※この作品はR-18です。

既知転生しましたが、憑依転生では無いようなので静かに暮らしたいと思います。   作:アルカミレス

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タチアイベント継続中
『看板娘』イベント継続中

滞在帰還6/7


後にお手軽禁止兵器と呼ばれる技術の走り

 朝が訪れ、カーテンの間から入って来た朝日が顔に当たって目覚める。意識を失ってからどれだけ貪られたのかは分からない、少なくとも身体中にマーキングの痕が残っているので相当エテルが盛り上がっていたのは分かった。

 そのエテルは俺を抱き締めて眠っている、何とも幸せそうな顔だが忘れてはいけない。昨夜此奴は見た目だけなら児童に対する性的搾取をしでかしたのだ、中身は俺なので該当しないのだが。

 エテルは寝かせたまま、一人夫婦風呂へ向かいシャワーを浴びる。エテルに擦り付けられた匂いやらを落として置かないと、周囲に迷惑を掛ける。殆ど忘れていたのだが、今日は登校日だ。エテルの夢魔のフェロモンを撒き散らして登校しようものなら同時多発エロに繋がる。それに、後輩2人に厄切を渡さなければならないので絶対に登校しなければならないのだ。

 身を清めてリビングに入ると、庭先に出ようとする四葩を見付けた。その手には鉄扇が握られていて、今日は舞の稽古をするのが分かる。

 

「おはよう、四葩」

「おはようなのじゃタタラ……昨夜は随分な激戦だったようじゃのう?」

 

 挨拶を返してくれた四葩は俺の顔を見ると疲労を見て取ったのか、そんな事を言ってくる。激戦と言うか、特殊戦と言うか……今後エテルがアレを偶にやって来るのかと思うと気が重い。

 

「ちょっと、今迄に類を見ない事をな……」

「なんじゃ、お主。魔法で身体を子供にでも戻されてエテルに貪られたみたいな顔をしよってからに」

「何で分かったんだ!?」

「本当にやったんか!?」

 

 軽口と言うか、からかいが混じった四葩の言葉に思わず反応してしまう。何故ピンポイントでそれを言い当てるのか。

 

「タタラがそう言った状況を好むとは思えん……エテルの魔法かつ性癖かのう?」

「当たり、『性魔術』スキルに生えてきたから俺を癒すために使ったらしいぞ」

「それは本当に癒しに繋がるのかのう……」

 

 少なくとも精神的には追い詰められたぞ、肉体的には快調になったが。

 

「とりあえず、朝飯作ってくるわ」

「む、今日も宜しく頼むのじゃ」

「おう、栄養のある物キチンと食わしてやるよ」

 

 互いに言葉を贈り其々の場所へ、俺はキッチンに入り早速朝食の用意をする。

 個人的には朝飯なら白米と味噌汁、塩鮭に納豆。味付け海苔と卵を付けたら完璧だろうと思う。しかし、この『ワールウィンド』と言うか世界にはパックに分けられた納豆も無ければ個包装されてパリパリな味付け海苔なんて言う代物は無い。お義母さん曰く、海苔がそもそも高級品かつ希少品で中々食べられる物では無いのだとか。以前出したベーコンエッグと白米でも良さそうだが、明日が最終日で帰ってしまうお義母さんとお師様には最後まで食に付いて満足して貰いたい。鰹のタタキで酒を飲めない悔しさに沈めはしたが其処は勘弁願いたい。

 馬鈴薯と人参、玉葱に蕪とソーセージを取り出す。野菜は皮を剥き適当な大きさに切る。鍋に油を少量差してから火を付け、油が熱で緩んだら延ばして野菜を投入。軽く炒めて汁が出始める辺りでソーセージを入れ、表面に軽く焼き色が付く程に焼いたら水を入れる。火を強めて水を沸騰させたら湧き出る灰汁を掬い、野菜が柔らかくなったら味噌を2度に分けて溶き入れる。1度目で全体の味の馴染みを確認し、2度目で量を調整する。味が濃いとお師様が辛いかも知れないので少し薄口にし、醤油とバターを最後に入れて洋風豚汁の完成である。出汁になる鰹節や煮干しが無いので少し深みは足り無いが、其処は容赦願いたい。

 朝食は正直コレだけでもおかずに困らないとは思うが、コレだけでは足り無い人も居るので主菜を作ろうとする。気付かなかったが、隣で一華が主菜であろう塩鮭を焼いていた。

 

「おはよう、一華。悪いな手伝わせて」

「おはようでござるよご主人、これは拙者がご主人に自分の料理を食べて欲しいだけなので気に病む必要は無いでござる」

 

