「助けてノノえもん!」ホシノ・カヨコ・黒服関係回のみまとめ 作:春画屋@二次創作R18
【前編のあらすじ】
夢の中、『現実世界』、懐かしい友人……そんな少しばかりセンチメンタルなイベントの数々の後に待っていたのは、良き友人だと思っていた『黒服』による、大事に守ってきた世界観の破壊であった。
黒服——いや、
*この作品はエロ小説ですが、都合によりエロはしばらくお休みです。気長に待ってね☆
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黒服——と呼んでいいのか——目の前の柔和な笑みを浮かべる
目が覚めた後はどうだ? 仮に記憶を完全に保持したまま目が覚めてしまったとすれば、世界観の問題*2は残る。だが、今の精神状態を維持できるのであれば、生徒たちの手を借りればそんなに酷いことにはならない気がする。
それより目の前の問題は、こいつが何者なのか……か。説明を聞いた限り、俺の友人——であったはず——の『黒服』、あるいはゲーム『ブルーアーカイブ』に出てくる『ゲマトリアの黒服』、そのどちらとも同一視していいような気がするし、そのどちらでもないように思える。
「……要するに、お前はいわゆる『ゲマトリアの黒服』の中に生まれた「何か」であり、俺が
「そう
——「目的」。自分でもバカげているとは思うが、こいつの目的とやらの推測はつく。そして、なぜ俺にこんな話をしているのかも。少なくとも、今俺が知る限りの情報では、そんな事が可能だとはとても思えないのだが……。
「『シャーレの先生』は特定の個人を指すのではなく、この世界における「主人公」という「役割」だと推測した生徒*3がいる。『ゲマトリアの黒服』もそれと同じってことか?」
「私だけではありません。『黒服』、『マエストロ』、『ゴルコンダ』、『デカルコマニー』、『ベアトリーチェ』、それに『フランシス』もですね。『ゲマトリア』のメンバーは全て、『シャーレの先生』が『メインストーリー』を進行する際に登場する、「役割」に過ぎません」
「『ゲマトリア』は「主人公」の「敵」であり、『黒服』はさっきお前が言ったように、「主人公」に時に助言を与え、忠告を与え、あるいは敵かもしれない……そんな役回りをする存在であり、そういう「役割」でしかない、ってことだな?」
「その通りです。そしてその中は
「そこが「生徒」とは違う、か」
生徒たちにも多かれ少なかれ、ストーリー上の役割はある。特殊な存在である、
「『メインストーリー』のしがらみがなければ、生徒たちは自由だ。セイアやミカやナギサだって、それこそお茶会でも開いて、ロールケーキを口にぶち込むだの何だの、ほのぼのしたケンカをしてるだけでもいいんだ。状況さえ用意してやれれば」
「その三人に関しては難しいかも知れませんがね。世界観など関係なく、彼女たちには根本的な問題がある」
「それを巡航ミサイルだのテロだの、『エデン条約編』に出てくるような物騒な話なしで解決してやるのが『シャーレの先生』の役目だ。少なくとも、俺の世界観ではそうだ」
「……固いですね。あなたの方が余程向いていると思っていましたが……」
「? 何だ?」
「いえ、話を続けましょう。とにかく、『ゲマトリア』の誰もが自我を持ち得なかった」
「しかし、『黒服』にはお前という「中身」が生まれた。そして、『メインストーリー』の中には存在しない目的、存在しない生活を持つことが出来た」
「その通りです。あなたと出会い、交友関係を持った私だけが自我を持ち、自分自身の生き方を決めることが出来たのです」
「交友関係だ? よく言うよ」
「クックック……」
俺の嫌味は通じないらしく、黒服——とりあえずはそう呼んでもいいだろう——は、眼鏡の奥の目を細めてニヤニヤ笑った。
「で? そのいかにも人間らしい姿が『現実世界』に実体化した時のお前の姿か? それとも、こんなだったらいいな、なんて都合のいい願望か? だいぶイケメンになったようだが」
「『現実世界』とは言っても、ここは
