※この作品はR-18です。

「助けてノノえもん!」ホシノ・カヨコ・黒服関係回のみまとめ   作:春画屋@二次創作R18

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シーズン1、第7回。
シーズン1最終回(前後編)の前編に当たります。


1-7:それはこの物語の『ネタバレ』あるいは『はじまり』

 

 

 ——アビドス高等学校。

 

「それでは、皆さん。私と先生はお先に失礼します~☆」

「すまんな、みんな。俺たちは買い物があるから……」

 

 対策委員会の他のメンバーには少し申し訳ないのだが、これから俺はノノミを連れて、二人っきりで買い物に行くことになっている。うん、二(・)人(・)っ(・)き(・)り(・)で。……まあ、俺なんかよりよっぽど——対策委員会の仲間たちに対しては尚更——気配りの出来るノノミがいいって言うんだから、いいんだろう。

 

 そんなわけで俺は今、現役女子高生の彼女と下校デートに行く前に、その彼女が友達に「ごめんね、今日は〜」なんて謝っている……そういう現場に居る気持ちだ。気持ちっていうか、ほぼそのままの状況だ。一応、先生ではあるが。

 

「うへ~、お熱いね、お二人さん。いかにも青春って感じで、おじさん眩(まぶ)しくて二人を見れないよ~」

 

 いや、青春って年じゃないから恥ずかしいんだがな? 普通に。

 

「ホシノ先輩はちょっと老成しすぎっていうか……私たちとほとんど年齢変わらないじゃないですか……」

 

 俺もアヤネの言う通り、おじさん(ホシノ)はもうちょい女子高生らしくした方がいいと思う。……が、まあ、あれはあれでいいんだろう。管轄外のことに口を出してはいけない。エロ画像の話ならそれは別だけどな。そっちに関しては別だけど。

 

「まあ、存分にイチャイチャしてくるといいわよ! こうやってみんなが帰りに『柴関(しばせき)ラーメン』に行けるのも、私のバイト先が完全復旧したのも、みんなノノミ先輩のおかげだし!」

「あれは、おじさんもビックリだったよ〜。まさか、柴関ラーメンの店舗が一瞬で復活しちゃうとはね〜」

「そうそう! ノノミ先輩カッコよかったなあ! 華麗に、「じゃじゃ〜ん☆ 『アットイウマニ・ナオシチャウ』〜!」なーんて、ゲヘナの便利屋に爆破されて跡形もなくなってた店舗がまさかの大復活! 大将も、これで万全の接客が出来る! って、張り切ってたし!」

 

 毎度、ノノミがどこかから持ってくる胡散臭(うさんくさ)い道具、何を狙ってんのか知らないが、製造元はネーミングセンスをどうにかした方がいいと思う。今からでも担当者変えるとか。

 

 それにしても、最近はノノミがどんなとんでもないことをしてもセリカは動じなくなったというか、憧(あこが)れてすらいるように見える。「じゃじゃ〜ん☆」とかノリノリで真似してるし。あいつ、ああいうどっから見ても99%詐欺だろ、みたいなもの好きそうだし。いや、ノノミのは残り1%として。とにかく、他所(よそ)で騙されなきゃいいが。……アヤネももうこのノリに慣れてきちゃったか? ま、みんな楽しそうで結構。

 

 そんな風に、女子高生たちがきゃいきゃい騒いでいるのをぼーっと見ながらノノミを待つ。……と、

 

「……何? シロコ」

 

 輪に加わっていなかったシロコが、何か言いたげにこっちを見ていた。

 

「ん、何でもない」

 

 ……怖い。あの無機質な目、変わらぬ表情、目的のためなら他の一切を捨ててでも遂行しそうなあの目……。怖い。

 

「先生」

「……何だ?」

「ん、夜の一人歩きには気をつけて」

「ふらふら無防備に出歩いてると、男を逆レイプするようなヤバい女に襲われるとか?」

「そんなところ」

 

 平然と肯定しやがった。それお前だよな? お前が俺を無理矢理犯すつもりで言ってるんだよな? あああ……! もう次こそは、俺の貞操が危ない気がする!

