既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
「タタラさんの発想はなんというか……奇想天外ですね」
「理解不能で構いませんよ、シスター・カレハ」
鍛冶場に入り装備を作ろうとした俺に対して、シスター・カレハがそう言ってきた。言葉を選んだシスター・カレハには悪いが、発想に付いては散々言われているので馴れている。
先ずはシスター・カレハの盾と鉄塊を炉に入れて溶かす事からスタートだ、特にごっちゃになっている鉄塊の魔法金属を分けないと面倒になる事が分かる。正しい配分で正しく仕立て無ければ良い武具は作れない、それが俺の持論である。炉の中で溶けた所で『クラフト』スキルを使用して素材を選り分ける。
ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトと種類別に分ける。武器と盾にそれぞれ使う素材を纏めていく、武器はほとんどがアダマンタイトだがオリハルコンも少量混ぜる。残りは盾側、それでもアダマンタイトが多少余りそうだ。
手甲か脚甲くらいは作れそうだから、追加で作るかな。
先ずはソードメイスの作成だ。アダマンタイトは初めて加工するが、何となく性質が魔鉄に似ていて殊の外加工がしやすく感じる。早速アダマンタイトとオリハルコンの鍛造を始めた。硬く、魔力が通り難いが路は有るので集中して魔力を操作してアダマンタイトと魔力の通りは良いが変形させるまでの魔力量が多いオリハルコンを鍛造出来る状態にする。芯金にオリハルコンを据え挟むようにアダマンタイトを重ねる。鎚で叩き、折り曲げ重ね、再び叩く。繰り返す事16回、約20万層に届く複合魔法合金が出来上がる。剣身として130cmとなるように整えて、刃を研ぐ。余りにも硬く、此処でも魔力を通して何とか削れる迄軟化させる。丁寧に丁寧に研いでいき、出来上がる剣身。アダマンタイト特有の見た目なのか、それともオリハルコンと共に打ち上げたからか夜空を閉じ込めたかのように内に光を宿した黒い剣身。削り出された刃はオリハルコンの金色。オーク材を削り柄にして出来上がる全長150cm、刃の厚みは6cmに幅は10cm。刃自体は鈍角だが、オリハルコンの刃は使用者の精神に反応してその切れ味を引き上げる特性を持つ。鍛造によりアダマンタイトとオリハルコンが一つの合金になったからか、双方の特性を得ているらしい。アダマンタイトの硬さを8割、オリハルコンの精神感応を6割得ている模様だ。これは、俺も作り慣れれば双方の特性を完全に受け継いだ物が作れるかも知れない。アダマンタイトに比べれば強度が落ちているが、オリハルコンの精神感応により恐らくアダマンタイト単体よりも硬度を増せるだろう……またヤバいものが出来上がった気がする。
「シスター・カレハ、取り敢えずソードメイスが出来たので受け取って下さい」
一仕事を終えて汗を拭いつつ出来た武器を渡す、驚いた様子のシスター・カレハは恭しくソードメイスを受け取る。
「……グレートソードに似た見た目なのに、確かにメイスなのですねコレは」
広めの面と剣にしてはかなりの厚みを持つ為に自然とスキルも『槌適性』が働いたのだろう、俺も手にした時スキルが発動したのが分かった。
「重さはどうですか?」
「よく馴染みます、長さも振りやすいしバランスもいい……素晴らしい腕前ですねタタラさん」
シスター・カレハは俺にそう言って笑うが、常とは違い何処か肉食獣を思わせる力強い笑みだ。怖い。
「コレから盾を作りますが……魔導具なので多分相応の時間が掛かります。すみませんが、ちょっと集中したいので……」
「そうですか、分かりました。庭先で素振りさせて貰いますね」
俺の言わんとしている事を理解して席を外してくれた。