 挨拶と共にそんなやり取りをする、どうやら俺が豚汁を煮込んでいる間に玉子焼きは焼き終わっているらしく、切り分けられて盛られていた。俺に挨拶をしつつも魚の焼き具合はキッチリ見ているらしい一華の手際は非常によく、台所を任せるに足る良妻っぷりだ。

 

「俺は先に鍋や椀を向こうに運んでおくわ」

「お願いするでござるよ」

 

 そんなやり取りをして卓に豚汁が満載の鍋を運んでいく、鍋敷きをインベントリから卓に向けて射出してその上に鍋を置く。台所近くのラックから椀を取り出して鍋の近くに置く、後で其々飲みたい分だけ盛って貰おう。

 一華も魚を焼き終えたのか、更に盛り付けて持ってくる。小鉢に分けられたきんぴらと玉子焼きも有って気分のアガる朝食である。

 

 リビングのソファで他の住人達が落ち着くのを待つ、膝には一華が頭を預けて眠りについている。本当、俺の側だと簡単に寝るなこの愛狐は。手触りの良い毛を撫でて手慰みにしつつ、庭で親子揃って舞い踊る四葩とお義母さんを見る。確かに、以前四葩が言った様にお義母さんの方が舞は完成され美しい。

 しかし、やはり心を奪われるのは四葩の舞だ。俺の目には初々しさが瑞々しく映り、その表情からは心より舞を楽しむ様が見て取れる。お義母さんから教えられ大切な絆としてあの舞を受け継いだのだろう、そんな心根が分かるからこそ四葩の舞が好きなのだ。

 一通り舞終えた四葩はお義母さんに何か言った後、インベントリから『手鞠花』を引き抜いた。お義母さんは少し距離を取るだけで四葩を見ている。

 其処から始まったのは剣舞だ。

 先程迄は扇で舞っていたそれを、馬鹿長い『手鞠花』に置き換えて舞っている。動きは優美であり、アレだけ長大な刀を振るっているにも関わらずその体幹はブレない。振り回される事無く刀を操り、扇の時とは別の美しさを魅せる。そして、遠目で見ていて少し四葩の動きに違和感を覚える。優美に動くが、なんと言うか体捌きが少し大仰と言うか必要な動きより大きく動いて見えた。その動きのズレを見て、一つの気付きを得る。

 

「もしかして、『紫陽花』を着た上での動きなのかアレ」

 

 思わず言葉が漏れる。昨日聞いた俺の装備一式が正装になる可能性と言う言葉が、まさかこの舞にも適応される物とは思わなかった。四葩は探索時に『紫陽花』を着用しているし、刀も振るっている。普段の剣捌きに舞の動きが見て取れる場面が多いのも有って、ああして剣舞に落とし込む事が可能だったのだろう。

 お義母さんの方を見れば、その表情が驚愕で彩られていた。そしてとても嬉しそうに笑う、自身を越えうる何かを見出した様にその表情は見えた。

 一通り舞終えて残心した後に一礼、そんな四葩にお義母さんは拍手を贈っている。相当に良い舞だったらしい、確かに俺も見惚れていたがお義母さんがあれだけ褒めるのは相当なものだったのだろう。

 と、そんな風に見ることに集中し過ぎたせいか手が止まっていたらしい。膝の上の一華がもぞもぞと動いて撫でを催促してきた、動きが完全に飼い犬のそれである。思わず笑みが溢れる中で手をまた動かす、一華は満足そうに尾を一振るいして力を抜いた。

 

「ペットを愛でたい気持も分かるけど、大切な奥さんの事……起こしてくれてもよかったんじゃない?」

 

 そんな俺の背後から低い声を掛けてくる人物が一人、自然に目を覚ましたらしいエテルだった。

 

「おはようエテル」

「おはようタタラ。それで、何で起こしてくれなかったの?」

「魔力の使いすぎで俺が起きた時のエテルはまだ疲れてた状態だったからな、今は身体の状態ちゃんとしてるだろ?」

 

 どれだけの時間子供化させた俺を搾っていたのかは不明だが、どうやらあの魔法は相当に消耗するらしく夢魔の回復力を持ってしても回復が追い付かないらしい。朝、俺が起きた時にエテルが目覚めて無いのはこの辺の回復を見越してである。そうでないなら起こして一緒に風呂へ入っていた。

 

「それなら起こしてお風呂でタタラが私に元気注入してくれればいいのに」

「朝から俺をミイラにするつもりか?」

 

