※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中


鍛冶師は理解する

「先輩、告白回数イコールモテ度では無いです」

「いいですか先輩、普段無愛想とか無表情な人が不意に自分に対して笑い掛けてくれるってだけでも刺さる人は居るんです」

「それにですね先輩、歳下の女生徒とか何度も助けてるでしょ」

「第一横にエテル先輩居るのに挑めるわけ無いじゃないですか先輩」

「分かった、取りあえず怖いから詰め寄るのやめてくれ」

 

 この二人、俺に対してこんな容赦無かったのか……なんか身に覚えの無いことで詰められてるけど。

 

「第一先輩、女性に対する言動が呼吸するように口説きに行ってますよね」

「まて、何の話だ?」

「いや、うちのクラスにも先輩から容姿を褒められたって女子居ますからね」

「男子生徒の中にもちらほらと先輩に剣技褒められたとか、視点を褒められたってのが居ますし」

「なにそれマジで知らない」

 

 後輩から知らない俺に付いて話をされてる、何これ本当に知らない。俺の姿を借りたドッペルゲンガーでも居るのだろうか?

 

「心当たりがないなんて当然ですよ、先輩の生態として自然な行動なんでしょうから」

「やはり呼吸と同じ感覚で口説いているんですね、女誑しじゃなくて人誑しですよ」

 

 シャムスとエストの口撃が止まらない、そろそろ泣きたくなってきた。俺、なんでこんな扱い受けてるの?

 そんな時だ、天の助けと言わんばかりに終業の鐘が鳴った。

 

「チッ、鐘に救われましたね先輩」

「これだけじゃ済まないですからね先輩」

「俺、後輩にこんなに嫌われてたの?」

 

 エストから舌打ち貰ってマジで心折れそうなんだけど、本当は二人共俺から教えられるの嫌だったのかな?

 

「取りあえず、今回も勉強になりました。ありがとう御座います女誑し先輩」

「剣を打つ姿だけでも格の違いを刻まれた気分です。ありがとう御座います人誑し先輩」

 

 シャムスとエストは最後にそう言って工房から出ていった。

 どうしよう、心が痛くて動けないや。

 10分程動けないまま座っていると、バカがやってきた。

 

「お、おいタタラ……大丈夫か?」

「すまん、後輩から受けた言葉で大丈夫じゃない」

「何言われたらこんなに凹むんだお前」

 

 呆れ返ったバカの言葉を聞きながら、インベントリから打ち直した剣を取り出す。剣を受け取ったバカは鞘から抜き、その剣身を眺める。

 

「……スゲェ、前より良くなってやがる」

「俺の腕だって日々成長してるからな、明日はもっと良いもの打てるぞ」

「はっ、それでこそお前だよタタラ」

 

 その言葉の後、インベントリから金を5000取り出して渡して来るバカ。

 

「コレから潜るのか?」

「ああ、軍資金稼がにゃならんしな」

「そうか、頑張れよ」

「おう、貯まったらお前の所で魔鉄の鎧頼むからな」

 

 そうか、コイツもそれだけ成長してるのか……。

 

「いいぜ、会心の逸品出してやるよ」

「おう、楽しみにしてるぜ」

 

 そう言って出ていくバカ、俺も何時までも落ち込んでられないな……気を入れ直して行くか。

 工房を片付けて教室に行くと、エテルが複数の男子生徒に囲まれていた。面倒そうと言うか、嫌そうな顔をしてるエテルに気付かないのか男子生徒達はヘラヘラと笑って声を掛けている。

 

「だからさ、偶には俺達と探索しようぜ!?」

「いい、興味無い」

「そう言わずにさ! ほら、俺達が守ってやるからさ?」

「……キミたちに守られる程、弱くないけど」

「なんだよつれないな」

「キミたちはしつこいよ」

 

 なんだこのテンプレな台詞と光景は。

 

「エテル、待たせた。行こうぜ」

 

 教室に入りつつ声を掛けると、エテルの顔がパッと笑顔になる。

 

「うん!」

「待てよ!」

 

 小走りで此方に駆け寄ろうとするエテルだが、男子生徒の一人に二の腕を掴まれた。

 気安く触ってんじゃねぇよ。

 

