※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中



何故か『現パロ:虎熊四葩幼馴染if』なる妄想が浮かぶ。
【⊕皿⊕】<需要なんて無いのに


鍛冶師は再誕させる

「しかし、古代の魔導鎧とか現存するの何領有るんだろうな。博物館に寄贈しろとか言われてもあんまり拒否出来ない代物だと思う」

「マスター、魔導鎧は戦う為に生み出されました。博物館で錆びゆくよりも、戰場で散ることを望むでしょう」

 

 俺の呟きに反応したダリア、人工物にアクセス出来る性質を持つダリアの場合は魔導鎧と意思の疎通が出来ると言われても信じてしまいそうだ。

 

「流石に潰すのは歴史的な価値から避けて欲しいところね」

「まぁ、俺も研究資料として残して置きたいですね。古代のクラフターがどんな哲学で魔導具を作ったのか……ヤバい、ワクワクしてきた」

「分かるわ、温故知新こそが発展の礎よね」

「……クラフターと言う人種は子供っぽいですね」

 

 『リインフォース』を見る俺と都市長は同じ心でその姿を見ているのだろう、ダリアが呆れ気味だが気にしている余裕は無い。

 

「気に入って貰えたようで嬉しいわ。男の子だからこういうのが好きなのかと思ったら大正解ですね」

 

 シスター・カレハはニコニコと笑っている。本当、都市長と言い一生精神的に勝てる気がしない人だな。

 

「あ、そうだわ。タタラさん、ジャンク品の買い取りとかして頂けるかしら?」

「ジャンク品、ですか?」

 

 また唐突だ。いきなりミスリルやオリハルコンを出されても困るが、物を見せて貰ってから判断しよう。

 

「取り敢えず、見せて貰えます?」

「ええ、此等なのですけど」

 

 そう言って出て来るのは、大量の武器や防具の残骸だ。主に鉄で鋼もチラホラと見える。ざっと50kgは有りそうなジャンク品だった。

 

「お恥ずかしながら、現役時代にダメにした武器の残骸です」

「……何故後生大事に持っていたのだ、パラディン・カレハ」

 

 カラムスさんが思わずツッコミを入れるのも分かる、どれだけ壊して来たんだ……そりゃあんな金属塊が武器に落ち着くわな。

 一通り見て、金属だけで50kgでその他の革や布が8kgだった。買い取りは鉄だけに値段が付く、革や布は再利用出来そうに無かった。

 

「5万ですかね、ちょっと布や革が傷みすぎてて金属にしか値がつけられませんでした」

「あら、それでもお金になるのなら助かります。うちには大食いが居ますので」

 

 大食いはシスター・ランカの事だろうな、また生活費の寄進しないとダメかな。

 シスター・ランカ、今ならうちに居候している雛菊さんと仲良くなれそうだな。まぁ、いくら食べても肥れないシスター・ランカと肥やす天狗まっしぐらな雛菊さんでは食の彼是で仲違いしそうでは有るが。

 

「マスター、コレだけ鉄が有れば私の魔導鎧も出来るのではないでしょうか?」

「うん、ハイエンドには出来ないがいけはするな」

 

 俺の答えに少し不満を見せるダリア、ローエンドモデルの『サーシアム』なら作れるだろうがハイエンドの『グラジオラス』を作成するには魔法金属が足りてない。それに、流体魔石式のジェットエンジンは設計は終わっているが製作と試験を行えていない。そもそも、流体魔石を使用するより『錬金術師の卵』に術式を機動させる方法でも同等以上の効果を出せる可能性すら見えている現状だ。ハイエンドモデルはダリアの諸々を抜きにして一度完全な形で完成させたい、ダリア用のフルカスタマイズはその後でも大丈夫な筈だ。

 

「それよりも先にタタラの鎧に動力を乗せて検証でしょう?」

 

 横からそう言ってきたのは都市長だ。なんというか、目が強い光を内包してる気がする。もしや、俺の作成現場に立ち会うつもりだろうか?

