※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中

タタラ強化イベント発生中


教えてくれ五飛、可愛いロリはどう書けばいい。
ゼロは俺に何も教えてくれない……


ヲヤスミナサイ

 食事の最中にあっても、あの剣の概念をどうやって抑えるかを考える。本日の朝食はオムレツとソーセージ、レタスと玉葱のサラダにトマトスープだ。

 一華が焼いたオムレツを箸で割れば中からトロリとしたクリームチーズが溢れてくるのを丁寧にご飯の上に乗せ、白米と一緒に口に含む。半熟の玉子の濃厚な旨味にクリームチーズの酸味が混ざり合い、更に塩と胡椒がアクセントになって非常に美味い。其処でソーセージを一つ摘み齧れば、中から肉汁が溢れてくる。勢いよく飛び出した為に口から零れて机に落ちそうになるのを茶碗で受け止める、肉汁が溢れるソーセージは前世の頃から好きな物だ。コレを嫌いな男子はあまり居ないと俺は信仰している。

 口の中が玉子と肉汁で支配される中、レタスと玉葱を一つまみ。中に含んだ水気が口の中をリセットしつつ、食感が楽しみを与えてくれる。

 水気で口の中が冷えてしまった後はトマトスープを啜り、口内を温めつつエテルのバーラル家レシピの味を堪能する。サラダに使われた玉葱の余りを細かく微塵にし、トマトと煮込む事で引き出した甘み。トマトの酸味も火を通す事でやわらかくなり、更に隠し味として摩り下ろした林檎と生クリームを適量入れる事で飲みやすさを強くしている。使われた食材が全体的に栄養価の高い物で有る為か、身体の調子が良くなったような気になってくる……料理にそんな速効性は無いのだが。

 今回の朝食はパンでも美味しかったかも知れないが、やはり魂が元日本人な為に白米の旨味が舌に馴染む……つい最近迄白米を食えてなかったのにこの舌の馴染み具合は何なんだろうか?

 因みに雛菊さんはお義母さんに厳しく監視されている。どうも嫁ぎ先か入婿としてバカをロックオンしたらしく、淑女教育を徹底する腹積もりらしい。まぁアイツは世話好きだから多少の干物でも問題ないとは思うのだが……出来る事なら出来る所まで教育したくなるのが親心だろう。昨夜の件から四葩のそう言った教育も徹底していたみたいだしな。

 そう考えていたら無意識に四葩を見ていたらしく、視線が合った四葩が何かを察したのか口パクで伝えてきた。『スケベ』と言っているように見えるが、当たっているなら完全に思考を読まれたな。

 目を逸らすと今度は一華と目が合うが、顔を真っ赤にした上に俯かれてしまった。何時もなら誂ってくると思うのだが、どうも昨夜の事が恥ずかしいらしい。うん、可愛いな。

 朝から可愛らしい反応を見せる陽出國組にほっこりしていると、隣に座るエテルが尾で俺の太腿をペチンと軽く叩いて来た。どうも昨夜を思い出した結果性的な興奮を覚えてしまったらしく、パートナーとして繋がっているエテルの身体が準備を始めてしまったらしい。食事中にエロい事を考えてしまったならそりゃ怒られるよな、今夜は埋め合わせになりそうだ。

 

 迎えに来たタチアにエテルと四葩、一華と最近寝坊続きのダリアを任せてダンジョンへ送り出す。

 このタイミングでエテルが送り出しのキスを強請ってきて、全員の前で実行する。互いに気恥かしくなって顔を赤くしている最中、やや強引に顔を向けさせられて同じ事をさせて来たのが四葩だった。終わった後にドヤ顔を決めて来たが、顔が真っ赤になっていた。その様子にエテルすらも微笑ましい物を見る目な辺り、四葩の可愛さを再認識させられた気分だ。キスは気恥かしくて無理そうな一華はそっと抱き合う事で気持ちを解消させる、一種多幸感で毛色が元に戻りかけたが本人も気付いて慌てて術をかけ直していた。夜には思い切り気が抜けるくらいに抱き締めてやろうかな。