「まだ話は終わってねぇだろ!」

「断ってるでしょ、いい加減キモチワルイよキミたち」

「あぁ!?」

 

 何かキレてる様子だが、いい加減にしろ。

 

「汚ぇ手で俺の女に触ってんじゃねぇよ」

 

 エテルの腕を掴んでるその手首を握る、軽く力を込めたら相手の手首から力が抜けていく。

 

「ぐっ……あ、テメェ!?」

「……死ぬか、お前」

 

 睨んでくるゴミに対して殺意を向ける、カラムスさんから対人戦闘に才能は無い等と言われているがこちとら全ステ40手前だ。顔も知らない底辺学生レベルなら相手にもならない。

 

「おい、たかがクラフター程度が調子にのんなよ?」

「俺達、コレでも12階層まで潜ってるんだけどよ……お前死ぬぜ?」

 

 え、パーティ組んでたったそれだけの階層でイキってんのコイツら。中等部の頃にはバカと二人で突破した階層だぞ?

 

「ね、ねぇタタラ……」

「いや、まさか」

 

 余りにも低い階層でエテルが困惑してる、ソロでも『ロニセラ』片手に8階層まで潜ってたもんなお前。俺が一緒に探索する条件をレベル10突破って定めたら2ヶ月で達成させたし……その分喰われたが()

 

「なんだ、ビビってんのかよクラフター?」

「いや、この人数でそこ迄しか潜れない実力の低さにドン引きしてる。流石に弱いだろお前ら」

 

 ちゃんとパーティで役割分担したスキル構成しているか?

 そうでないなら知識で補えてるか?

 5人も揃えて12階層って『オーク』にボコされて敗走したのか?

 

「なんだとテメェ、俺はレベル15だぞ!」

「「低っ」」

 

 俺とエテルが揃って声を出した。俺は30でエテルも20を越えてる、専門で探索やってたらもっと上がるだろ。バカとか前に聞いたら23だったぞ。

 

「お前等じゃエテルに寄生がせいぜいじゃねぇか、出直せよ」

「なんだとテメェ!」

 

 イキリーダーが俺の言葉にキレて拳を振り上げる。動きが遅過ぎるだろ、エテルを掴んでたクソ野郎をその拳の進路上に置いて同士討ちさせてやる。

 

「痛ぇ!?」

「てめ、なんで前に出てくんだよ!」

「うるせぇ引っ張られたんだよ!!」

 

 同士討ちからの仲間割れで盛り上がってるな、さっさと行くか。振り返ってエテルを促し、さっさと教室から出る。

 

「おい、待てよ!」

 

 身内で遊んでた中から一人飛び出して俺の肩を掴んできた、思わず反応して裏拳を決めてしまう。

 

「あ、ヤベ」

 

 言葉を零した時点で手遅れで、肩を掴んできた奴はそのまま吹き飛んで壁に叩き付けられて動かなくなる。……よかった、息はしてるから死んでは居ないな。

 

「ま、コレでいいか」

 

 気絶したヤツの足元に傷薬を一つ置いて、今度こそ教室から出る。止めに来る奴は居なかった。

 

「エテル、腕大丈夫か?」

「うん、力弱かったし」

 

 さっきのグループが聞いてたら泣きそうな台詞である。

 

「次に同じ事が有ったら全員にエナジードレイン使ってやれ、死にはしないし最悪事故で済ませる」

「物騒過ぎるよ……」

「お前は俺以外にも魅力的に見えるから自衛手段として覚えておけよ」

「タタラだけが魅力を感じてくれればいいのに」

「俺もそう思う」

 

 そんな会話を交わして居ると、エテルが腕を取って来た。まだ学園の中である。

 

「……俺の女、ねぇ?」 

「合ってるだろ?」

「ふふ。うん、そうだね」

 

 なんとも嬉しそうに笑うものだ。

 

「コレから探索なのになぁ」

「そうだな、気を付けろよ」

「……タタラのニブチン」

「いきなりの罵倒はやめてくれ」

 

 今日は既に後輩二人から罵倒の嵐だったし。

 

「愛を確かめ合いたくなる女の子の気持ちも分かって欲しいな?」

「学園でおっ始めたら停学くらうわ」

「むぅ」

「膨れるなよ、キスすんぞ」

「うん!」

「元気に返すな」

 