 人造オリハルコンを作成する時みたいに一緒に作業出来たらちょっと嬉しい、あの時はとても楽しかった。

 シスター・カレハも俺の鎧について見学していくつもりらしい、見られて困る事も無いし工房で作業をしてしまおう。

 インベントリから『黒鐵』を取り出して、最近作製した整備用のハンガーに架ける。アームが伸びて、鎧の四肢を固定していく……我が手でロマンのある光景を作れて満足だ。

 完全に固定された所で胸鎧と胴鎧を開き、背甲にある非霊核式稼働術式が据えられた箇所を外す。こういう時に試作型はブロックで分けて作っているから便利だ。ミスリルと『卵』をインベントリから取り出し、ミスリルを『卵』を収められるケース状に加工して内部と外部に『卵』の魔力を伝達させる為の回路を描く。嵌めて回路が問題無く鎧の物と一致するのを確認してから『卵』をケースに収めて接続する。『卵』から流れる魔力が回路を光らせ、『黒鐵』が起動したのを確認した。

 

「……ヤバいな、鎧の強度が足りてない」

 

 走る魔力が段々と大きくなり、各部の人工筋肉に過剰な負荷を掛け始めた。形状記憶合金が焼けて黒ずみ始め、鎧が煙を上げ始める。最後には人工筋肉が溶け落ちて『黒鐵』がバラバラになる。

 

「流石に人工筋肉の方を研究し直さないと駄目か」

「タタラ、貴方途中からこうなるの分かってたわね?」

 

 バラバラになった『黒鐵』をボヤキながら拾う俺を見て、咎めるように都市長がそう言った。

 

「そりゃ、作った張本人ですからね。『卵』から流れる魔力量も、人工筋肉の限界も理解してます……それでも一度は結果を見届けないと」

 

 人工筋肉について宛は有るのだが、材料の方が集まらない。予想ではミスリル500gに対して一つ有れば問題無く出来るとは思うが、持ちうる敵と戦えて無い、ダンジョンで姿を見せるのはもっと深い階層だ。代替え品は周りから悲鳴が上がりそうだから使うか悩む、完成は先になるだろう。

 

「で、新しい人工筋肉の目処は立ってるの?」

「実物は有りませんが理論と予測なら」

「具体的には?」

「ミスリルまたはアダマンタイトに対して霊核による存在昇華ですね、予測ではミスリルの方が本命ですが」

 

 ミスリルとオリハルコンに触れていた感覚から、なんとなくレベルでは有るがミスリルと形状記憶合金の構成が似ていると感じるのだ。

 

「ミスリルに対しての存在昇華って貴方……」

「問題は使う魔力の方ですね」

「マスター、魔鉄のように強化が出来ないのですか?」

「魔石じゃ出力不足だな、必要なのは霊核レベルの高出力かつ高密度の魔力になる。手元でそれを叶えるとなると」

「『卵』になりますね」

「そうなる……こういう所で手詰まり感が出るんだよな」

「ひとっ走り『リッチ』を狩って来ますか?」

「タチアが居ないから出会える確率が低いぞ」

 

 実はシスター・カレハの盾に使った『浮身石』分が有れば余りの魔石と合わせて4つ作れたのは内緒である、都市長には気付かれて無いがアレを使った事を知られたら盾の値段を引き上げられるからとても語れ無かった。……いや、ダリアが早口で言ってたから気付かれてるか。

 

「あら、タタラさん。霊核がご入用ですか?」

 

 そんな俺達に声を掛けて来たシスター・カレハ。思わずそちらに顔を向けると、インベントリの中から幾つかの物体を出して来た。

 

「昔のやんちゃで拾った天使族と魔族の霊核です、幾らで買って頂けますか?」

「噂に聞く核ぶっこ抜きで手に入れたと言うやつか?」

 