 そして少し油断していた俺は軽く失敗をする事になる。自然な流れで近付いて来たタチアが俺の頭を抱き寄せて額を合わせて来たのだ。普段絶対にやらないであろう行動に一瞬思考が止まる、10秒程額同士を合わせた後に離れたタチアの顔は真っ赤であったが、何処か満足そうだった。

 結構離れた所に見覚えのある黒い鎧に赤い髪の男が見えた気がしたが、多分気の所為だ。血涙流しながら怨嗟を送ってきた気がするのも多分気の所為、父親の怨念とか受けたくねぇ。

 

 ダリアが何かアクションを起こす前にパーティを見送り、バカとその妹弟を家に上げる準備をする。工房とそれに繋がる鍛冶場、そして店舗エリアの入り口を最優先で施錠。続いて各個室も施錠だ、エテルの部屋など淫語の教科書であるスケベ本が複数有るので子供に見せる訳にいかない。おなじ理由で父さんの書斎も施錠する、エテルだけでなく最近は此方の字を覚えようと一華が部屋から本を持ち出した挙げ句それが官能小説で自爆した事が有ったらしく方言(語録)に組込むか迷った事が有ったらしい。恥じらいながら淫語とか言われたら押し倒すぞ俺。

 一先ず危険地帯へ入る事は出来なくした。風呂なんかはまぁ入られても問題は無いし、何なら姉妹なら檜風呂を使いに来ても問題は無いだろう。許されるなら双子も女性陣に面倒を見てもらえるなら入れても良い。福利厚生としてバカに言ってみようか?

 まぁ、諸々準備は出来た。後はあの兄妹が来るのを待つだけだな。

 

「タタラさん、随分と動きましたね?」

「まぁ、来るのが年齢一桁の子達なので。危険物が有る部屋へ勝手に入る可能性を無くすためにも」

「成る程……では何故個室を?」

「……エテルの部屋にはこう、有害図書がその」

「把握しました、英断ですね」

 

 なんだか物凄い納得を得た気がする……そう言えば四葩に兄も居るから、部屋にその手の物が隠されてるのを見付けた事が有ったりするのだろうか。それは嫌だな、母親にエロ本見付かって把握されてるって。

 そんなやり取りの直後に鳴る呼び鈴、門まで行けば前に佇むバカとその脇に小さな影が三つ。

 

「おはよっす」

「オッス、今日も1日頼む! ほら、お前達も」

「おはようございます、たたらちゃん!」

『おはようございます、たたらにぃちゃ!』

「はい、おはようございます」

 

 バカと、その脇にいた3番目の妹ちゃんと双子の弟達からも元気良く挨拶を貰う。さて、この三人揃が燥いでバカの鍛練に巻き込まれたりお義母さんから躾を出来るだけ受けないように気を付けないとな。

 

「ジャージは使うか?」

「おう、借りるわ。風呂場借りていいか?」

「構わない、着替えたら庭先に行って柔軟するようにってさ」

 

 インベントリからジャージを取り出してバカに渡せば、勝手知ってると迷わず脱衣所へ向かうバカ。子供の頃に何度か遊びに来たからか、家の構造をしっかりと把握してるな。

 

「たたらちゃんたたらちゃん!」

「はい、なにかな?」

「きょう、えてるちゃんはいないの?」

「今日は探索に行ってるな」

「そうなの?」

「ああ、そうだよ」

「ならきょうのたたらちゃんはわたしのだんなさんね!」

「はは、そうなるのかなぁ」

 

 5才なのに随分とませた事を言う三女ちゃん、最近の女の子と称するのとは違う雰囲気を感じる。多分、年上のお兄さんへ向ける憧れ的な物だろう、この兄妹達の長女ちゃんも俺を最近になってタタラさん呼びになったし。次男と同じタタラくん呼びしてたのにな。

 

『たたらにぃちゃ!』

「どうしたのかな?」

『にぃちゃはきょうなにしにたたらにぃちゃのおうちにきたの?』

「今日は剣の練習の為だな、強くなろうとしてるんだよお前達の兄ちゃんは」

『そうなんだー!』

 

