既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
なんか執筆中に思い浮かぶ変なのを解消したくてアンケートを実施します、よければご協力下さい。
「それで、タタラとダリアに乗っかって抑えるべき大人二人が子供のようにはしゃいでおったと」
『大変申し訳御座いませんでした』
呆れた風に言う
「都市長殿とカラムス殿、お主達二人が忙しい時間を縫ってタタラとの用事を済ませておるのは理解しているのじゃ。しかしの、一緒になって燥いで鬱憤を晴らすのはちょっと違うのでは無いかと妾は思うのじゃ」
『はい、その通りです』
俺と同い年の四葩に此処まで言われて、都市長とカラムスさんは小さくなっている。
「タタラ、ダリアと口論をして昂るのは分かるのじゃ。しかしな、お主も折れる事を考えよ」
「……時と場合による」
「お主な」
「生命に関わる事では引けない、コレは絶対だ」
「……はぁ、頑固者」
「なんとでも言ってくれ」
「……愛しておるぞ」
「ちょっ、おまっ」
いきなり言われた愛の告白で盛大に焦る、そんな俺の姿を見て四葩はケラケラと笑った。尤も、その顔は赤く熟れていたが。
「ダリア、お主はタタラの思いを分かっておるじゃろ?」
「確かにマスターは私の生命を最優先し、安全性を何よりも尊びます。しかし、私は機巧乙女です。多少の不利でも武装の強化で乗り切れます」
「その多少の不利を覆せず、お主はこの都市に来たのじゃろう?」
「それは……」
「今でこそ強い力を得たとはいえ、この世は常に上には上が居ると想定すべきものじゃ。タタラがお主を大切に思うからこその言葉であると分かっておろう、蔑ろにしてやるでない」
「……はい」
ダリアも四葩に説得されて納得してくれたらしい、それは素直に助かる。フレームの剛性は確かに『玄武』型の方が高くは有るが、新型の人工筋肉は元の頑強さもそうだが以前の人工筋肉と同じく収縮して強固になる性質が有る。強化したミスリル自体も調べる限り通常のミスリルに比べて1.5倍の強度を持っていた、考える限りやはりインナーマッスルアーマータイプの方が素材の必要数は上だが性能も上なのだ。ダリアが再び核を奪った敵と相対した時の為に、可能な限り備える上では必須だろう。
「……タタラ、私達はコレで帰るわ。明日から探索に集中して素材集めをするらしいけど、変なものばっかり作るんじゃ無いわよ?」
「はい、気を付けます」
「ジュロン、その鎧に対して習熟したいと思ったのなら呼べ。お前が使いこなせるように稽古をつけてやる」
「それは助かります」
カラムスさんの申し出は本当に助かるな、騎士見習いを相手に多少善戦出来るようになる筈だ。尤も、俺は対人戦になったら逃げろと聖人にお墨付きを貰う無才っぷりなのだが。
「ではタタラさん、私も御暇します。良い武器と盾、ありがとうございます」
「あ、いえ。俺も何か報酬を貰いすぎた気もしますけど」
「いいえ、貴方が得る上で正当な報酬ですよ。本来、値を付ける迄に時間が掛かる最新技術を使って頂いてますし。普段から寄進もして頂いている身、少しはお返しが出来ていると良いのだけれど」
癒薬を分けてもらっている時点でそこはもう十分だ、これ以上は過剰な施しだと思う。そう伝えようとすると、シスター・カレハは圧の強い笑顔を向けてくる。怖い。
シスター・カレハが去り、家には何時ものメンバーが揃った状態だ。取り敢えず、夕飯を作ろう。
真水に浸けて塩抜きを終えた魚を網を敷いたフライパンに乗せ、火を点ける。フライパンが熱され、輻射熱に魚が曝される。脂が溶け出し、フライパンに落ちる度にジュッと音を立てている。市場で偶々見付けた溶岩石を錬金術で加工し封入した特別製のフライパンが、遠赤外線を発している為に内部への火の通りが早い。内部に残った余分な塩気が脂とともに流れ出る中で、少量の酒を入れて蓋をする。内部を揮発した酒により満たされ、蒸気により一気に脂が流れ出て更に圧で内部へ酒の風味が浸透する。
『鑑定』で魚の火の通り具合を確認し、蓋を開ける。開放されて吹き上がる水蒸気の後に、酒精を飛ばされたアルコールの匂いが立ち上る。その奥からは潮の香り、上手く出来たようだ。
魚の酒蒸しを皿に移して行くと、駄狐が何も言わずに食卓へ運んでくれる。こういう心遣いが上手いなと、そんな風に感じるが指摘はしない。不機嫌になりそうだ。
魔法炊飯釜を開くと、芳しい香りが吹き上がる。炊き込みご飯は上手く炊けたようだ、しゃもじでかき混ぜると底の方に有ったお焦げが見えた。茶碗にそれぞれ過不足なくお焦げが行き渡るように盛る、茶碗に盛られる度に鳥と醤油の良い香りが鼻腔を刺激する。ふらふらと雛菊さんが来たので、ほんの少ししゃもじで掬ったご飯を手に乗せて差し出してみる。両手で手を握られて食べられた上、掌まで舐められた。この人、プライドとか何処に置いてきたんだろう?