さて、此処から少しズルをする。取り出すのは此処最近皆が、と言うかダリアが集めて来た大量の大型の魔石。何でもタチアの影響を加味しても異常な数の『リッチ』と交戦したらしく、『死霊王の衣』の素材と大型から特大の魔石を幾つも持ち帰って来た。コレで複数の『浮身石』を作る……本来は『卵』の方が高価だが、今回必要なのは此方だ。
魔導盾の親機にはミスリルとオリハルコンそして少量のアダマンタイト、ソードメイスと同じように鍛造していく。出来上がるのは小振りなカイトシールドだ、何方かと言うとヒーターシールドの方が形状は近いかも知れない。身体全体を覆う大きさは無いが、この盾の本質はそこには無い。裏面に『結界』の術式と『念話』の術式を刻み、親機の完成だ。
次にミスリルとオリハルコンを合わせて鍛造して合金を作り、台形に形成して術式を刻む。子機になる小盾の内側に台座を作り、そこを基点として『結界』と『感応』の術式を刻む。そして台座に『浮身石』をはめ込み、クラフトで外れない様に固定して完成だ。
親機に6枚の子機を嵌めて出来上がる盾、親機の表面に乙女様を描かなければならないがその前にシスター・カレハに見てもらう必要が有る。それに、余ったアダマンタイトの使用法も確認したい。
そうして盾を片手に庭先に出ると、物凄い轟音と衝撃波が身体を打って来た。思わず盾を掲げてしまったが、恐る恐るその影から顔を出すと……見えたのは怪獣大決戦だった。
「やはり、軍神様のお認めになった聖人様はお強いですね……」
「よく言う、盾を持たぬ構えで私の攻撃をこうまで捌く者は居なかったぞ?」
「お褒めに預かり光栄です」
金髪の人型怪獣カラムスさんと、シスター怪獣カレハが視認が困難な速度で武器を打ち合わせている。うん、何でカラムスさんの『フィエルテ』の数倍有る重量のソードメイスで同じくらいの速度出してるんだこのシスター?
「くく、ジュロンの武器を持った貴女とやり合う日が来ようとはな?」
「私としては、軍神様と敵対する意思など生涯持ちえ無いのですけど」
「よく言う、教会を襲った野盗100人を血祭りに上げ改心させた等と逸話を持つ者が」
「昔のやんちゃですわ」
野盗百人血祭りってなに、シスター・カレハは昔なにをやってたの?
「お、おいタタラ……」
そんな風に呆然としていた横に声を掛けてくる聞き慣れた声、幼馴染のバカがマジでビビった様子で近付いて来た。お前でもビビるんだなこの状況。
「聖人カラムスがお前のお得意様ってのは良いんだけどさ、何であの
「……パラディン?」
「お前知らないのかよ……いや、お前はそう言う奴だったな」
呆れと言うか、感心と言うか微妙なラインの溜息を吐かれた。と言うか、このバカか”あの“とか言ってるのって相当な逸話持ちじゃねぇか?
「あの人は癒しの乙女様の宗派でも歴代三指に入る超武闘派だぞ、それこそ血に塗れた逸話なら事欠かないくらいだ」
「……え、あんなに優しい人が?」
「お前くらいだよ、そんな人の優しさを引き出す奴」
そうか? シスター・カレハは真心には真心に返す人だと思うんだが、人の事を見守ったりしてるし。
「さっき聖人カラムスが言った野盗百人血祭りなんて序の口だぞ。罪人と断じられた無実の者を庇って軍神様の騎士50人を退けたとか、魔神の封印を解こうとした邪教を血祭りに上げたとか、堕ちた精霊を一人で倒したとか」
「英雄譚の主人公か何かか?」
「間違っちゃいないな、だがコレでも小規模な方だぞ」
普段のシスター・カレハ像と全く合わないのだが。いや、目の前のコレを見る限り合ってるのだろう。と言うか、今の逸話で小規模ってなんだ?
「宗派が宗派なら聖人確定じゃねぇか……癒しの乙女様が医師とか薬剤師を聖人認定するから外れてるだけで、やってることが英雄のそれじゃん」
「マジでそれな」
カラムスさんが【展開】した『フィエルテ』を振り、縦横無尽に様々な角度から斬撃を放つ。それに対してシスター・カレハがソードメイスで弾き逸らしいなしと見事に防いでいる。うん、一歩間違えたら斬られかねない攻撃だな?