 双子ちゃんはどうも一緒に喋って一緒に相手させようとする、どうも所持スキルも殆んど一緒な為なのかシンクロしてるんだよなこの双子。

 双子が抱っこをせがんで来たが生憎と二人を同時に抱っこできる程器用では無いので、左右の肩に乗せる様にする。双子は楽しそうに声を上げながら俺の頭に捕まってくる……目に手を当ててこないから大分優しいな。

 

「あ、たたらちゃんたたらちゃん! わたしも!」

「ゴメンな、これ以上はちょっと乗せられない」

「えー!」

 

 不満そうな三女ちゃんだが、双子だけで両肩が塞がってるので肩車も出来ない。ねだられるのを断るのは少し心が痛む、下の子優先で自分が構われないのは兄妹関係で色々辛いらしいと聞くし。

 玄関からリビングを越えて縁側まで着くと、庭先にはジャージを着た雛菊さん。その脇には何時も通り和装姿のお義母さんが居た。

 

「あら、タタラさん。その子達が?」

「はい、そうです。3人とも、あの二人に挨拶しようか?」

『はーい!』

 

 両肩から双子を下ろし、三女ちゃんを中心に並ばせる。

 

『きょうはにぃちゃをよろしくおねがいします!!』

「はい、お上手にお願い出来て偉いですね。私は華澄と申します。ほら、雛菊」

「はい、奥様。私は雛菊、あなた達のお兄さんに刀術を教える者です。よろしく」

 

 雛菊さん、子供にそんな堅苦しく難しい言葉を使っても通じないですよ。

 

「とーじゅつ?」

「剣の使い方の事だよ、雛菊さんが教えるのはずっと遠いところの剣なんだ」

「そうなんだ、すごい!」

「うん、凄いんだよ」

 

 刀術と言う言葉に疑問を持った三女ちゃんに噛み砕いて教える。目をキラキラさせて凄いと言ったが、具体的に何がどう凄いかはおそらく分かってない。多分、ずっと遠い所というのが凄いって判断なんだと思う。まだ思考が予想できるからマシだが、もっと子供は支離滅裂な会話になる可能性がある。

 

『かしゅみさんのおふく、へん!』

「ふふ、此方では見掛けない服ですものね。私の住んでいる所ではこんなお服が流行っていますの、慣れると良いんですよ?」

『そうなんだね、とってもきれい!』

「ありがとうございますね」

 

 お義母さんは子供の相手が慣れたものって雰囲気だ、服を変と称されても子供の語彙力では見たことの無いものを変と言っているだけなのを察している。そしてその変が何故かを丁寧に教えている辺り本当に行儀作法の先生なんじゃなかろうか、手慣れすぎだろう。

 そして、こんな子供に慣れたやり取りをするお義母さんと俺を見て所在無さげに佇む雛菊さん。立ち姿から心做しか覇気が無くなっているように見える。言葉遣いが硬いから、子供から若干怖がられてると思うんだが……大丈夫かな。

 

「お待たせしました、本日もよろしくお願いします先生!」

 

 と、縁側の方からバカが声を掛けてきた。振り返れば雛菊さんと対になるデザインの青いジャージ姿をしたバカが居た、サイズは袖が少し余る様子だがアレなら問題無いだろう。下手すれば、直ぐに身体がデカくなるからなコイツ。

 早速柔軟運動を開始するバカと、見様見真似する三女ちゃんと双子。お義母さんはその光景に微笑ましさを感じている様子だが、ちびっ子達の柔軟運動を直して正しい物にしている。変に覚えたら骨格が歪む可能性が有るんだろう、そこら辺を教えてるだろうから少し厳しいがちびっ子達は素直に聞き入れて直している。血筋からなのか、運動神経良いんだよなこの家族。