「黒い服を着てるから黒服ってのと大して変わんないだろ。好きにしろよ。俺の周りにはそれよりもっと酷いネーミングセンスの奴がいっぱいいるし。それより、まだその姿で『現実世界』に実体化はしたことはないんだな?」
「まだです。そして、それが最終目的であり、あなたをこうして利用している理由です」
「けっ」
「利用」って本人の前ではっきり言いやがった。胸くそ悪い。
それにしても、『現実世界』に行く——やはり、それが目的だったか。向こうに行って何をするつもりか知らないが、探究者である『ゲマトリアの黒服』の気質を多少なりとも受け継いでいるなら、そう
しかし、人間らしい姿で、とはいえ、『現実世界』に実体化なんて本当に可能なのか? 呪いのビデオじゃあるまいし、スマホからゲームのキャラが出てきましたなんて、悪い冗談にしか聞こえない。こいつのように、この『ブルーアーカイブ』の中でも異質中の異質な存在であれば、それも可能なのか? 何にしても、それが目的だというなら、その先の話もある程度の推測はつくが……。
「私は『現実世界』に存在するのに十分な自我と自己イメージを確立しました。そして、プレイヤーと同等の視点から『メインストーリー』を読み、この世界がゲームの中であると認識することが可能なレベルに達しました。あとは『キヴォトスの外』のさらに外、『ブルーアーカイブ』の最後の壁を突破するのみです」
「そして、「その最後の壁を突破するのにあなたが必要です」、と」
「察しが良くて助かります。あなたが『現実世界』に帰還する時、次元の壁に穴が開くはずです。その時がチャンスです。開きかけたのを、既に二回確認しています」
「二回……?」
一回は思い当たる。ノノミたちとすったもんだした挙句、思い出した記憶を再消去した時のことだろう*4。
「で、もう一回次元の壁に穴を開けてもらうために、俺に『現実世界』に帰ってほしい、と」
「その通りです」
「そう言われて、てめえの言うことなんて聞くと思うか? 残念だったな、記憶を戻しても俺が向こうに送り返されなくて。そして、俺はもともと帰るつもりはないし、お前みたいなのを『現実世界』に送り込む手伝いをする気もない。向こうに行って何をするつもりだ」
「目的はいくつかありますが、単純に行ってみたいだけです。それ以前に、今となっては行かなければならないというのもありますが……。『メインストーリー』を読んでしまいましたからね」
「『メインストーリー』を読んだから? どういうことだ?」
「あれはキヴォトスの住人にとって、本来読んではいけないものです。あれは未来ではない。予言でもない。「ゲームのキャラとしての自分」が、どう動いてどうなるのかを全て記したものです。わかっていてもショックでしたよ。『ゲマトリア』の同志たちが、あれほどまでに薄っぺらい存在だったとは。そして、私——『黒服』も以前はその程度の存在だったとは」
「……でも今は人間だろ。少なくとも俺は、そう思って今までお前と付き合ってきた。確かにお前が何を考えてたかなんて気付かなかったが、それでもお前は、今以上のものを望むのか?」
隠してきた目的を聞いた今でも、俺にはこいつが何かが欠けた人間とは思えない。——そう、「人間とは」、だ。俺はキヴォトスで出会った住人全てを、等しく人間として扱ってきた。ノノミも、生徒たちも、アリスや自称娘の方のアロナ*5のような特殊な存在も、こいつも、だ。流石に会ったことのない『ゲマトリア』の連中までは知らないが、自分自身の目的を持ち、そのために俺とああいう付き合いが出来たこいつの、どこが不完全な存在だってんだ。何が不満だってんだ。
「私はプレイヤーだったあなたと同じ視点を持つことが出来た。そして『現実世界』に行くことで真にあなたと肩を並べることが出来るのです」
「俺と? 何でそんな必要があるのか理解に苦しむが、向こうに行ったって何もないぞ。お前が求めているようなものは何も」
「それを判断するのは私です」
「……ま、そりゃそうだ」
