※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中

タタラ強化イベント発生中


今年最後の更新になります。皆様良いお年を。


狐は

 駄狐と二人で縁側に並んで座り、茜色の空を眺めながら話し出すのを待っていた。

 

「そうでござるな……先ずは拙者の里の事から話すべきでござるかな」

 

 そうして駄狐は過去を振り返る。

 

「拙者の産まれた里は土着信仰が強かった、産まれてくる中でも特定の特徴……金を纏っていると信仰している神の写し身であるとされたのでござる」

 

 そう言って俺に顔を向ける駄狐、その黄金色の瞳が俺を捕らえていた。

 再び空を見上げ遠い目をする駄狐の声は何処か無機質で、抱く感情が氾濫して表に出せないのが分かった。

 

「そんな中で産まれた拙者は身体的な特徴から神の写し身として崇められ、その役割を求められたでござる。神の似姿である為に里でも高等な教育を施され、祭り等の神事において神の依代としての役割を求められました」

 

 懐かしさ、そんな感情は見えない。淡々と過去を語る姿は何処か痛々しく、消化し切れていないのだと思わせる。

 

「私は、そんな里の者達の期待に応える為に必死でした。勉学や歴史、神楽舞を教え込まれる日々に自由な時間等有りません。幸い私の養育に関して里が一丸となり食うに困らないよう食料や衣服を与えられて成長していきました」

 

 一華の膝上に添えられた手に力が入ったように見える、口調から普段の巫山戯た雰囲気が抜けてしまっている事に本人は気付いているだろうか?

 

「そうやって里の人間からの期待が集まる中で、私に悪意を向ける者がいました……それが私の母親です」

 

 その言葉に絶句すると同時に納得もした。愛情を向けられる事に慣れてない理由は、本来一番愛情を向ける筈の親から貰えなかったが故だろう。

 

「母親は里から期待を寄せられる私が疎ましかったのか、それとも妬ましかったのか……何方かは分かりません。しかし、明確に私へ向けて害意を持っていたことは確かです。食事は腐った野菜を主に出し、自らに学が無いのに私の勉強へ口出しし、反抗しようとすれば薄暗い物置の中へ入れ折檻を行う。そんな矮小で何処にでも居る弱い女でした」

 

 まるで他人事のように語られる一華とその母親の過去、野菜嫌いと言うのは何か理由が有ったのかと思っていたがそんな理由なのか。青臭さが嫌いと言っていたが、野菜を食べる時にはその過去と向き合う事になるからだったのか。知らないとは言え酷な事をさせ続けてしまったな。

 

「周囲から期待をされればされる程、期待に応えれば応える程に母親の嫉妬は強く重くなっていく。唯一、食うに困らぬ食料を家に持ち寄られるお陰で贅沢さえしなければ母親が生活に困ることは無い。そして、私が不健康な姿を見せれば周囲から母親の下から取り上げられると分かるだけの頭が有った事が救いでしょう……腐った野菜以外もそれなりに食わせて貰ったので辛くはありましたが生きて来られました」

 

 一華の手をそっと握る。力の入れ過ぎで震えていた手から滑る感触が伝わり、爪がその掌を破っていた事が分かった。

 

「そうするうちに、本格的な忍術の修練を積む為に虎熊家の暗部へ預けられる事が決まりました。漸くあの母親から離れられる、私の内にはそんな思いしか無かった……」

 

 握った手に逆の手が添えられる。握ってくるそれは激情を抑えるかのように、強く強く握ってくる。

 

「里から離れる前夜、寝所に押し入る者がいました。あの母親が私を売って、次の似姿を持つ者を産ませようとして! 里長が私の上に伸し掛かった!! 気持ち悪くて! 呪を使って何とか逃げたけど触られた所がずっと気持ち悪くて!!」

 

 過去を振り返る一華の声に激情が込もる。子供が泣き声を上げるようなその姿に、手を握るだけでは駄目だと感じて抱き締める。一華は俺の背中に手を回して強く抱き縋ってくる。

 

「あの女は! 母親を名乗るあの女は自分に学が無くて働けないから身体を売っていた! 私に似た姿は需要が有って、それなりに客も付いてた!! でも、私が成長するに連れてあの女は老いて行くことに耐えられなくて! 私にその苛立ちをぶつけた挙句、最後には客を取らせようとしたんだ!! なんで? 私に貢がれる食料だけで食べられたのに、何でそれ以上を求めるの!? 身の丈に合う生活をすればいいのに、何で多くを求めるの!?」

 

 決壊した感情を吐き出し続ける一華の心を受け止めながら、その頭を撫でる。抱え過ぎた感情を吐き出させてやらなきゃならない、でないと向き合ったままの一華の心が壊れてしまう。そんな考えが沸き上がり、いつかのエテルのように心拍に合わせて背中を優しく叩く。