 そうして身体を解した後、昨日に引き続き型の稽古を開始する。五行の構えを一つ一つ丁寧に取り、雛菊さんが直している。雛菊さんに触れられたびにバカの身体が強張るのを見て、少しほほ笑ましくなるが多分当人はそんな事を気に出来る余裕は無いだろうな。因みに、柔軟を終えた双子もバカに倣って五行の型を真似ている。そっちはお義母さんが少し手直ししてあげている……あの二人、確か親譲りでファーマー系統のスキルが揃ってるんだよな。鍬を使う際に応用が利くからなのか、上段からの振り下ろしを徹底的に教えるお義母さんは本当に先生が板に付いている。

 

「たたらちゃん! たたらちゃんはやらないの?」

「俺は下手だからダメだって」

「そうなんだ!」

 

 三女ちゃんの疑問に軽く答える。俺はカラムスさんから『対人戦になったら逃げろ』と言われる程に戦闘の才能が無いので、多少剣術を齧った程度では意味が無いのだ。対人戦に限られているだけ良かった、戦闘そのものに才能が無ければ探索が出来なかっただろう。そもそも俺は槌以外の武器を使うのが大変に下手なのだ、銃以外は使えないも同然でカラムスさんから『一種の才能だ』と呆れられたりもした……心折れかけたなアレ。

 

「たたらちゃん、わたしおえかきしたい!」

「良いよ、紙や書く物は有るかな?」

「あるよ、はいっ!」

 

 三女ちゃんがお絵描きをしたいとの事で付き合うことにする、描くための物の有無を問えば画用紙とクレヨンが出て来た。そう言えばこのクレヨン、昔俺が作って都市長に特許を出されたやつだな。木炭だとアレだったので子供が使いそうな玩具として作ったら油絵等に並ぶ本格的なジャンルになって戦々恐々としたのが懐かしい。今だと子供達にも普及して、絵描きの卵達が初めて触れる画材としても人気になったのだとか。

 

「たたらちゃんもわたしのくれよんつかっていいよ!」

「ありがとう、じゃあ少し貰うね」

 

 三女ちゃんから許可を貰ったので先端をナイフで少し削る、余ったミスリルで即席のパレットを作って粉末が混ざらないように取り分ける。筆は使わない、指にクレヨンの粉を着けて画用紙に絵を描いていく。題材はお絵描きを一緒にしている三女ちゃんにする、描いてる最中の姿では無く俺によく向けている笑顔にしよう。

 指で絵を描くのは個人的に好きだからだ、筆を使うよりも何となくタッチが柔らかくなる。指先や腹を最大限使って、画用紙に三女ちゃんを描いていく。濃淡は指の触れ方で調整、色の分け方は5本の指其々で別の色を使う。重ねれば別の色も再現出来るので、三女ちゃんを描くのに不足は無い。

 チラッと三女ちゃんを見れば、画用紙へ懸命にクレヨンを走らせている。多分、黒髪の人物画だと思うが必死に描く姿が可愛らしい。バカと同じ明るい茶の髪を編み込んで白いリボンで飾ったのが経済的に苦しい中でも娘のオシャレを気にした両親の渾身のプレゼントなのだろう、シンプルながらも似合う物を探したのが伝わってくる。今日のオシャレも絵に取り込んで、20分程で俺の絵は完成する。写実的な絵だが、クレヨンと指で描いた事で少し色の塗分けがややキツいかも知れない。それでも三女ちゃんの歯を見せるような笑い方と明るい雰囲気を上手く描けたのではないかと自分でも思うちょっとした自信作だ。

 

「たたらちゃん、わたしかけたよ!」

「お、本当かな?」

「ほんとだよ、たたらちゃんは?」

「俺も描けてるよ、見せ合いっこする?」

「うん、する!」

 

 三女ちゃんの完成報告を受けて、見せ合いを提案したら嬉しそうに返してくる。子供は作ったものを褒めて欲しがるみたいだから、沢山褒めてあげよう。

 

「はい、わたしがかいたのはたたらちゃんだよ!」

 

 そう言って見せてくれた画用紙には、黒髪でデカいハンマーを持った人が描かれていた。5才児らしい棒人間に少し肉付けしたような絵だが、キチンと俺の髪型を再現していたりと中々才能を感じさせる出来だと思う。

 

「おお、上手だね。お家で沢山練習したのかな?」

「えへへ、うん!」

 

 具体的にどう上手いか、なんて理屈は無しにして手放しで褒める。沢山頑張った事を褒めてあげれば、三女ちゃんは顔を赤くして喜んでいる様子だ……エテルがこの光景を見てたら俺を搾りに掛かってたりしないよな?