 呆れながらも周囲を見渡す、気配からしても周囲に人気は無い。勝負は一瞬、エテルの腰を抱いて触れるだけのキスをする。

 が、エテルは思い切り俺の首に腕を回して思い切り唇を重ねてきた。ヤバい、見られるぞコレ。

 

「アレ、先ぱ……いぃ!?」

 

 なんかシャムスの声が聞こえた気がする。はは、終わった。

 

「ぷはっ、ごちそうさま♡」

 

 大満足と言いたげなエテルの姿に、俺の学園生活が致命的な打撃を受けた気がする。まだエテルとの中を夫婦だとか誂ってくる小学生レベルなら助かるんだが、エテルに対して有象無象が集るなら殺意が湧くだろう。しかし──

 

「せ、せせせせせせせせせせんんぱはぃい」

「……落ち着けシャムス」

 

 俺としてはこの壊れかけのラジオみたいな後輩を何とかするのが先決である。

 

「先輩! キスしたら子供が出来てキャベツ畑からコウノトリが赤ちゃん運んで来ちゃいますよ!?」

「お前は先ずそこから教育必要なのか……」

 

 どうしようか、この知識の修正。

 

「……先輩、どうしました?」

 

 そんな時に救世主になり得るエストが来た、よし。

 

「助けてくれ、シャムスの知識がヒドイ」

「?」

「聞いてエスト! 先輩が……先輩達が子供作ってた!」

「……え?」

「まて誤解だ」

「5回もですか!?」

「違ぇよ!!」

 

 取りあえず、エテルにキスをされた場面をシャムスに見られた事を話したらエストになんとも言えない顔をされた。

 

「シャムス、キスだけじゃ子供は出来ないぞ」

「え、そうなの!?」

「それで出来てたら今頃私達百人単位で子供居るかな」

「んん! それと先輩達は場所を弁えて下さい!!」

「はい、すみません」

 

 エストに怒られて思わず謝る、情けない姿である。

 

「はぁ……もう本当に、気を付けて下さいよ先輩。俺、その手の姿見られた先輩のせいでクラスの女子から話聞かれるの嫌なんですから」

「え、なにそれ」

「……タタラ?」

「待てエテル、本気で知らん」

 

 俺とエテルの姿見て、呆れたような反応をして去っていくエストとシャムス。場に混乱だけ残して行きやがった。

 

「……タタラはモテるんだねぇ? 私には人の話を聞かない強引な下半身思考しか集まらないのに」

「いや待て、マジで心当たり無いんだぞ? 怖いわ」

「はいはい、何時もみたいに女の子を口説いて気付いたら増やしてるんでしょ? 知ってるもん」

「何時もみたいにってなに!?」

 

 なんで俺が軟派男みたいな扱いなんだ、納得いかねぇ……。

 

「いいもん、どうせ帰ったら私だけがタタラとえっち出来るんだから」

「学園の中で言う事じゃ無いよね?」

 

 エテルさん、もう少し慎みを持ちましょう。

 そんな会話をしながら正門から出ると、見覚えの有る4人が居た。

 

「待っておったのじゃ、エテル! タタラ!」

「お疲れ様です、マスター。少々遅かったですね」

 

 元気よく手を振ってくるのは四葩、『紫陽花』一式を装備して居る姿はやはり良家としての気品が見て取れる。

 静かに佇み言ってくるダリアは前に渡したロングコートタイプのケープを着ている、あの下はレオタードみたいなアレなのだろうな。

 その後ろに控える駄狐は控え目に手を振ってくる、その横に立つ雛菊さんは何か串焼きを食べて居た。結局食ってるじゃん腹ペコ天狗、本格的に肥るぞ。

 

「お待たせ、トラッちゃん! ダリア!」

 

 元気よく答えたエテルが四葩に抱き着く、笑い方がそっくりで髪色と肌色は違うが何だか姉妹に見える。ダリアにはまだあだ名を付けてない辺り、警戒中か。

 

「悪い、待たせた」

「ふむ、何か有ったかの?」

「少し後輩から言葉攻めに遭ってな……」

「……本当に何が有ったんじゃ」

 

 取りあえず、俺が女誑しとタチアに言われた件を話したら肯定されたことと、エテルとキスした場面を見られて子作りしてたと言われた事を話した。

 