 魔力を共有している俺とエテルだが、最大容量は依然俺の方が低い。変換効率が凄まじく良いとは言え、あの不足分を俺が補おうとすると下手すれば気絶しかねない消耗具合だった。

 

「つか、俺も起きてから思い出したけど今日登校日だぞ」

「……え、あ本当だ」

「昨日の疲労を残したままには出来ないからな、元気注入は無しだ」

 

 以前に登校前にも関わらず思い切り仲を深めたのは一旦は無視。

 流石に授業で問題は無いと思うが、エテル達はその後にダンジョンへ潜るだろうから疲労を残しているのは危険だ。まぁ、エテルならエナジードレインで道中の敵から活力を奪って進めるだろうけど。

 

「むぅ、仕方無いなぁ」

「そもそも、消費量がよく分からない魔法を使い続けて身体の調子はどうなんだよ?」

「子供タタラは普段と違う栄養をくれるから疲労も吹っ飛んじゃうよ」

「危ない薬みたいな扱いやめてくれる?」

 

 若返りとか禁呪とかの類だし、一時的とはいえ使えるのがバレたらお前が危ないからな。シャムスとエストの原作イベントでも禁止薬物の研究の果てに求められてたのはそれだし。作れ無いからって作成された強力な媚薬やら性転換薬やらを服用させられるのも酷い話だが。

 

「なんじゃ、夫婦喧嘩かの。仲違いするのなら妾が正妻の座につくが良いのかエテル?」

「お生憎様、こんなのは喧嘩の内にも入らないし、そうやって意見をぶつけた後は理解が深まってより仲良くなれるんだよトラっちゃん」

 

 何処かからかいを含んだ四葩の声に、笑いを含んだ声のエテルが返す。互いが互いに愛情深さを理解しているからこその軽口だろう、お義母さんは何か隙あれば狙えみたいな目をしてるけど。

 

「おはよう四葩、見てたけど凄いなあの剣舞」

「おはようなのじゃ、タタラ。見られておったか、未熟な物を見られて恥ずかしいのう」

 

 挨拶をすると四葩は少し恥ずかしそうにそう言った、恥じる程の出来では無いと思ったが舞手と見物人では感想が違うのだろう。向上心が有るのは良いことだ。

 

「タタラさん、おはようございます」

「おはようございます、お義母さん」

「おそらく、四葩と私の舞を此処で見ていたのでしょう? どうです、私達を比べてみて」

 

 少し意地の悪い表情でそう聞いてくる。だが、以前と答えは変わらないんだよな。

 

「確かに、お義母さんの方が洗練されていて美しくは有りました」

「年季が違いますからね」

「ですが、やはり心惹かれるのは四葩の舞ですね」

「あらあら、負けてしまいましたね」

 

 その割には嬉しそうなのは何なんだ?

 四葩は俺の答えを聞いたら真っ赤になってるし。

 

「トラっちゃん、今のって何か恥ずかしい事なの?」

「無邪気に地雷踏みに行くな」

「そ、その……母上に父上が言った告白に似ておってのう」

「おっと?」

「父上も母上に先代天之鈿女命と比較しても心惹かれたのが母上であると伝えたから嫁ぐのを決めたと語っていたのじゃ」

「……タタラ?」

「そんなエピソード知らんぞ、偶然重なっただけだ」

「偶然じゃなく運命だと思いますよタタラさん」

 

 お義母さん、横から刺しに来るのやめて下さい。そんな風に騒がしくなると一華が不機嫌そうな声を上げて身を起こした、完全に飼い犬のそれな挙動である。

 

「起きたのか、一華」

「……うるさくて目が覚めたでござる」

「悪かったな。まぁ、そろそろ飯にしないと俺とエテルが学園に遅れそうだから起きてもらって助かるが」

 

 俺の言葉を聞いて不機嫌そうながらも納得して離れる一華、その頭を一撫でしてやれば少しだけ機嫌が治った様に見えた。

 起きてきたダリア、雛菊さんにお師様も交え卓を囲む。洋風の豚汁はお義母さんとお師様を驚かせたが、拒絶反応は見られなくて安堵する。

 

「コレは、とても面白い味の豚汁! 味噌や醤油の我等陽出國の味付けに、牛酪を溶かした事でこの都市風味のコクを付け足す工夫は素直に感心します!! 恐らく出汁は取っていないのでしょう深みは有りませんが、腸詰(ソーセージ)に使われている香辛料がその分を補い味を豊かにしている!!」

 