 

「たたらちゃんのえもみせて!」

「いいよ、俺が描いたのは……じゃん」

「すごい、わたしだっ!!」

 

 俺の絵を見て三女ちゃんは目をキラキラさせている、どうやらお気に召して貰えたようだ。

 

「欲しいならあげようか?」

「ほんと!? ほしい!!」

「うん、じゃあちょっと待ってね」

 

 インベントリからオーク材と小振りな魔石を取り出して手早く『クラフト』スキルを使いつつ額縁に加工する、釘を使わない組木加工での固定。接着剤を使用せずに楔で固定し仕上げに砕いた魔石を混ぜた防腐剤を塗る。小振りな魔石は薄い板状に加工してガラス代わりに。画用紙を中に収めて完成、そのまま三女ちゃんに渡してあげる。

 

「すごいすごい!」

「気に入ってもらえたかな?」

「うん!」

 

 嬉しそうにする三女ちゃんに対して、描いて良かったとそう思う。

 

『ねぇちゃ、どうしたの?』

 

 と、そんな三女ちゃんに声を掛けてくる双子。どうやら剣術の初歩を教わるのに飽きたらしい、お義母さんが二人を見て苦笑いしている。

 

「たたらちゃんにかいてもらったの、ほら!」

『ふわぁ、ねぇちゃだ!』

 

 大喜びの三女ちゃんが額縁に収まった似顔絵を見せて、双子が揃って驚きの声を上げる。そんな光景が微笑しくて気が抜けてしまう。

 

「本当にお上手ですね、タタラさん」

 

 そんな双子の後ろから覗き込んだお義母さんが驚きながらそう感想を零す。

 

「写実的に描くだけなら得意なんですよ、芸術的かは微妙ですけど」

「写実的の描画も一つの芸術だと思いますよ」

「俺はお義母さんの浮世絵とかの方が芸術的だと思いますけどね」

 

 燥ぐ三女ちゃんと双子の三人を眺めながら、そんな会話を交わす俺とお義母さん。そう言えば人相書きとして渡してたあの浮世絵どうしたんだろう?

 

「にぃちゃにもみせよ!」

「だめだよ、にぃちゃれんしゅしてるよ」

 

 双子の兄がバカにも見せたがるが、弟がそれに待ったを掛ける。兄の邪魔はダメだって言えるのは凄いなこの子。

 バカと雛菊さんの鍛練は始まってからまだ30分程、休憩に入るにしても早すぎるだろう。まだまだバカの集中力は切れそうに無いし。

 

「見せるのは休憩に入った時にしような、今はまだお兄ちゃんは頑張ってる時間だから」

「……はーい」

 

 双子の兄は俺の言葉に落ち込みながらも了承する、聞き分けの良い子で助かる。

 

「うん、俺の言う事を聞けて偉いぞ」

「わぷ!?」

 

 双子の兄の聞き分けの良さを褒める為に頭を撫でる、いきなりの事に驚いた様子だが少ししたら笑ってくれる。

 

「お前も、ちゃんとお兄ちゃん止められて偉かったな」

「……くふふ」

 

 弟の方も撫でてやれば嬉しそうに笑ってくれる。

 いつか自分の子供が産まれたらちゃんと褒めてやれるように、練習と言ったら悪く聞こえるかも知れないが褒め慣れておきたい。

 

「お兄ちゃんが休憩に入る迄はお絵描きするか?」

『んー……いいや!』

 

 揃ってお絵描きは拒否か。しかし、おもちゃを用意するのもな。

 

「たたらちゃん! わたし、たたらちゃんのおてつだいしたい!」

「俺の?」

『ねぇちゃずるい!』

 