直後、静かに雛菊さんの後ろに立った駄狐が思い切り頭を叩いた。快音を響かせた後、動かなくなった雛菊さんの襟首を掴んで食卓へ引き摺って行く駄狐、完全に立場逆転してるんじゃないか?
「タタラ殿、珍しく料理を失敗したのだろうか?」
「いや、そんな事は無いが……もしや味が無かったりしたか?」
エテルと雛菊さんが起きるのを待った後、タチアも含めた七人で食事を始める。鶏の炊き込みご飯を前に目を輝かせる雛菊さんと、何かが足りないと思っているのか耳が垂れてションボリしている駄狐……やはり油揚げが必要か。ダリアは簡単に
「む、控えめでは有るがしっかりと鶏ガラから味は出ておるし醤油と味醂の風味も出ておると思うが……もしや此方では薄くて感じられんか?」
「ううん、そんな事は無いよ。でも、ちょっと失敗かな?」
四葩の分析の後にエテルも味は感じられると言うが失敗と言われた。はて、本格的に何が失敗なのか分からない。
「このように焦げ付いた部分を出すのは珍しい失敗だろう」
「ああ、なるほど」
炊き込みご飯のお焦げが失敗判定されたか、米の文化が無いなら確かに失敗だと思われるか。香ばしくて美味いのだが、流石に日本人の感覚過ぎたか。
「この国の人にはおこげを楽しむ文化が無かったでござるか」
「香ばしくて美味しいのですが、馴れて無ければ失敗にも見えますかね」
陽出國組には好評である。俺もお焦げを箸で摘んで囓る、パリっとした食感の後香ばしい風味が口内を満たす。歯応えもまた旨味を引き上げる要素だ、焼けた醤油の味わいも良い。コレは茶漬けのようにしても美味かったな。
「エテルにタチアよ、このお焦げと呼ばれる物は妾達の國では歓待として供される事も有る美味な箇所なのじゃ。割って食べてみることを勧めるし、無理そうなら妾が貰おう」
四葩にそう言われて、エテルとタチアも意を決してお焦げを囓る。咀嚼する度に目を見開いて驚きを露わにする。
「美味しい!?」
「香ばしさが全然違う!?」
見慣れなくて忌避していたのが嘘のように次々に口へ運んでいく二人、実は炊き込みご飯のお焦げっておかわり無いんだけども……まぁ大丈夫か。
そんな賑やかな食事を終え、パーティミーティングだ。俺は今日の事から発生したミスリルの強化とそれに必要な魔石について話し、明日からの参戦を表明する。
「……何故、魔法金属を強化するなんていう意味不明な方向に発展するんじゃお主?」
「分からないけど、俺は俺らしくしてたらなんか出来てるんだけど」
「つまり、タタラ殿は常識を壊すのが生態なのだな」
「扱いひどくね?」
四葩の疑問に答えていたら、タチアに脇から刺されたんだが。俺は生態系を破壊する外来種か……魂としては外来種だな、間違ってねぇや。
兎に角、ダリアの装備を作る上で必要な数の『卵』を手に入れるまでは参戦する旨は伝える。面子は俺とエテルに四葩とタチアにダリアの5人で、護衛二人は家で留守番との事だ。
そして此処で鉄の使い方について協議を行う。今回シスター・カレハから買い取った50kgの金属と蓄えていた鉄、探索で手に入った30kgの鉄で四葩の新しい武器を作りたいと俺が言えば四葩自身が反対してきた。
「魔鉄で質量兵器を作るつもりなのじゃろうがの、別の事で使うべきじゃ」
「いや、四葩の武器が繊細で『ゴーレム』種に使えないのは探索ではキツイ。俺とダリアを欠いた状態だと流石に手があんまり無いだろ? それなら、四葩が心置き無くぶん回せる頑丈な武器を用意するべきだと思う」
俺と四葩の互いに退かない姿勢から、パーティで裁決を取る。反対は四葩とダリア、賛成が俺とタチアに護衛二人の四人でエテルは中立だった。
それぞれの意見としては。
「我がパーティで一番の物理攻撃力を誇る四葩殿が『ゴーレム』で活躍出来ないのは勿体なさ過ぎる、特にタタラ殿とダリア殿を欠いた状態では致命的に過ぎる」
とタチア。
「四葩お嬢様の護衛として、どんな形でもお嬢様が安全になるのならそれを推奨させていただきます」
と雛菊さん。
「武器が弱いって事は、もっと強くなれるって事でござる。正直、四葩お嬢様の武器は何とかしないと問題がこの先に起きそうでござるからな」