 一華は言葉を紡ぐ事が出来なくなり嗚咽を溢す。親の愛情を今でも無意識に求めてしまっているのだろう、しかし裏切られ売られた経験から理性がその事実を認めたくないのだ。

 なんだ、一華も俺と同じ家族の愛を欲しているだけの子供だったのか。ずっと試し行動を取っていたのもそれが理由、人を信じる事が怖いから語録を使って人が離れていくようにしていたのだ。それでも近付いて来た相手を見定めて、信じられる相手を求めて来た……それが適ったのがお師様なのは運命の悪戯だろう。

 一華が泣き止む迄抱きしめ続け、背中を一定のリズムで優しく叩く。赤ん坊に対するあやし方の真似の効果か否か、一華の泣き声は小さくなっていく。

 

「……里から逃げて、虎熊邸に着いた後の事でござる」

 

 泣いて心が落ち着いたのか、口調がござるに戻った一華が再び過去を語り始める。

 

「厳しいながらも公正な現当主代行、普段は穏やかながらも怒ると怖い奥様……そんなお二人に出会い里で出会って初めてマトモな親を知りました」

 

 俺の胸に顔を埋めながら言葉を紡いでいく、時々額を擦り付けたり匂いを嗅いだりしている辺り落ち着いているのだと思う。コレで判別しているのも変な話だな。

 

「そうして忍術を本格的に学ぶ為に虎熊家の御庭番衆へ入る事になったでござる。そこで教わる技術は目新しくて、覚えるのが楽しかったんでござるよ。そうして身体の成長を待つ必要が有る技術以外の物を全て修めた後のこと、拙者に新しい技術を教える流れになったのでござるよ」

 

 一度言葉を切り、もごもごと言い難そうにした後意を決して口に出すといった様子の一華。

 

「房中術……閨にて情報を抜きやすくする為の技術の修練でござった」

「またベタな……」

 

 一華の言葉に思わず言葉を漏らしてしまった。俺の言葉を聞いた一華はクスクスと笑って同意してくる。

 

「本当、ベタでござるよな。しかし、褥にて交わされる睦言が著しく警戒心を解くことは自明の理。その為に拙者はその手練手管を学ぶように棟梁より命が下されたのでござる」

 

 産まれた里の長に犯されかけた一華に随分と酷な事をさせる。それだけ非情なのか、それとも知らなかったのか。一華の心の傷なのだから進んで話す事は無いだろう、先程の叫びから考えて口に出せば記憶がフラッシュバックする事が分かる。今でもコレなのだ、過去はどれ程一華の心に負担を掛けたのか。

 

「幼い拙者は訳も分からず姉弟子達に其れ等を教え込まれました。手淫に口淫、男を受け入れる為に女陰を解され乳房を大きくする為に揉まれる日々……そうして拙者の身体は男へ都合の良いように改造されていきました」

 

 聞いてて居た堪れなくなってきた、何だか前世でアダルト動画のインタビュー聞いてる時と同じ気分になって何とも言い難い。まだ下半身が反応してない事が救いか。

 

「そうしてある日、拙者に実際に体験させよと命が下り……」

「一華、辛いならそこまでで」

「忍術と呪術全開で逃げたでござる」

「逞しいな」

 

 ピカピカの処女を自称していたが本当なのだろう。以前はこの美貌とスタイルだからそんな筈が無いと思っていたが、性格と実力から本気で逃げ続けて来たのが何となく分かった。

 何となく、今俺の腕の中でドヤ顔してるのが分かる。何時もの調子に戻って来て何故か安心する。思わず安堵の息を漏らしたら、一華がより強く抱き着いて来た。

 

「ただ、淫らに改造された拙者の身体は疼きを覚えてしまったでござる。毎夜自ら慰め枕と褥を濡らす日々、男相手が怖いからと同じ女で発散した事が幾度も」

「あの、あんまり刺激が強い話は控えて貰えると……」

「む、コレからが良いところでごさるが……あっ待っておでこをぴんってやるの痛いからやめて謝ります本当ごめんなさい拙者が悪かったでござるからやめてくださいその痛いのイヤ」

 

 帰って来た時にかましたデコピンがトラウマになったのだろうか、右手でデコピンの型を取ったら焦って謝ってきた。

 

「駄狐、巫山戯るのはお前らしいし嫌いじゃ無いけど真面目な話をしてる間はな?」

「きゅうん、そんなの(作者)が真面目とか重い話だったりに耐えきれなくてネタに走るのが悪いのでござるよ……」

 

 軽々しく壁越えて事情を語るな、確かに真面目だったり重めな話を続けられないけれどさ。

 

「そうして逃げ出した先に楽園なんて有りゃしないでござった……辿り着いた先、其処で出逢ったのがジッ様でござる」

 

 烙印の剣士の名台詞挟むな、ツッコミ入れたくなるだろ。

 しかし、此処でお師様が出てくるか。口振りから昔馴染みとは察していたが、一華の心を守った大切な思い出の一つになっていて少し羨ましい。

 

