※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中


タタラ強化イベント発生中


師は鍛冶師に夜の営みを勧める

 お師様が長年弟子を取れなかった理由が、理論を覚えられる存在の不作というトンデモ事実を話されて呆然とする。いや、確かに技量としてはとんでもないが、それでも純粋に技量を突き詰めて見える粗を無くせば作れる範囲内だと思われる。後は『概念鑑定』で金属内の路を調える事が出来るなら、お師様の哲学を体現出来るのだ。

 お師様の刀は存在そのものを調えて作られる、時と共に世界に切断の概念として昇華していく特殊なものだ。権能が有れば生命を宿した武器にもなり得ただろうが、そうはならなかった。

 言うなれば空の器、担い手の魂を写して唯一無二の相棒に成り得るのがお師様の刀だ。ただ、少し違和感も有る。此処まで器として調えたのなら、鍛冶師が概念を与えてやればそれを体現する物にもなり得る筈。それが空の器のまま……どんな未来に進むのか見たかったのだろうか?

 こう考えると俺はまだまだだな、お師様の哲学を理解しきれていないのだ。

 今の感覚を忘れないうちに、練習として一人で作ろうかと思い鋼を取り出す。が、次の瞬間お師様が俺に拳骨を叩き込んできた。

 

たらぼう(タタラ)こんはしまじゃようやす(今日は終いだよく休め)

 

 有無を言わせないような表情で、俺を睨んだお師様がそう言った。

 

「でも、今の感覚は時間を置いたら取り零しそうなんですよ」

あほ(阿呆)そなんあるか(そんな訳が無いだろ)たらぼうは頭キレる(タタラは頭が良い)ときおって技みなおしゃしかと分かる(時間を置き作業を反芻すれば正しく理解する)

 

 俺の不安にそう返してくるお師様、そしてニカッと笑い続けてくる。

 

儂ゃたらぼうのお師っど(儂はタタラの師匠だぞ)信じぇ(信じろ)

 

 後ろ暗さも何も無い真っ直ぐな自信がこもった言葉、その言葉に俺は気持ちを落ち着かせて作業を取りやめる。確かに学生運動が近付いているがまだ焦る時間では無い。今は一つずつ出来る事を増やして確かな地盤を固める時だ、俺一人じゃないんだから仲間の事も信じろ。お師様も俺の根の詰めすぎを咎めているんだ、今は休め。

 

「はい、分かりましたお師様」

 

 心の中で自分に言い聞かせて、お師様にそう返事をする。

 新しい技術を覚えて直ぐに試したがるのは悪癖だろう、もしかしたら無自覚なだけで身体が疲れているかも知れない。急ぎの依頼も無いのだから今は休もう。きっと、それが正しい。

 鍛冶場を後にして、自室では無くリビングに入る。何時も座っているソファに腰掛けると、ドッと疲労感が襲ってくる。まさか、自覚がないだけで此処まで疲労してるとは……コレをお師様達は見て取っていたんだな。慣れない技術の模倣や新しい理論の理解に想像よりも脳を働かせていたのだろう。ソファに身を沈めて、目を閉じる。脳裏に浮かぶのは作刀の光景、己の振るう鎚に纏わせた魔力越しに伝わった鋼を打つ感触。胸の奥が熱くなる、自分が知らなかった未知の技だ、それを覚えて更なる躍進が叶うのだとまるで魂が歓喜の声を上げているかのように鼓動が速くなる。

 己の銘が入った刃を取り出して茎を握って眼前に掲げる。浅反りの刃に浮かぶさざ波のような刃文が浮かび、身幅は指三本分と広い。刃長はだいたい90cm程か、此方で主流のロングソードとだいたい同じ長さで仕上がっている。コレを自分で鍛えたと言う実感が少しずつ湧いてくる、お師様に横座を頼りきってしまっているから本当に自分で鍛えたというのは違和感が有るのは確かだがお師様から俺の銘を入れるように言われたのだ。

 コレは確かに俺の作品なんだ。

 

「……やはり、美しい出来ですね」

「ぬわぁっ!?」

 

 背後からいきなり声を掛けられて、変な声が出てしまう。咄嗟にインベントリへ刀を仕舞えたのは僥倖だ。

 

「お、お義母さん!? いきなり声を掛けられると……」

「あら、ごめんなさい。それにしても意外ですね、タタラさんがそのように一つの作へ執着するのは」

 

 成る程、俺が魔導具以外でこんな風に作品へ入れ込む印象が無いのだろう。確かに、あまりそういう面は持ち合わせてはいないのが俺だろう。しかし、前世で生国の代表的な工芸品である刀をその物では無くとも自分の手で鍛えられたのだから興奮もすると言う物。まぁ、とても言えないが。

 

「新しい技術、と言うのも少し有ります。ですがそれ以上に……誰かから受け継いだ技術で作った武器と言うのが初めてなので」

 

 俺が持っている特許や創り上げた魔導具は、基本的に研究の再現や完成だったり俺自身で理論を構築した物だったりが主だ。そんな中で、直接誰かに指導を受けてその技術を継承するということが初めてなのだ。新鮮な感情が湧いてくるのも当然と言えるし、俺もコレを誰かに継承していけたらとそう思う。