 三女ちゃんの提案に戸惑う中、双子も参加したがる。俺の手伝いって言われても流石に出来る事は無いだろう……いや、会話をしてみれば何か有るかも知れないな。

 

「お手伝いって言っても、今は特に無いんだ」

『えーっ!?』

 

 手伝う事が無いと伝えれば、三人からは不満そうな声が上がる。その姿が可愛らしく、お義母さんは口元を隠して笑っている。俺もそんな姿に笑ってしまうのだが、さて何を話そうか。

 

「そうだな……ちょっと教えて貰えたら嬉しいんだけど」

『なにっ?』

 

 俺の問い掛けに興味津々に答える三人、目下の悩み……あの刃を収める鞘のアイディアが有ったら面白いな。

 

「物凄く力が強くて、暴れん坊のドラゴンが居るんだ」

『ドラゴン!?』

「そう、ドラゴン。そいつは触ろうとすると暴れて大変なんだ、何とかして触りたいんだけど……皆ならどうする?」

 

 あの刃をドラゴン、概念を暴れると表現して伝えてみる。どんな発想が出て来るかな。

 

「はいはい! おともだちになる!!」

「お友達か、それはいいね」

 

 双子の兄の方が両手を上げてそう言ってくる。

 ドラゴンと友達になって触らせて貰う、か。とても夢が有るな。俺もドラゴンと友達になってみたいな、変な因果が働いて嫁入りしてきたらギャグだけど。

 

「ご、ごはんをいっぱいあげてうごけなくなったところをなでる!」

「確かに、ごはんいっぱい食べたら動けなくなっちゃうもんな」

 

 双子の弟が自信無さそうにそう言ってくる。

 大食いが多いドラゴンだが、例えば幼生体のものなら人間の子供が摂る食事量で十分だったりする。なら、そんなドラゴンをお腹いっぱいにして動けなくしたら撫でられるだろう。発想がとても可愛らしい。

 あの刃に対しては使えないかも知れないが、子供のこういう発想()は聞いていると微笑ましくて癒される。お義母さんも大分絆されている様子で、自然と微笑んでいる……この人保育士とか向いてたのでは?

 

「たたらちゃんたたらちゃん、わたしわかっちゃった!」

「おっと、何が分かったのかな?」

「ドラゴンちゃんにさわるやりかた!」

 

 三女ちゃんのその言葉に興味が湧く、次はどんな楽しいお話が聞けるかな?

 

「それはどうするの?」

「あのねあのね、おうたをうたってドラゴンをねむらせちゃうの!」

「そうか、ドラゴンを歌で眠らせるのか」

 

 確かに伝承の中ではドラゴンに歌を聴かせて眠らせる物がいくつか存在している。過去作の中ではヒロインが子供の頃に別れたドラゴンと再会し、幼い頃に聞かせた子守唄を歌う事でそのドラゴンが膝に頭を乗せて眠るというエピソードが有った。

 ドラゴンにならとても有効かも知れない……まて、眠らせる?

 記憶に引っ掛かる、前世の記憶。世界を滅ぼす死を刻む剣と、それを封じる『眠り』の鞘。コレはもしや、使えるのでは?

 

「たたらちゃん、どうしたの?」

「そうか、眠らせる……」

「たたらちゃん?」

「ありがとう、凄く助かった! お義母さん!!」

「え、タタラさん!?」

 

 三女ちゃんの頭を撫でて、お義母さんに呼び掛ける。戸惑うお義母さんだが、この思いつきを試す為には協力が必要なのだ。

 

「俺に『睡眠』の術式を教えて下さい!」

「いきなり何を……何を思い付いたのですか?」

「あの刃の対応法です、概念武装への干渉として活かせるかは分かりませんけど取っ掛かりにはなりそうなんです!」

 

 興奮している俺の様子に、お義母さんも真剣な表情になる。上手く行ったなら、あの刃を剣にする事が出来る。

 