「それに、そのために私は『ゲマトリア』が進めてきた計画の全てを投げ打ったのですよ? それだけの価値があると考えたからです」
「はっ、もっと大事な目的が出来たから、
「彼女たちに何かする気など、もはやありませんよ。考えてみてください。プレイヤー視点で『メインストーリー』を読んだ後で、たかがゲームのキャラの「設定」などに入れ込みますか?」
「俺の生徒たちをただのゲームのキャラ扱いするんじゃねえ……!」
かーっと頭に血が上り、気付けばそいつの胸ぐらを掴んでいた。
「…………。失礼。言葉のあやです」
「……いや、理屈はわかる。確かに、『メインストーリー』を完全にプレイヤー視点で読むってことは、そういうことなんだろう。俺も、特にこの世界で出会ってない生徒に関してはそう思いがちだ。気をつけているつもりなんだが……」
視点の問題だろう。内側からはこの世界が「ゲームの中の世界」だなんて思えず、住人がみんな本物の人間としか思えないのと同様、外から観測すればただのゲームの設定、ただのゲームのキャラとしか思えないのだ。こんな奴が相手とはいえ、思わず暴力で物事を解決してしまいそうになってしまった俺は軽く自己嫌悪に陥り、
「少なくとも、あなたは気に病む必要はないと思いますよ。あなたは私とは違います。……「俺の生徒たち」、ですか。彼女たちを真に人間として扱い、『シャーレの先生』としての使命感がなければ、とっさに出てこない言葉です」
「それなら『シャーレの先生』として一つだけ言っておくぞ。言い回しの話ならともかく、俺の生徒を本当にゲームの駒みたいに扱ったり、傷つけたりしたら、その時は一切容赦しねえからな」
「ククク……。心に留めておきましょう」
——俺は間違ってるんじゃないのか? こいつ、俺のご機嫌を取るために今までは大人しくしてたとしても、これからは違うんじゃないのか? 目的のために必要なら
どんな状況であれ、暴力という手段を取るのが最低の行為だとしか思えない、自分が甘いのか、俺には判断することが出来ない。生徒たちのためなら、自分の判断がどうとかなんて、捨ててしまえばいいのかもしれない、そう思ってもなお、だ。くそっ……何でこんな嫌なことで悩まなきゃならないんだ……!
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「さて、こちらの目的と希望は伝えました。判断材料として十分なだけの記憶も戻ったはずです。後はあなた次第なのですが……いささか乱暴な手段を取りました。機嫌を直していただくためにも、少し別の話でもしましょう。久しぶりの『現実世界』はいかがでした? もちろん夢の中の作りものの世界ですが、ご友人との再会は?」
「大体、思っていた通りだ。懐かしいけど、特に何もない。帰ったら帰ったで、特に不都合もなく元のように暮らすだろう。かと言って、どうしても帰りたいわけじゃない」
「少なくとも赤井さんやあなたにとっては、友人がキヴォトスに住んでいるのも転勤で関西に住んでいるのも、大差ないようですね。その距離感は何となく理解できました」
「大人同士だからな。それに、親兄弟だとか妻子が向こうで待ってりゃ話は別だが、そんなのもいない気楽な身分だ。前いた勤め先なんて、顔も出したくないしな。そもそも、帰るだの帰らないだの、向こうの世界との行き来が今ひとつ大層なものって気がしない」
——そう。世界の行き来を含め、俺を取り巻く状況は何もかもがゆるい。記憶を取り戻した今は、どうもそこが引っかかる。
ノノミや自称俺の娘の方のアロナが言っていたが、おそらく俺が気軽に向こうに帰っても、すんなり元通りの生活に戻って終わりだろう。どうやってか知らないが、いつ帰ってもそれが保証されているらしい。あとはせいぜい、キヴォトスの生活が懐かしいなあ……なんて寂しいことを言うぐらいだ。『シャーレの先生』も、誰か後任が来るらしい——まず間違いなく、今は神様みたいになっているあいつ、『前の先生』が俺と入れ替わるんだろうが。向こうは俺と違って、『シッテムの箱』もちゃんと持っている。少なくとも、『メインストーリー』が約束しているハッピーエンドにたどり着くには、俺より適任のはずだ。必要なら別に交代したっていい。
