※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中。


乙女は剣を振るう。

「高度に小型化・効率化された魔導モーター、しかも小型化を物ともしないハイパワー。一般的な物より長く重く作られたガイドバー、それ故にモーターの稼働に際しての反動を抑制する無駄のなさ。鋒両刃造りを思わせ、ハバキに似たガード。その正体は内部で刃を整えさせるクリーナー。刃は魔鉄、一つ一つが鋭くその斬れ味はミスリルすら削り斬る。何よりも……私の手に合わせて握りやすくしたグリップに愛を感じます!!」

「担い手に心地よい使用感を持ってほしいって願いは込めたが愛はねぇよ」

 

 以前と似たような語りだが、以前のような技術的な面は薄いらしい。ま、『オウトエイズル』や『エリンジウム』は完全に新規構造だったからな。コイツはあくまでマイナーチェンジモデルだ。本気で再設計するならガイドバーをリニアレール構造にして回転数を桁外れにしてるし、何なら刃一つ一つを鍛造したミスリルにするだろう。

 

「しかし、何故マスターがこの程度のマイナーチェンジに?」

「啓示が下って下手に新機軸の物を作れないんだよ、異世界に追放される」

「ならば、私はその旅路にも付き合いましょう」

「出来るか分からない事を言うな」

「それは無理です」

「なんでだよ」

「私に新たな核をくれたマスターの条件が『幸せになれ』ですから、マスター無しでは『幸せ』にならないと判断しました。ならば出来るか否かは問題ではなく、やるか否かです」

 

 流石に覚悟決まり過ぎだと思う。

 仮に俺が異世界に追放されたとして、俺一人がされるべきだ。

 俺がやった事の責任は俺自身が持たなければならない。

 

「何か覚悟を決めているようですが、甘いですよマスター」

「へぇ、何がだ?」

「貴方がこの世界から追放される時、抗う者も共に進もうとする者も一人では無いのです」

 

 そう言って俺の両隣を見るダリア、俺の両隣には今エテルと四葩が居る。

 

「……タタラ、啓示の話聞いてないんだけど?」

 

 そういえば話して無かったなと、エテルの低い声で思い出す。

 

「せっかく想いが通じたのじゃ、無理無茶無謀を踏み越えてでもタタラと共に居るぞ」

 

 四葩はそう言ってそっと手を握ってくる、左右で真逆の温度を放たれて対消滅が起きた挙句そのエネルギーで俺が消滅しそう。

 

「タタラ、説明して」

「……わかった」

 

 一晩掛けて仲直りしたのにいきなりコレか、いやまぁ自業自得なのだけど。

 

「タイミングとしては『錬金術師の卵』……ダリアの核が出来た後だ」

「……その時になんて啓示が有ったの?」

「このままだとこの世界から追い出されるから気を付けてってくっそ明るい声で」

「……それ、タタラが追い出されるの望まれてない?」

「望まれてるのか……いや、違うと思いたい」

 

 流石に『天使長』が俺の追放を喜んでたら人間不信になる。

 いや、相手は人間じゃなくてシステム寄りの天使だが。

 

「そんな訳で、どれだけの物を作ったら弾き飛ばされるか分からないから発明と開発は自重中……アイデアは有るけどな」

「やっぱりタタラはタタラだよ……頭の中は『クラフト』の事ばっかり」

 

 呆れた様子でそう言ったエテル。いや、待ってほしい。

 

「言う程クラフト一色か? 多分、エテルとかの事を考えてる時間もかなり多いぞ?」

「妾の事で随分と悩ませたようじゃの?」

「嬉しそうに言うなよ四葩……」

 

 俺の反論にニヤリと笑った四葩が言ってきた言葉に、俺は項垂れながら答える。直近において最大規模で悩んだ事象だから否定も出来ない、今は笑ってくれているから悩んだ甲斐は有ったのだろう。

 納得はし難いが。

 

「結局、『錬金術師の卵』が悪かったのか積み上げて来たものが不味かったのかが判然としなくてな。既存の物に手を加える程度ならまだ大丈夫そうだ」

「話を聞いた私は全然大丈夫じゃないけどね?」

「だから話したく無かったってのも有る、回避方法も見付かって無いしな」

 