「何故『睡眠』なのですか、何を思い付いたのです?」

「鞘に『眠り』の概念を付与して、内に収めた対象を存在規模で眠らせるんです。そうすれば、あの刃は概念も刃の斬れ味も発揮すること無く刃の内側で休眠して──」

「人の手で管理が出来る……成る程」

 

 お義母さんもその表情を真剣な物にしている、問題としては鞘の概念が刃の概念の強度を上回らないと無意味な事だ。

 

「干渉をする為の触媒などは有るのですか?」

「製作時に鍛錬で刃としては脱落したミスリル片を集め溶かして造ります、同じインゴットから分け合った物ならば互いに干渉し合えるはずです」

 

 存在が血を分けあった双子みたいな物になるのだ、概念的な強度をどう補えるかに掛かってる。現時点での刃の重さは1.5kg、元が5kgで不純物を含んでいるにしても3.5kgのミスリルが脱落しているのだ。使えるのがこの中で2kgだとしても、刃より500g重いのなら存在の重さで概念を補えるかも知れない。

 

「ごめん、三人とも。俺、コレから少しクラフトに入るから大人しく待ってて欲しい」

「たたらちゃん、わたしおてつだいしたい!」

 

 作業に移ろうとすれば、三女ちゃんが興味を持って参加を申し立てて来た。好意は嬉しいのだが、今回はダメだ。作業をする鍛冶場は危険だし、集中を乱せば事故に繋がる。この子に怪我をさせる訳にはいかない。

 

「ゴメンな、コレはちょっとお手伝いはさせられないんだ」

「うぅ……でもかすみせんせーはおてつだいできるんだよね?」

「いや、先生にも無理だよ」

 

 三女ちゃんがお義母さんのお手伝い確認に対して、無言で首を横に振っているお義母さんが見えた。手伝いも何も、見学以外出来ない上に俺とお師様の製作現場は見学出来ても参加はしたく無いだろう。

 

「それじゃ、先生と此処で待っていましょうね?」

「うう……はーい」

「そうだ、いい子で待っていたら何か作ってあげるよ」

『ほんと!?』

「うん、約束する。その代わり、皆先生の言う事を聞いて大人しく待ってるんだよ? 約束破ったら誰にも作らないからね?」

『はーい!!』

 

 うん、元気が有って宜しい。何が欲しいかはヒヤリングが必須だが、今回は俺の創作に繋がるヒントを貰ってるのだから安いものだ。

 

「タタラさん、これを。私の持つ睡眠の呪とそちらの睡眠魔法の術式です、理を分解して理解したのならタタラさんなら作れるでしょう?」

「ありがとうございます」

 

 お義母さんから睡眠の呪法と術式を書かれた紙を受け取る。

 技術体系が違う魔法理論を並べて共通項が分かるのなら、そこから概念を割り出す事も出来る筈だ。

 鍛冶場に入り、今朝方まで刃を鍛えていたから処理を後回しにしていたミスリル片を屑箱から取り出す。不純物と混ざっている中『クラフト』スキルを活用してミスリル片だけ集めてインゴットを生成する。不純物無しのミスリルインゴットが3kg、想定よりもずっと多い。5kgのミスリルインゴットの内不純物が500gしか含まれていないのはやはりダンジョン産だからだろうか、何方にしても運が良かった。

 

「……タタラ(たらぼう)子守はどうした(こどんつかいばどった)?」

「お師様、あの刃を収める鞘が作れるかも知れません」

詳しく聞こう(くわっど)話せ(ことほげ)

 

 俺の言葉に訝しげな表情をしていた所から一気に鍛冶師の顔になり概要を求めてくるお師様。俺が『眠り』の概念を持つ鞘についての話を掻い摘んで話せば、お師様は額に手を当てて天を仰いだ。

 

そうか(ほっか)その拡大解釈が有ったか(そっだひろげちかんがあっどな)

「お師様、これ行けそうですか?」

問題は概念の強度の一点だけだ(かたんつよさどなしゃつとまる)後でその子供をうんと褒めてやれ(そんわらべんほめたぁりや)

 

