既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。 作:アルカミレス
『看板娘』イベント継続中
タタラ強化イベント発生
……アマツ語考えるのムズい。因みに最初はギャル文字覚えて喋らせようとしたけど難し過ぎて断念した。
そしてルビ機能を把握しきれず何度も書き直してこの時間()
……後で色々書き足すかもしれません。
「あら、流石のタタラさんも面食らいましたね?」
お義母さんからかいの含まれた声を聞いて、ハッと正気に戻る。しまったな、言葉が旧いと聞いていたのに呆気に取られてしまった。流石に失礼に過ぎただろう。
「申し訳ありません、アマツさん。聞き慣れない言葉だったのでつい」
「きんせんとりゃあよ、儂のことはちっと古ぅてなわけんもはてんで分かりゃせん。なれとりゃあよ」
多分、気にしてない、言葉が古いから若者は分かってない事が多い、慣れてる……か?
自信は無いがコレで解釈しよう。
「いいえ、多少旧くても言葉を伝えて貰っていますから……慣れているからと傷付かないのは違いますし」
俺の言葉にアマツさんの開かれてる左目がほんの僅かに大きく開かれる、分かりにくいが理解しきれない程では無いはずだ。旧い言葉なら俺の『考古学』スキルが役立つ筈、全力で対応してみせる……それが俺なりの誠意だ。
「おもろうおのこじゃの、よきよき。早速でわるぅが一本わざぁ見せとぉりゃ、分からんとこしったる」
ええと、面白い男だ、よいよい。早速で悪いが一本技を見せろ。分からない所を知りたい……か?
ええい、頑張れ俺の『考古学』スキル! 師になる人の言葉くらい理解してみせろ!!
「……タタラさん、順応早くないですか?」
「奥様、ご主人の対人能力は相性も有るでござるが基本ああでござるよ」
「余程相性が悪く無ければ比較的早くに仲良くなるのじゃ、父上と母上も絆されるのが早かったしのう」
「成る程、人誑し……」
何だか脇でひどい事を言われてる気がするが気にしてられない、アマツさんの言葉を理解する為に脳のリソースを割いている状態だからな。あ、そうだ。
「お義母さん、鍛冶の見学とかは構いませんけど作業中は一切声掛けやめて下さいね。集中切らされた時にどんな反応するか自分でも分からないので」
「おん。奥方ぁはそこぉわきまえとっけど、一声かけぇは正解じゃ。かぬちじゃまされっどは赦されん、しんじのじゃまとおなぁど」
えっと、奥方はそこは弁えてるが一声かけるのは正解。鍛冶を邪魔するのは赦されない、神事の邪魔と同じだ……か?
やはりこの人も刀職人として誇りが有るのか、いい人に巡り会えたな。
「おう、たらぼう。ききってことあっど。おんしゃぁ目、それうまれきか?」
「え、目……ですか?」
「ほいじゃ。そん目、うまれきのこがねか?」
ええっと、たらぼうって俺の事か?
タタラの坊主、聞きたいことが有る。お前の目、それは生まれつきか? その目は生まれつきの黄金か?
かな?
「いえ、コレは後天的にこの色になりました」
「あとんこがねになるたぁまれじゃの、きっかはなんじゃ」
後から黄金になるのは稀だな、切っ掛けは何だ。かな。コレは教えて良いのかな……いいか、どうせこの後使うのだし。
「切っ掛けは『鑑定』スキルの使い方、ですね。俺の使い方はこの都市だと珍しくて、使ううちにスキルの影響でこの色になりました。両親の遺してくれた瞳の色を変えてしまったのは少し後悔してます」
「……たらぼう、おんしゃの親どった」
「ダンジョン……迷宮の深くに現れた特殊な個体を討伐する団に所属して遺体だけ帰って来ました」
ああ、糞。普通に答えただけなのに胸の奥が痛む。無意識に服の心臓付近を握って居た、塞がりきらない瘡蓋を剥がしたみたいな痛みだ。
「ぶしつけじゃった、すまん」
不躾だった、すまない。かな。コレは分かりやすい。
「いいですよ、知らなかったんですし」
「ほんはいかん、しらんともさっせぬはふとくよ。小僧だとおもてあなどったじぃのふとく、そなきっかつくったのはぶしつけのきわじゃ。あやまなひととしひんうたがわる、だからあやまんじゃ。すまな、たらぼう」
そうはいかない。知らなくても察せないのは不徳だ。子供だと思って侮った爺の不徳、そんな切っ掛けを作ったのは不躾の極みだ。謝らなければ人としての品が疑われる、だから謝るのだ。すまない、タタラの坊主。
かな、誠実な人だ。
「……謝罪を受け取ります。贖罪の気持ちが有るなら、全力で指導をお願いします。僅か七日、貴方の全てを盗むつもりなのでその覚悟で」
「……はっ、じぃのれきをななかで盗るだぁよぉほえた! きびしぃいくぞ、たらぼう!!」
「はい、お願いします!!」
爺の歴史を七日で盗むとはよく吼えた、厳しくいくぞタタラの坊主……かな。何だか大分分かりやすい言葉を選んでくれている気がする、気難しいと聞いたけど、優しい人だな。
工房に入ると、アマツさんは設備の複雑さに驚いた様子だ。確かに表の工房は鍛冶に関わる物がほぼ無く、魔導具や錬金術の設備が主だ。その様相に驚くのも無理は無いか。
「たらぼう、ここでかぬちすっか?」
タタラの坊主、此処で鍛冶をするのか? かな。
「いえ、鍛冶場はこの奥に有りますからそちらで鉄を打ってます。此方は主に研究とか、錬金術が主ですね」
「そったほうは儂ゃせんがいじゃ、世話できこっちゃねぇど」
そっちの方は儂は専門外だ、教えられる事は無いぞ。かな?
