー!」

 

 少女の声が玄関の方から聞こえて来た、早速今日知った事実から次のスキルについての話をしなくては。




『救われぬ者』
両親を奪われ、その身をも凌辱された女性が奪った相手に留まらず『ワールウィンド』と言う都市そのものへ復讐を実行したと言うリメイク版での追加イベント。
両親を奪われる切掛となった権力者にその身を汚され、血の暴走の果てに権力者とその邸宅に住んでいた全ての生命を吸い力を得た一人の女性。夢魔の母親と悪魔の父親から受け継いだそれぞれの特性を駆使し、都市内で幾多のミイラを生み出し大量殺人鬼へと成り果てた。事件解決の為に主人公とその仲間達は一丸となって魔王に至った女性を討伐する。
両親の死に様や女性が受けた凌辱が無闇矢鱈と克明に描写され、プレイヤーからお気持ちメールが大量に送られる事となったイベント。なお、どうやってもゲーム内で女性を救うことは出来ない。

『天使長』
エロは無いです。

主人公とヒロインに名前って要りますか?

  • 両方に要る。
  • 両方とも要らない。
  • 主人公のは要らない。
  • ヒロインのは要らない。
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