 お師様からも後押しを貰い、自信を持って事に当たる。

 本来の鞘の造り方とは完全に違う、一番外の金属部を先に造りその後に刃を納める内側の木製部を作ると言う真逆の造り方だがこうでもしないと簡単に鞘を斬ってしまうのだ。そう言えば、単純に木製では無く合成樹脂で作ると言う方法も有る。それなら木を削るよりも簡単に作れるかも知れない。

 3kgのミスリルインゴットが出来たのを前にして、俺は一度作業を止めてお義母さんから貰った紙を取り出す。二つの体系しか無いが、此処には世界に干渉する法則を探求した女性の知識が詰まっている。解き明かし、読み明かせ。共通する法則、其処に込められた意味。何の為に眠るのか、眠りが何を齎す物なのか。

 眠りは安息と安寧を齎し、癒しと成長を促す。親が子を寝かせる時はその成長を願う事が多い、睡眠魔法の始まりは親が子を寝かし付ける子守唄ではないかという研究資料を以前見た事が有る。概念武装の鞘に眠りを付与するのならば、其処には納まる刃を休ませると言う願いが必要になる。

 そうだ、何故俺は蔑ろにしていた。概念武装の尽くに命が宿り、強弱は有れど意思を持っている。ならば鞘はその意思達が安らぎ休むべき場所だ、その安息の場所も拘らなければならないだろう。

 睡眠の概念の根幹は『安らぎ』と『休息』……そして健やかであって欲しいと言う願いだ。俺はコレから作る鞘をあの刃が安心して帰れる場所にする、その願いを込めてこのミスリルを鍛える。

 鎚で打ち伸ばして折り曲げる何時も通りの鍛造。何度も折り曲げる中、無意識に口から子守唄が零れ出ていた。何故唄を歌っているのか、自分でも判然としない。だが何故か止めようと思えなかった。そうして1時間を越える作業時間中唄を途切れさせずに作業を続けた。

 滑らかな板金状になったミスリルを更に曲げて、鞘となる筒状を作る。刃を挟む木材分も考慮し4cmの空洞を作り、峰と鎬ははばき側から一部露出する形にする。そうして形作り、2mをやや超える鞘の外側が出来上がった。鑑定を掛ければ『安眠』の概念が付与されているのが見えた。刃を傷付けない為の木製の内側は後回しにし、この鞘の概念の付与が上手くいっているかの確認をする。

 鍛冶場から工房へ移動し、作業台の上に鎮座している刃を慎重に手に取る。峰側から鎬を摘み、刃に触れないようにしながらそっと鞘へ納めていく。

 

「……っ南無三!」

 

 刀身が全て入った後、何度か深呼吸をして鞘を持ち上げる。金属どうしが接触する高い音がするだけで、鞘が切り裂かれる事は無かった。

 

「……だぁ、成功した!!」

 

 緊張の余り息を止めていたらしい、上手くいって思わず声を上げた。

 

タタラよ結果はどうなった(たらぼうどうなっど)?」

 

 心配だったのだろう、鍛冶場から追ってきたお師様が声を掛けてくる。俺は鞘に納まった刃を見せて、成功を伝える。

 

「一先ず、上手くいきました。コレからコイツに柄やら何やら拵えて、鞘も内側を弄るつもりです」

そうか(ほう)よく頑張ったな(ようこなしたな)

 

 お師様があまり見せない優しい笑顔で労ってくれる、その言葉に思わず泣きそうになってしまった。俺は、確かな結果を残せたんだな。




幼馴染(カラー)家タタラの呼び方

長兄()(バカ)→タタラ
次男(クロード)(16)→タタラくん
長女(アンナ)(15)→タタラさん
次女(ニーナ)(13)→タタラくん
三女(サニー)(5)→たたらちゃん
双子(デイビッド&エルド)(3)→たたらにぃちゃ
(アルバード)(36)・(レイチェル)(36)→タタラくん

幼馴染の両親は高等教育課程には進まず義務教育課程終了後直ぐに結婚して、暫くしてから長男を産みました。
この世界ではコレくらいの親子の年齢差が普通になります。
バカの名前はいずれ本編で。

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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