 変わらずの食レポ、コレが無意識なんだよなぁ……一華が何とも言えない顔をしてる。お義母さんは最早諦めた表情だ。まぁ、アレであのバカを捕まえたというかデートに誘わせたのだからあまり彼是言えないのだろう。

 しかし、褒めて貰って何だが少し豚汁にパンチと言うか一味足り無い感じがする。一味唐辛子や山椒を少量使ったらより美味いかも知れない。しかし、この『ワールウィンド』にはその二つが無いんだよな。

 

タタラ(たらぼう)どうした(どったど)?」

「え、ああ……少し味が足り無い気がして。山椒や唐辛子みたいな辛味を足したら味が締まりそうだなって」

「ふむ……」

 

 お師様は俺の言葉を聞いて、自身のインベントリからすり鉢とすりこぎを取り出し、更に後から取り出し小袋より小さな実を一つ取り出す。アレ、乾燥させた山椒の実じゃねぇかな。

 山椒の実をすり鉢で当たるお師様、少しして少しスパイシーなそれでいて爽やかな香りがしてくる。お師様はすり鉢の山椒を小指の先に少し付け、自身の豚汁に掛ける。そして一口啜り……良い笑顔を浮かべた。

 

タタラ(たらぼう)当たりだ(あたっど)

 

 そう言った後に豚汁を啜り続ける、余程相性が良いらしい。

 

「アマツ翁、私にも少々分けて頂けます?」

「お師様、俺も……」

 

 許可を貰い真似て指先にほんの少し付けて豚汁へ掛ける。味噌の匂いに混じりほんの僅かな山椒の匂い、思わず生唾を飲み込んでから啜る。風味豊かな味噌と醤油、そしてバターのコクと野菜の甘味。それらを引き立たせつつも主張をする山椒の辛味がとても合う、確かにコレは当たりだな。

 

「牛酪は風味とコクを豊かにしますが、少々甘味を足し過ぎた印象を受けました。其処に山椒の刺激を足す事でそれらを抑えつつも新たな風味を与える……タタラさんが一味唐辛子を考慮したのも含め辛味を少量足すのは理にかなっていましたね」

 

 お義母さん、ベタ褒めである。そんな俺やお義母さんの姿に興味を持ったのか、エテルも試したがった。しかし、山椒は少量なのでこれ以上はダメそうだ。

 

「エテル、流石にもうすり鉢の山椒は少ないし気になるなら俺のを少し飲むといいよ」

「え、うん。じゃあ少し貰うね」

 

 俺から差し出された椀を両手で持って、エテルが口を付ける。浮いた山椒を少し飲み込むと椀を置いた。少し目が丸くなっているのが可愛い。

 

「凄いね、全体的に味が整ってる感じがする」

おう(おん)エテルの嬢ちゃんは(えて嬢ん)味が分かるいい嫁だな(いい舌ぁもっど嫁やぁな)

「えっと?」

「『エテルは出来た良いお嫁さん』だってさ」

「え、あ……ありがとうございます」

 

 お師様に褒められた事を俺が伝えれば、エテルは恥ずかしそうに顔を赤らめて礼を言う。そんな姿を見たお師様は呵々大笑、益々恥ずかしがるエテルに愛しさを感じながら、賑やかな朝食は過ぎていった。

 

 洗い物は張り切った四葩と監督役かつ教師役の一華に任せて、俺とエテルの二人は学園へと向かった。エテルはお師様から良い嫁と言われて多幸感でいっぱいらしく、俺の腕を抱きながら頭を預けてくる。幸福と言う概念を表情にすればこうなると言わんばかりの蕩けた笑顔であり、道行く人々は俺達二人を見て微笑ましそうな表情である。

 しかし、昨夜この幸福を体現している少女に俺は身体を若返らせられ散々食い散らかされたのである。今の無害と言わんばかりの空気が完全に擬態にしか思えなくて辛い、心の底からエテルに惚れ込んで居る筈なのだが。

 そんな事を考えつつ、甘えるエテルを愛でながら学園に到着する。そのまま教室に入り挨拶。

 

「おはよっす」

「はよー」

 

 何時もの挨拶を投げる俺達に教室中から視線が向けられ、エテルの表情に全員固まる。うん、未だに幸福の真っ只中と言わんばかりに笑ってるからな。女神もかくやと言わんばかりの美貌が全力で仕事して、慣れない奴等の魂を消している。

 

「オッス、二人とも!」

 

 そんな中でも何時も通りの挨拶をして近付いてくるバカ、本当こう言う面が強いよなコイツ。助かるったらありゃしねぇ。

 