 

「無菌状態で育てた弊害ですかね……それで、お聞きしたいのですが」

「はい?」

「その業物、どうするおつもりですか?」

 

 どうするか、と言うのは誰かに譲るのかと言う意味だろう。

 

「もし、考えていないのでしたら私に売っていただけませんか?」

「……お義母さんに?」

「ええ、正直それ程美しい刃と言うのを久方振りに見ました。タタラさんが初めて銘を切った逸品という面も含めて、欲しくなってしまいまして」

 

 虎熊家で過ごすお義母さんからして美事と言わしめる出来、お師様の直弟子という点も加味したら将来的にかなりの値が付く可能性も有るのかも知れない。確かに、普段作った作品へそこ迄執着の無い俺なら譲っていただろう。

 しかし、今回だけコレを渡したい相手が居るからダメだ。

 

「……すみません、今回はお譲り出来ないです」

「あら、此方のお値段で四桁万の金額は最低でもお支払いしますが」

「いや、流石にそれは……お師様が作ったらもう三桁上がるか」

「いえ、五桁増えます」

「ひぇっ」

 

 流石のお師様である、きっと陽出國でも伝説的な鍛冶師なのだろう。前世で言うなら五郎入道正宗とか千子村正みたいな名工みたいな扱いなのだろう……お師様が正宗ならその弟子の俺が村正になりかねないが。よくそんな人を技術交流の為に国外に出せたな当主代行。

 

「その、コレを渡したい奴が一人居まして」

「……その方は?」

「俺の幼馴染で好敵手……絶対に負けたくないのと同時に、誰にも負けて欲しくない親友です」

 

 バカの顔を思い出す。魔鉄の鎧を渡した際の喜んだ顔や、依頼された剣を渡した後に振るっていた真剣な表情が脳裏に浮かぶ。

 彼奴に、俺が初めて打ったこの刀を預けたいのだ。彼奴が作るであろう数々の逸話に、俺の剣が共に語られたらこれ以上無い程に誇れるだろう。

 

「あらあら、その方は異性ですか?」

「いえ、同じ男ですよ」

「ふむ、負けたくない男心ですか……仕方ないですね。今回は諦めます」

「すみません」

「いえいえ、タタラさんの初物を頂けなかったのは残念ですが次の作品等まだまだ機会はありますから」

「言い方」

 

 間違っては無いが思春期男子にとって刺激が強い言い方すんな。

 

「それとお義母さん、俺はまだお師様が持つ技術を全て教えられて無いんですよ?」

「あれ程確かな作刀をしていて、ですか?」

「まだ俺は横座についてないですし、お師様の相槌を見ていない……研ぎにも何か有る筈なんだ。お師様が作った武器が、何故概念を持たない器であるのか……俺はまだ全てを知らないんだ」

 

 この世界なら付喪神の概念がより強く発現する可能性も有る、もしも千年前にお師様が打った刀が有るのなら人の姿を取るくらいは出来るようになってるかも知れない。俺にもそんな武器が作れるだろうか、遠い未来でそんな俺の武器が誰かを助ける事が出来たらなんて事を考える。

 

「タタラさん、根を詰め過ぎてますよ。アマツ翁から休むように言われましたよね?」

「……そうですね、少しするとすぐ考え込んでダメだな俺は」

 

 お義母さんから指摘されて苦笑いが浮かぶ。何か有ったら考え込んでしまう癖かそのまま根を詰める事に繋がるのは流石にどうしようも無いだろう、少し眠って頭を強制的にシャットダウンするしかないだろうか?

 

「タタラさん、ちょっといいですか?」

「え、あっはい。何で──」

 

 お義母さんに呼ばれて顔を向けると、額に扇の先端が触れた。

 

「『睡眠』」

「えぁ?」

 

 お義母さんの言葉と共に発された魔力により、急激な眠気が襲ってくる。抗い難いその微睡みに囚われ咄嗟に抵抗しようとも考えたが素直に従う事にする。考え過ぎる俺を見かねたお義母さんからの好意だ、抵抗するのは踏み躙る事と相違ない。

 

「……おやすみなさい、タタラさん」

「は……い……っ皆、が帰って来たら、おこ、して……くださ」

 

 最後まで言い切れず、意識が堕ちる。そっとソファに向けて身体が押される感覚がして、それを最後に思考が暗転する。

 夢の中、俺は必死に鎚を振るっている。お師様が教えてくれた技術を注ぎ込み行う鍛刀、その刀を心待ちにしている誰かが居る。正体は分からない、しかし何処か覚えのある姿だ。

 相手は俺の鍛刀する姿の直ぐ目の前に座っているが、どうも俺は気付いていない様子。そんな風に懸命に鋼を鍛える俺を楽しそうな雰囲気で眺めている女性を思わせる人影。

 ふと、その人影が俺の頭に手を伸ばし撫でようとする。作業の最中にそんな事をされたら集中が切れるのでやめてほしい、咄嗟に止めようとしたら新たな気配が現れた。頭を撫でようとする人影の背後から腰に腕を回し、そのまま持ち上げて背中から地面に叩き付ける。美しい弧を描くブリッジを晒すその決め姿は、まさに王道のジャーマンスープレックス。思わずスリーカウントを取ろうとしてしまった。