と駄狐。語録混ぜる必要有ったか? つか、四葩の刀は弱くはねぇよ。尤も、俺が整備出来ない状況なのは何時か折れてしまいそうだから駄狐の心配は納得出来る。
「魔鉄を使われたら私の装備が作れなくなります」
とダリア。うん、お前はそうだよな。
「拮抗しそうなら賛成に入れてたけど、ストレートに賛成派が勝っちゃって戸惑ってるよ」
とエテル。中立に見えて賛成派なのは親友を心配してるからだな。
「賛成多数で四葩の武器を作成する事に決まったからな、武器は今日作った武器が四葩にピッタリ来るだろうからそれを魔鉄で再現する」
「むぅ、妾は必要ないのじゃが……」
俺の言葉に四葩は不満を見せるが、心遣い自体は嬉しいのだろう。可愛い奴である。
タチアが時間になり帰り、俺は鍛冶場に入り四葩の武器を作成する。80kgの鉄を溶かし一つの塊にして、中サイズの魔石8個で魔鉄へと変える。流石に重いので『玄武』を装備し、魔力を流しながら鍛造を開始する。日中にアダマンタイトを鍛造した経験から以前よりスムーズに魔鉄内に極僅かに有る路の隙間から魔力を流し込む。スキルのランクやレベルを越えた所で経験値によるスキルアップ、戦いの才能は死んでるが此方の才能は中々の物だろう。溶かして一枚になった鉄のインゴット80個分の板金を、叩き折り曲げ重ねていく。20回折り曲げて、成形をする。
シスター・カレハに頼まれたソードメイスを参考に、四葩の身長に合わせ……られず殊の外デカい物が出来上がる。以前、四葩にダンジョン内で使って貰った魔鉄の大剣など比較にならない程の超重量武器。削って刃を作ってはいるが、剣と呼ぶには余りにも大きく重く分厚く何よりも不細工な物である。四葩の頭くらいには厚みと幅が有り、長さは2mに届こうかと言う物。刃はかなり鈍角で有り、かなり速く振らなければ切断は難しいだろう。
「こんなもん振れるの、この都市で何人居るのやら」
鍛造の影響で一般的なミスリルよりも硬い剣身に、比類するものが無い重量……俺が作った武器で最重量はオウトエイズルの120kgだが、アレは対象外だろう。そもそも近接武器とは言っても魔導具だし、重さでぶん殴るんじゃなくて反動に耐える為に頑丈にした結果の重さだからな。誰に言い訳してるんだろうな俺。
「……出来たのかの?」
背後から声を掛けられ、振り向けば四葩がいた。湯上がりなのだろう、やや上気した赤みの有る肌が色っぽい。
「ああ、流石に重いがコレなら四葩向けだろう」
そう言って両手でソードメイスを持って四葩に差し出す。『玄武』の補強付きで何とか片手で持てているが、コレを片手で振り回して技を発揮するのは俺には無理だ。
俺から受け取った四葩は軽々と持ち上げ、片手で正眼の構えを取る。ピタリと小揺るぎもしない姿に、筋力差を感じて少し凹む。前世よりも身体能力が平均的に高いこの世界でも、人間と鬼では比較出来ない程の筋力差が出る。種族差とはいえ女性の筋力に負けるのは少し情けないと思ってしまう。
「……全体の重量配分が素晴らしいのじゃ」
満足そうに笑う四葩に、俺も自然と笑顔を返した。コレで相手を気にせず四葩が戦える……まぁ、『死霊』系の敵はコイツではちょっと無理だが。
「一応、分厚くしてるから面で殴れば打撃にも使える。剣と棍の両方の性質を持つ武器だ」
「成程のぅ」
武器の形状についての説明をすると、四葩はしっかりと耳を傾けてくれる。
柄巻を用意したが四葩は巻けないらしく、代わりに俺が巻く。四葩の手を取って必要な太さを予測して、丁寧に巻いていく。俺が手を取った時に顔を赤くして居る姿を見て、俺もなんだが恥ずかしくなってしまった。巻き終わった柄巻を確かめ、満足そうに頷いた。
「1人で刀匠、鞘師、柄巻師を熟せるのはクラフターの強みじゃの」
「コレくらいは普通だ。それに本来なら持主が柄巻を調整するのが『ワールウィンド』流だしな、俺が他人のをやると『相手を侮ってる』って思われるから本当はやらないんだ」
「所変われば品変わるとは言うが、こうも変わるものとはの……」