「おはよっす、今日も終業後来るんだろ?」

「はよー」

「ああ、今日も稽古を受けるぜ!」

 

 バカ個人に向けて俺とエテルが挨拶をして、俺は今日もバカが刀術を習いにくるかを確認する。当然とばかりに肯定するバカの姿に少し安堵した、雛菊さんが此奴の家で飯を食わせて貰った時、干物姿を晒して幻滅されてないかと心配だった。

 

「あ、そうだ。今日の授業でコイツ使うか?」

 

 確認の為、俺はインベントリから此奴に譲る刀を取り出す。刀装具が拵えられ、今は朱塗りの鞘とミスリルの鍔や柄頭を施されたその姿は清廉な美しさを魅せている。当然、そんな代物をいきなり出された教室は息を呑む音が聞こえそうな程の沈黙が訪れる。この都市では見ないような装丁の剣、それも一目で値打ち物と分かる物がやり取りされればこうもなる。

 

「……いいのか、俺はまだ刀術を完全に修めた訳じゃないぞ?」

「そもそもコイツは前払いの報酬だしな、俺が装丁に悩んで渡すのが遅れたのが申し訳ないくらいだ」

 

 個人的には鞘の方に何かしらの魔法効果を刻んでおきたかったが、抜刀術や居合術を修めていないこのバカにそんなものを渡しても下手すれば暴発して危険なだけだ。誰かが抜刀術か居合術を教えた後、それを一芸として磨き上げた時に切札として施すくらいのものだろう。尤も、このバカにそんな魔導具は不必要だとも思うんだがな。

 

「分かった、今日から授業でも此奴で参加する。一分一秒でも早く刀術を修めたいからな」

 

 俺から刀を受け取り、静かにそう言ったバカの目には強い決意が見えた。此奴とこの刀がこの『ワールウィンド』に影響を与えていくのは間違いないだろう、それがどれ程大きさになるかは分からない。それでも、此奴なら大丈夫だとそう信じた。

 

 代わり映えの無い共通授業を終えて、専門授業の為に工房へ向かう。バカは目に見えて気合が入った状態で訓練場へ向かい、エテルは模擬戦に当たりたくないと苦笑いしていた。

 俺は工房に着いて炉に火を入れ、作業台の埃を払って準備をする。前回あんな事が有った後だ、もしかしたらあの二人は来れないかも知れない。俺はあの二人が離れて行ってしまうのではないかと少し不安を抱えながら工房で待つ。

 

「先輩! 今日こそは宜しくお願いします!!」

「よろしくお願いします」

 

 元気よく入って来るシャムスと、静かな入室を果たしたエスト。対照的な雰囲気で入って来る二人に俺は安堵して、その挨拶に応える。

 

「いらっしゃい、二人共」

 

 俺の声を聞いて二人は嬉しそうに、或いは楽しそうに笑う。心配で咄嗟に『鑑定』を使うが、魅了の効果は残っていない。コレなら今日も二人に教えても問題無いだろう。

 

「授業を始める前に、二人に渡したい物が有る」

「渡したい物?」

「俺達に、ですか?」

 

 口々に俺の言葉に疑問を零す二人に頷いて、インベントリから二つ取り出す。魔石を混ぜ込んだ黒漆の拵に太陽と星の意匠を其々施した懐刀、概念武装『厄切』である。

 差し出されたそれを其々受け取り、疑問を持つ二人。そりゃ、コレが何なのかは説明されなければ分からないだろう。なんたって二人は俺と同じクラフター、短剣や剣の適性スキルは所持して無いのだから。

 

「コレは俺の弟子である証兼お守りだ。売ったりせず、インベントリに入れてでも常に持ち歩くこと」

「これが、弟子の証……」

「異国のナイフが証なんですか?」

 

 エストの疑問に頷くが、この概念武装がどんな物かは言わない。下手に教えて漏れたりすれば、この二人を狙う奴等が現れかねない。魔法や呪術は防げるが、物理的な被害は防げないのだ。

 

「そのナイフを無くした場合、俺はもうその相手を弟子と見做さず二度とクラフトを教えない。弟子と名乗る事も認めない」

 

 俺の厳しい言葉を受けて、二人が息を呑むのが分かった。コレだけ脅せば大丈夫だろうか、考えたくは無いが彼等の両親兄弟に搾取されてしまわないか心配だ。異国の造りのナイフと言うだけでなく、そもそも素材がミスリルと言うのが値段を跳ね上げる。正しく価値を認識して売りに出したなら、一生遊んで暮らせるくらいの値段は付く。二人が自分の意思で手放したのならその時は仕方無い、潔く弟子として扱う事はやめよう。