 カウント2.99で復帰した頭を撫でようとした側は、起き上がりと共にスープレックスした側に抗議の姿勢。しかし、スープレックスをかました側は交渉決裂のラリアット。もろに直撃を受けて倒れた相手に向かって何かを言い放っているが、どうも作業の邪魔をするなと言っている様子に見える。うん、ド正論。

 ラリアットで倒れた相手は起き上がり、そのまま無言で相手の胸元へ向けて水平チョップ。応じてビンタの反撃をするスープレックス側。チョップとビンタの応酬が続き、先に音を上げたのがチョップ側だ。やはり、先に受けたスープレックスとラリアットのダメージが響いたのだろう。そんな姿勢が崩れた相手の隙を逃すこと無く、スープレックス側は相手の頭を脇で抱え込み逆の手で相手の下半身を掴む。そのまま勢いよく持ち上げて、自ら倒れ込む要領で相手の頭頂を床に叩き付ける。かつて四大必殺技とされたプロレス技、垂直落下式ブレーンバスターだ。

 あまりの威力に会場全体が揺れたと錯覚しそうだ、そのまま相手の腕と脚を取ってホールドを掛ける。思わず側に寄り床を叩きながらカウントを取る。今度はツーカウントで復帰した。

 二度も大技を食らいふらふらになるも立ち上がったファイティングスピリッツには敬意を表するが、相手は無慈悲な殺神プロレスマシンである。隙だらけの相手に慈悲は無かった。

 複雑に相手の四肢を固め締め上げる、かつて闘魂で勇名を馳せたプロレスラーが好んだフィニッシュホールドの一つ卍固めである。ギリギリと締め上げられる傷みに声は聞こえてこないが悲鳴が上がるのが分かった。ロープを掴もうとしているらしいが、生憎此処は四角いジャングルでは無く俺の鍛冶場で有る。と言うか何で鍛刀している俺は目の前で行われる新日プロレスバリの試合に気付かないのか。遂には卍固めを仕掛けられた側がギブアップを宣言、ホールドを解いた側の腕を俺は取り高く掲げ勝利者宣言をした。と言うか、今更だけど夢の中に出て来るアンタら誰よ?

 勝った方は俺の手をやんわり外すと、そっと両手で俺の手を握ってくる。何だか壊れ物を扱うかのような優しい握り方だったが、その優しさは試合に持ち込まれないらしい。素晴らしいプロ根性だ。俺から手を離し、そのまま倒れ伏す相手の首根っこを掴んで夢から退場していく……本当なんだったんだろう。

 

 そして俺はソファの上で目が覚めた。時間としては3時間程の仮眠だったらしい。外は完全に暗くなっていた。

 

「おはよ、タタラ」

 

 そんな俺の頭上から降ってくる声。視線を動かすとエテルの山脈が見えた、デカすぎて顔が見えねぇ。後、頭の下に有るのはエテルの太腿だな……適度な張りと柔らかさを両立させている感触に遅れて気付いた。

 

「……おはようエテル」

 

 挨拶を返しながら身を起こす、そのまま動いたらエテルの山脈に突撃するので迂回する。いや、1日しなかっただけで大分下半身がヤバくなっている事に気付いた。今エテルの柔らかさを感じたら暴走して場所も時間も考えず行為に走る、以前2日でエテルが我慢出来ずに俺の部屋で自慰に耽った事を何も言えなくなる。これも『性魔術』の影響だろうか、何か対策考えないとそのうち四葩や駄狐にぶつけてしまいそうで怖い。

 

「華澄さんから自然に起きる迄はそのままにしてってお願いされてね、ゆっくり寝かせてたの。皆でご飯は済ませちゃってるから、後はタタラの分だけだよ」

 

 言われて食卓に視線を向ければ、確かに一人分の食事が並んでいた。認識してから空腹を自覚する、鍛冶で体力使ってたんだな。

 

「……悪いな、任せちゃって」

「ううん、大丈夫だよ。タタラがしたい事をするのなんて珍しいし」

「……そんなに珍しいか? 普段からしたい事をしてると思うが」

 

 自分が作るという行為が好きだからクラフトも料理もしているのだ、珍しい事では無いだろう……子作りはその、エテルに付き合う場面の方が多いが。

 そんな俺の言葉を聞いたエテルは溜息を一つ、呆れさせるような事を言っただろうか。

 

「タタラの場合本当にそう思ってそうで怖いよ……」

「いや、作るのは好きだし」

「あれもこれもなんてしてたらパンクしちゃうでしょ、優先してやりたい事や勉強したい事が有るなら私達も支えるから頼って」

 

 やや苛立ち混じりなエテルの言葉に対して何も言えなくなる。ダンジョンでは役割分担をして頼っているつもりだが、実生活はその限りではないんだろうか。と言うか、檜風呂は女性陣が使ってるから掃除は任せきりになってると思うんだが。