「あ、それは大丈夫です。自分で考えて自分で見つけるほぼほぼ趣味の領域ですから、此方を頼る事は無いです」
「……趣味でこん場つくったぁとんでね道楽だぁな」
趣味でこんな部屋を作るとはとんでもない道楽だ。かな。
まぁ趣味とか道楽だけど、少なくともそれを都市の人達の生活に還元してるからな。それも含めた趣味で道楽とも言えるけど。
そんな会話をしつつ、奥の鍛冶場に入る。アマツさんは少し驚いて設備を見ている。
「よかぁ場じゃ。手入れおこってねぇ、しかぁ脈から氣ぃひいとっ炉に水をみたっと。たらぼう、すくんどこん場つくる才ばよかぁこと見っと」
良い場所だ。手入れを怠っていない、しかも霊脈から魔力を引いて炉と水を満たしてる。タタラの坊主、少なくともこの場を作る才能はよく見えた。
かな。大分高評価を貰えたっぽい。
「褒めて貰ってありがとうございます。それでは早速、この都市で主流の剣を一本打ちますので……見ていて下さい」
「おん、しかぁ見とく。ぜんりでやれ」
確りと見ているから全力でやれ。かな……うん、俺の全身全霊を見せよう。
ずっとアマツさんと話して居たが、鍛冶場にはお義母さんも静かに入って来ていた。俺が渡した扇を開いて口元を隠している、見に徹するのは確からしい。
インベントリから一つの鉄のインゴットを取り出して、炉に入れる。魔力に満ちた炎が鉄を熱し、その硬度を落としていく。溶け切る前、ある程度硬度を保ったままの鉄を取り出し金床へ。鎚を取り出し、振るう。
叩き、伸ばし、切り目を入れて折り曲げる。繰り返し、打ちながら内に生まれる歪みをただし、折り曲げてはそれを繰り返す。
重ねる鉄の歪みは10万分の1以下、鎚の打点もそれ程の精度で繰り出し内の歪みを可能な限り無くす。繰り返す毎に20回、100万層を越える金属層の剣身を作り水へ入れて焼き入れする。本来はこんな急速冷却は鉄を割るレベルなのだが、魔力に満ちた水は鉄を砕く事は無く熱を奪う。
取り出した鉄を磨き、研いで刃を作る。溶け合い刃文すら浮かばない直刃、オーク材で柄を拵える。
所要時間1時間弱、少しだけ出来る迄が早くなったか。
「……たらぼう、さきの早さはなんじ?」
剣を作り終えた俺に、アマツさんが難しそうな顔でそう聞いてきた。
さっきの早さは何だ、という意味だろうが……何かおかしかっただろうか?
「えっと、アレが俺の普通と言うか」
「早すぎっぞ! 儂の目ぇおっつくぎりじゃ、しかんこん出来異質ぞ!? なんじゃこん、儂に何をおそっど!?」
「待って待って早い早い!?」
アマツさんの言葉が早過ぎて翻訳が間に合ってない!?
ええっと……早すぎるぞ。儂の目が追いつく限界だ、しかもこの出来は異質だ。なんだこれは、儂に何を教わるんだ。かな?
「あま……アマツ翁、落ち着いて下さい。タタラさんの鍛冶は私も初めて見ましたし、早さの異常さも分かります。四葩が偶にタタラってると形容したのも直接見て納得しましたが、取り敢えず落ち着いて足りない所を教えてあげて下さい……もう鍛冶に於いて相槌を必要としないのが意味不明ですが」
「そったいっど打ちにすきなぁが! へたせんで儂よりうまかね!? 儂のれき盗っどななかもいらっ! みかでぜん盗っどこんぼう!!」
ええと?
そうは言うが打ちに隙が無い。下手しなくても儂より上手いだろ。儂の歴史を盗むのに七日もいらない。三日で全部盗んでくぞこの坊主。
かな?
「なんにこんぼう、しんそのうまれかわか!? 刀ん打ちおしたらおわんど!?」
しんそ……? 何だろう、コレは分からない言葉だ。
「……アマツ翁から見て、それ程ですか?」
「おん、たらぼうははっただ打ちのしんをきわんとる! はじからちがっど、刀んつくりおしたるだけでええ!!」
どんどん話が進んでる!?
タタラの坊主は初めから打ち方の真髄を極めてる。始まりからして違う、刀の造りを教えるだけでいい。かな?
え、待って。アマツさんこのまま帰るつもりか!?
「ま、待って下さい!? このまま帰っちゃうのは本当、そのやめて!? 俺、刀鍛冶教えて貰えるのずっと楽しみにしてたんですよ!! 四葩が見せてくれた刀の美しさとか、何れは自分でってずっと思ってて!! その機会を無くされるのは我慢出来ないです!?」
「書はくれんど、それ読め!! たらぼうはへたにおしれん、じゅんがさがる!」
書物は渡すからそれを読め。タタラの坊主は下手に教えられない。純度が下がる。かな?