 そんな俺の言葉にシャムスとエストの顔は強張る、無意識なのか懐刀を胸元に抱き寄せて両手で握っている。この反応が見れるなら大丈夫だろうか、少し不安だが今日の授業を始めよう。

 

「さて、開始前に色々脅して悪かったね。それじゃ今日は……人造オリハルコンについて教えようか?」

「あ……はい!」

「お願いします!」

 

 雰囲気を変えた俺の姿を見て、シャムスとエストも表情を変えて応えてくる。その姿に心の中で安堵しつつ、人造オリハルコンについて説明を始める。

 

「コレは都市長と俺が共同開発した代物になるんだが、理論提唱と開発の主導が俺だった為か都市長が特許を俺の名義にした物になる。都市長は何方かと言うと技術提供者みたいな扱いだな」

「先ず、何で都市長と共同開発をするような事態になるんですか?」

「普通は都市長とコネなんて出来ないですよ」

 

 まぁ、うん。コレは俺の両親が都市長と同い年で、初等部の頃から高等部卒業までずっと同じクラスで勉強していたからってのが俺と都市長の関わりが出来た理由である。これが有ったから俺の翻訳ノートが都市長に知られ、俺の作った彼是が都市長により特許の保護を受けたのだ。一応その事について二人に話せば、納得と少しの羨望が混ざる視線を向けられる。まぁ、両親の伝手はどうしようもないからな。

 

「色々な相談先として都市長って言う存在が有るのはアドバンテージでは有るけど、俺の特許については殆ど助言貰えてないからな?」

「どう思う、エスト?」

「多分、本当の事を言ってる。都市長が子供の先輩に相談されて顔を引き攣らせてる姿が思い浮かぶ」

 

 おうエスト、何で当時の光景を想像できた。後から思い出して分かったのだが、幼い俺が簡易魔導鎧を作成する為の技術関連のブレイクスルーを相談していた時は都市長かカラムスさんの顔が引き攣っていた。いや、途中からは都市長がノリノリになった際にカラムスさんがその様子にビビってたのが正しいのだろうが。

 

「この時の俺は『クラフト』スキルのランクはⅠ、理論実証をする為の工作用の魔法陣を作成するには最低限ランクⅡのスキルが必要だった。結果として俺はそのランクの壁を越えられず都市長に設計していた魔法陣を描いて貰いこの人造オリハルコンは完成したんだ。今でもこのランクの壁を越えられ無かったのは後悔しているよ、駆け出しのクラフターでも魔導鎧が作れるようになる技術だったから」

「エスト、先輩の言ってる言葉が理解出来ないよ」

「心配するなシャムス、俺もだ」

 

 おう、久し振りだぞその反応。

 

「今ではこの魔石粉砕用魔法陣は一般的にも売り出されて、誰もがこの恩恵を受けられる。自分で作ろうとすると『クラフト』スキルのランクⅡが必要だけど、買うだけなら商会から1000で買えるしな」

 

 俺の言葉を聞いて、二人が首を傾げる。うん、何を疑問に思ってるのだろうか。

 

「そんなに魔石を砕くことって有りますか?」

 

 ……ああ、其処からか。

 

「砕いた魔石は色んな事に使えるぞ、セメントに混ぜ込めば『創製魔法』や『クラフト』の効果を上昇させて早く乾かせたりするし。火薬と混ぜれば……いや、コレは辞めとこう」

『いや、先輩が躊躇うって何なんですか』

 

 オリハルコン製の銃を吹き飛ばす火薬については言及したくないので途中でやめたら、二人からツッコまれた。

 

「……本当に聞きたいか?」

『いえ、やっぱりいいです』

 

 少し躊躇いがちにそう聞けば、二人揃った真顔でそう答えられた。あの何時も笑顔のシャムスが真顔って相当だぞ、見てると不安になってくる。

 

「取りあえず、話は戻して人造オリハルコンについてな」

「サラッと話を戻した」

「切り替えろ、シャムス。引き摺られると死ぬぞ」

「死ぬの!?」

 

 この二人、見てて面白いんだけど頻繁に俺が蚊帳の外になるからちょっと淋しいんだよな。

 

「人造オリハルコンは魔鉄作成で認識した魔力が通る路を、魔石を混ぜ込む事で後天的に増やそうとするってのが基本コンセプトになる」

「何で路を増やすんですか?」

「バカかシャムス、鉄の魔力伝達効率が低いから路を増やす事で流れる魔力量を増やすアプローチだろこれ」

「おお、エスト正解」

 