 取り出した物に対してカラムスさんがそんな事を言う、マジで何やってるんだろうシスター・カレハ。穏やかな母さんの姿から乖離し始めてもう間違えて母さんなんて呼ぶ事も無さそうな気がしてきた。

 

「……タタラ、研究費用として私が資金を出すから取り敢えず受け取りなさい」

「いや、でも……」

「いいから、私に魔法金属の昇華を見せなさい」

 

 都市長に声を掛けられて拒絶しようと目を見れば、瞳孔の開いた(ハイライトオフな)目が俺をガラス玉の様に映していた。

 

「……はい」

 

 そんな目で見詰められたら断れない、怖いもん。

 シスター・カレハから霊核……混合とは言え軽く20個を越える量のそれを受け取り、作業台に置いてからインベントリからミスリルを取り出す。想定したミスリル500gに対して1つの霊核を用意して、魔鉄の生成と同じ様に霊核から魔力を送り込む。やはり魔法金属の中を走る路は先に魔力が通っていて困難だったが、そこは魔鉄や形状記憶合金の生成で慣れ更には『魔力上昇』と『魔法攻撃力上昇』で精度の上がった俺自身の繊細な魔力操作で通していく。初回故に慎重さを心掛けて作成時間は10分、目を開けば500gのミスリルは清らかな光を宿す一つの塊となっていた。すかさず、『鑑定』を掛ければ情報が頭に流れてこない。どうやら成功したらしい。

 

「……本当、自分の目で見ていても信じられないわ」

 

 都市長が溜息混じりにそう零した、シスター・カレハは何が起こったのかを理解出来て無いらしく都市長へ視線を向けている。

 

「魔鉄に続いてミスリルまで存在昇華を果たした次期工匠長さん? コレはなんて名前を付けるのかしら?」

「……なんか清らかな光を放ってるんでセントミスリルで良いんじゃないですかね?」

 

 そう俺が零した時に何時もの繋がる感覚がした。試しにミスリルを鑑定したら『セントミスリル』と名前が出て来た。

 

「それで、コレはどんな風に変わったのかしら」

「『概念鑑定』した限りだと形状記憶合金みたいな変化でしたね、内部を走ってる路がアホ程細くて更にはよく分からない配列してるんで魔力を通すのがキツイですけど、そこを解決して配列整えてやればこうなります。なんで光ってるのかは……他もやってみないと分からないかな?」

 

 一通り作った時の感触から予想を口にすれば、都市長はその情報を素早くメモしていった。ダリアは俺の証言をワードプロセッサを使って報告書として仕立てている、コイツ何気に助手として有能だな?

 

「さっき使ったのって多分天使族の霊核だよな……」

「結果から想定するとその可能性が高いわね、試しに夜闇の眷属の霊核で試しましょう」

 

 都市長の言に従って、鑑定しながら夜闇の眷属の霊核を取り出す。バーラルさんの物に比べると大分小さい下級悪魔族の霊核だった。早速先程のノウハウを活かしてミスリルを昇華させる。まだ馴れていないし、素材が貴重なので多少慎重な作業を行い8分で完成する。先程とは違い、闇を纏うミスリルが出来上がった。

 

「……うわ、さっきとは別物判定だコレ」

「本当、此処まで別物とはね……さしずめ『イヴィルミスリル』ってところかしら?」

 

 そんな都市長の言葉で何かが繋がる感覚がした。俺が満面の笑みで都市長を見ると、やっちまったみたいな表情を浮かべる都市長が居た。

 

「命名ありがとうございます、悩まずに済みました」

「本当、清々しく言うわね貴方……」

 

 名付けとか面倒過ぎるだろ、自分の子供だけで十分だぞそんな苦労。

 

「マスター、『卵』を使用した場合はどうなるのでしょうか?」

「今、手元に1個しか無いから使えんぞ。今迄通りなら多分、無属性の強化入ったミスリルの強化系になるだろうな……あえて呼ぶなら『ハイ・ミスリル』とかそんな感じ」

「成程、既にそちらの名前は考えているのですね」

「……え」

 

 ダリアとの会話を聞いていたのか、今度は都市長が俺を物凄い笑顔で見てくる。さっきの意趣返しか、効果は抜群だよ畜生。

 

「しかし、不思議ですね。清らかな雰囲気を放つミスリルですが、聖属性が付与されているわけでは無いのですね」

 

 言われて気付いたが、確かにセントミスリルには属性が付与されていない。イヴィルミスリルにも闇属性が付与されていなかった……ならこの2つの違いはなんなんだ?

