※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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学園パート

「……何で2日連続で起き抜けにあんたの顔を見るかな」

「……俺に言うのかそれ」

 

 酒の勢いで行為に励んだ翌日、目覚めの第一声がコレというのは酷いと思う。やや顔は赤いが、何となく昨夜寝る直前に自分が何を言ったのかは忘れてる雰囲気だ。

 酒の勢いとは言え、レベルアップ後の発情状態が無関係の行為は互いに初めてだったりするのだが。

 

「取り敢えず、シャワー浴びねぇと……」

「流石に匂いが酷い……」

 

 二人揃ってベッドから降り、脱ぎ散らかした服を脱衣所に持って行く。取り敢えず少女へシャワーを先に譲り、俺はキッチンで朝食の用意をする。気怠さが抜け切らない状態なのでトーストとコーヒーを用意し、プレーンオムレツを作る。溶いた卵に塩とミルクを入れ、バターが溶けた熱いフライパンに注ぐ。フライパンに触れている面が軽く固まったタイミングで真ん中から折る。真ん丸のフライパンを覆っていた満月を思わせた黄色は半月の姿になり、そのまま皿の上へ盛り付ける。もう一つ同じ物を焼き、向かい合う様に卓上へ並べる。ガラス製の小皿を2つ取り出し、レタスとプチトマトを盛り付けそれも並べた。

 一通り出来たタイミングで、タオルで髪を拭きながら少女がリビングに入ってくる。卓上の朝食を見た後に俺へ視線を向け、眉を潜めた。

 

「あんた、何でその格好で料理してんのよ」

「シャワー浴びるのが楽になるからだ、俺は入ってくるから先に食べてくれ」

 

 少女にそう言って俺は浴室に向かう。面倒だから横着した俺は料理中裸のままだったりする、少女へのサービスの為にエプロンくらいは身に付けるべきだったか……むしろ『ロニセラ』を向けられる事になりそうだなと考え直した。

 この世界の技術水準は前世の世界と比べても少し劣る、とは言え一部技術は上回る面も見えるので総合したら同じくらいになるかも知れない。生活水準で言うならテレビや携帯電話の普及は無いが、シャワーやトイレは普通に使えるし冷蔵庫も有る。車等の車両は無く基本馬車なのだが、引くのが馬だけでなく馬に似たモンスターや馬型のゴーレムを使ったりと速度は出ないが移動にそこまで不便は無い。

 武器は原始的な武器が主だが、遠距離で使える魔導銃の存在とそれ以上に魔法が有る。普及は少ないが魔導鎧の存在は歩兵戦力という点では上回っているだろうし、地上戦艦や空中戦艦という数百mを誇る大型の兵器が稼働している。工業力では前世の世界、個々の戦力では此方の世界が上だと自分は見ている。

 長々とそんな事を考えている理由は、シャワーを堪能しているからというしょうもない理由だ。汗を洗い流す感覚はやはり気持ちがいい。クラフトして作ったシャンプーとボディソープで身体を洗い、シャワーで流し終えたらさっさと出る。男はカラスの行水で十分だ。

 服を着てリビングに戻れば、少女は朝食に手を付けずに待っていた。身体を洗ったが為に10分は時間が経っているのだが。

 

「ほら、早く座って」

「先に食っててくれと言ったろ……」

 

 急かす少女に苦笑しながら席に着き、揃って挨拶をして朝食に手を伸ばす。熱が逃げてしまったトーストは、やや食感を失いつつもやはり良い匂いがする。次にスプーンで掬ったオムレツをトーストに乗せ、歯を立てる。卵とミルクの甘味を、少量入れた塩が引き立てる。ケチャップ等を掛けても良いなと思いつつ、次々と齧りついていく。時折サラダを挟み、口の中をリセットしながらトーストとオムレツを完食。レタスとプチトマトを交互に食べ終え、最後にコーヒーを啜る。

 少女はトーストにオムレツとレタスを挟み、サンドイッチにして齧りついていた。あの食べ方も良いなと思いつつ、コーヒーを飲む。

 2人共食事を終えて食器を洗い、洗面所で歯を磨いた後に玄関へ。学園には指定の制服等は無く、探索者の装備や私服での通学が主になる。唯一、学生証である魔術で加工されたプレートの所持が義務化されているくらいだ。学園に置かれている個人用のロッカーの中に勉強道具一式は置いてあるので、インベントリに装備が間違いなく入っている事を確認して終わりだ。

 少女の方も探索時の装備を着ているが、唯一日差しの中で歩く上で帽子を被っているくらいしか差異が無い。種族的に強い陽射しを苦手としているのと、単純にファッションとして帽子というかキャップが好きなので通学時は常用していると前に言っていた。『ロニセラ』はガンベルトごとインベントリに仕舞っているらしい、学園内で嫌がらせを受けてその標的にされたく無いらしい。