純度ってなんぞや!?
「いやいやいやいや!? 俺、アマツさんの鍛治見てないんですけど!? 技を盗むのも叶わないとか予想外も過ぎるんですが!?」
「たらぼうに儂のれきみせん恥じゃ! なをもってほこっか!!」
タタラの坊主に儂の歴史を見せるのは恥だ。何を持って誇れるか。かな?
……冷静に解読してる場合じゃねぇ、ちょっと待ってくれないかな!?
「何でそんなことを言うかな!? 俺は! 人の! 積み上げてきた技術が好きなんだよ!!」
「
「有りませんよそんなん!? つか、その認識なのに人の鍛冶見たんすかあんた!?」
俺とアマツさんの言い合いが始まる。俺だけ一方的に技術を見せて終わるとか、なんだその技術公開。交流になってねぇ!?
「……タタラさん、アマツ翁の言葉を理解してません?」
「……あれ?」
思えば、二重音声みたいに意味が頭に入ってきている。まさかと思い確認してみたら『考古学Ⅱ』スキルが最大レベルになっていた、取り敢えずランクを上げておく。
一度咳払いして、アマツさんに向き直る。
「兎に角、折角の機会なので貴方の技は全て盗みます。よく吼えたとか、厳しく行くぞとか言ってたのは嘘ですか?」
「
アマツさんからの問いかけ、鍛冶を誰に教わったのか。
「人に教わった事は有りません。敢えて言うのなら、『クラフト』スキルから教わりました。『クラフト』スキルから作り方、『鑑定』スキルで物質の目利き、『錬金術』スキルで物質の変化、『創製魔法』で物質の構成、『槌適性』から鎚の振るい方をそれぞれ学んでそのスキルの導く通りにやってただけです」
「
しんそは神匠ってものなのか……そもそも神匠ってなんなんだ?
「あの、神匠ってそもそも何ですか?」
俺の言葉に、お義母さんとアマツさんが驚いた表情で見てくる。もしや、陽出國では有名な話なのだろうか?
「タタラさんは神匠と言う御伽は御存知無いのですか?」
「まったく持って有りません、少なくとも『ワールウィンド』内では聞いたことが無いですね」
確認をしてきたお義母さんが何やら考え込む、俺が知らない事を伝えて良いのかと言った具合か。それを見兼ねたのかアマツさんが後頭部を掻きながら口を開く。
「
「鍛冶を人に伝えた……?」
「
この世界では、人が技術を熟成させる為の知恵がそもそも備わって無かったと言う事だろうか?
神が遣わした原初の『クラフト』スキル持ち、与えられた神の技をただ振るう者……それが神匠と呼ばれる人種なのか?
それじゃあ、人は神の恩寵無しに生きられないじゃないか。
「タタラさん、勘違いして欲しくないのですが……この神匠と呼ばれる者は何も無い所から生まれたと言う訳では無いという事です」
「それはどういう?」
「我が陽出國では、在野に神性の弱い神が数多く居ます。八百万と呼ばれるこの神々は、その多くが自らの力を高めた結果、霊核を得て神の末端に至りました。厳しい修行を重ねた者、信仰を向けられ霊核を形成した者などそれこそ千差万別……神匠はその内の一人にしか過ぎないのです」
つまり、神から『クラフト』スキルを得て地上へ広めたのではない……のか? お義母さんの説明では鍛冶を極めた結果神格を得て技術が『クラフト』としてスキルに昇華された、とも取れるがアマツさんと何方が正しいのだろうか?
神からスキルを与えられ、地上に鍛冶を伝えたのか。それとも鍛冶がスキルにまで昇華させたのか。
「
「因果が逆?」
「
「……そうか、スキルに従ってるというのは視点が違うのか」
その神匠と呼ばれる者はスキルに従ってると言っているが、その本質は自身の感覚こそが『クラフト』スキルそのものであるからスキルに従ってるのとは違う。なんかややこしいが、俺が『クラフト』スキルに従って世界が残している最高効率の作り方を実践する事が、傍から見ると神匠と同じ作業方法であるから想起したのだろう。
「しかし、俺は神匠では無いですよ」
「
「俺は最初こそ『クラフト』スキルに従ってましたけど、何年か前に自分に合わなくて離れました。今では自己流になってます」
「……アレで神匠として作業してない方が異常だと思いますが」
うん、結局この扱いに収束するのか。
しかし、お義母さんがこの反応をするのに対してアマツさんは顎に手を当てて考え込んでいる様子だ。
「
「はい、何ですか?」
「