 

「それじゃタタラ、私達に何か頼りたい事は有る?」

「いきなり言われてもな……」

 

 敢えて言うなら1日で限界を迎えている性欲の発散に付き合ってもらいたいところだが、そういう事では無いだろう。と言うか、俺自身がコレをコントロール出来るようにならないとこの先エテルが妊娠したら発散する上で色々問題になるしな。

 

「むぅ、なら夜に部屋へ言って搾ってあげるね!」

「待って」

「タタラは忘れてるかも知れないけど、夢魔はパートナーの発情に合わせて準備が出来るんだからね?」

「そうだった」

 

 目覚めた直後にエテルを見て身体が反応した事に気付かれていた、端からコントロールなんて夢のまた夢か。

 

「それに、アマツさんの言葉を華澄さんが解説してくれたけど」

「え、お師様の言葉を?」

「うん、『夫婦なのだししっかりと営みをしとけ、伴侶を寂しがらせるな馬鹿弟子』だって。それと、お風呂が二つ有る理由と今の呼び名話したら華澄さんとアマツさんが爆笑してた」

「お義母さんとお師様が!?」

「いずれはトラっちゃんも使うんだよねって確認したら華澄さんから凄い威圧感が出てたよ、トラッちゃんが真っ赤になって肯定したら収まったけど」

「あの人自分の娘になんて事してんの……」

 

 頭が痛くなってきた。お義母さんとお師様の反応もそうだが、お師様が俺のハーレム状態に近い現状を肯定してる事実にもだ。そう言えば四葩の恋慕を理解して俺の愚息が入るか分からないとか言ってたから、普通に肯定派だったなあの人。

 

「それじゃタタラ、ご飯食べちゃって。お風呂は朝入るとして、部屋で私も食べて貰うんだから」

「デザートにしても濃厚過ぎないかな……」

 

 この会話で身体が期待して既に勃起を始めてる愚息に頭が痛くなる、半勃ちだから食欲は有るし大丈夫だが。

 

「あ、明日登校日なのお義母さんとお師様に言ってねぇや」

 

 食卓に付く直前にその事を思い出す。明日は家に駄狐に残って貰って、探索は雛菊さんに頼もう。家の事を任せられるのが駄狐くらいしか居ないから此処は任せてしまおう。

 

「タタラが学園の事を忘れるのって、珍しいね」

「刀鍛冶が楽しいんだよ、新しい事を覚えてそれをすぐに実践したくなる。そのせいでお師様に怒られてお義母さんから睡眠魔法食らったけどな」

「まったく、タタラは仕方ないなぁ」

 

 思わずと言った風に笑うエテルにつられ、俺も笑う。一人だけの食事だが、エテルが一緒に居てくれたから淋しくは無かった。

 

 食事を終えた俺は歯を磨いた後で部屋に戻る。以前に買った髪色と同じ上下の下着を纏ったエテルを見た瞬間に理性が切れた。

 乱暴に抱き寄せて、唇を重ねる。舌を強引に捩じ込んで絡ませた。強引なこの行為に対して反射で抵抗しようとするエテルを力で押さえつけ、口吻を続ける。歯や口内を舌でなぞり、溢れる唾液を交換し、また舌を絡ませる。息が続かず離れれば、混ざった唾液が透明な橋を作った。新鮮な空気を吸って呼吸を調えるエテルの紅潮した顔を見て、俺の興奮は更に高まる。

 支配欲が湧いた俺は息が整わないエテルと再び唇を重ね、そのままベッドに押し倒す。俺から逃れようとするエテルの両腕を頭上に上げて、その手首を掴む。筋力差から抵抗が出来なくなったエテルの姿に嗜虐心が湧いてきて、この見事な肢体を持つ雌を屈服させたい等と脳裏に浮かぶ。

 

「タタラ、手首痛いよ」

 

 まだ理性が強いのだろう、口調が何時も通りだ。そんな要素すら興奮材料になり、俺は自由なもう片手で愚息を取り出す。ベルトを外す事に戸惑う演技をしつつ、愚息を取り出してエテルの膣口に押し当てる。先走りで何度か滑って挿入出来ないと演技を挟みつつ、体重を掛けながらゆっくりと挿入していった。

 

「た、タタラ? 何だか何時もより乱暴だよ?」

「いや、偶にはこういう演技をしたいというか……エテルを支配したいというか」

「支配って……私はずっとタタラ専用っうんっ!?」

 

 エテルの言葉の途中から抽挿を開始した。上から体重を掛ける様な体勢、所謂種付けプレスみたいな状態だ、仰向けなのでエテルの羽根に痛みを与えそうだから普段はしないのだが……理性が殆ど残ってないのでどうも最奥を己の種で満たす事しか頭に無い様だ。

 

「一般人間種(ヒューマン)の俺が、エテルにセックスで勝てる訳が無いからさ。普段は俺が支配されてる側なわけだろ?」

 