「それは後輩二人が正しいの、天然の女誑しじゃ」

「息をするように口説くでござるからな」

「基本的に気遣いに見せ掛けて軟派しますよね」

「俺への評価散々じゃねぇか」

「正当な評価だと思われます、マスター」

 

 陽出組にヒドイ言われ方された挙句、ダリアから追認である。

 流石に酷くないこの連携。

 

「タタラは口説いてる自覚無いから分からないと思うけど、他意無く言われる側の身にもなろ?」

「俺は普通に話す事も出来んのか……」

 

 無自覚で言ってる言葉が口説き文句とかどうしろと?

 

「……タチアが『常闇の洞』前で待ってるだろうから行ってやれ」

「あ、誤魔化した」

「流石に雑じゃの」

「いいから行けよ……」

 

 散々言われて俺の心もボロボロなんですが。

 

「もう、じゃあ行ってくるね?」

「エテルの事は任せよ、無事に帰すのじゃ」

「四葩、お前も無事に帰れよ。お前だって大切なんだから」

「……そういうとこじゃぞ、タタラ」

 

 呆れ顔と言った具合の四葩と、苦笑いを浮かべるエテル。

 

「お二人はお任せ下さい、必要ならば我が身の全ての武器を振るいタチア様も含めて帰還させます」

 

 その、ダリアの言葉に対して苛立ちが湧く。コイツなら分かって言っているんだろうが、それでも言いたいことが有る。

 

「ダリア、マスター権限で最上位命令を下す」

「はっ。なんなりとお申し付け下さいませ」

「お前も生き残れ。もう家族なんだ、お前の事だって喪いたくない」

「……Yes my Master」

 

 恭しく一礼をするダリアの姿に一つ頷いて送り出す。

 その背は真っ直ぐに伸ばされ、力に溢れているように見えた。

 

「……ああ言うのが口説いてる判定なのでござるよ、ご主人」

 

 そんな事を呆れ気味に言われた。

 

「……もし、相手に生きる事を願う事が口説き文句になるならいくらでも口説いてやる。それで生きてくれるなら汚名くらい背負うさ」

 

 生きて帰ってくれるなら良い、もう動かない両親を見た時の様な苦しみは嫌だ。

 

「なら、ご主人はそのままでいいでござるよ」

 

 何処か慈愛が込められた目で、駄狐は俺にそう言った。

 で、隣でずっと串焼き食ってる雛菊さんなんなんだろうな? 

 

「……雛菊、ずっと食べていたら肥るでござるよ。マジで」

「む、しかしこのタレが私を誘惑してきて仕方ないのです」

「コレ、駄狐と同じ様な蔑称付けなきゃ止まらないか?」

 

 美味しくご飯を食べてくれるのは作り手側からしたら嬉しいが、流石に心配される程なのは駄目だと思う。

 

「つか、昼用のサンドイッチ作り置きしてたよな?」

「めっちゃ食ってたでござるよ、雛菊」

「はい! 白パンに挟まれた黄金色にすら見える見事な衣のふらいさんど、大変美味でした!!」

「……買い食い抑制には繋がらなかったか」

 

 むしろ、後で好きなの奢ってやると言われていた筈の駄狐が普通の顔してるのだ。どういう事だコレ。

 

「うぅん、雛菊さんが食べてる姿は健康的で好きではあるが食い過ぎはなぁ……仮にも虎熊家から預かってる訳だし」

「ご主人、変に責任感強いでござるよな」

「そうか?」

「そうでござるよ」

 

 何故か駄狐が『自分なんかの世話を焼くお人好し』と言いたげな雰囲気を感じる。

 

「雛菊さんが食べ過ぎだと俺達が思ったら呼び方変えるとかで止まりますかね?」

「む、駄狐と同じ様に蔑称を付けると?」

「それで止まるでござるかね?」

「取りあえず試してみるか」

 

 未だに串焼きを次々に咥えてる雛菊さんを見る。つか、何本買ってんだアレ。しかし、太った相手に言う蔑称混じりか……例えば──

 

「豚菊って呼べば止まります?」

「うっわぁ」

 