アマツさんが開かれた左目で俺を俺を見る。嘘を許さないといった意思を込められたその視線は、俺の奥底を見極めようとしているのか。
「スキルに添って『クラフト』をこなし続けるうちに、スキルのやり方に違和感が出て来たんですよ。1打入れる際の打点とか、鉄を熱する時間とかそんな物がですけどね。それが気持ち悪くて、自分なりの動きに変えてどう変だったのかを直して……そうして思い通りにしていたら出来が明らかに良くなりました」
実はこの時に鉄が冷める時間なんかも感じ取り始めて、それに合わせるうちに1時間で一本剣が打てるようになった。……急速冷却は此処の設備以外だと薬液を使用しなければ冷やした対象が砕けるので、其処は気を付けなきゃいけないけど。
「今だと『クラフト』スキルは身体操作の補助とか、イメージを投影してインゴットを変形させたりするくらいですね」
「……成る程、コレが理由でこの都市の人達はタタラさんの技術に追い付けないのですね」
お義母さんは何やら俺の言葉で気付いたらしいが、何が理由なのかよく分からない。アマツさんは俺の言葉を吟味したあと、何かを決めたのか一つ頷く。
「
アマツさんから、そんな言葉を貰う。
何が切っ掛けかは不明だけど、アマツさんから鍛冶を見せて貰える事になった。
「あっ……は、はい! 今から始めますか!? そうだ、先ずは此処の設備の使い方の説明を──」
「
「……やはり、まだまだ子供ですねタタラさんは」
興奮して詰め寄る俺に、焦って押し留めようとするアマツさん。そんな俺達を見るお義母さんは少し呆れ顔だった。
エテル達の帰りを待つ間、俺はアマツさんから渡された陽出國内で流通する様々な制作物の作り方が書かれた本を読み耽っていた。刀鍛冶に於いて基本となる工程を読み、必要な箇所をノートに写して所感を書き連ねる。
「
「うぇ?」
そんな風に言われ、改めて古書を見る。書かれている文字は前世で見た古文の文字とも違う、この世界独自の陽出字だ。しかし、何となく……本当に何となく読めてしまった。最初こそ解釈に悩んでいたのだが、途中からすらすらと意味が分かって俺のノートには現代語訳……とは少し違う『ワールウィンド』語訳が出来上がっている。一応、大陸の共通言語で書き起こしているので遺せば後々の研究学会が出来た時に役立つだろう。
「あっと、習った事は無いんですが感覚として何が書いてあるかが分かるというか……古語は『考古学』スキルが補正してくれるので対応出来ると言うか」
「
「俺は学者やれる程に頭良く無いですよ」
「……
俺の答えを聞いてやや遠い目をするアマツさん。こんな反応をされるような何かをした覚えは無いのだが。
集中が切れてしまったので神経を休ませる為に意識を別へ向ける、視線を向けた先では四葩がお義母さんに舞を見て貰っている。所々口頭で直させながら、時には自身でも舞って見せる。
四葩よりもお義母さんの方が技術的に上なのは見て分かるけど、やっぱり四葩の舞の方が俺は好きだな。
「
「うずめ……天之鈿女命、ですか?」
「
「称号……あの、アマツさん」
「
「陽出國の鍛冶神、天目一箇命って知っていますか?」
俺の言葉に、アマツさんは固まる。訝しげな表情を浮かべて、俺を見てきた。
「
「その、当主代行から言われたんです。俺がその天目一箇命に似ているって」
「
「聞く限りだと瞳の色が金である、鍛冶師であるって点だけですけどね」
当主代行に言われた事は大体コレなのだろう。外見的特徴、金色の瞳というのが引っ掛かったのだと思う。
「ご主人、夕飯のおかずは奥様が陽出國の魚を持ってきてくれたので焼き魚にするでござるよ」
「え、あっ!? 悪い、任せっぱなしになって」
「いいでござるよ、拙者は主を上手く補佐する良妻賢狐でござるからな」
此方にウィンクしてそう言ってくる駄狐。何時ものように否定的なツッコミを入れるべきなのかも知れないが、家事スキルや気遣いをする姿から考えると否定が出来ない。
「……何時ものキレの有るツッコミはどうしたでござるがご主人」
「いや、良妻賢母になるのは否定が出来そうに無くてな」
「なんでその発言を普通にするでござるかね……」
呆れを多分に含んだ声の割に何となく世話が焼けて嬉しそうな雰囲気の駄狐が、俺がよく使っているエプロンを着けて台所へ向かっていく。その後ろ姿をアマツさんが何か言いたそうな雰囲気で見送っている。もしや、知り合いなのだろうか?