「ジッ様に保護して貰って、当主代行へ手紙を出して貰いつつ拙者は一人で忍術を磨いたでござる。ジッ様は拙者に様々な武器を見せてくれて、その扱い方の基礎も教わったでござる。そうして何年か経ち、御庭番衆の方で色々有ったらしく当主代行に戻る様に命じられたでござる。内容は御庭番衆の現体制の解体、理由は諜報の為とはいえ児童買春に等しい仕事をさせていた事……それが慣習化していた事でござった。どうもジッ様が当主代行へ拙者から聞いた実情を話していたらしく、それに当主代行が激怒したらしいでござる……四葩お嬢様が産まれた時期と重なったが故の奇跡みたいなものでござる」

 

 確かに、自分の娘と歳の近い女児がそんな事をさせられてたら嫌悪を抱くか。郷としては必要だったかも知れんが、別の形で諜報する方針にしたのだろう。

 

「そうして新体制になった御庭番衆はそれまでの諜報技術を応用して別の形で活かす事に注力したでござる」

「それは凄いと思うが……出来るのか?」

「出来る出来ないでは無くやる……それが御庭番衆の仕事にござるよ」

 

 急にプロフェッショナルらしい台詞を口にする一華に戸惑う。

 

「ご主人なら情報収集するとして、どんな事をするでござるか?」

「え、そうだな……酒を扱う大衆食堂を開いて其処で交わされる会話から情報収集するとか」

「雑多にはなるでござるが広い範囲の情報収集が出来そうでござるね」

 

 古今東西の創作ではお馴染みの手段であるが、実は結構難しい事だったりする。

 ・長期的な戦略にならざるを得ず、スターティングコストとランニングコスト共に大きくなる事。

 ・地域住民に警戒を解かれ定着する迄続ける必要も有り、信用獲得の為にはその地域住民を雇い入れる必要が有る為に機密の管理が難しくなる事。

 ・市井の情報収集は可能でも重要な案件を取得する事が出来るかは運に頼らざるをえない事。

 他にも色々有るだろうがパッと思い付くだけでもコレだけのデメリットが目立つ、こうして得られる情報などあくまで噂レベルに過ぎず情報を多角的に精査する部署も必要になるだろう。コレなら素直に相手国の事務や高官の秘書にでも就いた方が良いと思う。

 

「とりあえず、新たな情報網の構築をする為に様々な試みがなされたでござる。敵国への長期潜入や、密偵に密書の確保など様々な事を行ったでござる……そのうちには忍者としての実力が無い為に身体で情報を確保するくノ一も居たのでござる」

「……女忍者とくノ一って別物なんだな」

「くノ一は忍術の類が使えず、房中術に特化せざるを得なかった者達でござる。元の体制だと女は関係なく房中術を修めて色仕掛けで情報を抜く前提になっていた故に、娼婦を強制されていたも同然でござった。拙者は忍術に対して才能が有った故にその扱いは不当であると説得出来る要素が有ったでござる」

 

 話を聞いていて思ったのが、一華を擁した御庭番衆がエロゲらしさを全開にした組織だったなという感想だ。

 唐突だが現状の『ワールウィンド』は治安がとてつもなく良い、闇組織や不良等は居るが活動が目に見えず大きな事故や組織的な犯罪が無い。自警団の練度と士気が高く、装備も充実している。一華達が狙われた事は有るが、現在は俺の家に滞在する関係上手出しが出来なくなっている……監視はされてるみたいだが。ダンジョンの行き帰りに大通りを歩いているから比較的安全では有るだろうし、恐らく法務か防衛の方から俺の知り合いに対して一華と同じようなスキルを持つ護衛が付いている筈だ。それでなくともカラムスさんから軍神教会による庇護を受けている、裏の人間もあの宗教の苛烈さを知っている筈だから手は出せないだろう。尤も、庇護を気にせず襲撃されたとしてエテルと四葩がどうなるかと言う話でも有るが。いや、この世界はエロゲが元だし危ういか。

 

「そうして組織再編が終わって、改めて忍として技を習ううちに拙者は神童と呼ばれ始めたのでござるよ。遥かに歳下である筈の拙者を次期棟梁間違い無しと盛り立て取り入り、後に重鎮として収まろうとする……底の浅い欲が見える者が目立ったでござる。その事に嫌気が差した頃、御庭番衆の中でもそこそこ優秀なのに役職を与えられない者がいる事に気付いたのでござる」

 

 優秀に見られたくない、駄狐って呼ばれるのを好む理由はここか。人からの期待を受けて応えないといけない、そう考えてしまうのが根本的に優しい性格なのだと分かる。

 しかし、優秀なのに役職を与えられないとは?