なら、俺は今すぐにでも交代して元の世界に帰った方がいいのか? 俺じゃまずいのか? それだって、『ゲームオーバー』も『バッドエンド』もないって保証されているそうだ。どの程度までを『バッドエンド』って言ってるのか知らないが、生徒の誰かが死んだり、再起不能になったりはしないんだろう。
つまり、こうして記憶が戻っても本人である俺がよっぽど嫌がらなきゃ、いつまでだってこの『ブルーアーカイブ』の世界を楽しむ——なんて言い方はおかしいかもしれないが——ことが出来るってことだ。そもそも俺みたいなヘタレなプレイヤーじゃなきゃ、『エデン条約編』にしたって、『メインストーリー』にあるような感動的な展開を体験する方がよっぼど嬉しいだろう。危険だとしても、俺も今からそれを望んだっていいんだ。
——なんでこんなに至れり尽くせりなんだ?
記憶が戻る前から感じていた違和感。俺がこの世界にずっと居ようと元の世界に帰ろうと、どちらであろうと、
どんなものであれ、物語の結果が全てハッピーエンドだと保証されているなら、生徒たちの物語に上下なんてないはずだ。俺がそれを勝手に決めつけるのは
俺の望む平和でバカバカしい世界、俺にとって都合のいい物語、それだけじゃない。勝手にこっちに連れてこられたこと以外、お膳立てされた状況の全てが、度が過ぎるほどに俺に都合よく出来ている。まるで、「勝手に連れてきちゃったけど、その分思いっきり楽しんでくださいね。帰りたくなるまでずっと居ていいんですよ」って前置きされた上で、ずっとチヤホヤされているような違和感だ。いや、実際そうなんだろう。「この世界が心底嫌になったら自動的に『現実世界』に戻される」っていうのすら、
そもそも俺は、何故この世界に連れてこられた? 今更、「なぜか異世界に来ちゃいました」じゃないだろう。はっきり誰かから聞いた記憶はないが、まず間違いなく「あいつ」——俺の前任の、『前の先生』が意図的にやったことだ。なら、目的は何だ? 俺の決断が特に意味を持たず、責任を感じる必要もなく、いつ帰るかまで含めて好きに選んでいいなら、なぜ俺をこの世界に呼び込んだ? 誰が「先生」でも構わないなら、なぜ「俺」だったんだ? 俺にしか出来ない事でもあったのか? 例えば「世界観」のような……。そして、あの時のはもうそろそろ帰った方がいいって事だったのか? よく思い出せない。あの時ノノミは、なぜ俺に帰るよう
「それでは、こちらの世界——『ブルーアーカイブ』はどうです? 永住したいほどに魅力的な世界ですか? まあ普通に考えれば、ゲームのヒロインたちに囲まれての「エロゲー」的な世界など、夢のような世界でしょうが」
「そんな、気楽にエッチし放題みたいに言われてもな。そこまで都合よくはないぞ? それこそゲームのキャラじゃないんだ、生徒たちの意思ってものがあってだな。ノノミは別としても、よっぽど向こうから迫られたり、深夜に二人っきりとかじゃなきゃ……。第一、ノノミに怒られるっての」
「ですが、逆を言えばそのような「都合のいい状況」なら手を出してきたのでしょう? いえ、責めているわけではありません。とりあえず、その辺は置いておきましょう。では、キヴォトスの住環境はどうです?」
「それだってなあ。治安は悪いし、ノノミが守ってくれなきゃとっくに死んでそうだし、シャーレの給料は安いし。不便はしてないが、外国なみによくわからんことは多いし。こっちの世界も執着するほどじゃない。強いて言えば、交代するにしても後任の『先生』に引き継ぎぐらいはしていきたいもんだが」
「なるほど、なるほど……」