 駄狐が思わずと言った具合に言葉を漏らし、雛菊さんが完全に固まった。やべぇ、初手からエグい一撃入れたかコレ。

 

「か、鴉天狗だし。まだお腹出てないし」

「そのまま進んで肥やす天狗、なんて」

「ご主人、倫理観を御母堂の肚に忘れてきたでござるか!?」

 

 雛菊さんの目尻に涙が溜まり始め、プルプル震えている。あの駄狐ですら慌てている……うん、ごめんなさい。

 

「ごめんなさい」

「……い、え。大丈夫DEATH」

「雛菊死にかけでござるよ」

 

 取りあえず、お詫びに近くでやってたクレープを奢ってご機嫌取りしたら復活した。ただ、駄狐の顔を見たら『このままだと肥やす天狗の豚菊一直線でござる』と言いたげな顔だった。

 

 以前から考えていた事では有るが、ダリアや護衛二人にも『ワールウィンド』内で気軽に着れる平服が必要だと思っていたのだ。それに、ダリアと同じ様にこの二人にもお洒落着を買っておくのも良いと思う。

 そして、今日は奢ると言った大義名分を前に俺はこの二人を着飾らせれ楽しむ事と相成った。本来ならエテルも連れて来て共に楽しむのもありだったと思っている。

 

「いらっしゃいませ」

「いつもすみません、この二人のをお願いします」

 

 という訳で、恒例と言うか常連のランジェリーショップである。

 

「あまり見ないタイプの方々ですね?」

「以前、ここへ連れてきた白髪褐色の子を覚えてますか?」

「はい、裸でお客様に抱き着いた方ですよね?」

 

 よりにもよってソレを持ち出されるか、めちゃくちゃ心が痛い。

 

「その子と同郷で、別の國に住む人達なんですよ。なので、此方の文化に触れさせたくて此処へ」

「……異文化交流で下着を贈る物と認識されるのは風評被害では?」

「いきなり服を買おうとして下着から選定間違えるのもどうかと思いまして」

「意外に考えてますのね」

 

 いや、確かに服より先に此方を贈るのはなんか変かも知れない。しかし、四葩とか此方の下着を何気に気に入ってて普段使いは此方の様式にしている。風呂上がりに湯帷子を着ていた四葩の胸元から下着が見えてドキリとした事が有った。直後に気付かれ『助平』の称号を与えられてしまったが仕方ない。

 

 しばらくして、店員さんに勧められたという下着を数着ずつ購入する。金は当然俺が払う、雛菊さんは慌てて居たが駄狐は意外にあっさりと受け入れていた。尤も、下着の入った袋を大事そうに抱き締めていたが。

 で、下着を買ったなら次は服だ。以前ダリアの服を買った高級なブティックに2人を連れて入る。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 前にダリアにボーイッシュなコーディネートをした店員さんが満面の笑みで出迎えてくれる。さて、今回も頼ろうかな。

 

「ご主人、その……」

「どうした?」

「あんまり露出したのは嫌なのでござる」

 

 普段からThe Ninjaみたいな露出していてこの発言。いや、普段露出してるからか?

 

「なら、ちょっと待っててくれ」

 

 何となく着せてみたい服は考えていた、趣味に合うかは分からないが何方かと言えば露出は少ない。

 用意したのは厚手のTシャツとジーンズ、そしてレザー製のショートジャケットだ。足元は足袋と草履に馴れてそうだったのでミュールを用意する。

 正直に言って、駄狐はスタイルが良い。腰の位置が高くて脚が長く、手脚のラインはスラッとしている。そんな彼女を見ていて着せて見たかったのが前世で少し古いタイプのロックテイストファッションだ。

 

「ご、ご主人……おヘソ見えてるのはどうなのでござるか!?」

 

 が、駄狐のスタイルの良さを舐めてた。さらしからブラに変えたらいきなりご立派に主張し始めて、シャツが押し上げられて丈が短くなってる。

 

「悪い、サイズ見誤った」

「あら、すごく可愛らしいじゃないですか! お似合いですよ、ね!?」

「いや、似合ってるけどコイツが嫌がるなら駄目だろ」

 

 店員さんに問われて正直に答えるが、駄狐が着たいと思わないと駄目だろ。

 

「……ご主人、似合ってるでござるか?」

「普通に似合ってる。スタイルの良さが目立つし、お前は姿勢が綺麗だからな」

「……なら、コレがいいがござるよ」

 

 俺の言葉で駄狐は決めたらしい、いいのだろうか?