 理由としては人格、コミュニケーション能力の欠如辺り……言動って事かまさか。

 

「拙者は閉鎖的な里出身で、人に嫌われる振る舞いが分からなかったでござる。嫌われ者を知る為に観察し続けたでござる。そうして御庭番衆内で嫌われる者の言動を知る中で、拙者は方言に出会ったでござる」

「お前の語録(方言)の始まりがそれかよ……」

 

 陽出國の方言ってどうなってるんだろうな、サブカルチャーで出来上がってるなら一種の地獄な気がする。

 

「効果は覿面で、教育係の耄碌爺達は一斉に身を引いたでござる」

「それ、期待を掛けすぎて壊したとか思われてないか?」

「そんな馬鹿な話が有るわけ無いでござるよ、確かに顔合わせの度に飴ちゃん貰ったりお団子くれたりするでござるが」

「明らかに負担かけ過ぎた事に後悔してる老人の図」

 

 多分、新体制として選出された人達だからそこ迄人格としては問題が無かったのだと思う。少し欲を出した結果、一華が語録使い出して精神に不調を出させたのが自分達だって思い至って後悔したんじゃなかろうか。確認してないが、多分一華が子供の頃に次期棟梁の話が上がっただろう。期待して押し付けたら年齢的に孫同然の相手がこうなりました……そんなの後悔するに決まってる。

 

「そうして拙者は次期棟梁のくびきから解き放たれ、自由に仕事をする事を許されたでござる」

 

 多分、当主代行が俺の所に一華が来ることを止めなかったのって御庭番衆の諸々のせいだよなコレ。次期棟梁確実なんていう才能の塊、下手しなくても國の重要な技術も覚えているだろう。それなのに手放せるのは、本質的に一華が虎熊領に対して帰属意識や忠誠心が無いからだろう、殺すにしても被害が大き過ぎる事を加味して逃したのだと思う。

 

「雛菊とはそんな時に出会ったでござるよ」

「御庭番衆から離れたら今度は近衛か、大変だなお前も」

「所属はして無かったでござるが何度か仕事を手伝ったのが運の尽き。誂って面白い同い年の同性と言うのが、気付けばかけがえのない相手になってしまったでござる」

 

 まるで俺とバカの関係みたいだな……最初はアイツと喧嘩から始まった関係だが今では親友と呼び合える間柄になっている。

 当主代行、雛菊さんが心配で一華がついて行く事を加味して人員を選出したんじゃないか?

 

「ご主人、コレが拙者の過去。男を信じられるかも怪しく、使い潰されかけた道具の道程でござる」

「そうか、そうだな……」

 

 全て聞いた身として、この家に置き続ける事は変わらない……一華が居たいと思ってくれている事前提では有るが。

 

「改めて聞きたいが……いいか?」

「何でござるかな?」

「この家にまだ居たいと思ってくれてるか?」

 

 少し、声が震えた。離れて行くのを見るのが怖い、想像しただけで身体が震えた。そんな俺に対して、抱き着く力を強めた一華が答える。

 

「此の身が朽ち果て、魂すら磨耗して、私という存在が消え果てるその時まで……貴方の側に置いて下さい」

 

 様々な感情が混ざる声だった。

 

「先に断っておくが、俺は何人も愛せる程に器用じゃない」

「存じています」

「俺の最愛はエテルのまま固まってる、もし一華とエテルなら迷いなくエテルを選ぶ人間だ」

「存じています」

「お前を蔑ろにしてしまう瞬間が必ず有る」

「覚悟しています」

「里の長のようにお前の身体に欲情して関係を迫る事も有るかも知れない」

「その時は喜んで身を捧げます」

「頼む、自分を大切にしてくれ」

「しているからこそ、捧げるのです」

 

 一華の抱き着いてくる力と同じくらいに強くその身を抱き締める。

 

「……お前の主人として、俺は足り無い所が多いと思う。まだまだ子供で、脇が見えず沢山迷惑を掛けると思う。そんな俺でも良いのなら」

「そんな貴方だからこそ、私は貴方が愛おしい」

 

 一度力を緩めて、俺と顔を向き合わせる一華。金色の双眸と視線が交わる。

 一華の姿が変わる。焦げ茶だった毛が山吹色になり、その尾が増える。肌の色素も薄くなるが、その瞳だけは変わらない。

 白面金毛九尾の狐、前世では三大妖怪とも称される程の力を持った妖狐。その美しさに惑う者も多かったと聞く、最強と呼ばれる事も有る存在だ。

 

「……尾の手入れをしたいって言ったが、コレは1時間はかかりそうだな」

 

 そんな姿を見て出て来る感想がコレ、大分馬鹿な感想だな。

 

「……怖くは無いのですか?」

「正直、一華の里で畏れられてたとしても此方には習慣と言うか歴史が無いからな。一華が美しいってのは分かるんだが、尾の数が増えてもそこ迄凄さが分からないんだよ」

「本当、変な人」

 

 俺の言葉を聞いて苦笑いを浮かべる一華。俺が言っている事は恐らくこの『ワールウィンド』内では共通認識になる、本国の記録も読める中央図書館の中に九尾の狐に関する情報が無かったし狐の獣人に関わる魔人の情報も無かった。それなら一華の正体が何であれ、それだけが理由で排斥されることは無い。

 一華は俺へと向きながらその場で膝を折り、正座となり姿勢を正す。何となく俺もそれに釣られて同じく正座の姿勢を取った。

 

「改めまして、私の名は一華。生まれは陽出國、虎熊領の片田舎。大した学も無く、身に宿す呪と忍術程度しか誇れる物は有りません。それでも宜しければ……貴方様の妻の一人として迎え入れて下さい」

 

 そう言って伏す一華。妻の一人と来たか、本当にそれでお前は幸せになれるのか?