「アマツさん、もしかして駄狐と郷で顔合わせとかしてました?」
「
何となく、同一人物だけど明るい表情をしてなかったから別人……という風に俺の追及を封じてる感じだな。過去は本人から聞けといった意思が込められているのだろう、何だかんだと世話焼きな印象が有るな。
「
「いえ、今の所は大丈夫です。此方ではやってない水減しや小割り、素延べや火造りが知れてコレだけでも勉強になりますね」
「
アマツさん曰く、此方の金属と言うかインゴットはダンジョン産である影響か不純物が少ないらしい。特に俺の『錬金術』や『クラフト』で作った鋼のインゴットは更に純度が高くなる傾向に有るらしく、刀剣造りには最適とも言える炭素含有量になるとのことだ。資料を読んだ上で出て来る幾つかの作業工程が省けるらしく、コレだけでもアマツさん的には作業が早くなるとのことだ。大分、呆れられた表情に見えたな。
「俺がやってる鍛造製法って一文字鍛えって言うんですね」
長さを半分にして鍛える方法はそう言うらしく、初めて名前を知ったな。
「
十文字鍛え、資料では長さと幅を交互に折り曲げる手法だ。何方が上、と言うのは無くあくまでも鍛冶師の哲学に沿うものらしい。この手法を学んだ先に俺はどう変わるのか、期待で胸が高鳴っていく。自然に口角が上がるのが分かる、そんな俺を見て諦めた表情のアマツさんは何故そんな反応なのか。
「ただいま」
と、そんな会話をしているとエテル達が帰って来た。そしたらやたらと早い足音がリビングに近付いてくる、音の軽さからしてダリアのかこれは。
「マスター! 魔導鎧をお願いします!!」
「おかえりダリア、取り敢えず落ち着け」
散歩好きな犬がリード咥えて前に来たみたいな勢いのダリアに、冷めた声で声を掛ける。
「後で作ってやるから、取り敢えず今は落ち着いて風呂入って来い」
「はい!」
俺の言葉に従って風呂場へ駆けていくダリア、入れ替わりにエテルとタチアが入ってくる。
「おかえりエテル、いらっしゃいタチア」
「うん、ただいまタタラ」
「お邪魔する、タタラ殿」
挨拶を返してくる二人が、俺と一緒に席に付いているアマツさんに目を向ける。見たことの無い人物相手に対して疑問符を浮かべる二人に、俺は苦笑いする。
「此方は陽出國から刀の製法を教えに来てくれたアマツさんだ。アマツさん、二人は俺のパーティメンバーでエテルとタチアです」
「あ、エテル・ネル=バーラルです。タタラの婚約者です」
「騎士見習いのタチアだ、よろしくお願いする」
俺の言葉に応えてアマツさんへ挨拶をする二人、アマツさんは鷹揚に頷いて口を開く。
「
「え」
「何と?」
しまった、俺が馴れたからって他の人がアマツさんの古語を理解出来る訳も無かった。意識から離れてたな。
「今のは『紹介に預かった鍛冶師のアマツだ、短い間であるが世話になる』って言ってるんだ。少し陽出國の旧い言語らしくて難しいが、俺が翻訳したりするから」
「え、あっうん。すみませんアマツさん、失礼な反応をしてしまって」
「私も、配慮に欠ける反応で申し訳ない」
「
「『大丈夫、慣れているから気にするな』だって」
参ったな『考古学』スキルを付与したアクセサリーが必要になるかコレ?
と、そんな会話をしていたら四葩とお義母さんが入って来た。
「え、トラッちゃんのお母さん!? なんで……トラッちゃん、帰っちゃうの!?」
「落ち着くのじゃエテル、発想が飛躍し過ぎじゃ。単にアマツ翁を此方へ連れて来るのに合わせて遊びに来ただけじゃ」
予想外の人物の登場によりエテルが不安を零すが、四葩はゆっくりと言い聞かせるように事情を話す。ゆっくりと言葉の意味が浸透し、エテルが落ち着いていく。四葩、エテルの接し方かなり上手くなったな。
そんな二人を微笑ましそうにしていたお義母さんが、何かを思い出したように口を開いた
「あ、そうでした! タタラさん」
「はい、何でしょうか」
「アマツ翁が帰る七日後まで、私も此方に残りますので宜しくお願いしますね」
「あ、はい。分かりました」
そうか、お義母さんも残るのか。四葩には悪いが相部屋にしてもらって、一緒に風呂へ入って貰って色々教えて貰おう……ん?
「はいっ!?」
今なんて言ったこの人!? 貴女、虎熊領でも最重要人物ですよね!?
「いや、いやいやいやいや!? ちょっと何を言ってるんですかお義母さん!?」
「あら、四葩と最近触れ合えていませんでしたので少し様子を見ようかと」
そんな軽々しく言っていい事じゃないよね!?
「当主代行は知ってるんですか!?」
「ええ、姿見に紅で言伝を残していますので問題無いですね」
ルージュの伝言かよ。って、言ってる場合じゃ無い!
「お義母さんの役職は分かりませんけど、居なくなったら大問題になりますよね!?」
「あら、私の役職なんてそれこそ外交と内政を少々ですよ?」
「四葩、本当か?」
「やっておる事に間違いは無いのう……それが主に帝や神事にも関わる事なのが問題なのじゃが」
「大問題じゃねぇか!?」
え、國の最高権力者と最重要案件に対する重要人物とか離れたら駄目なやつじゃん。本当、何で気楽にこの家に来たんだこの人。
「それと、以前来た時に気になった事も有りまして」
少し、真面目な声のトーンになる。以前来て何を思ったのか、内容によっては即応しなければならない。
「此処に敷かれている結界、出力で誤魔化されていますが結構術式が上手く組まれていないご様子。コレでも結界術には覚えが有りますし、私が直々に手を加えようかと」
うん、かなり重要で即応しなきゃ駄目そうだなコレ。結界術は詳しく無いから後回しにしていたが、貴人の宿泊先としては色々とやらなければならないな。
しかし、お義母さんが手を加えるにしても腕前ってどうなのだろう?
「なぁ、四葩。お義母さんって術に詳しいのか?」
「詳しいと言うか、専門家じゃの。我が國における呪術研究所の名誉顧問でも有るぞ」
「属性過積載じゃないかな……」
コレ、俺が持ってる此方式の魔法術式教えたらより効率的な物に変わるんじゃなかろうか?
コレも一種の技術交流……って言い訳は苦しいか?
「……タタラさん、私に何をして欲しいのでしょうか?」
「……研究者としてお話を聞いて貰っても?」
「いいでしょう。一華、お茶を淹れて貰える?」
「ヒィッわ、分かったでござる!」
おい、駄狐のビビり方が尋常じゃねぇぞ!?