「で、その盾は?」
「コレもシスター・カレハの依頼品、説明出来る気がしねぇ……」
「アレ、止まるまで何時間掛かるんだろうな?」
「さっきスタミナ落ちたって言っていたけど、今でも俺よりスタミナ有りそうだな」
「俺も勝てる気しないぞ」
男二人、怪獣がぶつかり合い生み出す破壊の嵐を遠巻きにして途方に暮れる。そんな俺達に近付く気配がひとつ。
「タ〜タラ♪」
都市長、ガチギレしていらっしゃる。隣に居るバカがガタガタ震え始めてるぞおい。
「動力炉の改修とか、シスター・カレハの武具とか何で胃痛案件を増やすのかしら? かしら?」
怖い。純粋に怖い。笑顔なのに
「ど、動力炉は運用時の暴走を控えさせる為で……」
「私、アレの概要見て丸一日寝込んだのだけれど?」
「それで昨日来なかったのか……」
「おかげで鳥型ゴーレムが夜中に資料持ってきた時は2日分の書類を終わらせてる最中だったわ。貴方、私に何か恨みが有るのかしら? かしら?」
「あの、語尾を繰り返されるとクソ怖いので控えて貰え……」
「ハァ?」
「なんでもないです」
怖い。
「それで、その盾は?」
「いえ、その……」
「見せなさい」
「あの……」
「見せろ」
「はい」
怖い。助けて。
「……あんた、コレ幾らで引受けたの?」
「いえ、金はその……」
「言っておくけど、コレ技術料だけで軽く億に届くわよ。素材まで含めたら10億には行かなくても5億は越えるわ」
「ひぇ」
値段を聞いていたバカが小さく悲鳴を上げた。うん、予想はしていた。結界を展開する子機と、それを制御する親機。素材はアダマンタイト、オリハルコン、ミスリルの三大魔法金属。魔力の補充と『浮遊』術式代わりの『浮身石』を多数。コレで億に届かなかったら詐欺に近いだろう。
「……教会への寄進にするつもり、だったわね?」
「……はい」
「貴方ね、いくら母親代わりの相手だからってやって良いことと悪い事が有るのよ。普段から50万も寄進して、挙句食費の援助までして……施しって言うにも行き過ぎよ」
都市長は溜息を吐いてそう叱ってくれる。
「貴方、私が気付かないと思ってるかも知れないけどね。偶に私宛に採算度外視の差し入れしたりするでしょ?」
「……なんの事ですかね?」
「本国でも見ないような『結界』を刻んだアクセサリー、最高位回復魔法を封入した『封印結晶』。ミスリルの銀糸で作ったインナーとかもそうね?」
「すみませんでした」
全部バレてる。カラムスさんに協力して貰って昔送ったのがアクセサリーと封印結晶で、最近ミスリルが大量に手に入ったから服の下に着れるタイプの防具としてインナーシャツを贈ったのだ。カラムスさんも呆れてたなあの時。
「その、本当は『卵』を封印結晶に見立てた再利用可能な回復結晶を作ろうと思ってたんですけど……」
「本気でやめなさい、私の胃が炸裂するわよ」
額に手を当てて溜息を吐く都市長、俺が吐かせているのだがそんなに溜息を吐いていると幸せが遠のきそうだな。
「タタラ、お前なんてもん作ってるんだよ……」
「いや、流石に相手の実力は見て出すぞ? お前の懐じゃ無理そうだから出してないのとかいっぱいあるし」
「当たり前だ、お前の本気の武器とか俺のレベルに見合わん過剰戦力だわ」
バカが思わず口出ししてきた。
「あら、貴方は?」
「あ、すみません。コイツの幼馴染やってます」
「そうなの、貴方も大変ね?」
「まぁ、慣れも有りますけど……コイツは親友なんで」
「そう、互いにその縁を大切にしなさい」
バカに今更気付いた都市長、まぁ仕方ないっちゃ仕方ないか。俺への怒りで視野狭窄だったしな。
「それで、貴方の用件は?」
「あ、そうだった。タタラ、防具を良いか?」
「おう、出来てるから試着してくれ」
脇で戦い続けて庭を荒らす怪獣二人は無視して、バカの鎧と籠手を取り出す。鮮やかな赤いマントに目を輝かせるバカに説明しながら鎧を着せ、籠手を嵌めさせる。