 ただ、何となく最近身体の感覚が変だ。悪い訳じゃなくて、触れた物をより明瞭に捉えられるというか……何かこの世界へより確かに根付いたというかそんな感覚がするのだ。

 時期は何となく、カラムスさんに総本山へ連れて行かれた後くらい。その頃から偶に世界との繋がりが強くなるタイミングが有る。

 

「マスターは後悔していますか?」

「反省はしてるけど後悔はしてない。だって、後悔は──」

 

 ダリアを見て、言葉を続ける。

 

「お前を助けた事が間違いだったって事になる。それだけは絶対に無い」

「っ!?」

 

 表情の動き難いダリアが目を大きく開く。無意識だろうか胸元に手を運んでグッと握り込んでいる。

 

「……分かりました。この機巧乙女ダリア・ジュロンは、例え創造主たる機械神様に反そうともマスターと共に在ります」

「そこまで思い詰めるなよ」

「いいえ。マスターの為ならば、この身が朽ちるその時まで誇りを持ち歩めます。貴方が私を救った事に後悔が無いのなら、私も貴方の為に朽ちても後悔は無いのです」

「……重いな」

「人の命が軽いわけが無い、この胸に『錬金術師の卵』を使う際にそんな事を思ったのでは?」

「……ノーコメントで」

 

 なんで分かるんだろう、もしや『卵』に俺の意思が残ってた?

 

「タタラはもう少し、助けられた女の子達がどう道を踏み外すか考えよ?」

「エテルが言うと説得力がちがうのじゃ……」

「四葩の中じゃエテルは踏み外した判定なんだな」

「愛する男を共有する時点で踏み外しておるじゃろ」

「否定出来ん」

 

 エテルに疑問を持つが、四葩が言った事に妙な納得をしてしまう。本当になんでこうなったんだろうな?

 

「そう言えばダリア、お前あのピッチリした服って他に無いのか?」

「マスターは朝から私の抜群なスタイルが確認できる服を着せて情欲を満たすおつもりですね、助平です」

「ちげぇよ、朝はエテルで満たされたから今更お前の貧相なもん見て反応するか。昨日買った服はお出かけ用と言うか余所行き用で探索には不向きだから代えはないのかって確認したいんだよ」

「……マスター、流石に私も全否定されると傷付くのですが」

「デリカシーが無い判定した俺に対して求めるだけ無駄だろ」

 

 言動に慣れてきたから扱いが雑になる。なんでか知らないが俺の中で距離感が気安くなってるんだよな、コイツ。

 

「代えは有りますが、昨日買って頂いたワンピースでよろしいかと。敵に一切触れさせませんので」

「普通にダンジョン内で行動したら汚れるだろ。昨日即決するくらいに気に入って買ったんだから汚したら悲しくなるぞ?」

「アレはマスターが似合うと言ってくれたので決めたのです」

「え、それだけ?」

「十分な理由です。エテルさん達もきっとそうだそうだと言っていますし、古文書にも書いてあります」

「エテル達はワイトか何かかよ……」

 

 あとその古文書、古事記とか言わないよな?

 

「えっと、似合ってるって言われて買っちゃうのは分かるかな」

「……妾も下着の時そうじゃったから否定出来ん」

 

 アレ、賛同を得てるな?

 

「でも、デートに着ていくなら分かるけど探索は違うからね?」

「流石に着飾る場面は選ぶ方がよい、その服を着てタタラと出掛ける場面は妾達でも用意してやるからタタラの言う服に換えよ」

 

 何故か俺とダリアがデートする流れになってるな?