 

「マスター、そんな事よりもどんどん量産してマスターの鎧を作ってしまいましょう。そのノウハウを活かして私の魔導鎧を完成させて貰えれば、例え魔王がこの都市を襲ったとしても退けてみせます」

「普通に出来そうなんだよなぁコイツ……」

 

 今の時点でドラゴンでも単騎で何とか出来るステータスをしてるから、本当に『グラジオラス』が完成したら魔神相手でもやれそうである。

 

「一先ず此処にある霊核をすべてミスリル強化に使うか、一般的な魔導鎧とか作ってもなんか違和感有るし」

「今迄作ったことが無いのに違和感とは」

 

 俺の言葉に反応するカラムスさん。そうは言っても俺の作るものをそう判定してる一人は貴女です。

 確認してみたところ、シスター・カレハから都市長が買い取った霊核は全部で23個有った。結果、手元に出来上がったのはセントミスリル7.5kg、イヴィルミスリル4kgの計11.5kgだ。何となくそれらを全て魔力を通して内部の配列を弄り形状記憶合金と同じ様に銀糸の状態にし、分配が均一になる様に分けてより合わせる。二重螺旋状態にして、コレを腕や脚の関節部を主にする形で張り巡らせる。タチアの『アーラ』と同じ様なインナーマッスルアーマーにするには足りない。少なくとも俺の体重の半分は無いと作れそうに無かった。実験で用意した数ではタチアはおろかダリアの分も足りない、試作するのなら俺の『黒鐵』に人工筋肉を使用した形にしなければ無理だろう。

 『黒鐵』の余った部分を再利用しようとしたらダリアに止められた。

 

「魔鉄は強固ですが、それだけではこの先の階層で苦労すると思われます。裏地に鍛造ミスリルを使用し、基礎防御力を上げるべきです」

「……単純にお前がそういうのを見たいだけだろ?」

「はいっ!」

「元気が有って大変よろしい。タタラ、やりなさい」

「逃げ場が無い……」

 

 都市長からの命令が入ったので『黒鐵』の表面に有る魔鉄だけを剥がした、なんか作業増えてるな。

 鍛冶場に戻りミスリルを鍛造して『黒鐵』の形に合わせて裏地になる部分を作り、魔鉄の裏に貼り付ける。流石に鍛造したらハニカム構造は無理なので、間に衝撃を吸収出来るスライム材を挟んだ。コレでハニカム構造と同じ様に打撃による衝撃を多少は殺せる筈、整備は少し面倒になるけどな。

 内部骨格をついでに鍛造ミスリルで作っていく、一通りパーツが揃ったら工房に戻り魔導鎧用のハンガーにパーツを固定する。フレームを組み立てながら新型人工筋肉を張り巡らせ、強化魔法の術式をミスリルの元素単位で施す。その上にミスリル銀糸で作った布を被せて保護、更に装甲を着けて防御は万全だ。しかし、今回は魔導鎧に動力を設けたのでコレだけでは無い、以前試作していた『砲撃』用のミサイルを搭載したパーツを肩に搭載する、弾頭もダリアに見せた内部に液状魔石を満載したマイクロミサイルだ。作り直した背甲に『卵』を嵌めたブロックを設置し、魔力を通す回路に『卵』の魔力が流れる。全身の回路や人工筋肉が魔力を受けて輝き始めるが、先程とは違い融解する様子は見えない。実験は成功と見ていいだろう。

 