 そう耳元へ語りかけながら腰を叩き付ける、エテルは答えようにも短く息を吐くだけだ。そう言えば、挿入されるたびに息が詰まるって言ってたか。

 されるがままのエテルに支配欲が満たされる。それと同時に自身の子を作らせようと愚息が種を放つ準備を始めた。

 

「ほら、エテル。今日の1回目……しっかり味わってくれよ」

 

 限界点に合わせて体重を掛け、深く深く繋がった最奥へ射精する。俺の快感が伝わったのか、エテルの膣内も蠢いて俺の愚息を搾る。収縮するエテルの膣口を利用して、愚息の中に残る精子を扱き出して引抜く。愛液も精液で汚れた愚息が窓から入ってきた光を受けてぬらりと光を反射する。

 エテルの手首を放せば強く握り過ぎて跡が付いてしまっている。申し訳無い事をしてしまった。エテルに謝ろうとしたら、のそのそと身体を起こした後に四つん這いで俺の愚息に顔を近付けて、混ざり合った体液を舐め取り始めた。四つん這いの姿勢から俯せに変えて、根本から丁寧に愚息を舐めて清めていくエテル。肥大化した影響でエテルの小さな口ではとても頬張れない事になっているが、そんな事は関係ないのだとエテルが掃除をしてくれている愚息には快感が走っている。最後には先端にキスをしてきて、まるで忠誠か隷属でも誓うかの様な恭しさだ。そして、そんな丹念な口淫にたいして俺の愚息は硬度を取り戻して隆々と天を指している。

 

「エテル、自分で動け」

 

 普段しない命令調でそう言えば、エテルはまたゆるゆると身体を動かして俺に跨ってくる。視線を下へ向け、自らの入り口を俺の先端へと合わせて腰を下ろした。再び呑み込まれ快楽を享受する愚息、脳を痺れさせるその感触に俺の愚息は深化した『性魔術』の恩寵を最大限に活かし再度エテルの膣内を自身の子胤で満たせるように精子を生産し始める。つくづく思うが、本当にエロゲ世界の下半身はスゲェな。

 俺の首に腕を回し、甘い息を吐きながら腰を上下前後に動かすエテル。余す所なく俺の愚息の形を味わうかのように、腰を振る為に俺の愚息もまたエテルの名器を全て味わう事になる。当然その刺激は俺の限界を容易く削り、即座に射精をしてしまいたくなる物だ。しかし、エテルが今自らの快楽を貪り更に俺への奉仕を行っているのだ。簡単に果てれば満足はしないだろう、それは嫌だ。こうして繋がるならば、互いに気持ち良くなりたい。俺にはその手のテクニックは無い、それならエテルの求める物に耐えられるだけ耐える事が重要だろう。先程は俺が一方的に快楽を貪ったのだ、次はエテルが貪るべきだろう。

 そんな事を考えるが、正直何かして無いと快楽に負けそうだ。なので、目の前で揺れるエテルの爆乳を弄ぶ。エテルと自身の体重の半分ずつを腰だけで耐えるのは少し辛いが、左右の手でエテルの乳房を片側ずつ持ち上げる。重々しくも張りが有って柔らかい、そんな乳房を揉みしだく。この刺激にエテルは高い嬌声を上げ、その膣内の動きが活発になる。エテルが感じてくれているのは喜ばしいのだが、俺が与えられる刺激が爆発的に強くなり正直かなりキツい。さっさと射精してしまいたくなるが、エテルはまだまだ俺の愚息を味わいたがっている様子。此処は耐えるしか無い。

 自由になる口を使い、エテルのブラをフロントホックを噛んで上にズラす。勃起した乳首が縁に引っ掛かり、その刺激でエテルがまた嬌声を上げて膣内を搾ってくる。軽く精液を漏らした感じがするが気にせずその先端を舐める。舌で触れ転がし唇で甘噛みするなど次々と刺激を与えれば、俺の愚息をエテルの膣内が嫐ってくる。俺も限界で先にギブアップする直前で、エテルは一番深く腰を落として俺の頭を強く抱き締めた。直後それ迄とは比べ物にならない程に収縮を繰り返す膣内の動きに、俺の愚息は堪らず射精する。2度目なのに1度目よりも大量に吐き出される俺の精液を受け止めるエテルの身体は痙攣し、まるで獣の様な声を上げるだけの雌になり下がる。エテルの胸元から顔を上げれば、涙と涎を垂らして正に女の顔をしている。恒の美貌が此処まで様変わりするのは俺の前でだけ、俺のみが見る事を許されている事に満足感が湧く。

 力の抜けたエテルを抱き寄せて、その首元に軽く歯を立てる。エテルの素の防御力を相手に、俺の攻撃力では下手したら噛み千切ってしまいかねない。慎重にその首筋に俺の跡を付けてマーキングする。

 

「エテル、お前は俺のモノだ。誰にも渡さないからな」

 

 そうやって耳元で囁けば、エテルは弱々しく頷いた後に俺の鎖骨を噛んでくる。満足に動けない中でのマーキング、少し血が出たがその朱を舌を伸ばして舐め取ってくる。

 

「わたしは、たたらのもの。たたらは、わたしのもの」

 