インベントリにソードメイスを収めて苦笑いを浮かべる四葩、やはり陽出國とは少し違う風習の差に困惑が有るようだ。
「タタラは妾達の故郷で問題無く生きられそうじゃが、妾が此方で暮らすのは少し戸惑いがつづきそうじゃの」
「なに、何ヶ月か住めば慣れるさ。俺とエテルもフォローするしな」
連れ帰るつもりか、此方に移り住むつもりか。エテルが一番だが、四葩にも側に居て欲しいと願ってしまった辺り俺も少し変わってしまっようだ。
「そうじゃ! タタラ、少し屈んでくれ!」
名案を思い付いたと言った風に顔を輝かせた四葩に疑問を思いつつ、片膝をついて四葩を見上げる様な姿勢を取る。
すると、四葩がそっと俺の頬に両手を添えて唇を重ねてくる。
「……コレが今回の駄賃じゃ」
「……恥ずかしいなら無理すんなよ、可愛いな本当」
5秒程で顔を離した四葩は顔を真っ赤にしていて、そんな初心な反応が可愛らしい。そっと抱き締めると、四葩からも弱々しく抱き返してきた。そっと頭を撫でてやる、恥ずかしいのか四葩は俺の肩に額を当ててグリグリと擦り付ける。
「……タタラは私の旦那さんだよ、トラッちゃん」
「んにゃ!?」
そして、そんな四葩を背後から俺ごと抱き締めてくるエテル。驚いて変な鳴き声を上げる四葩に対して少し不満そうだが、抜け駆けとかでは無くスキンシップを取ってくれないのが不満なのだろう。
「え、エテル!?」
「一緒にお風呂も入ってくれないし、私もトラッちゃんと触れ合いたいなぁ?」
「お主はタタラと夫婦風呂に入っておるからじゃろ!? 妾もタタラと入れと言うのか!?」
「私はいいよ? トラッちゃんもタタラとお風呂でする?」
「せめて初めての時は二人きりがいいのじゃが!?」
俺とエテルにサンドイッチされてる四葩は焦っていて発言がヤバいのだが、自覚はないらしい。騎士見習いの学生運動が終わるまでは行為には至らないと以前言われているのでそこは控えるが、四葩は四葩で初体験に求める物が有るのだろう。お嬢様だし経験が無さそうだしな……いや、お嬢様のエテルが俺を逆レイプしたのが初体験だわ俺とエテル。
「俺は取り敢えず風呂入るから、足りないスキンシップは補填しとけよ」
それだけ言い残して鍛冶場から離れる、二人のスキンシップでムラっと来てしまったら四葩の目の前でおっぱじめる可能性だって有る……今度は四葩も目の前で見つつ自慰にふけりそうだな。
入浴を終え、エテルは今日は風呂にも部屋にも来ないのでゆっくりと眠りにつく。四葩、俺の代わりにエテルの相手を頼む。一緒に居ると我慢が出来ずセックスを求めてしまう意志の弱い俺を恨んでくれて良い、今夜は二人で盛り上がってくれ。
そんな風に夢も見ずに眠りについた翌朝、朝食と留守番組の為の昼食を用意する。炊飯釜は昼に米が炊けるようにセットして、朝はパンで済ませようと思う。
ベーコンを油で人数分揚げ焼きにし、油を注ぎ足して玉蜀黍の身を揚げ焼きにする。ビーンズ、プチトマト、食パンを同じように油を注ぎ足しながら揚げ焼きにして最後にポーチドエッグ風に卵に火を通す。それらを全て一枚の皿に乗せるワンプレート、前世でちょっと見た英国風ブレックファーストだ。
ハイカロリーな代物だが、探索はエネルギーを使うのである程度食っておかないと力が出ない。基本夕方までぶっ通して潜る上に運動を続けるので、コレですらおそらくカロリー不足に陥るだろう。
昼食は逆にさっぱりした感じにしたいが、あいにくと蕎麦もうどんも無いので米に合う物が良いだろう。冷蔵庫を見れば豚肉や様々な野菜が入っている。ふむ、冷しゃぶでいいだろうか。
寸胴鍋に水と酒に味醂さらに酢を入れて煮立たせる。何故か流通している白菜を入れ、長ネギは無いので玉ねぎを投入。最後に豚肉を入れてしゃぶしゃぶにするには少し長めに煮て灰汁を取る。ざるに具材をあげて、氷水を張ったボウルに入れ粗熱を取る。熱が取れたら皿に盛り付けて冷蔵庫に入れる。前世で水で洗って冷ましていたが、旨味を逃がしていると研究家の人が言っていて取り入れた方法だ。一通り調理が終わってから気付いたが、料理が食卓に運ばれていた。