「……コレはまた、先程の魔導鎧と比べても遜色のない物が出来たわね」

「ダリアの言葉を信じるなら、素材って点以外で負ける要素は無いらしいので。タタラ・ジュロン式魔導鎧『黒鉄』シリーズの最新版、名前を付けるなら『玄武』とかですかね」

 

 四葩や雛菊さんが聞いたら文句の一つも入りそうだな、だいそれた名前だと言われかねない。しかし、俺はコレにその名前を付ける。それが、俺の技術は最高だと信じてくれる小さな従者に報いれる事だと思ったから。

 最早馴れた何かが繋がる感覚が走り、目前の鎧に銘が刻まれた。早速『鑑定』を掛ける。

 

 魔導鎧『玄武』

 体力  +100

 魔力   0

 技力   0

 物理攻撃+30

 物理防御+40

 魔法攻撃 0

 魔法防御+60

 速力  +25

 移動力 +2

 特殊能力『砲撃』『魔導砲撃』『自己再生』

 魔導砲撃:消費魔力2〜100 威力:消費魔力/2

 

 なんだかアホみたいに強い物が出来た。物理防御こそ恐らくはアダマンタイトの差で負けているし魔法攻撃力こそ強化されないが、その他の能力が軒並み『リインフォース』を上回っている。『砲撃』は調べる限り対一用の物と面制圧用の物が使えるらしく、見慣れない『魔導砲撃』は魔導銃と同じ理論で魔力弾を撃ち出す機能だ。『自己再生』は時間を掛ければ鎧の破損を自動で修復出来るらしい。自分で作っていてなんだが、頭おかしい性能だろコレ。

 

「……古代技術を学ぶ必要性が歴史的背景の確認しかなくなった気がするわ」

「いえ、まだ砲撃機能の研究と魔法攻撃力を上昇させる要因を調べる必要性が有りますね。コイツはまだまだ強く出来ると思いますよ」

「今の時点で私が見てきた中にかぎっても『クラフト』で作られた人造の魔導鎧で最強なんだけどコレ」

 

 都市長が俺の言葉に呆れたような口調で言うが、思考停止はしたくない。それに、コイツはあくまでも地上戦用である。『サーシアム』に代表される飛行可能な魔導鎧程の真新しさは無い、俺も明日から探索に参加して魔石の収集に努めるか。それに、35階層以降に降りるためにマスク型の魔導具を作って40階層のボス戦も想定する必要が有る。四葩と俺もそうだが、エテルとタチアのレベルアップには階層が自分のレベルより上の場所に挑んだ方が効率的だ。エテルか俺が使えるように、火炎放射器を作成する必要も有るな。やる事が出来てワクワクしている自分が居る……このまま作ってしまうかな。

 

「……タタラ、待ちなさい貴方何を作ろうと……やめ、やめなさい!? カラムス手伝いなさい!」

「は、はい!」

 

 ミスリルを取り出して次の作業を開始しようとすれば、都市長とカラムスさんの二人がかりで止められた。解せぬ。

 

「ああ、コレが奇跡と言うものなのでしょう。金属を魔法金属に昇華させるだけではなく、魔法金属を更に上の位階へと引き上げる御業。それに合わせて作られた動力を搭載した従来式で有りながらそれまでの魔導鎧を置き去りにする性能。過去の遺物と比べその資材の質を落としながら、製作者の技術のみでその不利を凌駕する。まさに、職人技の極致。高い補正を発揮する強化ミスリル製の人工筋肉、そして内部骨格を鍛造ミスリルで作成した事による全身の魔導砲身化。この技術も進歩していけば魔力刃の生成を可能とし、ありとあらゆる状況へ対応するものになっていくでしょう。この魔導鎧が量産されたのなら、我ら機巧乙女が地上の覇者となり世に平穏を齎すでしょう。その為にもマスター、この鎧と機巧乙女の量産を行いましょう。具体的には私を孕ませて新たなる機巧乙女をごぉ!?」

「あら、ごめんなさいダリアさん。頭に虫がいたので追い払おうとしたら拳が当たってしまったようですね」

 

 何時もの調子でソムリエを始めたダリアの後頭部にシスター・カレハの拳が突き刺さった。虫だとか言ってるけど、ダリアが最後にしていた破廉恥な発言を止める為の一撃だったのだろう……それでもダリアの防御抜いて黙らせるってどんな攻撃力してるんだよ。しかも素手だぞ?