 そうやって呟き満足そうに笑うエテルに、何故か硬度を取り戻していく愚息。その事に気付いたエテルは俺の肩を押して、仰向けに寝かせる。夢魔の力が強くなったのか、その角が伸びて翼も大きくなった。

 エテルの癖が一つある。射精後の俺の愚息に口淫を行った後、キスを嫌がるのだ。理由としては多分、俺の精液の影響で口の中が生臭くなった事で二人の間のキスにその印象を持たせたく無いのだろう。なので、頑なに口淫後にキスを嫌がる。

 なので、俺はエテルの翼にそっと手を添えて口付ける。愛情表現として出来るのはこれくらい。しかし、エテルはその光景を嬉しそうに見ている。繋がったままの腰を動かし、第3ラウンドが開始された。

 

 

「……あさ、か」

 

 窓から差し込む光で目が覚める、全く頭が動かない状態だ。結局何ラウンドしたのか自分でも分からないが、5ラウンド迄は覚えている。

 首を動かせば胸の上にはエテルの頭が見え、心地良さそうに寝息を立てている。伸びていた角は何時もの通り小さくなっていて可愛らしいアクセサリーにも見える。

 1日、たった1日行為をしなかっただけでこの爆発である。これは毎日しなければ不味い気がするが、ある程度コントロール出来なければ不味い事象だと思う。エテルが妊娠して行為を制限されれば、俺の性欲が暴走した挙げ句手当たり次第襲い掛かる性犯罪者になりかねない。四葩や駄狐に頼れ、辺りはエテルや当人達に言われそうでは有るが……この量を注ぎ込んだら一発じゃないかと自分でも疑っている。

 解決策を考えないとな、そう思った時にエテルから声が漏れる。視線を向ければ瞼が少しの間強く瞑られ、開かれる。呆っとして周囲を見渡し、俺を認識した瞬間に花がほころぶ様な笑顔を見せてくる。

 

「おはよ、たたら」

「おはよう、エテル」

 

 挨拶を交わした後、エテルが頭を俺の胸元に押し付けてくる。グリグリと動かして精一杯甘えてくる様は愛おしさを覚える。そんなエテルの頭を撫でて、今日も1日が始まる。

 エテルと二人で朝風呂を済ませ、台所に並ぶ。昨日あれだけシたと言うのに、俺の回復力は絶好調でありエテルも底無しだった。きっちり浴場で欲情する遺伝子を発揮して二人で夫婦の営みを行ってから料理をしている。若い身体が持て余す性欲がどうしようもない、昨夜コントロールとか考えてたのに全く出来てない体たらくである。

 情けなさに肩を落としながら、朝食の準備だ。お義母さんが持ってきてくれた魚はまだまだ有る、鮮度の問題は冷凍庫を改造して作った氷感庫を使用している。氷感庫とは何か……分かり易く言うなら食品が凍らない冷凍庫である。内部は摂氏0℃以下では有るが、内部の物が凍らない代物だ。前世で物は見たこと有るのだが構造自体は分からなかった、なので此方の魔法術式を使い熱を奪う方式で対象の保温状態を0℃以下にしつつ内部が凍らないと言う半ば矛盾した状態を作り出した。これにより食材に対して氷感熟成が可能となり、鮮度を保ったまま肉を熟成させると言う新しい試みが出来るようになった。

 尚、初等部の頃作れたので遊び半分で都市長に見せたところぶん殴られて特許申請された。何故殴ったし都市長。

 取りあえず、氷感庫にて熟成を試みている中には鮪が1尾丸々入っていたりするので、それはお義母さん達が帰る日にお出ししようと思っている。お師様から教えられた鍛刀技術を注ぎ込んだ鮪解体包丁で見事な切り口をお披露目したいところだ。そんな隠し玉に隠れていたのが鰹であった。身の重さは10kgにもなる見事な物で、お義母さん曰く当主代行が鮪ともども一本釣りしてきたらしい……何やってんだあの人。

 それは兎も角として、鰹を切り分ける。硬い皮をそいだ後に頭を落としワタを抜いて三枚卸にする、流石に1mも有るので中々に大変だ。背骨に残る中落ちも匙で掬い、醤油に味醂と酒に大蒜をタレに漬ける。炒り胡麻も入れたかったが、生憎無かったので諦めた。この中落ちは後でお義母さんと師匠に食べて貰おう。

 切り分けた身の腹骨をすく、その後に中骨と切り分ける。さらに一人一人均等に行き渡るよう柵に分けて鉄串を打つ。台所では焼けないので、庭の隅に即席の竈を作り炭に火を入れる。鰹の切り身を炙り、焼き色がついたら氷水へ入れて串を抜く。水気を拭いたら鰹のたたきの完成だ。後は厚めに切り、塩と大蒜醤油を用意する。大葉や大根のつまも用意したかったが、現代日本程簡単に買えないのが痛い。

 

 因みに、俺が竈で鰹を焼いている最中に雛菊さんが寄ってきたのだがお師様が取り出した張り扇で思い切り叩き落としていたらしい。焼き上がりで振り返った際に地面に埋もれた雛菊さんを見て初めて気付いた。