 家の扉を施錠し、二人並んで学園への道を歩いていく。家から学園までの道は大凡20分と言った距離で、会話をしながら歩いて居るとあっという間に着く。

 眼前に広がるのは巨大な白亜。元は砦として建築された物を学園に使える様に内装を弄ったらしい。最低でも建設されて三百年は経年している筈の建物だが、当時の技術の粋を集め超高度な呪術的な強化と向こう5000年は稼働し続ける魔力炉により建築当時の外観を保っているそうな。

 正門から中に入れば人工の灯りで満たされ、明るい雰囲気を醸し出している。内部はそのまま土足で移動する、煉瓦を敷き詰めた床を歩いて目的の教室を目指す。

 小、中、高一貫であるこの学園は、教育課程が低い者の区域が入口に近くなっている。高等教育課程は一番奥、演習場や大規模工房が近い位置に用意されている。

 各教育課程の区域に入ると、ロッカーが並んでいる。学生証が自分のロッカーの鍵も兼任しているので、教科書や書きかけのレポート等を中に入れておく生徒も多い。セキュリティは問題ない、魔術的なロックとオリハルコン製の物理錠で学生レベルにはどうやっても破れない。コレを破れるなら既に傑物と言える故に破る理由が無い。

 

「おはよっす」

「はよー」

 

 ロッカーから教科書を持ち出し、挨拶をしながら少女と一緒に教室へ入る。俺達の声に気付いた面々が此方へ視線を向け、挨拶をそれぞれで返してくる。中には返さない奴も居たが、そもそも馴れ合いをしている教室でも無いので気にしない。

 

「オッス!」

 

 笑いながら片手を上げて挨拶をして来たのは、昨日鉄の剣を買って行った奴だ。

 

「おはよっす、今日も元気そうだな」

「はよー、今日もよろしく」

「おうおう朝から相変わらず仲良いな! それと剣ありがとな、早速試したがやっぱり他の店より馴染むわ」

 

 軽い冷やかしも混ざっているが、あくまでも軽口レベルで悪意は混ざっていない。何気に男へ対する警戒心が強い少女が近い距離で普通に挨拶を出来るのも、コイツが底抜けに明るいバカな奴だからだろう。

 

「早速試したのか、柄とかはちゃんと調整したか? 持って直ぐ帰ってったからそのままだったが」

「当然したに決まってんだろ、此処まで進んでそんな基礎やらねぇアホは居ねぇよ。何より店任せじゃなく自分でやってこそ馴染むってもんよ!」

 

 呵々と笑うその姿に愚問だったなと此方も笑う。やはり、バカだが真面目で真摯に探索者を目指しているヤツは違うな。

 

「あ、そうだ。もし剣を打って欲しいなら一度鉄鉱石を鉄の武器一つ作れるだけ集めてこい。昨日言い忘れたが商会ギルドから依頼を受けていい探索者の最低限持つべき技量はそこって言われてんだわ」

「お、そうなのか。なら今度ナイフでも依頼しに行くぞ」

「はいよ、いざという時に頼りになる予備武器として良いの打ってやる」

 

 そう言って不敵に笑えば、相手も同じ様に笑みを返してくる。やはりコイツみたいな奴と話が出来ると気分が良い。

 

「あんさ、二人で盛り上がるのは良いけどそろそろセンセ来るよ?」

 

 そんな俺達2人を見兼ねた少女が声を掛けてくる。バカは少女を見て何か訳知り顔をした後、後でと言い残して席に戻った。俺が鈍感だったから分からなかっただけなのか、どうも少女の感情は察せられているっぽい。

 この学園の授業内容は実はそこまで難しい物は無い。前世世界の日本の義務教育と同じ初等6年、中等3年の義務教育の後に受ける高等教育は基本1年、多くて2年という物だ。それも内容としては探索者やクラフターとしての本格的なスキル運用や、ダンジョン内で発生する罠の類、各種族への対策と言った実戦向けの物が主になる。

 事務関連や政に関する内容は学園ではなくギルドの受け持ちであり、中等教育が終了してその道を目指す者が選ぶ進路である。店を構えるなら本来はギルドに通って学んだ方が良いのだが、俺のような探索者としても活動し素材を集めるタイプは、経営学よりもダンジョン内の知識を優先した方が良いのだ。

 ダンジョンの攻略はゲーム知識が下地として有るが、転生後に様々な違いにぶち当たっている為、知識をすり合わせなければ特大の落とし穴にハマりそうで高等教育課程に進んだ経緯が有る。