目を向けると駄狐がソファに座って日向ぼっこしているので俺の調理中にやってくれたのだろう、そっと近寄ってその頭を撫でるとされるがまま受け入れる。尻尾がぶんぶん振られているので褒められて嬉しいのかもしれない。
エテル達も起きてこないので俺もソファに座ると、駄狐が俺の膝に頭を乗せてきた。前世で子供の頃飼っていた犬がこんな感じに膝へ頭を乗せてきたのを思い出し、丁寧に頭を撫でる。最初は揺れていた駄狐の尻尾がやがて動かなくなり、膝からは寝息が聞こえて来た。そのまま撫で続けてやる、何となくコイツは側に誰かが居ると寝れない体質だと思っていたのだがそうでも無いらしい。と、駄狐の耳が片方ピンと立った。
「む、おはようなのじゃタタラ。一華は寝て……いや、起きておるな」
直後に声を掛けてくる四葩、駄狐はのそのそと身を起こして四葩を見る。なんか、恨みが込められてそうだな?
「おはよう四葩、鍛錬は軽くにしとけよ……昨日エテルの相手をしてるんだから」
「スキンシップと称して百合の花が咲きそうになるのはどうなのじゃ?」
「どうせエテルから『ほぐしておかないとタタラが
「流石は夫婦、よく分かっておるのじゃな」
「まぁ、な」
ちなみに、この会話の最中駄狐が撫でろ撫でろと言わんばかりに頭を腹の辺りに擦り付けて来ていたのでさり気に頭を撫でていたりする。完全に大型犬だなコイツ。
「妾は軽く武器を振って馴れてくる、一華はそのままタタラに甘えておるとよい。ようやく見付けた甘えられる相手じゃろ?」
「きゅうん……」
返事なのかよく分からない鳴き声を上げる駄狐を見て、四葩は苦笑いして庭に出る。
俺は取り敢えず他の面々が来るまで駄狐の頭を撫で続けた。
来訪したタチアも含めて朝食を取り、早速ダンジョンに挑む為に家を出た俺達5人。俺は『玄武』を身に纏いダンジョンへ向かう道すがら稼働時に発生する人工筋肉の出力調整を行い、ダンジョン内で無駄な挙動を無くせるように入念な準備を行う。
「……使用者が製作者だとこんな風に調整を出来るのですね」
「明らかにタタラがぶっ飛んどるだけじゃろ、他の者に同じ事を求めるのは酷じゃ」
タチアの言葉に四葩がツッコミを入れてるっぽいが、俺は脚の人工筋肉の調整で忙しい。『黒鐵』に比べて出力が比較するのもバカらしい程に上がっている為、今迄通りの動きをすると身体が跳ね上がるのだ。そうならない為の調整がかなり難しい。
「マスター、流石に調整に時間が掛かりすぎでは?」
「自分の事になると疎かになるタタラらしいと思うな」
ダリアの苦言の後にエテルの肯定意見が飛んでくる、確かにエテルの言葉も関係有りそうだが今回は新機軸でやり過ぎただけだ。本来はオリハルコンで行う筈の制御を劣化品とも言える人造オリハルコンで行っている為、どうしても思念伝達で粗が出るのだ。
「オリハルコンが欲しい……」
「私達の挑む階層じゃボスドロップ限定だよ」
「そうなんだよなぁ」
まだまだ先は長い、遠征も出来ないし何とかなる手段が欲しい。
「せっかく魔法金属の合金も作れるようになったのに、集められないんじゃ宝の持ち腐れだな」
「タタラ、何をどうしたら魔法金属の昇華に飽き足らず合金化に至るのじゃ」
「そんなの、コレが出来たら便利で人を少しでも幸福に出来るかと思ったからだ」
「お主、本当になんなのだろうな……」
四葩の言葉に答えつつ、ひたすら人工筋肉の調整を続けてそのまま探索の為にダンジョンに入った。
飛んでくる『ジャイアントバット』と湧き出る『ジャイアントラット』に対して、新機能である『魔導砲撃』を使用する。使用方法は何となくでしか無いが、自身の魔力を基点として鎧を砲身に見立てて投射する。何となくこんな感じだと思う。
人工筋肉に魔力を流すと、稲妻が走る。装甲の下から漏れ出る青い光が『魔導砲撃』を使用する上での兆候か。視界に入る『ジャイアントバット』を見据え、ボクシングのストレート風に拳を突き出し腕を砲身に見立てて魔力を放射する。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