 

 ていうか、次で何回目だ⁉︎ 俺が一人で行動してる時に限って現れては、何だかんだ理由をつけて押し倒してきやがって……! 今までは奇跡的に無事だったが! 前回とうとうズボンを脱がされ、危うく大事なものまでポロンしそうになった時は、舌を噛もうかと思ったわ!

 

「アビドスではよくあることだから……多分誰も気にかけないし、助けてくれない」

 

 ねえよ! そんなのがよくあるとか、どんな街だよアビドス! 完全に風評被害だろそれ!

 

「あと、そういうことする人間は、事前に万全の準備をして、万全の計画を立てて、絶対に邪魔の入らないようにするはずだから、もし襲われたら早めに観念した方がいい」

「それ、やろうとしてるのお前だよな⁉︎」

「ん」

 

 とうとう言葉に出してツッコんだ俺に、シロコは力強く頷(うなず)いた。頷くなよ!

 

「先生、シロコちゃんと仲良いね〜。おじさん嬉しいよ」

「仲良くないが⁉︎」

 

 女子高生が連続レイプ魔に話しかけられてるようなもんだぞ⁉︎ 笑えねーよ!

 

「ん。もう少しで先生と私の親密度が上がる」

「あのな、無理矢理そういうことすると好感度はむしろ下がるんだぞ?」

「わかってる。男女の仲は肉体関係を結んでからって聞いた」

 

 どこの誰だ、んなこと吹き込んだのは。いい加減ノノミに直に訴えて、何かしらシロコに対抗できるだけの物騒な物でも、出してもらった方がいいかもしれん。

 

 と、ノノミがじゃれついてきた。アヤネやセリカと盛り上がっていたのは終わったらしい。

 

「それでは先生、行きましょう☆」

「おう。んじゃまず、ショッピングモールから行くか」

「はい!」

 

 そんな俺たち二人を、アヤネ、セリカ、シロコ(も一応)が、行ってらっしゃ~い、と見送ってくれる。

 

「うへ、先生、逮捕だけはされないようにね~」

「あの……おじさん、あんま怖いこと言わないでくんない?」

「ごめん、ごめん。……先生、「あの時」言ったこと、いつも忘れないで」

「ああ、わかってる」

 

 ——難しいことを考えるの、苦手なんだよなあ。そう思って、俺は楽しい楽しいノノミとのデートに頭を切り替えることにした。

 

 

------------------------

 

 

 ——数日前。

 

 俺は夜の学校におじさんに呼び出されていた。彼女はいつになく真剣な表情をしている。いや、張り詰めた、と言った方がいいかもしれない。あんまりこんな表情は見たことがない。

 

「……話って何? おじさん」

「それなんだけどさ。……先生って私のこと、前(・)か(・)ら(・)そ(・)う(・)い(・)う(・)風(・)に(・)呼(・)ん(・)で(・)た(・)っ(・)け(・)?」

「え? ……ああ、『おじさん』っての嫌だったか? じゃあ、『ホシノ』って呼んだ方が——」

 

 と、そこで気がついた。そういえば、ブルアカの『先生』はホシノのことを何て呼んでいたっけ? 攻略サイトでもSNSなんかでも、みんな『おじさん』呼びしてたから、つい本人にもそう呼んでた。——って、え?

 

「……「前から」?」

「そう。先生はいつか話してくれたよね。自分は、『前(・)の(・)先(・)生(・)』じゃない、って。つまり、『先生』が『今の先生』になる前の話。先生は、『前の先生』とは違うところから来た、って。いまだに皆んなはそれを信じていないけど——」

 

 そう。俺は——おそらくは、だが——本来の意味で『キヴォトスの外』からやってきた『先生』ではない。

 

 俺はあくまで、もっと上位の世界である(というのは、あくまで俺の認識だが)、『現実の世界』でスマホゲームとしての『ブルーアーカイブ』をプレイしていたそれだけの、ただの一プレイヤーに過ぎない。ガチャが出ないと言っては運営を恨み、ことあるごとに詫び石を要求し、たまに運営に苦情のお便りを送っていただけの、ただの一プレイヤーだ。うん、今になって運営には、めんどくせえプレイヤーだなって目をつけられてたかもしれないって思ったけど。

 

 だがしかし、包み隠さずそれを言っても、ノノミはもちろん、どの生徒も「先生、前は~」「前より〜」と、まるで俺がずっと『前の先生』と同一人物であり、その雰囲気がちょっと変わったようにしか言わない。全く話を信じてくれない。しかしこの言い方からすると、おじ……ホシノは……?