 

「はぁ……はぁ……た、タタラ。落ち着いて話しなさい、何を作ろうとしたの?」

 

 何とか二人がかりで俺を止めた都市長が息を切らして俺に質問してくる。

 

「35階層以降に出て来る『ゾンビ』対策として火炎放射器を、なんなら40階層のボスにも有効ですしね」

「『ゾンビ』相手に燃やすと言う判断は間違っていないが、用意する規模が間違っているだろう……」

「なんならさらに深く潜った際の『ドライアド』対策でも有りますね」

「森ごと燃やす気か貴様は」

 

 カラムスさんは俺の発言に頭が痛くなった様子だ、そんな規模の大きな話だろうか?

 

「取り敢えず、その火炎放射器の設計図を見せなさい。必要かどうか判断してあげるから」

「そうですか? では」

 

 都市長に言われて設計図を取り出す、開発名『メルフラフスピンテール』と名付けた火炎放射器である。燃料に液状魔石を使用した火炎放射器である、火力は申し分ないだろう。

 都市長は設計図と概要を読み、次第に震え……遂には激高して俺の首を絞めてきた。

 

「あんたは! ダンジョンごと!! この都市(まち)を燃やす気か!?」

「まっ、む……くるしっ」

 

 見事に気道を抑えられて呼吸が出来ない、ヤバい冷静さを無くしてるから止められない。

 

「わ、我が主! それは流石に! 気持ちは分かりますが!!」

 

 気持ちは分かるのか。何とかカラムスさんが俺から都市長を引き剥がしてくれたので思い切り呼吸をする、死ぬかと思った。

 

「タタラ、あんたこの火炎放射器で『ドライアド』燃やそうとか正気?」

「本気じゃなくて正気を疑われるレベルなのか……」

「正直、コレは過剰も良いところだぞ。『ドライアド』の魔石が反応して爆発するのではないか?」

「なにそれ笑えない」

 

 タチアが最初ダンジョンに潜っていた時、勢い余って『ゴブリン』の魔石を砕いて爆散させていた。小振りな魔石でも目前で爆発すれば怪我を免れない、それよりも大きな魔石が森一つ分爆発した場合……確かに都市部が吹き飛ぶかもって思うか。実際にはそれこそ一つのフロアが丸々魔石にでもなってないとダンジョンを根こそぎ吹き飛ばすことも出来ないが、そんなのは前世知識が有るからわかる事だ。カラムスさん達の意見に従って火炎放射器はやめておこう、下手に不安にさせる必要はない。ただでさえ俺の発明で不安定な精神になっているのだから。

 

「ところでジュロン、確認なのだが」

「はい?」

「その強化ミスリルで『フィエルテ』を作り直す場合幾ら程になる?」

 

 おっと、また不穏な依頼かコレ?

 

「いや、新しく一本仕立てて貰うのもいいな。今の『フィエルテ』と二刀流にするのも面白そうだ」

 

 何を言ってるんだお前。

 

「見る方からしたら悪夢過ぎるので抑えて下さい」

 

 カラムスさん、もしやシスター・カレハとの怪獣大決戦の影響でまだ血が滾ってますか? 