 ゲーム知識は頼りになるが、ゲームではやって来ない行動も増えている。ゴブリンやオーガでも武器を投げ付けるなんて行動を取る個体が居たり、爆薬を飲み込んで自爆特攻を仕掛けてくる奴なんてのも居た。授業でも例外個体として紹介されたが、怪しいゴブリンに咄嗟に鑑定を掛けて体内の爆薬に気付かなければ死んでいた可能性が有った。戦闘で役に立たないと言われていた『鑑定』スキルが命綱になるとは予想外だったし、『クラフト』スキルで罠設置が出来るなんて事は授業で教えられるまで考え付かなかった。

 ゲーム時代程には簡単に武器がアップデート出来ない事もあり、進学を選んだのは正しかったと今でも思う。

 今日の授業内容はパーティでの戦法についてだった。一人が囮になり敵を釣り出し、仲間と罠を張った位置まで誘い込み撃破する。前世で見たのは『吊野伏せ』と呼ばれたそれで、やはりシナリオライター達の影響か日本の色が時々見える。

 教官からクラフターとしてどういう手段を取るかと質問を受けたが、ベトコンの戦法である『落とし穴の中に鋭利な棘を用意し、囮を使ってその上に誘う』と答えたら感心された。落とし穴の先に落とすだけで終わる人も多く、中に油や可燃物を用意しておいて燃やす等の手段にはドン引きされた。尚、俺の答えに怯えの混ざった目を向けてきた少女が居た。そうだな、俺と組んで囮役出来るのお前しか居ないもんな……別にお前が落ちない細工くらい出来ると後で教えておかないとな。

 

 次に職業専門の授業の時間となり、少女やバカと別れて大規模工房へと向かう。生徒それぞれの個室が有り、互いに技術の盗用を防ぐ為の措置が取られている。ただ、小・中等部の生徒は各工房に居る生徒から許可さえ取れば見学出来るという措置が取られて居る。

 名門の出の生徒や、美人という噂の生徒の下へ申請が殺到する傾向に有るらしく、目立たない見た目をしている俺は申請してくる生徒が殆ど居ない。学園からの素材で好きに作れるから気楽である。

 尤も、見学者は0では無いのだが。

 

「先輩! 今日も宜しくお願いします!!」

「……よろしくお願いします」

 

 対照的な挨拶をしてくる二人の中等部の男子生徒。明るい雰囲気で如何にも慕ってますと言わんばかりの元気っ子は『シャムス』で、やや影の有る落ち着いた雰囲気の美形が『エスト』だ。

 高等部に入り職業専門授業が始まった時、公開を制限してなかった俺のクラフトを一目見て憧れたらしくそれから授業の度に顔を見学しにくる。

 俺が問題だと思う事は一つ、この二人『原作キャラ』なのだ。メインでは無くサブクエストで主人公達が関わるキャラなのだが、その内容が結構エグめで選択肢によってはこの二人は相当にヒドい目に遭っていた。各方面で起こっている事象から今はまだ原作前の時間軸だと思われるので、二人共イベントの原因になる事案に遭遇はしていないと予想出来る。

 俺が介入する事で更に大きな問題に発展する可能性が出る故に原作介入をするつもりは無いが、出来れば二人とも元気で居て欲しいのでクラフトに関してはしっかり教えて置こうと思ってる。もしかしたら、その知識のお陰で彼等がイベントの発生を回避出来るかも知れないし。

 

「いらっしゃい、二人共。今日は何のクラフトについて知りたい?」

 

 慕ってくる相手とは可愛いもので、教わりたい事を教えてやりたいと変な老婆心が芽生えている。

 

「えっと、今日は……」

「魔導銃をお願いします」

「え、ちょっとエスト何を勝手に」

「シャムスは前回要望聞いて貰った、なら今度は俺の番」

「いやいやそれとコレとは別じゃない!?」

「なら早い者勝ち、先手必勝」

「ちょっとエストぉ!?」

 

 目の前で漫才みたいにテンポよく会話をする二人が微笑ましく、思わず笑いだしてしまった。俺の様子を見て更にやり取りが加速する二人を止めながら、俺はエストの要望を聞く事にする。

 

「先ずは魔導銃だな、分かった。時間が残ればシャムスの要望も聞くから取り敢えず一緒に見ると良い、きっといい経験になるから」

「え!? は、はい!!」

「シャムスは運が良い」

 

 俺の言葉に目を輝かせるシャムスと、そんな姿に分かり難い小さな笑みを浮かべるエスト。本当に親友同士仲が良い、出来ればこのままであって欲しいものだ。

 そうして俺は実演をしながら二人に魔導銃の構造について解説し、自分なりの工夫を教えて行く。初めはやや不満が混ざっていたシャムスもやがて目を輝かせて質問を飛ばし始め、エストは終始楽しそうな雰囲気で質問をして来た。

 今日は楽しく学園での時間を過ごせた。




本日7/31 23:59を持ってアンケート第一号を終了します。
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