 いや、普段着買いに出掛けるくらいならいいが。

 

「……マスター」

「別の買い物に行く時にお洒落着を着てこい、キチンと付き合うから」

「……Yes my Master」

 

 渋々といった様子でインベントリから前に着ていたのと似た服を取り出した、エテルは俺の目の前で着替えかねないのを察してダリアを連れ出して行く。何となく、お母さんっぽくなって来たなエテル。

 そんな時に呼び鈴が鳴る、どうやらタチアが来たらしい。迎えに行くと、予想通り門の向こうにタチアが居た。

 

「おはよう、タタラ殿。家に入れて貰えるだろうか?」

「ああ、今開けるよ」

 

 門扉を開けてタチアを迎え入れる。何だか今日のタチアは顔色が良く見えた。

 

「何か有ったのか?」

「む、何故そう思ったのだろうか」

「なんか顔色が明るいっていうか、嬉しそうに見えてな」

 

 俺がそう言うと、タチアは恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

「バレてしまったか。実は、親父殿から話が有ってな……タタラ殿が悩んでいた天使族の件がどうにかなりそうなのだとか」

「……マジか」

 

 それは朗報だ、タチアの翼を認めさせる一番のネックと言える物だったからな。

 

「あと一・二週間で『ワールウィンド』に来てくれるそうだ」

「それなら間に合うな……少し肩の荷が下りた気分だ」

「ふふ、そうだな。私もそう思うよ」

 

 安堵の息を吐く俺に思わず笑ったタチアに釣られて俺も笑う、コレでタチアの視察団歓迎における準備は整ったと言えるだろう。来た天使族に余程の問題が無ければ。

 

「それとタチア、今日の探索はダリアも連れて行くつもりだ」

「そうか、しかし病み上がりで大丈夫だろうか?」

「少なくともステータスはこの都市で最強だから大丈夫だと思うぞ」

「それ程なのか?」

「物理攻撃は四葩、防御はタチアの3倍有るぞアイツ」

「過剰戦力だなそれは」

 

 現状、俺達が潜ってる階層迄ならダリアは一切の防御行動無しで切り抜けられる。距離を最大まで稼いだ『オーク』の突撃すら耐えれるのだから、本当に意味が分からん。

 

「ダリアがどれだけ動けるのかを確認して、その後に装備を仕立てる。ま、今は魔導剣を二本ばかし渡してはいるが彼奴にはエテルも持ってる『エリンジウム』と魔力砲も持たせたいからな」

「それだけ先を見据えているということは、ダリア殿が居て何か変わるのだな?」

「ああ、彼奴が魔力砲を持ったなら31階層以降に出る『リッチ』を撃退出来る目処が立つ。属性が無くても純粋魔力砲撃なら通るからな」

 

 『死霊』系のレアモンスター『リッチ』は非常に強力だが、実は体力自体はそこ迄高くは無く160前後程だ。単純に物理攻撃は無効化してくるし魔法防御が高いしで倒し難いだけで、ダリアの魔法攻撃力が転用出来るならそこまで怖い敵じゃないのだ。

 尤も、『天使長』は物理無効を愛剣で無視していたので意味が分からなかったが。『貫通』が仕事した訳では無かったぞアレ。

 

「ふむ、では今回は素材集めが主になる形か」

「ああ、出来れば鉄が多く欲しいが……」

「私のスキルが悪さをしてすまない」

「いや、『ムゥ(たみ)』が大量発生してステアップアイテム手に入るから全然プラスだからな?」

 

 そういえば前回の探索での成果を聞いて無かったな。ま、いいか。ダリアの関係でそこら辺話が出来なかったわけだし。

 

「武器と言えば、タタラ殿に頼みたいのだが」

「お、魔鉄辺りでエストックか?」

「やはりお見通しか。騎乗槍も考えたのだがどうもしっくり来なくてな、魔鉄製のエストック……今よりももう少し長くて重い物が欲しい」

「分かった、すまんが技術料は取らせて貰うぞ?」

「当然だ、対価なくして良き仕事は無し。親父殿の言葉だが、私も同意見だ」

 

 おっちゃん、やっぱりスゲェわ。俺が対価に無頓着でダルマさんに注意されたけど、正しく技術料とか設定しないと『ワールウィンド』全体の技術を疑われかねないか。次期工匠長なんて立場なのだから、武具関連はもう少し金額を上げるべきだろう。今度都市長と相談したいな。

 尤も、値上げは学園卒業後で半人前が取れてからだが。

 