 

「信じてくれるのか?」

「……前から疑問には思っていたんだよ。それが今日、確信に変わった」

「確信に……?」

「そう。でも、不思議と今でも違和感は感じられない。むしろ違和感を感じない、そ(・)の(・)こ(・)と(・)自(・)体(・)が最大の疑問点だと思えるほどに。だから私は、『柴関ラーメン』は壊れたままじゃなきゃいけないんじゃないか、って思った。きっと、直すべきではなかったんだ」

「直すべきじゃなかった……?」

「柴関ラーメンのことだけじゃない。この結末は、あまりにも出来すぎている。アビドスが抱える問題はほぼ全て解決、これからは昔みたいな、楽しく賑やかな毎日が戻ってくる。柴関ラーメンは元通り、敵対していた便利屋68(べんりやシックスティーエイト)も仲良く食べに来る。それどころかゲヘナ風紀委員会をはじめ、あらゆる敵対組織とも仲直り。今後、本格的な紛争が起きることも予想されない。こんなに都合の良すぎるハッピーエンドってあるかな?」

「都合の……」

「もちろんそれが悪いって言ってるんじゃないんだよ。ただ、それは別の問題だ。だからまずは、私のこの推論が正しいかを考えよう。それは、先生——『今の先生』が『ブルーアーカイブ』と呼ぶそのスマホゲームの世界から、完全に外の世界から来たと仮定すればある程度説明がつく。『キヴォトスの外』なんて表現ではない、もっと上位の世界から、なら」

「…………」

「言いたいのは、先生が元いた世界からの視点なら、今言った程度の『ブルーアーカイブ』の世界の改変は可能だということ。それどころか、もっと大きな改変すら可能かもしれない。もちろん、その手段が先生の居た世界に存在するとしてだけど」

「…………」

「そして、改変をもたらしているのは間違いなく、先生とノノミちゃんだということ。柴関ラーメンの店舗は、先生が望んだから修復された。ノノミちゃんによってね。他にもきっとたくさんある。もしかしたら、私たちの知らない改変すらあるかもしれない。そしてそれを、私たちが疑問をほとんど持たずに受け入れているのも、何らかの認識阻害の影響を受けているのかも。そうして、この世界は先生の望む形に改変されたとしたら——本当はアビドスのこの結末には、もっと違う形があったんじゃないかな。例えば、違う形のハッピーエンドや、ほろ苦いビターエンド……」

「…………」

「ただ、これはあくまで、手に入る情報を整理した上で考えた、ただの推測でしかない。だからこそ、この世界の改変の中心にいる人物であり、『ブルーアーカイブ』の外の世界から来たっていう、先生に聞いてみたかったんだ。先生はどう思う?」

「…………」

 

 俺は、ずっと黙って話を聞いていた。そして、躊躇(ためら)いながらもやっと口を開いた。

 

「——俺は……。俺はそろそろ家に帰って飯食ってオナニーしてシャワー浴びて寝たい。ダメか?」

「…………」

「そんな目で見ないでくれ。俺だってオナニストじゃないから一人ですると虚しくはなるんだ」

「いや、そうじゃなくてね? 先生……」

 

 若干凹(へこ)むぐらいきつい目つきで睨(にら)まれた。いや、本気で言ったんじゃなくて、ちょっと笑いを取って場を和ませようと思っただけなんだが……。

 

 しかし、それはそうとマジで帰っちゃダメかな。話がよくわかんねえ。半分以上は聞いてなかったから、マジで何を怒られてんのかわかんねえ。ノノミ、助けて。

 

