事件が起こった時、その解決において事件発覚までの時間は大きなウェイトを占める。
「あれ?……数が足りない」
例えばその事件が窃盗だった場合。
盗まれた直後であれば犯人は近くにいる可能性が高いし、盗んだ物品を隠す場所にこだわる事も難しいだろう。
「どうしましたぁセンパイ?」
つまり犯人の立場であれば、犯行の発覚は出来る限り遅い方が良い。というよりも、犯行の発覚、それ自体がない方が良い。
発覚しなければ事件にならない。
犯罪はバレなければ犯罪ではない。
そこから考えればあらゆる犯人が最も力を入れるべきは、事件が起こったという認識、事件発生そのものの隠蔽という事になる。
「あ、えっと……マシュ……」
窃盗で有るならば盗む品の選定で達成できるだろう。
例えば盗品が重要度の低い物品であれば?
数が合わない事に気付いても放っておかれる。
何が悲しくてボールペンやノートの数をしっかりと管理し、一本一冊足りないからと犯人探しをしなくてはならないのか。
『倉庫からノートが一冊盗まれた』
誰かが使い切って補充しただけだろうと語られ、話はそこで終わる。馬鹿らしい話だ。だが現実的な話でも有る。
「それが……聖杯の数が合わなくて」
とはいえ、ノート一冊ボールペン一本盗んだ所で得られる物はスリルくらいのものだろう。盗む事自体が目的でもなければ盗む物品はそれ相応の物でなければ盗む意味が無い。
そしてそれ相応の物は管理も厳重だ。
価値の高い物は管理され、記録され、確認される。
数が合わなければ発見次第、事件になるだろう。
「ちょっと見せてくださいね〜」
なので一般的に窃盗という犯罪は発覚する事自体は前提として、発覚までの時間を伸ばし逃走時間を稼ぐ、という方向で計画される事が多い。
しかし、いかなる事柄にも例外は存在する。
「あ、センパイ、この数字間違えてますよ」
「えっ!本当に……ほんとだ…ごめんマシュ」
「も〜しっかりしてくださいよセンパ〜イ❤️」
「あはは、ごめんごめん」
窃盗をする犯人が貴重品の管理者である場合だ。
その場合記録の改竄という方法で事件の発生を防ぐ事ができる。
「……あ、あの……マ、マシュ」
「なんですかぁセンパイ?」
「そ、その……あのさ……」
とはいえ、重要な物品の管理を1人でさせる事はあまりない。
大抵の場合管理者の不正を警戒して2人以上の人員を使い相互に見張らせる体制をとる。
「な、何だか今日のマシュ……」
「……」
「すごく、その……小麦色で……」
「………っ!」
その状況で実行に移すならば監視者で有るもう1人を抱き込んでしまうのが一番手っ取り早い。しかしそれにも問題点が多い。報酬で揉める場合もあるし、そもそも密告される可能性もある。
リスクの高い行いだ。
自信があるならば1人で行った方が良い。
「ぇ…エッチだね…って、な、何でもない!忘れて!」
「………」
もう1人が間抜けの場合は特に。
「もー、何ですかセンパ〜イ❤️精子脳なんですか〜?この後マイルームでズッポリ❤️ハメハメ❤️しちゃいます〜?」
「えぁ!なっ!ず、ズッポリって!!」
「もー、冗談ですよ、じょ、う、だ、ん❤️センパイとなんてゴメンです」
「な…なんだ…冗談なんだ…」
「女の子を見ればすぐ発情しちゃうきもちわる〜い童貞はぁ、右手の恋人と妄想で仲良くしてくださ〜い❤️」
「はは……ははは………はい」
犯罪はバレなければ犯罪ではない。
「んふふふふ❤️でもでも、そんな気持ち悪いセンパイで〜も〜」
この言葉を吐く生物の犯行が明るみに出る時。
それはどういう時か。
「オナホ扱きくらいならぁ…しても良いですよ❤️」
バレてもどうにもならない程、事態が進行した時だ。
「やぁやぁ、マスター君。お休みのところ急に呼び出してすまないね。…どうやら君の故郷、日本に特異点が発生したみたいなんだ」
管制室。
カルデアの心臓部であるそこに僕、藤丸立香が呼び出された理由は特異点の発生という聞き慣れた理由だった。
大きな杖を持った見事なプロポーションの女性、ダヴィンチちゃんが続ける。
「かなり規模の小さい特異点だったからお休みの後でと思ったんだけど、急に規模が拡大してね」
「大丈夫、体力は戻ったから直ぐにレイシフトできるよ」
「はは、真面目だなぁ、マスター君は」
声を落としてダヴィンチちゃんが語る。
「……ただ今回は少し特殊な特異点みたいでね」
彼女の視線は管制室中央、巨大な地球儀の様なカルデアスに向けられた。
「この中は時間の流れがこっちよりも早いみたいでね、急速に規模が拡大したのはそのせいかな?観測が上手くいかないんだ」
「そこで……」
ダヴィンチの無力を晒すその言葉の後聞き覚えのある音楽が流れーー
「BBチャンネル〜〜!」
数個の映像が宙に浮かび上がる。
見覚えのあるロゴの後、平家の建造物、土管の置かれた空き地、遊具のほとんどない公園、現代的なビル街の遠景が映し出された。
もしこれが特異点の中の様子だとすれば確かに時代がチグハグなように見える。平家の建造物は木造ばかりで昭和の風情だし、逆に何も置かれていない公園はある意味近代的だ。
「まぁ見ての通り、中の様子はBBちゃんに任せる事になったんだ」
「はいはーい。よろしくで〜す。セ、ン、パ、イ❤️」
苦笑いのダヴィンチの横に褐色肌のBBが横ピースしながら並ぶ。
「今回、マスター君はカルデアで留守番してもらう事になる。さっき言った時間の流れが問題でね、カルデアからレイシフトするとこの特異点のどの時代に飛ぶか分からないんだ。こちらで観測してサポートすることが出来ない現状を考えると、直接君がレイシフトするのは危険だと判断した」
「な、の、で!センパイの信頼するサーバントの皆さんにレイシフトしてもらってぇ、センパイは私のBBチャンネルで中の様子を見て指示を出す……って感じで行きたいと思いまーす!」
「それは……」
正直、納得はし難い。
カルデアに所属する英霊達、彼女達は皆1人残らず自分と絆を結んだ大事な人なのだ。
その彼女達を、1人で、鉄火場に送る。
今までは何も出来ないとはいえ自分も危険を共有していた。しかし、今回はそれすら出来ない。
「…っ」
拳を握ってしまう程度には、無力感から苛立ちを覚えていた。
そこに…
「あっ!刺激の強い映像はちゃんと編集してぇBBアダルトチャンネルで流しますから!センパイは安心してBBキッズチャンネルをご視聴くださーい❤️」
BBちゃんが戯けて言う。
彼女は僕の罪悪感を薄めようと言ってくれているのだろう。
その証拠にダヴィンチちゃんもその様子を苦笑して見ていた。
「まぁ、あまり気にしすぎない様にね、マスター。この判断は私やスタッフが勝手に決めたことだ。君に責任は無い」
「じゃあ誰を送るか決めてくださいね、センパイ❤️」
誰を派遣する?
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アナスタシア2
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源頼光2
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ジャック2