「どうだ?」
「ちと脇の締付が痛いな、それと指が緩い」
「分かった」
手早く指摘されたところを直す、不動では分かりにくいので得物を持たせて型を取らせた後振るわせ見付かる不具合を直していく。安全に探索をし、無事に帰って来れる様に妥協は一切しない。気付けば脇の轟音は止んでいたが、気にせずバカの鎧を調整する。
「……どうだ?」
「……完璧だな。こんなにスゲェのか、専用に仕立ててもらうってのは」
何処か感動している声でそう零したバカは、左右の手に一本ずつ剣を握り二刀流を披露する。流麗、その一言に尽きる剣舞は武骨さは有るが今迄積み上げてきたバカの努力が見えて最高に格好良かった。
「ちょっと剣を貸せ、痛みが見えるから直してやる」
「おい」
「初めての専用装備の祝いだ、サービスしとくから次は魔鉄で剣を頼んでくれ」
そう言って工房に戻り、手早く調整する。片刃剣の方は魔石だけでは無理だったので鉄のインゴットを一つ取り出して軽く打ち直す。柄の緩み等も直せば強化が出来ていた。
「ほれ」
「10分しか経ってないのに二本とも終わらせるか普通」
「コレが俺の普通だ、文句は受け付けんぞ」
バカは愛剣二本を前に苦笑いをした。そして、俺達のやり取りを微笑ましく見ている大人達。
「ジュロンにも同年代かつ同性の友人が居たのだな」
「居ますよ、失礼な」
「女の子ばかりに囲まれていて不安でしたが、健全な友情も育めているのですね」
「普段の俺が不健全みたいに言わないで下さいよ」
「何にしても、貴方はその縁を大切にしなさいな」
「それは……はい」
カラムスさんに揶揄われ、シスター・カレハに安心され、都市長に諌めされる。俺は、良い大人達に恵まれてるな。
「悪い、ちょっと調子を見たいから俺はこのまま探索に行くわ」
「あ、悪いな待たせたみたいで」
「気にしてねぇよ、聖人カラムスと聖堂騎士カレハの模擬戦なんて値千金の物まで見れたしこんな良い武具を手にできたんだ。しかもエテルから飯まで恵んで貰ったしな、これ以上は罰当たりってもんだ」
「そうか。なら、行って来い」
「おう、またな!」
バカを送り出す。無事に帰って来い、なんて言わない。恥ずかしいのも有るが、彼奴が必ず帰ってくると信じているから。男の友情なんてこんなもんだろ。
「……あれ、もう帰っちゃった?」
そんなタイミングでエテルが顔を出して来た。トレーの上には軽食と、人数分のお茶が乗せてあったが丁度バカが行ってしまったタイミングだ。しかし、無駄にはならなそうだ。
「……おはよう、ございます」
髪がボサボサで目も充血気味、更にまだ眠いのか目を手で擦っているダリアが起きてきた。
「……顔洗ってこい、ダリア」
「いえす、まいますたぁ……」
洗顔を促すと、気の抜けた了承の声と共に洗面台へ向かって行った。
「元気そうね、あの子」
「元気ですよ、俺の作った魔導具見ると興奮して長文を早口で捲し立てますし」
「どういう状況よ……」
多分、ダリアがシスター・カレハの盾を見たらその光景を目に出来ますよ都市長。
そしてシスター・カレハが俺の持つ盾に視線を向けて口を開いた。
「それで、タタラさん。そちらが私の盾、でしょうか?」
「あ、はい。一先ずは試して貰って、不満が有れば作り直して来ます」
「……この魔導具を、作り直す?」
都市長、そこに疑問を持たないで。別に作り直すのは問題ないでしょ、素材はそのまま使うんだし。
俺から盾を受け取ったシスター・カレハは、左腕に盾を装着する。少し小さ目のカイトシールドに見えるが、この盾の本質はそこでは無い。
「大きさは半端ですし、重さが少し過ぎますね……」
「それではシスター・カレハ、盾を展開して下さい」
「……展開?」