 

「いいのか、そんな俺に都合がいいように言って」

「いいのです、私が割り込むのですから」

 

 即答か、本当なんで俺の周りの女性は強い人ばかりなのだろうか?

 

「先程も言った通り、俺はエテルを一番に愛している」

「はい、承知しています」

「お前の里に居た人間のようにお前を都合よく使う事もあると思う」

「それを恐れているのなら大丈夫だと思います」

「エテルを抱けない代用としてお前の身体を求めるかも知れない」

「先程も言いました通り、喜んで此の身を捧げましょう」

「お前の料理が好きだから作ってくれと頼る事が多いと思う」

「頼って下さい、貴方様に私の料理を食べて頂いてる時間は私の至福の時間です」

 

 なんだろう、料理についてが一番嬉しそうな……?

 

「……なら一華、俺と生きて俺と共に死んでくれ」

「はい」

 

 諦めさせる言葉が浮かばないので根負けする。一番重い頼みをすれば簡単に受け入れてくれた。

 

「つきましては主、私に枷をはめて下さい」

「枷?」

 

 身を起こした一華が言った言葉が理解出来なかった。枷とはなんだろう、一華が俺を裏切る事とかは無いと思うんだが。

 

「私が主のモノである事の証明を下さい」

 

 そう言われて悩む、以前パーティ共通のアクセサリーを作った時に余った物が有るには有るが……形状がチョーカーだったりする。

 

「……コレで良いか?」

 

 チョーカーを見せると、一華はパッと顔を明るくさせて近付いてくる。後ろ髪を持ち上げて首を差し出して来たので俺の手で着けてやる。赤いベルトに下がる銀色のチャームがまるでタグのように見えて、ペット味が増した気がする。

 そうして確認していると、また一華が身を寄せ唇を重ねてくる。鍛冶場では俺を正気に戻す為だったが、今回のはなんと言うか……誓いのそれに近い気がする。

 

「……私の全てを捧げます。貴方の全ては望みません、それでも命尽きるその時まで側に居させて下さい」

「分かった」

 

 身を離した一華の言葉を抱き締める、一華も抱き返して来て密着度合いが増す。この距離で初めて知ったが、一華の匂いは陽の匂いに似ている。何とも暖かく、優しい匂いなんだろうか。

 

「……そろそろ晩飯用意しないと」

「そうでござるね、一緒して欲しいでござるよご主人」

「分かった」

 

 口調を前のに戻した一華の言葉に了承を返す、あの本来の口調はもしかしたらストレスが溜まるのかも知れない。

 しかし、夜は何を作るかな。朝昼と魚だったが、夜もそうしたら飽きられるだろうか。いや、鍛冶が一通り終わったし酒も出せるから逆に喜ばれそうだな。

 

「ご主人」

 

 唐突に一華に呼ばれて振り返る、いつの間にか登っていた月に照らされた一華が俺に向かって微笑みかけてくる。

 

「愛しています」

 

 毛の色を焦げ茶に戻した一華と二人で厨房に立つ。地毛は金色らしいのだが、アレは光を反射して目に痛いらしいので少しずつ慣れていくつもりなのだそうだ。

 夕飯は冷蔵庫の中を見て余っていた野菜を使ったグラタンにした。悪くなる手前だったので下処理が中々に大変で、一部が駄目になった野菜は大丈夫な所を切出して使った。一華はそれを見て少し怖がっていたが、駄目になった部分は速やかに捨てる事で安心させた。

 入っている野菜は馬鈴薯に玉葱とブロッコリーそして玉蜀黍、肉類の変わりにサーモンを入れている。出来ることなら菠薐草とマッシュルームも入れたかったが、無かったので諦めた。因みにホワイトソースは俺が作った。特別なアレンジはしていない。

 スープはポトフを一華に作って貰った。野菜はグラタンの物と共通の物に加えてキャベツが入っている、一華風のアレンジとしては味付けに少量の味噌が入っている。

 

「ご主人、エテル様には何時言うのでござるか?」

「帰ってきてすぐは無いかな……食後、最悪入浴時に言えればまぁ」

 

 1日シないと俺もエテルも性欲がとんでもない事になるので夫婦風呂で2人して入る事にした。お師様が『儂んこと気んしぃとめおとんさきにせぇ(儂の事は気使わず夫婦仲を優先しろ)』と言って来たので、申し訳無いがお言葉に甘えさせて貰う。