やや震えながら俺達に紅茶を淹れてくれた駄狐、立去る前にそっと近寄らせて頭を撫でてやる。恐怖から解放出来るようにゆっくりと撫でてやると、やがて力が抜けて元の笑顔になる。うん、よかった。
台所に戻してお義母さんに向き直ると、それはもう面白そうなモノを見たと言わんばかりの笑顔だった。
「……取り敢えず、今のは忘れて聞いてもらえます?」
「ええ、聞きましょう」
此方を誂おうと察してしまえる笑顔を前に、溜息を吐きながらワードプロセッサを取り出して空中に強化術式の構成式を転写する。お義母さんは直ぐに真面目な表情になり、術式を読んでいる様子だ。
「これは、無駄は多いですがかなり強力な強化術式ですね。これはいったい?」
「先ほど会合中に見せました俺の鎧、アレに搭載されている着用者の強化機能がこの術式です」
「……成る程、人工筋肉と強化魔法による多重強化をより効率的に行いたいのですね」
流石は研究所の名誉顧問なんて任されるだけはある、俺が見せた意味を理解してくれた。
「対価……は、この研究資料を持ち帰れるだけでも十分ですね。我が國でも採用出来そうですし」
「共同研究って形なので、特許は共用でどうですか?」
「その場合はタタラさんと私個人の共同ですね」
ポンポンと決まり事を作っていく、何やら特許料は俺とお義母さんで8:2で分けると言われた。俺が納得しないと思ったのか、断ったら比率を9:1にして初孫の名付けの権利を貰うとかとんでもねぇ事を言われたので8:2で受け入れた。何で金をより多く渡す方向で脅しを掛けて来るのか、しかも圧が強過ぎて屈しちゃったし。
取り敢えず、部屋でも研究が出来るように予備のワードプロセッサを取り出してお義母さんに渡す。何なら譲渡しようと思ったら買い取り希望と言われ、中の資料含めて200万で納得して貰った。……最初に1000万とか渡そうとして来ないで下さいよ、札束で殴られるの怖いんですけど。
俺とお義母さんとのワードプロセッサ間で『念話』と『感応』の術式を刻み、擬似的なインターネットの様な物を作る。俺の家からなら転移門を通して陽出國の虎熊邸でも繋げる事が出来るように、転移門とも同期させた。何やらお義母さんが不思議な表情をしているが、取り敢えず無視だ。
「あ、四葩。悪いんだけど今日からお義母さんを部屋に泊めてあげてくれ、後で布団持って行くから」
「まぁ、そうなるのじゃな」
少し肩を落としながら了承を貰う、悪いな本当。
俺とお義母さんが会話を重ねている間に、エテルとタチアは風呂を終えて来た。更に駄狐が夕食を作り終えたので、食卓に並べていく。
因みに、帰ってきて即座にダサTに着替え直した雛菊さんはソファーで黄昏ていた。その姿を眺めていたお義母さんの背後に般若が見えた気がしたが、気の所為だと思いたい。元から鬼だが、背中に鬼神が宿ってそうな威圧感は本当にやめて欲しい。
「ご主人、本当に出汁巻きが好きなのでござるな」
夕食で俺が駄狐の出汁巻きを食べた直後に言われたのがこの台詞だった。よく分からないが、口に入れた瞬間に滅茶苦茶笑顔になったらしい。
「え、出汁の味も丁度いいし焼き加減もバッチリだから本気で美味いぞお前の出汁巻き玉子。味醂特有の甘味と鰹節や煮干しから取られた旨味、そこに薬味の長葱と大根おろしとか無敵の組み合わせじゃないか。正直、コレだけでも食っていられるくらいに美味いぞ」
「きゅうん……」
駄狐が鳴き声を上げて俯いた。耳もぺたんと伏せられているが、尻尾はブンブン振られている。また恥ずかしがられてしまったか。
「……四葩?」
「コレがタタラの平常運転だよお母さん」
「未婚の娘には劇物でしょうね、コレは」
「うん、そこの二人。俺が女誑しとか人誑しとか扱われるのなんなのかな?」
誑せてねぇだろ。
「タタラさん、先に一華で練習するのはいいのですが出来れば二人目は四葩でお願いしますね?」
「すみません、なんの話かは分かりたく有りませんし言わなくていいです」
あと、練習言うな。駄狐の扱いが可哀想だろ。
それとエテル、凄い目で此方を見ないでくれ。お前が妊娠でもしてないとお前としかしないから。
食事を終えて、真っ先にやる事はダリアの鎧を作ることだった。今回採れた魔石と前回の分から『錬金術師の卵』を50個作成、それを使用してミスリルに昇華を施す。元の白銀から色味を少し変え、蒼銀とも言えるやや青味掛かった銀色になるミスリル。鑑定してみれば、そこには『ハイ・ミスリル』の文字が見えた。
「うん、予想通りに『ハイ・ミスリル』になったな」
「……タタラさん、平然ととんでもない事をしていますね」
出来に対して納得していると、何時の間にか工房に入っていたお義母さんからそう言われた。何か用事が有るのかと思ったが、どうやら俺が作る魔導鎧に興味があるだけらしい。いや、確かにクラフターなら気になるのも当然か?