「はい、昨日話したようにその盾は魔導具です。なので魔力を流して起動させる事で本領を発揮します」
「……盾ですよね?」
「ええ、盾です」
俺の言葉に恐る恐ると言った雰囲気で盾に魔力を流し込むシスター・カレハ、そして盾は魔力に反応して6枚の子機が宙に浮かぶ。親機を持つシスター・カレハを中心に子機は浮遊して待機している、設定は成功か。
「た、タタラさん? 盾が分かれて私を囲んでいるのですが!?」
「うん、正常に稼働してますね。そのまま思念を送って操作してみて下さい」
「思念!? 操作!?」
「……何かしら、新鮮な光景に見えるわ」
「最近我々が無くした反応ですね、アレ」
戸惑うシスター・カレハを見た都市長とカラムスさんが何処か郷愁を感じた表情をしていた。
俺はそのままシスター・カレハに操作のイメージを伝えて、少しずつ慣れさせていく。そして、だいたい1時間が経った。
「ふはは! 鉄壁とはこの事か、パラディン・カレハ!!」
「私はもう聖堂騎士では無いのですよ、聖人カラムス!」
再び始まった怪獣大決戦。我が家の庭のライフはとっくにゼロを越えてマイナスである。頼むから転移門は壊さないで欲しい。
「その盾、厄介だな!」
「貴女の剣、剣身が見えなくなるのも狡いですよ!」
「防いでいてよく言う!」
「『結界』を容易く貫く一撃はやめて欲しい物ですね!」
口で言い合い、武器を交わし合う。カラムスさん相手にこんなに戦える人って居るんだなと感心する。と言うか、あの結界って元々対魔法結界なのになんで物理的な防御力まで得てるんだ?
「素晴らしい、アレが名工タタラ・ジュロンの構築した防御魔導具……親機と複数の子機を一つのセットとして運用する複合防御兵装。親機を中心に子機を展開させ、子機の間に結界を展開し防衛線を作り上げる。子機に搭載された『浮身石』が共鳴して展開される『結界』の出力を上げ、斥力を発生させて物理攻撃すらも耐えうる光の壁を生み出す。その光景は神聖さすらも見るものに与え、持つ者への感謝が奉じる神への信仰となるでしょう。我ら機巧乙女が持ったならば、神の盾と神の槍を持ちし神兵として世に平穏を齎しましょう」
「……タタラ、この子どうしたの?」
「平常運転です」
顔を洗ってきたダリアがカラムスさんとシスター・カレハの激突を見て口を開いた結果、都市長がドン引きした。コレも既に何時ものことと受け入れている自分が怖い。
と言うか『結界』の効果って『浮身石』の影響なのか、解説聞くまで分かんなかったな。
「マスター、私もあの盾が欲しいです!」
「素材が足りないから無理」
「ミスリルは大量に有りますよね!?」
「オリハルコンとアダマンタイトが足りてない、それにアレ作るとダリアの魔導鎧が遠のくぞ?」
「う……我慢します」
「よろしい」
ダリアの頭をくしゃくしゃと撫でると、迷惑そうな顔をされた。駄狐とは撫で方の好みが違ったか、仲良く喧嘩してるから同じだと思ってしまった。
「タタラ、夕飯どうしよう?」
「そろそろ仕込みの時間か、食材何が有ったかな……」
「貴方達、庭が破壊されてるのに余裕ね……」
難しく考えるだけ無駄だと想いますよ、都市長。
本日は炊く米に醤油、味醂、料理酒、鶏肉と刻み生姜を入れて時間を置き馴染ませる。1時間経ったら炊飯を開始するタイマーを掛けておく。鶏の炊き込みご飯だ、出来れば椎茸や油揚げとかも入れたかったが、生憎と『ワールウィンド』には無いのだ。
おかずはシンプルに塩鮭、では無くサーモンの塩漬けだ。真水で丁寧に塩を抜いて、それでも塩味が強いので酒蒸しにする。網焼きグリルなんて作ってないので、フライパンに手製の網を敷き酒を垂らす調理方法だが…まだ全員帰ってきて無いので準備だけ済ませる。
「あらあら、タタラさんも随分と上達しましたね」
嬉しそうな声音でシスター・カレハが背後から声を掛けて来た。思わず肩が震えるが、集中が解けるタイミングで声を掛けられると心臓に悪い。