 都市長に視線を送れば、天才の弟が自らの才能を大した事では無いと言ったのを目撃した兄上の様な表情をしている。確かに何言ってるんだお前って言いたくなる気持ちは分かる、俺もそう思ったし。何よりカラムスさんが求める物に値段を付けなきゃいけないのは都市長だし、既にカラムスさんから庇護を受けている俺がカラムスさんに改めて剣を贈るのはなんか嫌な予感がするのだ。具体的に言うと軍神様の宗派では結婚の申し込みとか扱われたりとかの可能性、本当何が地雷かは分からないし。それに、作る上で資金出すの下手したら都市長の可能性も有る。今回の研究に投資するためとは言え23個の霊核を買い上げてるのだ、市場で見たことが無いので相場は聞かなければ分からないが普通に億単位の金を使っている筈だ。そこに査定も終わってない新技術の武器、俺なら発狂してると思う。

 

「あの、カラムスさん……質問良いですか?」

「む、何だ?」

「仮に作るとして、お金と素材って……」

「無論、私の貯えから出すつもりだ」

 

 あ、良かった。払うつもりでは有るんだ、金額がどうなるかは分からないけど。と、そんな会話を聞いていた都市長が動き出す。ゆらりとまるで幽霊のような動きでカラムスさんに詰め寄る。

 

「あの、都市長」

「カラムス、よく聞きなさい」

「え、はい」

「貴女の貯えと素材を出してもまるで届かないわ」

「……は?」

「家から出した給料と、貴女が教会に居たときに稼いだ貯えではこの技術を使った武器は作れないわ」

 

 うん、なんか怒気と言うか覇気みたいな物を纏った都市長がそんな事を言い出した。なんだろう、ガチギレしてるよねコレ。

 

「あの、我が主……?」

「ざっと考えただけでも二桁億後半、素材を持って来てもそれよ」

「そ、それは……」

「下手したら三桁億に届くわよコレ、貴女の貯えで何とか出来て?」

「その、オリハルコンやアダマンタイトを売れば……」

「タタラなら活用するでしょうけどね、どう考えても霊核がネックなのよコレ」

 

 カラムスさんの武器特性から考えて、剣身はミスリル……多分セントミスリルに限ると思う。オリハルコンも昇華を必要とする可能性が有る、『ケラヴ』から考えるとミスリル1kgのオリハルコン200gだろう。霊核は天使族限定で三つ……素材の負担が結構重いな。『ケラヴ』と同じに考えるなら、天使族の霊核か『卵』を核にして負担の軽減なんかも必要だろう。成程、コレなら確かに新技術って事も考慮して三桁億の技術料を考えるか。

 大分桁がおかしくなってて感覚麻痺してきた、誰か助けて。

 

「タタラさん、大丈夫ですか?」

「頭痛くて死にそうです母さん」

「……少し、座ってお休みになった方がいいですよ」

「そうします」

 

 シスター・カレハが声を掛けてくれて、少し身を休める事を考えられる様になった。クラフターが大金の動く仕事だとは前に学園で言われた事が有ったが、虎熊家との取引や今回のコレ何ていう中ボス挟まずいきなりラスボスにかち合うかのようなエンカウントは要らねぇのである。バカよ、今すぐ此処に来て魔鉄の依頼で苦労してる姿で安心させてくれ。

 

「……シスター・カレハ、虫を追い払うとの言い分で潰しに掛かるかのような勢いは要らないと思いますが」

「あら、すみません。勢い余ってしまいましたわ」

 

 何故かあの一撃の躊躇いの無さに、普段からやってる姿を幻視した……もしかして原作主人公のスミスがエロワード放つ度に拳骨落としてたりするのだろうか? 元パラディンの拳骨とか受けたくないな、頭を撫でられた事は有るけど運良く拳骨の経験は無いのだ。

 

「ダリア、頭が揺れてるところ悪いんだが頼み事が有る」

「はい、貴方の下僕であるこのダリア・ジュロン。艱難辛苦を乗り越え例え屍山血河を築く願いだろうと叶えてみせます」

 

 おう、物騒過ぎる事を言うのはやめろ。後ろでそっとシスター・カレハが拳を構えたぞ。

 