 

「少し小物も欲しいかな、店員さん似合いそうなの見繕えますか?」

「良いですけど……選ばないんです?」

「センスが無いですし、下手に飾るよりコイツそのままの方が綺麗に思ってる俺じゃ選べないですよ」

「……っはぁ」

 

 何やら盛大に溜息を吐かれた、駄狐は……あれ。固まってる。

 ただ、少しだけシルバーのアクセサリーを見て似合いそうなのは後でアレンジしてミスリル製のを贈っても良いかなと思った。

 さて、次は雛菊さんだが……この人地雷系とか着せたら面白そうだなって思ってしまう。いや、ゴシックファッションで翼も合わせた✝堕天使✝とかやらせても面白いかも知れない。

 

「……彼氏さん、碌でもない事を考えてませんかね?」

「あれで悪戯好きみたいでござるからな、無自覚に口説くのも一面でござるが」

「もしやさっきのアレ」

「無自覚かつ本心で言ってるでござるよ」

「怖っ」

 

 脇で何か言われてる気がするけど取りあえず無視だ、どうせ俺の事を無自覚ドン・ファンとか言ってるんだろうし。

 雛菊さんの服はゴシックロリィタ系にしてみる事を決めて、服を漁る。ちょうどよくダブルボタンの軍服風な物が有ったのでコレをチョイス、さらに足元はニーハイブーツだ。背中の翼をどうするか悩んでいたら、購入してくれるなら手直しすると言って貰えた。一時的に羽を小さくして貰って雛菊さんに着せてみる。

 

「ふむ、意外に似合うでござるな?」

「腰に余裕が無いからコレ着るなら食事制限と運動量の増加が狙えるしな」

「エグいでござる」

 

 店員さんが悪乗りして黒に赤い薔薇の刺繍が入った眼帯やら、黒い大きなうさぎのぬいぐるみやら持ってきた。前世で見たら地雷臭が凄そうな見た目だ。いや、厨二系ともいえるか?

 駄狐も面白がってアクセサリーを見繕っている、俺はヘッドドレスとスカーフ辺りにして全員で遊んだ。

 

「店員さん、コレで」

「私に意見を聞かないんですか!?」

「いや、明らかに雛菊はめっちゃ気に入ってるでござるよ」

「何を根拠に!」

「その黒ウサギを手放していたら納得したんでござるがなぁ」

 

 指摘されて初めて気付いたらしい雛菊さんが恥ずかしそうにぬいぐるみに顔を埋めた、店員さんもほっこりと笑っている。

 店員さんの技術は確かなもので、三十分程で手直しが終わった。裁断技術も縫合技術も凄まじいなあの人、俺も少し練習しよう。

 さて、お洒落着を買ったなら後は平服だ。和服や武具の製法に付いての資料は前回貰えていないので、二人には中央から離れて初邂逅した商店区についてきて貰う。

 

「久しぶりでござるな、ここ」

「一月と経っていないのだがな」

 

 そう言葉をこぼす駄狐と雛菊さん、日々が忙しくて時間が経ってるように感じるがつい最近なんだよなこの二人が来たの。

 いや、ダリアがその直後に来たり虎熊家と会談したりで本当に忙しかったな。

 

「ここで串焼きを買ってもらったのが始まりでござったな」

「そうだったな、飯食わしたらそのまま犯罪の片棒を担がされそうになってかなり焦ったわ」

「もう時効でよいでござろう?」

「私は三日三晩待たされてようやくお前を見付けたがな、駄狐」

「むしろよく三日三晩待ったでござるな、二刻くらいで追いかけて来ると予想したでござるに」

 

 駄狐の目を見ながら発言を聞くと、3時間で追いかけて来るとは初めから思って無かったなコレ。追いかけて来るにしても2日後、3日は予想より遅かったって所だろうな。

 しかし、嫌な感覚がする。俺も含めてこの集まりに悪意を持った目を向けてる奴等が居る、コレが駄狐が書類不備にして逃げた理由か?