 

「それとご主人、エテル様が妊娠するまでは拙者も営みは控えるでござる」

「……それは助かるが」

「拙者、ご主人やエテル様と違い『性魔術』は未取得でござる。噂ではご主人の魔羅はとんでもないとの事、今の技能を何かしら『性魔術』にしてから挑みたいでござる」

 

 まぁ、夢魔はセックス特化の身体なんて言われるくらいだからその辺りはかなり優秀な身体構造をしているだろう。対して九尾の狐が何処まで対応出来るかは分からない、大妖怪ではあるがそっちが優秀とも限らないし。

 

「そう言えば」

「何でござる?」

「一華が似ているって言われた対象の事、何も知らないんだよな。結局は何に似てるんだ?」

 

 外見的特徴とか、神の似姿なんて話は聞いたが具体的に何がどう似ているのかが分かってない。

 

「うぅん……似ているもの、としては白面金毛九尾の狐と言う大妖怪。呪詛と策謀にて畏れられ、一人の男と大恋愛を経て子沢山になった女狐でござる」

「……大恋愛?」

「大恋愛」

 

 予想から大きく外れたネタを提供されて宇宙猫みたいになってしまった。

 

「なんでも都で好き勝手していたら神から力を与えられた侍に追い払われたらしく、重傷を負って死にかけていた所を朴訥な農家の青年に拾われたらしいでござる」

「……狐は何かしら死にかけを拾われる因果でも有るのか?」

「拙者が野垂れ死にする手前の所を拾ったご主人に娶られるのだから、あまり馬鹿に出来ない因果でござるな」

 

 もしやあの時に見捨てたら嫌な因果が返ってきてたりしないだろうか、不安になるな。

 

「その後、都で贅を尽くした生活から離れて畑仕事を手伝っていたら殊の外馴染んでしまったらしく、拾った青年を襲って身籠り嫁入りしたそうでござる」

「無理矢理嫁いでんじゃねぇか」

 

 押し掛け女房にしても力技が過ぎる。

 

「その後、九尾の狐は20人近い子供を産み旦那と寿命を合わせて大体100年程生きて亡くなったそうでござるよ」

「多いな」

「子と孫に曾孫、果は玄孫にも囲まれての大往生。しかも行為の声がよく響いたらしく里全体で子供が沢山産まれたとかなんとか」

「嫌な逸話だな」

「付いた渾名が交尾の狐でござる」

「嫌な二つ名だな」

「そのせいか里では豊穣の神として崇められていたでござる」

「嫌な経緯だな」

 

 もしや里長が一華に種を仕込もうとしたのもその逸話が影響してるのか?

 しかし、元を考えると呪詛で里長も死にそうなものだが……それ以上に一華が魅力的だったと言う事だろうか。

 

「どうしたでござるご主人? もしや、拙者の幼い頃が超絶美少女だった為に里の男達から性的に見られていたと心配なのでござるか?」

「……正直、力の無い時のお前なら複数人に食物にされても仕方ないんじゃないかとは思ってる。きっと、子供の頃から美人だっただろうし」

「きゅうん……正直に美人と言われると流石に照れるでござるよ」

 

 耳を伏せながらそう言う一華が可愛くて、思わず頭を撫でる。されるがまま受け入れる姿は殆どペットのそれだ……愛の告白をしてくれた相手をペット扱いして良いものか。

 

「ただいま!」

 

 玄関の方からエテルの声が聞こえてきた、一華と顔を見合わせて笑い合う。

 

「おかえり!」

「おかえりでござる!」

 

 さて、皆を労ってご飯にしよう。難しい話はお腹をいっぱいにしてからでも遅くは無いだろう。

 

 夕食を終え、鍛冶場に一人入る。インベントリから取り出すのは鉄のインゴット、コレから作るのは一華から頼まれていた苦無だ。全長は15cmで重さは200g程のを四本仕立てようと思う。

 鉄のインゴットを赤めて鍛錬していく、叩いて折り曲げまた叩く。お師様が伝えてくれた技法で鉄を鍛え、内に有る歪も可能な限り無くす。完成した物に対して魔鉄化が無理なので、鍛錬で可能な限り近い状態にする。コレはお師様が伝えてくれた技法の賜物だ、やはりあの人の技は素晴らしい。

 折り鍛えた鉄板を『クラフト』スキルで裁断していく、一つ辺り230g弱に切出した。鍛錬中に不純物が抜けて元の重量より多少は減っているが、此処から研磨する事を考えれば丁度良いだろう。

 握りを作り、先端を削り出す。柄尻は輪状に変形させ、握り易い様に柄紐を巻く。飛苦無二本、通常の苦無二本を完成させた。

 

「……コレを一華に渡せば、次は忍者刀だな」

 

 今迄は駄狐と呼んでいたが、関係を改めた今は名前を呼んでやるべきだろう。出来上がった苦無四本をケースに入れて、そのままインベントリに放り込む。

 そして、インベントリから別の物を一つ取り出す。ダリアの鎧作成に使わない『錬金術師の卵』の一つだ。

 