いくら自由だからって、俺の都合でほいほい責任放棄したいわけじゃない。『先生』をやるのに、自信がないわけでもない。今振り返って考えてみれば、俺が俺なりにすべきだったと思うことは、全てしてある。カヨコやアリス、俺と関わった全ての生徒に、伝えるべきことは伝えてきたはずだ。最悪、『先生』自体いなくたって、自分の人生は切り開いていけるはずだ。ましてや、『前の先生』がいるとすれば何も心配することはない。そこに関しては、全面的に信頼出来ると思っている。……いや待てよ、そういやあいつ、重度の変態だったな。そこが引っかかるが、実際に手を出しちゃう俺とはどっこいだし、まあいいか。何かあったら、どうにかして苦情を言おう。もしくは、どうにかしてヴァルキューレに通報するとか……
「ドライですね。というより、欲がない。大金、地位、名誉……あなたの望みはそういったものよりも、ただただ「悪いこと」が起きないことを望んでいるようだ」
「「足るを知る」って言葉を知ってるか? 大金をつかめば不安になる。地位や名誉を得ればやっかまれ、妬まれる。それにとらわれないことが、何もない平穏に繋がる。——なんて、ストイックなことを心がけて生きてるわけじゃないがな。別に自分にそこまで欲がないとは思わないし。ただ、その方が気は楽だ。第一、それを心がけるだけで平穏な人生が送れるなら苦労はない」
「それはそれで素晴らしい生き方だと思いますよ。私も、悲劇や苦難を伴う感動のエンドよりも、平穏な日常を好みます」
「そうかい」
俺の平穏を壊しておいて何を言う……と嫌味を言ってやろうかと思ったがやめておいた。
「私は思うのです。感動の物語を演出するためとはいえ、わざわざ一度
「は?」
何言ってんだ、こいつ。こんなシリアスな話をしてる時に、俺じゃあるまいし。
黒服は、コホン、と咳をした。
「失礼。関係のない話でしたね」
「お、おう。お前も、こういう空気でも冗談とか言えるのな」
まあ何でもいいが、さっきから息が詰まりそうだったんで助かった。しかし、何かいつもエロゲーの話題でバカ話をしてた時の発言みたいだな。目的を隠していたにせよ、こいつが俺がずっと接してきた「あいつ」だということは間違いないようだし、もし利用するためだけに俺と付き合っていたのではないなら……いや、何のためであっても構わない。思っていることは何でも素直に言ってしまう方が俺らしい。
「お前がどう思っているかは知らないが、お前を友人だと思ってもう一回言うぞ。『現実世界』に行っても、お前が望むものは何もない。行くな、とか、行かせない、とか、そういう話じゃなくてだ。仮に異世界に転生したって、それで何かが劇的に変わるわけじゃない。中身が一緒なら、元の世界で暮らしたって一緒だ。お前が今とは違う何かに変わりたいなら、そんなところに行こうとするより前にこの世界でやることがあるはずだ」
「…………」
「ガンジス川って知ってるか? 向こうの世界の、インドって国に流れてる川」
「ガンジス川ですか? 確かヒンドゥー教では「聖なる川」として崇められている……」
「そう。だから行きたがる奴が多いんだと。人生観が変わるとかで。でも俺の周りでは「行ってみたけど、ただの川だった」ってがっかりした意見が多くてな。自分が行かずに言うことじゃないんだろうが、少なくとも魔法の水みたいなものが流れてるわけじゃない。浴びればすぐに劇的に人生観が変わるような、そんな都合のいいもんはないはずだ」
「しかし、多くの人々に人生観が変わったと言わせるなら、具体的なものではなくとも何かがそこにあるはずでしょう。インスピレーションなり……」
「何かあるとしたら、それはそこに至るまでの本人の内面の変化だ。何も考えず、何かがあるはずだと盲目的に信じ、ただそこに行くだけだったら、あるのはただの水だ。それに、こうやって話していてもつくづく思うが、お前はもう立派に「人間」だよ。そう思って付き合ってきた俺は間違いじゃないと思う。それ以上の存在なんて、目指す必要はない……悪い、しゃべりすぎたな。続けてくれ」
「……それでも私は——いえ、ありがとうございます。二つの世界を体験した方の貴重なご意見ですからね」