「ミスリルがまた大量に手に入ったら鍛造ミスリルで造るのもアリかな?」

「私としては使ってみたいが、流石に値段が手を出せん領域になる」

「いや、手はあるぞ。手に入れたミスリルを全部俺に売るって格好でそれを制作費に当てるとか」

「なるほど、作製の素材以外をタタラ殿に売る格好で料金に充てるのか」

「若干グレーだけどな、代金無しで作製は商会に睨まれるが素材を売ったならって納得して貰える」

 

 ましてや物はミスリルだ。技術料も高いがミスリルの売値が相当に高い、半人前扱いの俺なら余程の装飾やらを望まれ無ければそこまでの個数を必要としないだろう。

 因みに、都市長から言われた『アーラ』の代金はミスリル80kg相当だった。単位おかしくないかと思ったが、俺にしか作れない新機軸の塊なので安く出来ないのだそうだ。コレ、発展型を見せたら都市長に殺されかねないのか俺?

 

「その……タタラ殿」

「なんだ?」

「出来ればエストックは儀礼用に向く装飾をお願いしたい。刃には施さず、柄と鍔そして鞘に」

「……高いぞ?」

「その分はミスリルを集める事で対処するつもりだ」

 

 中々に難しい注文だ、しかしタチアの頼みなら可能な限り対処しよう。取り敢えず、エストックは『アーラ』装備を前提にして8kgくらいにしとくか。

 そんな風に会話を重ねながらリビングに到着する、四葩は元から居たがエテルとダリアも戻って来ていた。ダリアはエテルに渡したケープを羽織らされている、流石にあのぴっちりスーツはエテルにも許容出来なかったか。

 

「タタラ、何か換えの防具無い?」

「ダリア向けは無いな、一応エテルの昔の装備は残ってるが……サイズがな」

 

 諸々足りなくてストーンって落ちるぞ、多分。

 

「昔の私のなら大丈夫だよ、貸してあげて」

「いや、無理だ。身長も身体つきも違い過ぎる」

「私が太ってるって言いたいの?」

「エテルは痩せてるが身体つきが規格外過ぎるんだよ、ダリアに着せたら多分泣くぞアレ」

「なら上だけでも、シャツとパーカーだけでも着れるでしょ?」

「いや、それが一番残酷……」

 

 エテル、お前普通にEとかカップサイズ有ったがダリアはAだぞ? 胸囲の格差社会にガチ凹み待ったなしだよ。

 

「マスター、私は負けません。奥様の前の装備を貸して下さい」

「おう、負けフラグ建てながら勇気と無謀を履き違えるな」

 

 流石に俺だって良心持ってるつもりだ、ノンデリ扱いされても少しは気を付けてるんだってことを考えて欲しい。

 

「安心してくださいマスター」

「65のAが70のEの服なんぞ着たら絶望するぞお前」

「……あ、安心してくださいマスター。必ず……必ず勝利をお見せいたします」

 

 おう、サイズ差理解して既に心折れかけてるじゃねぇか。

 

「……なんでタタラはダリアのサイズ知ってるの?」

「初日服が無いからランジェリーショップ行ったら自己申告貰った」

 

 アレに付いては普通に注意したが、ダリアに効いてる気がしない。あの慇懃無礼と言うか、無頓着な性質では馬耳東風だろう。

 

「妾も売り子から逃げて、裸のままタタラに抱き着いたの」

「アレはマジで焦ったぞ」

「なにそれ知らない」

「エテルが下着を選ばせに来た直後だからな」

「あの時のタタラは中々焦っておったの、エテルの大きさでないと満足せんおっぱい聖人ではなかったのかの?」

「お前だから……いや、なんでもない」

「……そ、そうか」

「ねぇトラッちゃん、私は納得してないんだけど?」

 

 そんなやり取りをしている中、俺達を見ていたタチアが疑問を持ったらしい。

 

「……ヨヒラ殿、随分と距離が近いような気がしますが?」

「うむ、その……な。タタラに受け止めて貰えたのじゃ」

「はぁ、なるほど……はぁ!?」

 

 一瞬意味が理解出来なかったらしい、一拍置いて盛大に声を上げたタチアは四葩に詰め寄る。

 