「……よくわかんないんだが、俺が柴関ラーメンでトッピングに味玉と炙(あぶ)りチャーシューつけたいって言ったら、屋台じゃできないって大将に言われたじゃん? んで、俺が泣きそうな顔してたらノノミが店直してくれたじゃん? あれがまずかったの? んじゃ次から注意するからさあ」

「いや先生、そうじゃない……。ああ、うん。炙りチャーシュー美味しかったね……そだね……」

「だろ?」

 

 うん、脂身の割合もいいし、表面の炙り方も絶妙な、素晴らしいチャーシューだった。ノノミが「野菜も取らなきゃダメですよ〜☆」ってタンメンの具を(あーんして)くれたけど、あれも美味しかった。いいハッピーエンドじゃないか? 『柴関ラーメン物語』。

 

「変わるにしても、いい方向に変わるんなら別にいいんじゃないの」

「それは私もそう思うよ。みんなが幸せになれるなら、それに越したことはない。ただ、少しだけ心配なんだ。この世界が、本来あるべき姿ではなく、徐々に改変されているとしたら、これからこの世界はどう変わっていくのか。先生はどう思う?」

「…………」

 

 この世界が、(どういう理屈かわからんが)俺にとって都合のいい世界に改変され、今後もそれが続く……? もしそうなったらこの世界は……

 

「……この世界はきっと、俺がノノミと毎日のように中出しセックスしながら、いろんな女の子に手を出すエロゲーになると思う……」

 

 いい加減真面目に喋れって怒られそうな気がする。でも、自分でも酷すぎる結論だと思うが、そこはマジでそんな感じになる気がする。

 

「あ、やっぱそう思う? なら、いいや」

 

 いいんかい。

 

 ていうか、即答でこの世界が俺のせいでエロゲーになるって同意されるとちょっと凹むな……。

 

「あのさ、自分で言っておいて何だけど、俺ってそんなに性欲でしか動かないみたいな、ダメな大人に見える? 実際、ほぼその通りなんだけどさ」

「いや、実は私が最初に疑問を持ったのはそこなんだよ」

「え? そこ?」

「私の知っている『前の先生』は、胸を揉みしだいてアヤネちゃんを泣かせるような人じゃない」

「ちょっと待って下さい、ホシノさん。そこは本当に故意でやったのではなく……いや、いいです」

 

 女の子を泣かせた時点で、対策委員会内で有罪なのは確定しているので、この件についてはもう諦めることにした。

 

「セリカちゃんのおっぱいを生で揉みしだいたって聞いた時は流石にそれはまずくない? って思ったし」

「知ってたんすか」

「そりゃ知ってるよ。ノノミちゃんも怒ってたし」

 

 生でおっぱい揉んだだけでこんな感じか……。ホシノの耳には入っていないようだが、結局セリカとヤッちゃったの知られたらものすごく怒られそうだな……。まあ、あれは保護者(ノノミ)同伴だったが……。

 

「あとシャーレに出入りしてる他の女の子とも何かやらかしてそうだし」

「ノーコメント」

 

 ユウカと何かのアレなプレイ的なことをしたのって、誰にどこまで知られてるんだろう……。

 

「便利屋68の女の子たちとも仲良さそうにしてたし」

「俺もあの辺とは、いずれ何か起きないか心配にはなりました」

「ゲヘナの風紀委員会の人たちとも面識があるみたいだったよね」

「正直、あの風紀委員会はむしろ風紀乱してそうなのばっかに見えて怖いです」

「シロコちゃんには向こうから押し倒されてそうだし」

「ああ、それはまだ大丈夫だ」

「え、嘘、マジで?」

「まあ、俺の貞操が奪われるのもそろそろ時間の問題かなって最近思ってるが」

「でも、まだだったんだ。良かったね」

 

 シロコがマジでヤベーってのは、ホシノにもそう認識されてるんだな……。

 

 にしても、シロコにしても便利屋にしても風紀委員会にしても、「うわー、こいつとヤりてえ!」なんて現時点では(全くとは言わないが)そこまで思ってないんだが、俺の意思に反して向こうにどうにかされそうなメンツばっかだな……。メモリアルロビー見ただけでも、こいつ大丈夫か? みたいな奴、結構居たし。痴女とか、足を舐めてどう、とか、首輪つけて散歩とか……。まあ、ノノミを決定的に怒らせなければ俺は何でもいいんだけど……ん?