 二人はこの国では見ない妖怪であり、更に言えば美人だ。外国人旅行客なら書類を偽装するなりで出国を誤魔化せる、そうやって人攫いに狙われたか……駄狐の逃亡は自身の情報の隠蔽と雛菊さんの情報を取らせない為に小細工したって所だろうな。

 ったく、駄狐と付き合いが長くなるとこういうのに気付けてしまうのが厄介だ。こいつ、こういった気遣いに気付かれたり優秀に思われたりするのが嫌いっぽいし。

 

「ご主人、あの串焼き屋と飲み物屋はどれでござるか? 久しぶりに食べたいでござるよ!」

「むむ、私も気になります」

「おう、此方だ……服にタレとか汁を零すなよ?」

 

 俺の言葉に笑う二人。しかし、この観察されてる感覚がウザいな。目的の串焼きを複数買う、序に近くに有ったクラフトドリンク店で以前買ったドリンクも購入した。

 

「久しぶりに食べると、感動してしまうでござるな!」

「むぐっ! ……うむ、タレが良い。長く注ぎ足して来たのが分かる……肉の脂と旨味を吸い続けた店の歴史を感じさせる深みのある味わい、肉の質が良いのだろう筋張っておらず硬さが有りつつも簡単に噛み切れる赤身部分。一口で食べられ、肉の感触を楽しめる最適な大きさ。更に一つの串に複数の部位を刺して食感も味の違いも出している、先頭から味わえばまるでふるこぉすなるもののように適切に肉を旨く味わえる順になっている。一串満足と書かれた品書きに偽り無し、天晴です店主!」

「スゲェ、食レポで客寄せしてる」

 

 雛菊さんの無駄によく通るいい声で、長々と語られた食レポに胃袋を刺激された人達が集まって来た。串焼きの店主が忙しそうにしながらも、此方に向けて親指を立てて来た。嬉しい悲鳴ってヤツかな。

 

「主、気付いてる前提で一方的に言います。数は8、男女は判別つきませぬがこの通りに入ってからずっと見てくる奴等が居ます。私達が入管に入った時に感じた悪意と同じ視線の質です。申し訳有りませんが、逸れたと言う体で一旦離れさせて頂きます。御容赦を」

「……必ず帰って来い、俺を主と仰ぐならそれが至上命令だ」

「……御意」

 

 返事と共に、駄狐が誰かに押されたかのように逸れる。演技には自信がないが、心配を込めた形で声を上げる。

 

「おい、駄狐! くそ、逸れるなよ!!」

「ちょっご主人……流れ強っ!?」

 

 俺の声に合わせて逸れていく駄狐、心配で少し強く拳を握る。

 頼むから、また帰って笑顔を見せてくれよ? なんだかんだ、お前が居ないと寂しくなっちまったからな。

 

「む、あの駄狐……」

「雛菊さんはちゃんと逸れないで下さいよ? 流石に二人共迷子とか洒落にならないので」

「なりませんよ!」

 

 うん、此方は大丈夫そうだ。と言うか、串焼きを手に言われるとシュールだな本当。本人生真面目なのにギャグにしか見えん。

 

「仕方ないので二人で少し商店区を回りましょう、駄狐ならそのうちひょこっと帰って来そうですし」

「既にタタラ殿の中では駄狐ってそんな扱いなのですね……」

 

 そう振る舞いたいのが彼奴の望みなら、そう振る舞わせてやりますよ。そう思う、彼奴にとってここの生活が泡沫の夢と言うのなら見飽きるまで居心地のいい夢であり続けよう。

 それが、ご主人なんて慕われる俺の役割だろう。

 

「むむ、コレも美味ですね!」

「……流石に食い過ぎでは?」

「何を言いますか、まだまだ入りますよ私の胃は!」

「マジでどこに入ってるんだこの細い腹で」

 

 30分程、まだ駄狐は戻らず俺は雛菊さんが狙われ難いように人目が多い道を選ぶ。目新しい物を見るたびに欲しそうにする為、その都度買い与えてしまう……典型的とは言わんがこれ優しい虐待ってヤツじゃね?