振り返ると、盾を片手に持ったシスター・カレハが居た。
「あ、盾の具合はどうでしたか?」
「驚く程に今の私に最適ですね、以前のカイトシールドよりも馴染みます」
どうやら気に入って貰えたらしい。後は仕上げに盾の表面に癒しの乙女様の絵を描けば終わりか。
一度盾を預かって、魔石を一つ手に持って『クラフト』スキルを使用する。頭の中に浮かぶのは教会で見慣れた神像の姿、それをイメージして盾の表面に遍く人々の癒しを願う乙女様の姿を描く。
そうして出来上がったのは、祈りを捧げる青年の頭を撫でる女性の姿だった……ナニコレ?
「え、何がどうしてこうなった?」
思わず零した俺を見て気になったのか、カラムスさんが盾を覗き込み絶句した。なんだろう、この反応は同じ光景を何処かで見たかのようなソレだ。
そんな俺達を見てシスター・カレハの覗き込んでくる。
「あらあらまぁまぁ!」
驚いたと言うか、喜んでるような声だ。何故そんな反応をするのか?
「コレがタタラさんから見た癒しの乙女様の姿なんですね、祈りを捧げるタタラさんの頭を撫でて愛でるなんて……お茶目な姿ですね」
「……え、コレ俺なのか?」
宗教画の1枚も知らずに見慣れた神像をイメージしたら全く知らない場面が出て来た、よく見たらコレ何時も行ってるシスター・カレハの教会じゃないか。
「凄いね、タタラ。描かれてるのが自画像込みって事を抜きにしても癒しの乙女様が持つ優しいイメージがよく出てるよ」
「待って、エテルから見てこの青年って俺なの?」
「どう見てもタタラじゃん」
嘘だろ、単なる浮き彫りなだけなのに俺って認定出来るってどういう事だ?
「ジュロン、お前もしかしてイメージを投影する形で神像とか作ってないだろうな?」
「あ、いや……その」
「……軍神様に対して不敬な造形の神像がな」
「すみませんでした!」
勢いよく頭を下げる。以前、総本山に行って作った神像が行方不明になってしまったが……どうも見付かってしまったらしい。
「……やはり、アレを作ったのはお前か。せいぜい私や教皇それに巫女にしかバレていないから安心しろ、軍神様も喜んでいたようだしな」
「……え、マジで?」
「驚くことにマジだ」
嘘だろ、なんでだ? いや、そう言えば昨日『天使長』からの依頼内容を考えると神々の間ではアレが流行っているらしいしな……どんな感性だよ。
シスター・カレハはどうもこの盾の絵を気に入ってしまったらしく、今更手を加える事も出来ない……詰んだ。
「素晴らしい武具をありがとう御座います、タタラさん。此方の報酬なのですが……」
と、シスター・カレハが報酬について話そうとした時だ。都市長が横から声を掛けてきた。
「シスター・カレハ、申し訳ないのだけれど……この装備に対しての技術料について良いかしら?」
「あら、都市長様?」
「少し、タタラのやり過ぎで装備の金額が桁違いになってしまうの」
「あの、都市長! 俺は……」
「ジュロン、身内だとかの判定は無しだ。お前が……次期工匠長が安請け合いすればこの『ワールウィンド』内での大きな問題になる」
「っ!!」
カラムスさんに注意されて、言葉に詰まる。現時点でのクラフト技術で俺に並べる人間が居ないと認定されているのだ、その俺が本来は億を越える額の仕事をしてタダも同然で受ける……他のクラフター達が強要されたとして言い訳に使われてしまう。
俺は『ワールウィンド』に住むクラフター達の為に、情を切り捨て無ければならない。親も同然の人に義理を果たせない。
なんて裏切り行為だ。吐き気がする。
「あら、成程……でしたら大丈夫です。タタラさんにお渡しする物は元から決めていますので」
そう言って、シスター・カレハはインベントリから一領の甲冑を取り出した……いやコレ!?