「あーっと……一華、居るか?」

「呼んだでござるか?」

 

 虚空に向かって声を掛けると、鍛冶場の入り口から一華が入ってきた。聞こえてるのか、まぁ助かるが。

 

「幾つか渡したいんだが」

「む、忍具でござるかな?」

「ああ、合ってる」

 

 インベントリからケースを取り出し、内部の苦無を見せる。一華は驚いた表情を浮かべた後に一本一本検分する。

 

「……素晴らしい出来でござるよ、ご主人」

「コレで依頼が達成、次は忍者刀になるんだが……その前に」

 

 ケースとは逆の手に持っていた『卵』を一華に差し出す。

 

「コレを身に着けてくれ、きっと一華の役に立つ」

「コレは……前に奥様達を驚愕させていた『卵』でござるな」

「これ、実はかなり強力なアクセサリーでな。多分、一華が現状強くなる為に使える物だと思う」

 

 俺は『卵』の効果について説明していく、どんどん一華の顔に呆れが浮かぶのが分かった。

 

「ご主人、流石にその性能は狂ってござらんか?」

「まぁぶっ飛んだ性能だよな」

 

 完成したステータスを持っているならコレを持たせるのが最上の選択肢になるだろう、体力・魔力・技力が100ずつ上がって一分毎に総数の半分を回復するのだから。

 

「では何故エテル殿達に持たせぬでござるか?」

「あーっと……出来れば他のパーティに所属する奴には言わないで欲しいんだが」

「ご主人がそう望むなら従うでござるよ」

 

 一華の言葉を信じて、俺達のパーティが今使っている『地母神』シリーズについて説明する。俺の言葉を聞いている内にどんどん一華の顔が引き攣った物に変わる。

 

「それで四葩お嬢様の剣閃がとんでもない物に育っていたでござるか……」

「四葩は元から素質が有ったんだろうと思うが」

「それを差し引いてもあの雛菊をして両断を覚悟する剣閃は予想外でござる」

 

 尚、それが『概念鑑定』無しでの所業との事。マジで虎熊家随一の戦闘能力なんだな四葩、本人は華奢で時々子供っぽくなって可愛いのだが。

 

「そう言えば、一華ってレベル幾つなんだ?」

「拙者はレベル70でござるよ、限界値なので上げようが無いでござる」

「おおう……ステータスって上限まで余裕有ったりするか?」

「当然でござるよ」

「そうか……」

 

 妖怪かつ転生……存在昇華を2回経験している為のステータス上限の上昇が起きていること、それらを踏まえて上限に届いて無いのなら『ムゥ(たみ)』からステアップアイテムを集めて一華の基礎能力を上げるのも有りかも知れない。

 

「……ご主人、なんかロクでもない事を考えてござらんか?」

「いや、一華に基礎能力を上げるアイテムを使って戦力上昇を出来ないかと」

「やっぱりロクでもないでござる」

 

 俺の扱いはそんなか。

 

「そんな言い方はヒドイと思うんだが……まぁ、いいかそれより忍者刀を作るから素材預かっていいか?」

「まったく響いて無いでござる……」

 

 呆れ顔の一華はそう言いながら、インベントリから魔法金属を複数取り出して渡してくれた。ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトが合計で2kg分、『鑑定』してみると不純物がそこそこ多く鍛錬したら刀身は750g程に成りそうだ。

 

「心鉄にミスリル、皮鉄にオリハルコン、刃鉄にアダマンタイトって所かな」

「その構成にする理由は何でござる?」

「心鉄に一番柔らかくて魔力伝達率の高いミスリルを使う事で一華の魔力を刀身に伝わりやすくして、オリハルコンの感応で刀身全体の頑強さを上昇、最高硬度のアダマンタイトで刃を作ることで基本的に殆どの物を切れるように」

「さらっと説明する辺りがご主人でござる」

 

 引かれると悲しいのだが。

 

「あっ、ごめんなさい主。その、傷付ける言い方をしてしまいました」

「……悪いと思ってるなら、少し動かないでくれ」

「はい」

 

 俺の内心に気付いて謝罪してきた一華、本来の話し方に変わっている辺り本気で焦っているらしい。そんな一華に少し命令調で言えばそのまま受け入れる姿勢だ。

 そっと一華を抱き締めて、触り心地の良い毛並みを堪能する。想定外の事をされたらしい一華は、戸惑いつつも抱き返して来た。

 

「変わらず触り心地が良いな……」

「この家に来て、主に言われたあの日から手入れはキチンとしてます」

「そっか、偉いぞ」

 

 褒めて頭を撫でてやれば、尻尾が揺れているのが見える。相変わらず反応が可愛い。三分程堪能して身を離すと、一華は名残惜しいのか服を掴んで来た。

 

「あっ」

 