「あっと、最近出来るようになった金属の昇華ですね。ミスリルとオリハルコンなら出来ますよ」
「……性質の変化はどのように?」
「ミスリルは形状記憶合金に近いですね、魔力を通す事でその形状を変化させます……今は主に新型の人工筋肉として活用していますね。オリハルコンは感応能力の向上です、新型人工筋肉と併せて使う事で制御が容易になりますから今は使用方法はそれに振ってます」
「その結果が会合中に見せて貰った『玄武』なのですね」
「はい。少し前には人造オリハルコンで代用していたんですが、ちょっとした事でオリハルコンが手に入ったので実験を兼ねて切り替えた所劇的に性能が向上したんですよね」
俺の話を聞いていたお義母さんはなんとも言い難い表情をしている、そんなに難しい話では無いと思うんだが。
「……これは、この『卵』を使用しなければ出来ない事でしょうか?」
「部分的にはそうですね。霊核さえ有れば作れるんですが、その場合は使った霊核の属性で変わります。天使族なら『セントミスリル』で夜闇の眷族なら『イヴィルミスリル』にそれぞれなります。属性を持たないのはこの『ハイ・ミスリル』で、これは『卵』でないと作れません」
「……属性?」
「はい、魔力の属性が金属に移って適応する属性に偏りが出ます。合致するなら尋常でない出力に成りますが、逆だと1/10も出力が出ません」
俺の説明を真剣に聞いているお義母さん、此処まで来たのならやはり『ハイ・ミスリル』での説明も要るか。
「今出来たこの『ハイ・ミスリル』は前の二つに比べて出力は低いのですが、その分だけ安定しています。まだ試していませんが、何方の霊核を使用しても同じ出力を発揮すると思います」
「成る程、それは『概念鑑定』の影響ですか?」
「はい、構成が読めるので大体の機能を理解出来ますね」
魔力に反応してどう機能するか、それくらいは読める。前例として『セントミスリル』と『イヴィルミスリル』の反応を覚えているのも大きいだろうが。オリハルコンも強化した際は感応能力の上昇が確認出来たのも『概念鑑定』のお陰だったりするし、俺の研究開発に欠かせない能力だ。
「概要は教えて貰えましたが、既に自分なりの『鑑定』が確立されていると難しくなるのですね……四葩が羨ましいです」
少し、本音が零れてるみたいだ。突っ込むのは野暮だろう。
俺は話を聞きながら、半数程の『卵』を使って『ハイ・ミスリル』を産み出していく。一つの『卵』で昇華出来るのはインゴット3つ、300gだ。ダリアの体重が45kgとの事なので半分の22.5kg分を新型人工筋肉として用意する。金額を見たら発狂する金額だろうな、コレ。
現に見ていたお義母さんが完全に腰の引けた表情をしている。
「……
と、作業をしている俺に話し掛けてきたアマツさん。顔を向けると、そりゃもうドン引きしたような表情をしていた。
「あ、アマツさん。コレは『錬金術師の卵』って言って──」
「
呪われそうとかひどくないかな、コレでも俺が胸を張って世に出せる自慢の発明なんだけど。いやまぁ、魔物やらから回収した魔石を再度加工してるのは呪われそうではあるか。
さて、取り敢えずダリアの体重の半分の新型人工筋肉が完成した。次は首、手首、足首と脊椎からダリアの動きを人工筋肉や魔導鎧本体へ伝える為の昇華オリハルコン製のインターフェイスを作らなければならない。600gのオリハルコンインゴットを手に取り、3つの『卵』で昇華させる。ミスリルに比べて必要になる魔力が大きくなっていて、『卵』一つでは200gのオリハルコンを昇華させるだけで限界になる。しかし、その強化幅はとんでもない。通常のオリハルコンに比べて強度は1.5倍程だが、感応性が4倍程に跳ね上がっていて人の意思をほぼダイレクトに魔法金属へ魔力として流し込めるのだ。
おそらく、昇華ミスリルと昇華オリハルコンでカラムスさんの『フィエルテ』と同型の魔導剣を作成した場合、意味不明な性能になると思われる。あの『ケラヴ』に並べるかは不明だが、人類が作れる連接剣としては最高峰の物であると思う。
ま、作ると都市長の胃が吹き飛ぶ可能性が有るのでやれないが。ただ、個人としては作ってみたいとは思う。
「マスター、お待たせしました。早速造りましょう!」
と、元気溌剌に挨拶をして入ってきたダリア。その姿はタチアが着ていた薄手のアレであり、準備万端である。
お義母さんとアマツさんはその姿に対して何か思う所が有るらしく、俺に視線を向けてくる。しかし、俺の仕事は此処から始まるのだ。
「ダリア、お前の身体を鑑定するかキチンと採寸するか何方にする?」
「早く終わるのは何方です?」
「鑑定」
「では鑑定で!」
判断が早い。そんなに楽しみなのか、魔導鎧。
ただ、今回は少し事情が変わる。
「悪いが、此の後色々やるから今日はインナーマッスルアーマーで作業が止まるからな?」
「……はい?」
本気で俺の言葉が分かって無さそうな反応である。いや、本気で悪いんだが今回ばかりはマジで無理だ。
「何故……何故ですか!?」
「態々俺に刀鍛冶を教えに来てくれた先生を蔑ろに出来ないからな。取り敢えず、新型人工筋肉で作ったインナーマッスルアーマーがどれだけの出力になるのか気になるからダリアで試すが」
「そんな……そんな、こんな残酷な事が有っていいのですか!?」
「……新型インナーマッスルアーマーの性能って気にならないか?」
「超気になります!!」
うん、回復早いな。取り敢えず、早速『概念鑑定』を使用して肉体の情報を取得する。ダリアが機械寄りの構造をしている為、内部の情報をどんどん取得していける。筋肉の収縮範囲や関節の可動域、細かい癖など様々な情報を得ていく。