「でも個人的には、マンガだろうが小説だろうがエロゲーだろうが、名作だから人生観を揺さぶられましたーって、アリだと思うんだけどなーっ?」
「嫌味ですか? 私もそれを否定しているわけではありません。『
「本当かね」
確かにあのエロゲーの話をするたんびに、「タケルちゃん……」とかつぶやきながら肩を震わせて泣いてたが。そこまで感情移入できる奴が、俺とノノミの平和な生活をぶち壊すような真似をするかよ。けっ。
「それよりも、どちらでもいいと言いつつ、あなたが
「そうだよ。ノノミがこの世界にいる限り、俺は絶対に帰らない。誰が何と言おうと、この世界で一緒に寿命を
「何故です? 他のことには全く執着しないあなたが、何故それほどまでに彼女にだけ執着するのです?」
「いや、執着って……。人を、振られた後はストーカーする奴みたいな言い方すんの、やめてくんない? ノノミと一緒にいたい、何なら結婚までしたい、って言ってんだから、普通のことしか言ってないだろ」
「では言い方を変えましょう。何故そこまで彼女に対して義理立てするのです? この世界で初めて会ったから? その後、世話をしてくれて、守ってくれて、望みを何でも叶えてくれたから? だから申し訳なくて、黙って帰ったり出来ない? 何故です? 何故? 何故?」
「いやだから、義理とかそういうのじゃないって……何でお前、そんな話題で興奮してんの?」
確かに俺が帰りたがらない唯一の理由はノノミだが、そんないきなり、ゴシップ誌のインタビューみたいなこと聞かれても。現実世界に行くとかそういうのは別の話として、俺の女関係に思うところでもあったんだろうか。俺、そんなに酷いか?
「別に興奮などしていませんとも。……いえ、せっかくです。この機会に、男同士腹を割って話そうではありませんか」
「は? ああ、重苦しいのより、そっちの方が助かるけど」
「こういう話題ならあなた流の方が良いでしょう。この世界は、あなたの潜在的な願望にそうように、常に改変されています。『シャーレの先生』であるあなたは、同時にこの世界の『主人公』でもある」
「まあ、そうらしいけど」
「あなたのヒロイン達とセックスしたいという願望を受け、この世界は『エロゲー』的な世界となり、言わば『R-18版ブルーアーカイブ』とでも呼ぶべき世界観へと変わった」
「うん……いや、そういう表現をされると、いろんな方面に対して申し訳なくなるんだが……」
単なるバカバカしい世界観ならともかく、俺が女の子たちとエッチしまくれる世界とか言われると、壮大だった話がいきなり低俗になるというか、立派な映画館を貸し切りにして、VIP席からエロアニメを上映させてるような気分に……。まあ、おじさんとかは平和なら何でもいいよって言ってくれてるが。
「では質問です。『エロゲー』の『主人公』には、もう一つの役割が求められます。何だと思いますか?」
「『竿役』」
「…………」
「…………」
しばし、無言。
「即答でしたね……」
「まかせろ、こういうくだらないのは得意なんだ。この後も是非こういうノリでお願いする」
というわけで、引き続きこういうノリになるのかならないのか……
いや、なるんですけどね。これ、バカバカしいエロ小説なので。
→次回、シーズン3最終回の3
「夢の中で会いましょう-3-『友情』」
話の分割の仕方について、別の形に分けるなら以下のどれがいいですか?
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キャラごと(ホシノ、黒服、カヨコの3つ)
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内容ごと(ホシノ・黒服、カヨコの2つ)
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本編外にまとめたもの全部で1つ(今のまま
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その他(お気に入り登録や検索をしやすく等