「こ、古代の魔導鎧!? しかもこれ、トンデモ無い質だぞ!?」
現代価格で多分、80億くらいになる代物だ。歴史的な価値もそうだが使われているのが三大魔法金属……その中でも最も多いのがアダマンタイト。しかも動力が神核とか、どんだけヤベェ物を出して来るんだこの人。
「かつてやんちゃしてた頃に拾ったは良いのですが、身体に合いませんでしたので死蔵してました。こちらならこの武具と釣り合いが取れているでしょう?」
「……嘘でしょ?」
都市長も吐きそうになってる、やっぱりコレ相当ヤバいものらしい。恐る恐る『鑑定』を掛けて見る。
魔導鎧『リインフォース』
体力 +50
魔力 0
技力 0
物理攻撃+20
物理防御+55
魔法攻撃+15
魔法防御+40
速力 +10
移動力 +1
特殊能力『高威力砲撃』『肉体再生』
またとんでもない性能してるなコレ、特殊能力も『砲撃』じゃなくて『高威力砲撃』って……。しかし、この代物を前に空気を読まない奴が一人いた。
「……マスターが作った物の方が上では?」
忖度も何も無く、ただ思った事を口にするダリアだ。
「流石にそうは言えんだろ、上昇幅は此方の方が上だ」
「いえ、マスターは忘れていると思いますが……マスターの魔導鎧には神核を搭載していません。その上で素材は基本的に魔鉄と形状記憶合金と言う人造魔法金属を用いて近い上昇幅を誇っています。でしたら、素材が同じならマスターの作品の方が上の筈です」
多分に願望込みでは無いかと思うが、ダリアはそう信じてくれているのか。なら、少しは応えたい。俺だって男だ、見栄を張りたくなる。
「この魔導鎧はそのままにして、取り敢えず俺の『黒鐵』を改修してみるか。起動術式に『卵』を使ってどうなるかは見てみないとな」
「はい、機巧乙女ダリアは工匠タタラ・ジュロンこそが史上最高の工匠だと信じています」
俺とダリアのやり取りを見ていたシスター・カレハは、とても嬉しそうだった。過去よりも進んだ未来、乗り越えていく気概を求めている……そんな雰囲気だ。
「それと、武器を作った際に余ったアダマンタイトの端材。そちらも差し上げます」
「……は?」
いや、何で気付かれてた?
シスター・カレハは俺の反応を見て我が意を得たりと笑う、どうやらカマをかけられたらしい。
「タタラさん、余った素材で私の防具辺りを考えていたのでしょう?」
バレてる。悪戯が知られた子供みたいな気恥ずかしさが湧いてくる中、シスター・カレハは言葉を続けてくる。
「こちらの魔導鎧とアダマンタイト約2kg分、これを報酬としてお渡しすれば十分ではないですか?」
「……過剰、とも言い切れない絶妙なラインね。分かりました、シスター・カレハの報酬を認めます」
都市長は何処か疲れた顔をして、そう言った。
もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり
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タタラとエテルの立場逆転
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現パロ(エテルヒロイン)
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現パロ(四葩幼馴染)
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武器が擬人化してタタラへ物申す
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年増組と同い年
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聖人カレハ
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原作エテルとタタラ
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ガチ妹ダリア・ジュロン