 この手の思考能力と推察能力は抜群のエストである、俺の人造オリハルコンに対するアプローチを理解してくれている。

 

「でもさエスト、魔鉄化した時に路は魔力で埋まって魔力の伝達率が落ちたでしょ?」

「いや、流石に人造オリハルコンは魔鉄化させてないぞ」

「うん、エストの言う通り。魔石の粉末を混ぜ込んだらそれ以上の加工は形成する以外はしないよシャムス」

 

 一度、考えはしたのだ。人造オリハルコンを魔鉄化させる事は。態々伝達効率を落とす事に繋がる事と、別の事情でしない事が望ましいのが分かったからしないのだ。

 

「人造オリハルコンの魔鉄化は折角上げた魔力伝達効率の低下と、もう一つ理由が有ってね」

「もう一つ、ですか?」

 

 エストも疑問に思ったらしい、此方は予想が付かないのだろう。そりゃ、俺だってコレは気付けなかった。

 

「人造オリハルコンを魔鉄化しようとするとね、内部の魔石と魔力が干渉しあった挙句鉄の許容量を越えて……爆発するんだ」

『爆発』

 

 一度試して限界ギリギリを見極めようとしたのだ、そしたら魔石の魔力同士が干渉・共鳴・増幅しあって止める間もなく爆発した。因みにこの実験は隣に都市長が居る中で行われ、特許の説明の中にも『人造オリハルコンの魔鉄化を禁ずる』と明文化された切っ掛けだったりする。たかが鉄の破裂と侮る事なかれ、前世でも手榴弾やクレイモア地雷と近い兵器は存在していたのだ。実験用作業台として防御幕は張られて居たが、損傷率が7割を越える状態に追い込まれた程の破壊力を発揮した。あのカラムスさんですら『肝が冷えた』とコメントするのだから相当である。

 

「本気の本気で忠告するけど、遊び半分で絶対にやらないでね?」

『誓ってやりません』

 

 顔を青褪めさせた二人がそう約束してくれて、俺は笑顔で頷く。

 何故かそれに怖がられた、解せぬ。







エセ昔話『3人のタタラ』

 昔々ある所に、タタラの三兄弟が居ました。

「おい、何か増えたぞ」
「同じ顔が揃ってるって気持ち悪いな」
「これもエテルの魔法が影響してるのか……?」

 3人はいい歳になったので家から追い出され、家を持つように言われました。

「導入雑だな……」
「まぁ、ここに書く話なんて基本そんなもんだろ」
「いきなり増やされて家を追い出されるのはどうなんだろうな、元ネタ的に捕食者が外出歩いてるのに」

 3人のタタラは噂になっている狼から身を守る為に、急いで家を建てる事にしました。

「俺達の場合、捕食者って言うと一人しか居ねぇな」
「出て来るの明らかにエテルだろ」
「無血開城するしか無いんじゃないか?」
「それな。泣きそうな顔で『入れて』とか言われたら耐えられる気がせん」
「好きな女泣かせてのうのうとしてられるかと」
「それはそれとして……3人が食い荒らされる未来は避けたい」
『分かる』
「せっかく俺が3人居るんだから作業分けて迎撃用の要塞作らないか?」
「いいなそれ、エテル以外の外敵も居る可能性だって有るしな」
「丁度よく資材は有るみたいだしな。それじゃやるか」

 3人のタタラは協力し合い、3日でそれはそれは見事な無敵要塞が出来上がりました。

「やりすぎた」
「迎撃用のエリンジウムとか対ドラゴンでも想定してんのかこの要塞」
「7カ所に家庭用魔力炉を置いて結界の動力にして、要塞の武装はフォルジュロン・ドライブで稼動とか……これ下手しなくても学園の砦よりも防備上じゃね?」

 霊脈が無かったので魔力炉を使用し、迎撃兵装のパワーダウンを防ぐ為に終末対抗動力炉を使用した要塞を前に反省をする3人のタタラでした。が、後悔はしていませんでした。

「何はともあれコレで暮らしは大丈夫そうだな」
「家庭用菜園が出来るくらいに広い庭も有るし、苗でも買ってくれば自給自足もいけるだろ」
「当番は持ち回りかな、いやぁ結構楽しみだよな」