低い体力の『ジャイアントバット』は砕け散る、今ので魔力消費は12……あまり効率が良いとは言えないな。そんな事を考えていると続いて『ジャイアントバット』が5匹程飛んでくる。俺は左腕を前に出し半身で肘を曲げるの構えを取り、前にした腕を振り子のように振る。振り子の勢いと脱力からの力みによる高速連打、5回連続で放つ本来は牽制用の打撃に乗せて魔力弾を連続で射出する。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
武器命中0+速力69=69−速力10判定59。命中判定。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
魔法攻撃力6−魔法防御1=5。
全く同じ啓示が脳内に5回連続で響く、その度に『ジャイアントバット』が砕けていった。今の間に60の魔力消費で一発辺りのダメージが6ではあまり効率が良いとは言えないか。
「中々盛大に花火を上げたのう……」
「あんまり効率が良いとは言えないけどな」
エテルと魔力を共有している為に暫くしたら完全回復するが、あまり使う気にはなれない『魔導砲撃』だ。俺の魔法攻撃力が上乗せ出来たら大化けするかも知れない。その為にも研究と、オリハルコンを使用した際の変化等も調べなければ。
問題無く5階層まで降りて、本格的な探索を開始する。先行するエテルの後に続いて行くと『ゴブリンコマンダー』の一団が発見された。上手く一塊になっている為、俺は此処で『砲撃』を試させて貰えるように頼む。
「ちょっと鎧の『砲撃』を試させて欲しい、威力がどんな物なのか調べたい」
「私は構いませんが……」
「妾も構わんぞ」
「私もいいよ」
タチア、四葩、エテルが賛成してくれる。ダリアに至っては魔道具の機能を見る為に特等席を選ぼうとしてる始末だ。
相手との距離は80m程、見える範囲では七匹程で固まっている感じだ。『コマンダー』一匹『ウォリアー』二匹『ウィザード』一匹『ゴブリン』三匹と言った具合だろう。
「範囲砲撃シーケンス稼働」
肩部のシールドが開き、内部に仕込まれたマイクロミサイルがせり上がる。
「ターゲットロック開始」
目の前に空間投影型のディスプレイが展開して、目標とする『コマンダー』の一団に次々とロックオンしたマークが付いていく。
「発射」
静かに命令すると、マイクロミサイルが射出される。片側18発、計36のマイクロミサイルが天井ギリギリまで上がり上空から『コマンダー』一団へ降り注ぐ。射出時に空気が抜ける様な音がしただけで、炸裂する迄音がしない無駄に静音性が高い殺意塗れの攻撃だった。上空から降り注いだマイクロミサイルが一斉に起爆し、内部に満載された流体魔石が発火して『コマンダー』一団を炎に包んだ。
武器命中25+速力69=94−速力15判定79。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力10判定84。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力10判定84。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力8判定86。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力5判定89。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力5判定89。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力5判定89。命中判定。
武器命中25+速力69=94−速力5判定89。命中判定。
砲撃威力200−物理防御25=175。
砲撃威力200−物理防御20=180。
砲撃威力200−物理防御23=177。
砲撃威力200−物理防御10=190。
砲撃威力200−物理防御5=195。
砲撃威力200−物理防御5=195。
砲撃威力200−物理防御5=195。