「明日から俺も再び探索に潜る、その上で『リッチ』から大型以上の魔石を集めたい……お前の火力が欲しい。手伝ってくれ」

「Yes my Master」

 

 恭しく一礼と共に了承を返してくれたダリアの頭を、そっと撫でる。驚いた表情で顔を上げた後、ふわりと笑顔を見せてくれた。駄狐とは違う撫で方なら受け入れて貰えるのか、ダリアには今度からこの撫で方にしよう。

 

「マスター、明日から探索を強化する意図を伺ってもよろしいでしょうか?」

「主にお前の戦力強化だ。今回の事で新型の人工筋肉を作る事が出来た、ならお前専用の魔導鎧の作成も叶う筈だ」

 

 俺の言葉にダリアは目を見開く、ダリア用のハイエンドモデルの構想は『グラジオラス』で出来ている。後はアレをダリア向けにカスタマイズしていくだけだ。

 

「ただ、少し問題が有ってな」

「その問題とは?」

「作成する上で必要な数のオリハルコンが無い、採掘が出来るのは41階層から可能性が高くなるが確実とは言えない。その分だけ性能を発揮出来ない状況になるが覚悟していてくれ」

「Yes my Master」

 

 了承をしてくれたダリアに一つ頷いて、ワードプロセッサを起動して設計図を呼び出す。ダリア専用の魔導鎧のベースとなる『グラジオラス』の図面をコピーして、何処をどう簡略化させるか説明していく。それと同時に、俺なりに考えた装備の説明を入れる。シスター・カレハに依頼された盾の機能を組み込み展開される防御兵装の搭載。流体魔石のジェットエンジンに代わり『卵』を活用した風魔法によるブースター。アダマンタイトを手に入れるまで全身の装甲を鍛造ミスリルにする変更など、様々な変更点を示していく。

 ダリアからも俺が行う代替についての質問や、追加して欲しい機能や逆に削除して欲しい機能について話し合う。ダリアとしては肘にホールドする機能を気に入り、背面に武装を保持するラックが欲しいと言われて俺も了承した。削除を頼まれたのは砲撃機能、なんでも保持している魔導具だけでも余りある状況対応力が有るので必要無いとの事だった。

 そんな会話をしている最中に意見がぶつかったのは『アーラ』と同じインナーマッスルアーマー構造にするか、『玄武』と同じ内部骨格構造にするかだ。俺としては最適化に時間は掛かるが、最終的な追随性と身体強化の上昇率が高くなるインナーマッスルアーマー構造を推したのだが、ダリアは内部骨格による頑強さと最適化のし易さそして金属が擦れあう感触を求めて内部骨格構造を希望してきた。趣味でそんなの認められるかと意見をぶつけ合っていると、都市長とカラムスさんが何故か参戦してきた。

 そうして始まるのは実用性VS浪漫の不毛な戦争だった。

 

「マスター、何故私の浪漫を分かってくれないのですか!?」

「浪漫に比べられる程お前の命は軽くねぇんだよ!!」

「我が主、何故この武器が必要だと分かって下さらない!?」

「必要なのはいいけど貴方の貯えが絶望的に足りないと言っているでしょう!? 技術料踏み倒してタタラから剣を巻き上げるつもりなら容赦しないわよ!」

 

 結局、四葩達が帰ってくるまでこの不毛なやり取りは続くのだった。




おまけ

「……あの、カレハさん?」
「あら、エテルさん。どうかしました?」
「いえ、そろそろご飯の準備に入ろうかなって夕食を食べていく面々を確認に来たんですけど……無理そうですね」
「多分、都市長様とカラムス様は必要無いと信じますが。あ、私の分は必要無いですよ?」
「はい、分かりました。酒蒸し料理、タタラしか上手く作れないから手伝って欲しいのに……」
「女子3人に対して男の子1人なのに、やってる事が男の子の好きな物論争と同じですからね」
「……男の子ってバカみたい、って言えない状況」
「むしろ一番理性的にダリアさんを否定しているまでありますからね」

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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