 

「どしたの、先生?」

「いや、こんな時間にモモトークが……。誰からだ?」

 

 ……確認したところ、アコからだった。『今からすぐこちらに来てください』とのこと。『嫌だ』と返信しておいた。おじさんならともかく、こんな夜中に呼び出してきて何するつもりだあの女。

 

「大丈夫? 先生」

「大丈夫、大丈夫。大丈夫なようにしておいた……何だよもう」

 

 またメッセージが来たと思ったら、案の定アコだった。何かキレていたので、『五月蝿い』と返しておいた。……他にも未読があるな。誰だこれ。……うん? これは……。

 

「大丈夫?」

「いや……うん、まあ……。返事は後でいいや」

 

 チナツからだった。迂闊な返信をするととんでもない地雷を踏みそうなので、後でゆっくり考えて返事しよう……。『前の先生』がどんな付き合いしてたんだか、毎回やけに親密なメッセージがくるんだよな……。

 

 そういえば、こっちからも聞きたいことがあるな。聞いてみるか。

 

「なあ、おじさんは『前の先生』のことを覚えているのか? 俺とは別人の」

「ああ、実はそこなんだよ。私は、認識レベルでは『今の先生』と『前の先生』が別人であるとは今でも思えないし、そこを疑う自分がどうかしているとすら感じてるんだ。でも、間違いなく『前の先生』と『今の先生』は別人だと疑うだけの根拠が私にはあるんだよ。これはおそらく、先生が自分がこの『ブルーアーカイブ』の世界に来た、と認識する前の私たちの記憶なんだと思うけど……先生、聞いてる?」

「聞いてる、聞いてる。前野先生が妊娠レベルで……何だっけ」

「あのさ、そっちから聞いておいて、もしかして眠いの?」

「眠い」

 

 ホシノの話、難しい上に長いんだもん……。こっちはちょっと聞いてみただけなのに。自慢じゃないけど、俺は学校の授業では最前列の席で教師の目の前で居眠りしてた人間だぞ。もうやだ、帰りたい。今こそノノミに都合よく出てきて欲しい。

 

「とりあえず、出来れば話はわかりやすくコンパクトにお願いしたい」

「じゃあ、あの時私がこう言ったの覚えてる?」

「あの時……?」

「そう、あの時私は——」

 

 ——そうか、思い出した。あれは確か、ブルアカの『メインストーリーVol.1 対策委員会編』で、アビドスの教室で借金返済計画を話し合っていた時のことだ。学校の借金を返済するための計画を会議していた時、スクールアイドルがどうとかいう案が出た(ノノミの案だった気がする)。その時、ホシノがアイドルやったらウケるんじゃないかとか、そんな話になった時だ。確かにホシノはこう言った。

 

『うへ~、こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない』

 

 そのセリフを見て、よし、俺はおじさん管轄外だし、セーフだ、セーフ! と思ったのを思い出した。その事実を告げると、ホシノは「『今の先生』はそう認識してるんだね、なるほど」と言ってから言葉を続けた。

 

「——その時『前の先生』は、私のことをめっちゃ性的な目で見てきて怖かった。ぶっちゃけ身の危険を感じた」

「ちょっと待て。それは相当ヤバい奴じゃないのか」

 

 いやマジで、『前の先生』何してんだよ。

 

「でも、先生は私の体に特にそういったものは感じてないよね? そこがずっと引っ掛かってたんだ」

 

 俺も『前の先生』もひでえ理由で疑われてたんだな……。

 