取得した情報を参照し、先に用意していたインナーマッスルアーマーの人工筋肉に次々にステータスを入力していく。今回の新型はタチアに作った旧型と違い、指先迄確りと覆うタイプになっている。この内部アーマーだけでもある程度の防御力を確保出来る強度を持ち、更に身体能力の強化もより強力になる。
とは言え、コレはダリアに向けた調整として本人から魔力を引き出して魔導鎧を稼働させる術式を使用する。その為、用意した首、手首、足首、脊椎の昇華オリハルコンに稼働術式を刻む。
「あら、タタラさん。その術式でしたら此方と此処をこう書き換えた方がより効率が上がりますよ?」
作業中にお義母さんからそう言われ、術式を頭の中で再構築する。確かに、起動時の魔力循環の効率が20%程上がっている。ダリアの魔力でゴリ押しするつもりでもあったが、効率を上げられる所は上げてより全体の性能を上げたい身としてはこう言ったアドバイスは受け入れる。更に、人工筋肉に付与される強化術式もより効率的な運用を可能にする術式を教わりながら付与していき、ダリア用のインナーマッスルアーマーはその基幹部をより強力に進化させていった。
出来上がったインナーマッスルアーマーをダリアに最適化させるため、一旦着せる場面になる。
「ふふ、マスター。私の美しいスレンダーラインを目に焼き付けて差し上げます!」
「ダリアの……?」
胸を張ってドヤ顔を決めるダリアを頭頂から爪先までゆっくりと頭を動かして見る、その後同じ速さで視線を上げてダリアの顔を見る。
「……ハッ」
「何ですか、その反応は!?」
俺の表情は片眉を上げ、心底馬鹿にした物である。おっぱい聖人相手にその程度で誘惑出来ると思ったのか?
「お前に性的魅力を感じたことは無いからな」
「私と四葩様はそこ迄差がない筈!」
「四葩は身体じゃ無くて共に居て心地良い心根に惚れてんだよ、身体で惚れさせるつもりなら最低でもタチア連れてこい」
ダリアにそう告げている中、四葩の事をどう思っているのか聞けたからかお義母さんが超嬉しそうにしている。うかつだったかも知れない。
インナーマッスルアーマーを着用したダリアは、俺からの説明も無く起動させた。ダボついていた人工筋肉が引き締まり、ダリアの身体にフィットする。ゆっくりと身体を動かし、調子を見る。
「……素晴らしい、コレが私専用のドレスなのですね」
「まぁ、無骨だけど戦場でお前が舞うためのドレス……と言うか下着か」
「台無しです、マスター」
うん、言葉を間違えたな。しかし、この上に正しく鎧を着るのだからドレスよりも下着寄りなのだコレは。
「少し内部のステータスを見る、動かないでくれよ」
「Yes my Master」
俺の言葉に従うダリアのインナーマッスルアーマーに『概念鑑定』を掛けて、実際の肉体とのマッチングを開始する。ダリアが機巧乙女として自然に最適化しているのだが、少し歪が出来ているのが視えた。そこのパラメーターを細かく弄り、本人が意識出来ていない癖も合わせて最適化させていく。
時間にして10分程、俺にしては時間が掛かったかな。
「……コレが、工匠タタラ・ジュロンの力……」
出来上がったインナーマッスルアーマーの調子を確かめたダリアが、呆然とそう零した。
「外装は少し先だが、普段着ているメイド服の下に着れるだろ?」
「成る程、その為に此方を先に作ったのですね」
「このタイプはインナーマッスルアーマーが先に無いと外装が合わせられないからってのがデカいんだよ」
服の下に着れると言う事で、実は都市長の防御力向上の為に作ろうと思ったのだが断られた。以前言っていたように、死ぬ可能性が有っても自分の作品を使いたいと言われたのだ。
今、都市長が旧型の作成を成功させたかは不明だが、出来れば完成させていて欲しい。
「で、どうだ?」
俺の『玄武』の構造も参考にし、インナーマッスルアーマーだけでも魔導砲撃が可能になっている。一通り身体を動かしたダリアは、想像以上に自分の動きに付いてくる新たな武装に満足気に頷いた。
「ありがとうございます、マスター。この下賜された新たな鎧にて、マスターと奥様を汎ゆる困難から守る事を誓います」
片手を胸に添え、跪いて頭を下げて来たダリア。何だかんだ騎士の礼にも似た挙動だ。
「……優先するのはエテルで頼む、俺はアイツが一番大切だから」
「Yes my Master」
静かな声で、俺の命令にダリアは応えた。
12/9 3:00
取り敢えず書きたい所を書いたので追加は此処まで。
もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり
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タタラとエテルの立場逆転
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現パロ(エテルヒロイン)
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現パロ(四葩幼馴染)
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武器が擬人化してタタラへ物申す
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年増組と同い年
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聖人カレハ
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原作エテルとタタラ
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ガチ妹ダリア・ジュロン