「受け止めて貰えたって……エテル殿の事は!?」

「エテルからも了承済みじゃ、むしろエテルがタタラを説得したくらいじゃの」

「エテル殿!?」

「うん、タタラは私一人だと支えきれないからね……ちょっと力を借りてるよ」

「タタラ殿!」

「四葩にはエテルしか愛せないって事は伝えた、それでもって言ってくれたから受け入れた……タチアにはおかしく見えるよな。俺も正常な関係とは思ってないよ」

「……くっ」

 

 タチアの中にも何かしらの葛藤は有るだろう、それは仕方ない事だ。俺だって今の関係がおかしいとは思ってる、それでもエテルと四葩の二人が納得してくれるなら俺はこの関係を続けよえと思ってる。

 

「……私は、私には御三方の考えが分かりません」

「うん、仕方ない」

「おかしいと否定してしまう」

「そうだな、それが普通だよ」

「それでも……それでも、私は仲間だと思っている。掛け替えのないパーティメンバーだって、そう思ってる」

「ありがとう」

「何故……なぜ、私はこんな……」

 

 仲間内での関係の変化に混乱しているのだろう、タチアは両手で顔を覆ってしまっている。だが、何故だろう?

 タチアからは苛立ちや怒り等の感情が見えない。何方かと言えば嫉妬……いや、羨望?

 

「……取り敢えず、今日は何時も通りの探索にしよう」

「ああ、分かった。ただ、最初に『ゴブリンコマンダー』と会敵したらダリアを突っ込ませて様子を見るが大丈夫そうか?」

「ええ、大丈夫だタタラ殿。私は大丈夫……」

 

 まるで、自分自身に言い聞かせるかの様な言い方だ。

 やはり、まだ情緒が育っていないタチアにこの手の話は早すぎただろうか。

 

「……マスター」

 

 背後から呼ばれて振り向けば、ダリアが居た。居たのだが。

 

「着れましたよ、マスター」

「いや、それは無理が有るだろ」

 

 エテルの昔の防具を着用したダリアは、なんというか……悲惨だった。エテルが着ていた時は臍が見える程の丈だったシャツが、足の付根辺りまで裾が下りていて肩紐は伸び切った様に見える。ホットパンツは辛うじて履ける状態らしいが、尻は余っているのに腰は閉まりきらないようだ。つまり、エテルの方が腰が細いらしい。

 いや、本当に悲惨だからやめてやろう?

 

「ねぇ、着れましたよマスター……」

「もういい、もう休め……!」

 

 笑っているのに泣いている様に見えた。きっと見えない涙を流し続けていただろうダリアに、俺はケープだけ貸してやる事をエテルに了承させた。

 

 

「ふむ……注目の的ですね」

「まぁ、パーティメンバーがコレならな」

 

 ダリアを慰めなんとか『常闇の洞』に来た俺達は、探索の受付をする間に注目を浴びた。ダリアがその事を口に出すが、理由はこのメンバーの顔面偏差値だろう。

 説明無用の美貌であるエテル。異国情緒溢れる美女な四葩。凛々しさ溢れる麗人のタチア。人形の様に整ったダリア。そこに異物の俺と来れば、注目を浴びない訳が無い。

 中にはチャラそうな男達が声を掛けようか相談しているのも見えた、気持ちは分かるが少しウザいな。

 

「……不快、じゃの」

 

 ぽそりと零された四葩の言葉に振り向く。装備の拵えこそ『ワールウィンド』風ではあるが、四葩の容姿はこの国では滅多に見ない顔立ちをしている。その上で美しいのだから注目をされるのも当然ではあるが、不躾な視線はそれだけ苛立ちを誘うのだろう。

 

「大丈夫か?」

「正直に言うと、苛立つの」

 

 小声で声を掛ければ、やや荒い口調で返された。見世物になるのはやはりいい気分な訳が無かったか。

 

「あちら此方から視線が向けられる。奇異なものなら良いが、好色な物は不快に過ぎる」

「そうか……以前は大丈夫そうだったが」

「妾はタタラに想いを受けて貰った身、それが不躾に色を求められれば嫌悪も湧く」

 

 どうも、俺の影響で視線に耐えられなくなったらしい。

 