 

 エテルはオムレツを作っていたが、なんと出汁巻きを意識して作っており巻いてないだけで味は完全に出汁巻きだった。コレは嬉しいサプライズだ。俺が竈へ向き合ったタイミングで駄狐が厨房に入り、味噌汁を用意してくれたらしい。玉葱と蕪の白味噌を使った物だ、本当は赤味噌と浅利にしたかったと言っていたがコレも十分に美味い。エテルと二人で頭を撫でてやると尻尾がぶんぶん振り回されていた、可愛いなコイツ。

 ただ、コレだけの料理を出したが弊害が一つ。この料理、陽出國の酒と滅茶苦茶相性が良いのだ。つまり、お義母さんとお師様が朝なので酒を飲めない事に凹んだ。

 

「見事な鰹のたたきを前に、清酒を呑めないのは一つの拷問ですね……」

たらぼう(タタラ)こは生殺しぞ(コレは生殺しだぞ)……」

 

 お義母さんは育ちの関係で、お師様は鍛冶の際に鎚が鈍るからと朝は酒を入れないのだそう。いや、本当に申し訳無い。

 

「もう少し生臭くなるのかなって思ったけれど、全然食べやすいねコレ」

「元の魚が新鮮だったし、氷感庫で熟成して味も良くなってるからな。初等部の頃に魔法術式を使った魔導具作成の練習品でこんなに上手く出来るとか考えて無かったから、昔の自分を褒めたいくらいだ」

 

 珍しく自分の事を肯定的に言える。

 厚めに切ったたたきを一切れ摘み、大蒜醤油を付けて口に運ぶ。鰹の内に蓄えられた海の旨味、三日とは言え熟成され味に深みをましたその肉。大蒜醤油の香りが良い感じにたたきの血生臭さを打ち消して鼻を抜ける匂いが旨味を強くさせる。

 そこへ白米を摘み口に運べば、その甘味を存分に味わえる。やはり魚と白米の組み合わせは最高である。

 

「タタラ、今日は登校日じゃろう? 妾は午後にエテルと合流し潜るが、タタラは此方でアマツ翁との鍛治じゃろう。パーティはどう分けるのじゃ?」

「出来れば、雛菊さんはダンジョンへお願いしたい。戦力として考えると家に護衛として居て貰うなら雛菊さんなんだけど……正直、家の事は駄狐に任せたい。俺やエテルと家事をするから安心して任せられるし」

「まぁ、雛菊はアレじゃからのう……」

 

 壊滅的な家事の腕、結果を反転させるアレは最早才能では無いだろうか?

 いや、なんであの人郷だと高嶺の花になっていたのだろうか。私生活ボロボロの残念美人だぞ。因みに、雛菊さんは今だに庭先に埋まっている。食レポが聞こえないのはその為だ。

 

「戦闘力なら拙者よりも雛菊の方が上なのでござるけどなぁ……家事の腕で残らざるを得ないのは少し複雑でござるよ」

「一華、お願いしますね?」

「奥様も手伝って下され。拙者、もう虎熊家傘下ではござらぬから命令を聞く義務が無いでござる」

 

 完全に鞍替え宣言だ、俺を主として認めてこの家に住むのだろう。本格的に戸籍を取らないとな……続柄どうしようか。

 結局、ダリアと雛菊さんが起きるのを待つ事無く俺とエテルは学園へと向かった。

 

 

「そう言えばさ、タタラ」

「ん、何だ?」

「子供の名前とかって考えたことって有る?」

 

 歩いている最中にそんな質問が飛んできた。いきなりだなとは思うが、実は二つだけ考えていたりする。

 

「男女何方でも使えそうな名前で、二つな」

「へぇ! ねぇねぇ、聞かせて」

 

 興味深げにそう聞いてきたエテルに対して、気恥ずかしさが有る中でその名前を伝える。

 

「ハルカとカナタだ」

「ハルカにカナタ……うん、いいね」

 

 エテルの名前が永遠を意味するので似た意味を付けたくてこの二つを思い付いた。以前、夢の中で見たあの二人の子供を呼ぶならなんて考えた結果でもある。

 

「最初は双子だね」

「いや、それは授かりものだろ」

「大丈夫、私は夢魔だから!」

「関係有るのかそれ」

 

 そんな風に戯れながら、学園への道を歩いていく。

 

「おはよっす」

「はよー」

 

 教室に入り、何時も通りの挨拶をする。返ってくる事はまちまちだが、必ず挨拶をしてくれる奴は一人いる。何時も通りの気配を放ち近付いてくる俺の幼馴染であるバカだ。

 

「オッス! 二人とも、今日も仲いいな!」

 

 明るい雰囲気で放たれる挨拶と共に言われたからかいの言葉に、俺とエテルは気恥ずかしさから思わず笑ってしまう。それはそれとして、俺はコイツに依頼が有るんだよな。

 

「なぁ、一つ依頼を頼みたいんだが良いか?」

「おう? お前が依頼とか珍しいな、タタラ」

 

 俺の言葉に疑問を持つバカ、そんなバカの眼前に昨日打った刀を取り出して見せる。抜身で柄も何も拵えていない刃を見たバカは、しかしその出来に魅入っている。

 

「タタラ、コレって……」

「最近、俺に鍛冶を教えてくれている師匠と鍛えた外来の剣。刀って言うんだがな」

 

 俺の言葉に真剣な表情を浮かべるバカ、外来の技術なんて強くなりたいお前には喉から手が出るほどに欲しいよな?