 どうも反射的な行動だったらしい、一華自身も戸惑っている様子だ。そんな一華の頭を一撫でして、そっとその手を離させる。寂しそうな表情をするのが何とも可愛らしい。

 さて、そんな可愛い一華の為に忍者刀の作成である。打刀よりも脇差の方が忍者刀の長さとしては適切だろうから長さは二尺、刃は厚めにして反りの無い物にする。

 先ずは3つの魔法金属を水減しする、お義母さんの手が入り効率化された炉は以前と違い魔法金属に対してしっかりと熱を通している。ミスリルを赤めて打ち延ばし、何度か繰り返した後に水槽へ入れる。不純物が剥がれ、心鉄に向く柔らかく魔力伝達率が高い物が残る。不純物を含んだ硬い外皮は別口で使えると思うので回収、後で蹈鞴製鉄みたいにして高純度な物にしよう。

 近い容量でオリハルコン、アダマンタイトと水減しを行いミスリルとは逆に特に硬い部分を集めて皮鉄と刃鉄の素材にする。

 積み沸かし、仮付け、本沸かしと次々に作業を進めて鍛錬に移る。相槌を任せる相手は居ないが、元々俺は一人で鍛冶をしていたのだ。むしろ俺一人で思うままに振るえるのだと心が奮い立つ。鎚に魔力を纏わせ一打、位相を反転させて一打。繰り返し繰り返し行い、内部の路を調える。

 そうして作る心鉄、皮鉄、棟鉄、刃鉄で四方詰めの構造を作り素延べを行う。熱して鍛える中で、無心になれずにいた。

 一打一打に一華との出会ってからの日々が脳裏に過る。

 空腹で倒れていた出会いに始まり、直後に相対した事。

 虎熊家との長距離通信で押し付けられた事。

 服を買ってやった時のこと。

 風呂嫌いや野菜嫌いを治していく日々の事。

 怒った顔、笑った顔、泣いた顔……何気ない日々で見てきた一華の表情や思いを鎚に込めて振るう。

 素延べが出来上がり、鋒を作り、火造りを終えてせんで形を整えた後に焼刃土を塗って焼入れをする。温度は985℃と鋼の時より遥かに高くなっているが、『概念鑑定』で確認しているとコレが最適な温度と読み取れた。

 水槽へ素延べ棒を入れると、物凄い勢いで水蒸気が上がる。冷却時間は温度が温度の為に長めで、温度が下がりきったのを見計らい水槽から抜く。焼刃土を剥がして見えるのは薄く光を放つ白金、鍛冶研ぎを行って姿を見せる刃は青い光を反射する黒。

 茎仕立てを行い、銘を切る。そして本格的にその刀身を研ぐ。

 オリハルコン特有の黄金にも似た反射光とアダマンタイト特有の青い反射光が綯い交ぜになった不思議な光を放つ刃が出来上がる。

 造りは直刀、身幅は一般的な物と同じだが厚みは倍は有る頑健な物に仕上がった。

 

「……ご主人、コレが拙者の刃にござるか?」

「ああ、出来上がりだ……とは言え柄や鍔は無いがな」

「それでしたら今迄のヤツを使うでござるよ……コレ、預けるでござる」

 

 そう言いながらインベントリから一本の忍者刀を取り出して預けてくる一華、俺は手早く忍者刀を分解して柄を取り付ける。鞘は合わないので後で新しく作る必要が有るな。

 

「……ご主人、この刀の銘は有るでござるか?」

「あっと……うん、『牡丹』だな」

「もしや、拙者の名前に掛けたでござるか?」

「ああ、牡丹一華からだな」

 

 俺の言葉に困った顔をする一華、そんなに嫌だっただろうか?

 

「拙者、そんなに美しい名を貰える程綺麗ではござらんよ?」

「他人の評価は知らんがな、俺は一華を綺麗だと思ってるからな。名前負けとか言われても譲らねぇよ」

「……頑固ですね、主」

 

 そう言って『牡丹』をインベントリにしまった一華がスッと寄ってきて、俺に抱き着いてくる。その頭を緩く撫でてやると、一本になっている尾が揺れた。

 

「主が作ったこの刃で、主と主が大切にする全てを守る事を誓います」

「任せた。それと、その大切なものの中にはお前も居る事を忘れるな一華」

「はい」

 

 一華の返事には覚悟がこもっていた。

 と、ここで、終わったのなら綺麗だったのだが。

 

「タタラさん、何故魔法金属の作刀をする事を先に教えて下さらないんですか?」

たらぼう(タタラ)おまんほんに……(お前本当に……)

「うわっ!?」

「きゅうん!?」

 

 どうやら作業途中から鍛冶場に入って来ていたらしいお義母さんとお師様が声を掛けて来て、思わず二人揃って悲鳴を上げた。

 何とも締まらないものである。




「ああ、俺もだよ」

もしかしたら加筆するかも知れません。

2025年1月2日、後半3990文字追加しました。
明けましておめでとう御座います。

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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