「……喜色を隠せておらんぞ、タタラ」

 

 俺の様子を見てジト目を向けてくる四葩。

 

「悪い、その……俺もムカついてる理由が一緒って思うとついな」

「……馬鹿者」

 

 小声でそう言った四葩は俯いた。耳が赤くなっている辺り分かりやすいが、指摘せずに手を差し出すだけにする。ゆるゆると繋いで来た四葩の手を握り、少しでも安心出来るようにしてやる。

 

「トラッちゃんだけ贔屓ってズルいよね?」

 

 そう言ったエテルは逆の腕に抱き着いてくる。腕を挟む柔らかい感触に、朝に散々発散したのに反応しそうになる。

 因みに、そんな俺の様子に周囲の男達は物凄い恨みの視線を送ってくる。悔しかったら、苦しんでる誰かに手を伸ばしてみせろよ。

 

 そんな面倒な入場前の彼是を越えて、俺達5人はダンジョンへ入った。

 早速俺は『黒鐵』を纏い、戦闘態勢へ移る。関節部や術式の正常動作を確認し、ウォーハンマーを取り出す。そういえば、コレも強化すると考えて居たが手を出していなかったな。他の装備を調える事が優先ですっかり忘れていた。

 

「素晴らしい、マスターの魔導鎧……実際の稼働状態を見ると印象が大きく変わる。形状記憶合金を編んだ人工筋肉と、そこに追加された増強術式。その二重構造が発揮するハイトルク。全身の筋肉に沿って張り巡らされたが為、偏ることの無いバランスの良い強化による総合能力の上昇。装甲材も鉄の性質を2倍にした魔鉄製、更にその構造を蜂の巣を模倣したハニカム構造とする事で衝撃の分散を行い頑丈さを増している。何よりも注目すべきはその背に付いている風圧収束術式による噴射機構、コレにより瞬間的な加速を生じさせ吶喊を可能にしている事。近接戦闘を担う物が求める物を不足無く取り揃えた、まさに次代の魔導鎧の基本形と言えるでしょう……」

「長々とソムリエしてる所悪いが、ここはダンジョンだからな?」

 

 ダリアの魔道具解説が食レポみたいに始まるが、ここは既にダンジョンである。いくらこの表層の敵は相手にならないとはいえ、意識を逸らして欲しい訳では無い。

 

「その、随分と特徴的なのだなダリア殿は」

「……基本的にこのパーティ、個性無い奴いないからな」

 

 タチアの言葉にそう返す。あえて個性が弱いと言うと俺だとは思うが、俺の作った物を振り返ると没個性とはとても言えない。

 というか、言ったら都市長達に袋叩きにされると思う。

 

「そして、貴方の鎧も素晴らしい騎士見習いのタチア!」

「む、今度は私か?」

「マスターが作った貴方専用の鎧『アーラ』、コレはまさに一人の為のオーダーメイドとしては理想的な物でしょう。インナーマッスルアーマーと名付けられた人工筋肉製の内帷子は、徹底的に使用者へ最適化され筋肉や関節の動きとの誤差は僅か0.001%以下。コレがその身体能力を爆発的に増強させる事に一役も二役も買っている。そして其れ等に支えられた外鎧は徹底的に軽量化が行われているも、防御能力が確保されている。表は魔鉄、裏はミスリルによるハニカム構造で物理魔法何方に対しても高い防御を発揮する。そして、この鎧最大の肝はその翼! 形状記憶合金で作られた盾にも外套にも変わるその翼、内側に刻まれた飛翔術式により空中を舞う事を可能とする! 名工タタラ・ジュロンが貴方の為に空を舞う事を突き詰めた、究極の飛翔型魔導鎧! それが! その! 『アーラ』なのです!!」

「……タタラ殿、この人怖いです」

 

 あのタチアがビビっている。人を名前じゃなく『この人』とか呼ぶの初めて見たぞ。

 

「取り敢えず、進もう。鎧や武器の品評会をしに来た訳じゃ無いからな」

 