 3人のタタラは和気藹々と要塞での生活について話しました。
 そして翌日、要塞の前に人影が有りました。

「ここがタタラさんのお住い……大きすぎない?」
「タタラくん、どれだけ張り切ったのかなコレ。お家っていうより基地だよ」
「タタラちゃんのお家、おっきいねぇ」

 タタラの幼馴染の妹の三姉妹でした、本来まだ5歳である三女ちゃんも特別に10年程成長した姿です。

「……サリー、何でそんなに大きいのかしら」
「タタラくんのお家でいっぱい食べさせて貰った影響なのかな、お姉ちゃんと私より大きいよね」
「どうしたの、お姉ちゃん達?」

 因みに現在の3人はアルファベットにするとE、D、Fとなっています。何がとは言いませんが。

「ま、まぁ気を取り直してチャイムを押しましょうか」
「うん、久し振りにお料理食べて貰えるの楽しみ」
「私も、タタラちゃんにお祝いの絵をあげたい!」

 それぞれが楽しそうに笑い、門に備え付けられた呼び鈴を押します。少しすると、通用口らしい扉から一人のタタラが姿を見せました。

「あれ、3人とも久し振り。元気だった?」
「タタラちゃん!」

 本日の家事当番を担ったエプロン姿のタタラがそう質問します、滅多に見れない姿に長女と次女はその姿を脳内に刻むのでした。三女は中身がまだ子供なので嬉しそうに声を上げるだけでした。

「どうしたの、何か有った?」

 突然の訪問に疑問しか抱かないタタラ。狼が出歩くとされるこの近辺で、自衛手段のほぼ無い女性3人が訪ねてくるのは危険です。そんな危険を冒す必要が有る緊急事態を疑ったのでした。

「あ、その……タタラさん達のご両親から自立をしたとお聞きしましたので」
「引っ越し祝い、みたいな?」
「お父さんとお母さんからいっぱいお野菜と果物預かったんだ!」

 その言葉を聞いてタタラは納得します。そして、そろそろ日が暮れる時間と言う事もあり今から帰すのは危険と判断もしました。

「3人ともありがとう、もう遅いから泊まっていくといいよ。部屋はいっぱい有るから」

 そうしてタタラは3人を安全の観点からお誘いします。しかし、3人……と言うか2人には目的が有りました。

『はい、喜んで!』
「うん、タタラちゃんよろしくね!」

 上2人はまるで肉食獣のような眼光を放ち、三女は無邪気に喜びます。
 3人の来訪を知った他のタタラ2人も歓待の姿勢を見せ、作っていた料理を大人数で楽しめる物にしようと手伝おうとします。しかし、そこで手を挙げたのが次女です。

「突然お邪魔してしまったお詫びに、私が料理を手伝います。食材も預かってますので!」

 そうしてタタラと並んでキッチンに立つ次女、おもむろにインベントリから様々な食材を取り出します。
 牡蠣、レバー、チーズ、豚肉、鶏肉、大豆、エビ、アーモンド、ほうれん草、 アボガド、鰻、鼈。
 ある意味で雑多な食材にタタラは疑問を抱きます、何の料理が出来るのか?

 そうして出来た様々な料理、カキフライ、鶏肉とチーズの挟み揚げ、豚肉とレバーとほうれん草炒め、エビと鼈のアボカド鍋、鰻のひつまぶし、トッピング用の砕いたアーモンド等様々な料理が並びます。
 その量と食材を見て一人のタタラの顔が引きつりました、これっていわゆる性のつく料理と言うものでは、と。
 全員で食べ物を囲み、食事を終えた後タタラ達の身体に異変が起きます。そう、勃起が収まらないのです。
 性のつく料理だけでなく、混入された長女の魔法薬の効果も有りタタラ達は下半身が元気になり仕方有りません。

「あら、タタラさん大丈夫ですか?」
「体調が悪いなら看病するよ、タタラくん」
「タタラちゃんの事、元気にしてあげるね!」

 そうして3人のタタラは見事肉食獣に食い散らかされたのでした。

 とっぴんぱらりのぷう。

「だから言っただろ、警戒心が無いから肉食獣に自ら近付く草食獣って救いようが無いよなって」
「タタラは私のなのに!」
「どうすのじゃエテル、処すか? 処すかのう?」

もし、番外短編が有るのなら※一応全部書くつもり

  • タタラとエテルの立場逆転
  • 現パロ(エテルヒロイン)
  • 現パロ(四葩幼馴染)
  • 武器が擬人化してタタラへ物申す
  • 年増組と同い年
  • 聖人カレハ
  • 原作エテルとタタラ
  • ガチ妹ダリア・ジュロン
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