 あれ、俺良い親になる自信無くなってきた。

 

「おお! これは海鮮焼きですね!!」

「凄いな、『ワールウィンド』は海から離れてるから海鮮なんて滅多に見れないぞ」

 

 お値段はそこそこ、こういった場で出されるならギリギリ納得出来るお値段である。

 

「タタラ殿!」

「はいはい、すみませんオススメ一つずつ」

 

 そうして商品を雛菊さんに受け取らせる、本当にこのままだと肥やす天狗の豚菊になりかねないな。

 

「タタラ殿! 帆立ですよ帆立!」

「分かりましたからゆっくり食べてくださいね」

 

 俺の言葉を聞いてるのか居ないのか分からない勢いで帆立の身を口に含む、幸せそうな顔をするものだ。

 コチラを見ていた視線は確実に減っている。8人と駄狐は下手人の数を言っていたが残りは何人くらいなのか、アイツはちゃんと無事なのか心配である。

 

「ところでタタラ殿」

「はい、なんですか」

「襲撃者3、それなりに手練れです」

「……くそ、この往来で来るかよ」

 

 近衛だけあるなこの人、駄狐も多分気付いてて雛菊さんに俺を守らせてやがった。俺のプライドが傷付くかもとか考えんなよ、必要ならいくらでも協力するさ。

 3方向。前後と屋台が並ぶ方向の建物の間から急速に迫る気配が有る。ここでバトンを抜くか、一瞬の逡巡。その隙に仕手は俺を間合いに捉えていたと思う。

 

「済まないが、お前等では遅過ぎる」

 

 そして、そんな仕手を鎧袖一触で処理する雛菊さん。ゴミ箱を探して持ち歩いていたと思っていた串を、目に見えない程の速さで腕を振るって投げ付けていた。人と人の間を縫い飛んだ串は、前方から迫る仕手の肩に深々と突き刺さる。痛みに一瞬気を取られた仕手は、糸が切れたかの様にその場で倒れる。当身すら早すぎるだろ、マジで見えなかったぞ。

 

「ふむ、駄狐はまだ仕事をしているか。中々に手強い相手です」

「確かに、そうなんでしょうね……」

 

 多分、家で寛いでる姿が本来のこの人なのだろう。しかし、陽出國で最高の貴人である帝を守る役割を与えられたこの人の強さその一角を初めて理解出来た気がした。

 

「タタラ殿、あの鉄板で焼いているふわふわな物は何ですか!?」

「……パンケーキですね、次はアレですか」

「はい!」

 

 ……あくまでも気がしただけかも知れない。

 多分、駄狐が旅の中でフォローし続けたのはこの人が変に隙だらけだからだと思う。

 うん、絶対この人のポンコツはマジだ。




【神様紹介ダリア】
「機巧乙女ダリア・ジュロンが、この世界の神々に付いて紹介します。本日の神様はこの方です」

『軍神』

「この世界において最大の宗教であり、施設軍に近い物を持っています。神像は槍と盾を持ち剣を佩いた厳しい表情の女神像になります。信仰される理由としましては、この世界は大なり小なり争いが絶え無いためと言えます。街角で行われる喧嘩も、国同士で行われる戦争も等しく公平と公正を齎します。認めて聖人と認定しているのは所属数約9千万人の内、100名程とされていてその筆頭が『ワールウィンド』にて都市長の護衛の任に就いている聖人カラムスになります。しかし、身体を守れても胃は守れていない様子ですね。本来は厳しい女神ではなく、大切な人達を守る為に立ち上がった神性になります。その為、殊の外子供に甘い逸話などが見付かります。総本山に祀られている神像は約1000年前に出来た物で、長く信仰を集めました。マスターが見た彼女は右手に公平と公正を齎す天秤と大きな盾を手にした慈愛に満ちた表情を浮かべる女神だそうですが、仮に神像を見ずに本編と同じようにミスリルを加工していた場合は湯船に浸かって疲れを癒している姿になったそうです」

この小説は……

  • エテル・ネル=バーラルとの物語
  • 虎熊四葩との物語
  • 騎士タチアとの物語
  • 探索者パーティハーレム
  • 聖人カラムスとの物語
  • 都市長との物語
  • 熟女ハーレム
  • シャムスとの物語
  • エストとの物語
  • 後輩二人との物語
  • 探索者ローガスとの物語
  • 『天使長』に愛されて夜も眠れない
  • 異世界追放
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