 俺の言葉で一団は進みだした。途中出て来た『ジャイアントバット』は以前と変わらずタチアが空を飛び蹴散らして行く。その速さに、ダリアは大興奮だ。タチアの翼と連動する補助翼の術式と制御が芸術の域だとか何とか。

 探索は問題無く進み、驚く事に今回は鉄のインゴットが多く出て来た。5階層へ降りる迄に10kgは出ている、コレならダリア分の『エリンジウム』も四葩の新しい武器も作れそうだ。

 そして、敵が『ゴブリン』種に変わる5階層。最早見慣れた遭遇相手の『ゴブリンコマンダー』の一団。空恐ろしい事に、『コマンダー』一匹に対して『ウォリアー』と『ウィザード』が二匹ずつ居る上に『ゴブリン』が10匹居た。流石にダリア一人では時間がかかり過ぎると判断したが、ダリアは堂々と歩み出してその身を『ゴブリン』達の前に曝した。一瞬焦ったが、ダリアは此方を見て一つ頷く。

 任せろ、では無い。アレは見せてやる……そんな自信の表れである。

 

「こんにちは、醜い塵芥ども。私は可憐なる機巧乙女ダリア・ジュロンです」

 

 インベントリから取り出した魔導剣を左右にそれぞれ持ち、まるで鳥が羽撃く為に翼を拡げるように構える。

 

「ご機嫌よう──」

 

 左手に持った魔導剣に刀身が生まれる。魔力を力場で固定するエネルギーブレードタイプだが、回される魔力が尋常ではなく半ば物質化している。あれ程の出力は本来出せない。

 

「──さようなら」

 

 右手に持ったチェーンソードが稼働する。チェーンがガイドバーに高速で擦れて火花が走った、刀身が火花の影響で赤く残光を残す。

 そして、蹂躙が始まった。

 ダリアは踏み込むと、地面を抉る程の爆発的な加速を生み出し取り巻く全てを無視して『コマンダー』を標的に定めた。右手のチェーンソードを相手の鎖骨の辺りに叩き付け、そのまま血を撒き散らしながら両断した。『ゴブリン』相手では試し斬りにもならないらしく、ダリアの背中はつまらなそうな雰囲気を出して居る。『コマンダー』を殺されてようやく事態に気付いたらしい配下の『ウォリアー』と『ウィザード』がダリアに顔を向け威嚇するが、その1動作の間にダリアは剣を振り終えて居る。都合4匹の上位種が死亡、そのまま取り残された『ゴブリン』に歩み寄って行く。『ゴブリン』は恐怖で逃げようとするも、それよりも早くダリアは動き、悉く『ゴブリン』を殺して行く。

 圧倒的。余りにも圧倒的な戦力差。

 全ての『ゴブリン』を殺し終えて、ダリアは笑顔で此方へ戻って来る。コレはまた、とんでもないヤツを拾ったものだ。




【神様紹介ダリア】
「機巧乙女ダリア・ジュロンが、この世界の神々に付いて紹介します。本日の神様はこの方です」

『機械神』

「この世界の神々において尤も新しく、幼い神様です。マスターも勘違いしていますが機械神様はモノ作りを司る神性では無く、作られた機械を司る神性になります。神々が外敵と戦う上で最初に作り上げた機械が神性を持った存在であり、軍神様と同じく戦神の側面も持ちます。意思を持った果てに独りである事に耐えられず、作り上げた子供が私達『機巧乙女』の始まりとされています。現在、マスターをこの世界に繋ぎ止める楔として作用する一柱になっています。理由は、数少ない愛子の一人である私の死を覆した故、とのことです。機械神様には性別は無いため、男神や女神と言った区分は有りません。『何方もないツルツルでも、逆に何方も付いてるのも想像にお任せする』との事です」

この小説は……

  • エテル・ネル=バーラルとの物語
  • 虎熊四葩との物語
  • 騎士タチアとの物語
  • 探索者パーティハーレム
  • 聖人カラムスとの物語
  • 都市長との物語
  • 熟女ハーレム
  • シャムスとの物語
  • エストとの物語
  • 後輩二人との物語
  • 探索者ローガスとの物語
  • 『天使長』に愛されて夜も眠れない
  • 異世界追放
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