砲撃威力200−物理防御5=195。
次々と流れる啓示で撃破を確認する。どうも見えていなかっただけで『ゴブリン』は4匹居たらしいが、範囲砲撃は問答無用で消し飛ばしたようだ。固定ダメージ200はかなり強力だと思う、『エリンジウム』と同等な範囲攻撃とか卑怯なレベルだと思う。
尤も、消費する技力が100と今の俺では連発が効かない代物では有るのだが。
「これはまた盛大じゃのう……」
「結構消費激しいから連発は出来ないけどな、レベルが最大まで行ったら『卵』装備して好き放題撃てる気もするが今は無理」
「それはもう無法って言うと思うんだ」
呆れた風に言う四葩に答え、最終的な姿を話せばエテルからは何処か呆れた風な言葉が向けられる。タチアはその火力にドン引きした空気を出していて、ダリアは目がキラキラ輝いている。
「マスター! 早く私にも『砲撃』可能な魔道鎧を!!」
「お前、『砲撃』機能はオミットして良いって言ってなかったか?」
「そんな過去の話は忘れました、私は今を生きる女です」
「現金だな……」
いっそミサイルランチャーでも持たせてやろうかと考えたが、そもそもこの『砲撃』に使用している弾頭がかなり高価である。バカスカ撃たれたらかなり出費が痛い気がする。
「ま、何はともあれ今はドロップした魔石の回収からだな。『卵』の為に大量に要るから」
「ええ、不肖ダリア! 魔導鎧の為に魔石を集めて来ます!!」
まるではしゃぐ犬の様な勢いで『コマンダー』一団が居た跡地へと駆けていくダリアに、俺達は揃って苦笑した。
【異世界発表ダリア】
「機巧乙女ダリア・ジュロンが、別の世界線を発表します。本日は此方!」
『現代パロ:幼馴染・虎熊四葩概念』
「はい、悔しい事に私より身長と乳と尻が少し大きい虎熊四葩がヒロインの世界線に成ります。人間国宝の職人を祖父に持つ主人公・小鍛冶多々良と、舞踊の名家である虎熊家の末娘・四葩との恋愛を書いた物語だそうです。十代で祖父の技術を全て修めた稀稀代の天才多々良は幼い頃に四葩と顔合わせし、その舞に心を奪われます。そこから祖父の技術を盗み、磨き上げ業界でも将来を渇望される細工人になっていきます。そんな多々良を捕まえようと四葩の心も踏まえて母は二人を許婚に。しかし、多々良がある日クラスメイトの角谷久遠の持つ形見の装飾品を直した事で多々良と四葩の間にすれ違いが起きていく……みたいな物になるみたいです。メモには『基本的にメインどころしか出ない短編、『天使長』は多分出ない』とよく分からない事が書いてありますね。真なるヒロインである私さえ出れば人気間違いなしです……今、貧なるヒロインって言った人前に出なさい。私は許します。が、オウトエイズルが許すか試してあげます」
もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり
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タタラとエテルの立場逆転
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現パロ(エテルヒロイン)
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現パロ(四葩幼馴染)
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武器が擬人化してタタラへ物申す
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年増組と同い年
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聖人カレハ
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原作エテルとタタラ
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ガチ妹ダリア・ジュロン