 

「依頼は、この『ワールウィンド』内に存在しない剣の技を習熟して何れは伝えていけるだけの基礎を身に着ける事。場と師は此方で用意する」

 

 俺の家の庭先で、相手は雛菊さんに頼むつもりだ。あの人の剣術ならば、このバカにとって不足は無いだろう。

 

「……報酬は?」

「将来的に学園で刀術を教える事ができる教師の地位」

 

 このバカが勉強を頑張っている中の目標の一つは、探索者をしながらも非常勤講師としてこの学園で教鞭を取ることだ。それならば、強みの一つでも持たせてやりたい。そして──

 

「もう一つの報酬。この、俺が初めて打った刀だ」

「……コイツを?」

「ああ、受けてくれるなら先払いで良いぜ?」

 

 真っ直ぐバカの目を見詰め、バカも見返してくる。俺はこの剣をお前に託したい、お前は受けてくれるのか?

 

「……日時は?」

「お前に合わせる。どれだけ掛かるかはお前の才能次第だが……どうする?」

「……良いぜ、お前の挑戦受けてやるよ!」

 

 不敵な笑みを浮かべて、バカはそう宣言した。




おまけ

 タタラの去った鍛冶場内でアマツは再び炉へと向かう。
 弟子にはああ言ったが、当人はおそらく普通に大丈夫であっただろう。アマツの見立てでは特に無理も無く後四回は鍛刀に耐えうる持久力を持っているし、なんなら途中で活力が回復し始めて最終的には朝まで刀を打ち続けられただろう。
 しかし、それではダメだった。
 タタラ自身は兎も角として、持っていた鎚が耐えきれないだろう。現時点でタタラ自身の技量に見合わない鉄製の鎚、物の古さや手入れ具合から相当に長く使っていて思い入れのある代物だと察せる。アマツとしては、アレがタタラの鍛冶師としての原初なのだと推測している。
 頑なにあの鎚を使う事に拘るのはそれだけ重さのある理由だろうとの推測で、これは正しかった。
 タタラの使う鎚とウォーハンマーは両親から贈られた物だ、それ故に無意識下でこの二つを新調する事を恐れている。

 しかし、形あるものは何れ壊れるのだ。

 アマツから見て既に鍛冶用の鎚は限界である。子供の頃から使ってきた為に耐久力が殆ど残っていないし、タタラから送られた魔力を正しく纏えなかったのは内部が崩壊一歩手前であるからだ。それではダメだ、弟子の道具として相応しくない。
 それに、あの鎚が放つ悲鳴を聞いた気がしたのだ。ボロボロになる迄使われた事にでは無く、弟子の技量に耐えきれない己への不甲斐なさによる鎚の悲鳴。
 担い手の技を邪魔したくないと、そんな切なる声を聞いた。
 鍛冶師として、アマツはそんな鎚の声を無視できなかった。
 先に弟子を休ませたのは、コレから行う己の作業を悟らせない為だ。終わった後、きっちり片付けなければあの察しのいい弟子に悟られる。そんな事は恥ずべき事だ。
 己の格納領域から取り出すのは地上で最も硬いと称される金剛鉱と日緋色金だ。アマツは自身の権能を使用して炉の火を昇華させ、二つの魔法金属を赤める。熱が通った後、金床へ置いて叩く。鍛造等では無く、不純物を内部から押し出す為の作業だ。火花が散り、不純物は打音と共に減っていく。そうして純度を上げた秘蔵の金剛鉱八つを一つに合わせて、更に叩く。一つにまとまった所で形を調えて鎚の頭が出来上がる。800g程度は有った筈の金剛鉱は不純物が取り除かれ500g程度に減っている。アマツの見立てた通りだ。
 次に日緋色金も同様にするが、此方は細長くする。鎚の柄の中に仕込む芯材である為だ。二つが仕上がった上で、帝都は帝邸の庭先で守護されている神樹の枝を乾燥させた物を削る。タタラの手の大きさは握手をした時に把握している。その為に削り出す形は分かっていた。
 形が出来上がった枝を頭の穴の中に入れ、熱した芯材を打ち込む。木材を内側から広げた為に柄は頭にピッタリとハマり、更に楔を打ち込んで外れ無いようにする。
 ずっと昔、自身に弟子が出来た時に贈ろうと決めていた鎚だ。
 千を越える年月の中で、すっかり贈るのを諦めていた。
 遠き異国の地で、初めて弟子を取れた。
 その感謝を込めた、自身の鎚と同じ造りの物。
 アマツはあの弟子が受け取ってくれるか不安を抱きつつ、自身の技を覚えた時にタタラへ贈れる事を願う。

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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