「まあ、正直、前世(?)でもおじさんのエロ画像は集めてなかったんで」

「あのさ、さっきからスルーしてたんだけど、そこ、私は怒った方がいいところなのかな?」

「いや……自分のスケベ画像を俺がいっぱい持ってると思ったら嫌でしょ……?」

「そもそも聞きたいんだけど、先生のいた世界って私たちのいかがわしい姿の画像がそんなに出回ってんの? ヤバくない?」

「ヤバくない、ヤバくない。ブルアカの二次ガイドラインとか、確かかなり緩いから。おそらく多分」

「ガイド……?」

 

 どことは言わないが、権利がよくわからないところは大変だな、と思う。でもエロが禁止されると、着衣とか太ももとか濡れ透けとか、日本人が新たな性癖を開拓できるのはいいことだと思う。

 

「それより、よく印象が変わった、って言われるんだが、なら『前の先生』ってどんな人だったんだ? おじさんから見て」

「いい先生だったよ。書類仕事は苦手だったけど、生徒のためなら身の危険も顧(かえり)みず、迷わず戦闘の指揮を取ってくれたし」

「……おう」

 

 書類仕事の速さはともかく、何だか責められてるような気になるのは被害妄想だろうか。俺、怖いからノノミから貰ったスキチケとか使って、戦闘スキップしまくってるからまともに指揮取ったことないわ。何と戦ってんのかよくわからんし。

 

「それに生徒に平等で、優しかった。性癖はちょっとヤバそうだったけど」

「ヤバそうだったんだ……。よく誰にも手を出さなかったな」

「性癖はヤバそうだったけど、手を出すタイプじゃなかったかな。ニヤニヤ眺めながらいろいろ妄想するだけ、みたいな」

「それ、実は一番危険なタイプなんじゃないのか……」

 

 完全に偏見だが、裏で何やってるかわからない分、オープンな変態よりヤバそうな気がする。そして、裏でも何もやってなかったら、それも何か怖い気がする。

 

 改めて、今までに他の生徒から聞いた『前の先生』のイメージを思い出す。

 

 セリカの場合。

「以前はここまでダメな人じゃなかった——」

 

 ユウカの場合。

「以前より事務作業めちゃくちゃ速く——」

「私はま(・)だ(・)先生の赤ちゃんを産むほどの覚悟は出来ていないのにっっっ!」

 

 ノノミの場合。

「いつ先生とそういうことになるかわかりませんから(フェラチオの)勉強しました☆」

 

 後に行くほど危ない評価が出てくるんだが、完全にやべー奴なんじゃないのか、そいつ……。まあ、言ってるのがユウカとノノミだけに、あの二人の方がやべーだけの可能性も高いが……。

 

「しかしそうすると、何かそいつから女を寝取ったみたいな微妙な気分になってきたんだけど」

「それは気にしなくていいんじゃないかな。今の話を整理してみると、何だか実在してたのかすら怪しい不確定な存在みたいだし」

 

 そうか……? 実在してない割には何か生々しい話ばっかり出てきたんだが……。

 

「どっちにしても、『前の先生』は生徒には絶対手を出さなかったと思うし」

 

 んなもん当たり前っていうか、躊躇いもなく手を出してる俺の方がヤバいんだが、この流れで言うと『前の先生』は手を出さない方が怖い気がする。

 

「それに、今のノノミちゃんが好きなのは間違いなく先生、貴方だよ。誰が見たってそれは間違いない」

「まあ、それはな」

 

 俺はノノミの愛を疑うつもりはない。何しろ、避妊しようとすると逆に怒られるからな。たまにちょっと、俺じゃなくて俺との間に出来る赤ちゃんへの愛じゃないかと怖くなる。

 

「それにきっと、先生とノノミちゃんの間が上手くいっている間は、先生が望むような、エロエロでバカバカしい、平和な世界が続くような気がするんだ。だから、頑張ってほしいな」

 

「要するに、ノノミに捨てられるなってこと?」

「うへ〜、無粋な言い方しちゃうと、まあそういうことかな?」

 

 なるほどな……。ホシノはそういう考え方だったのか。それが正解なのかはわからないが、俺がノノミと上手くいっているうちはこの世界は大丈夫、と。

 

 …………

 

 上手くいかなかった場合を、いろいろ想像してみた。

 

・何か深刻なことをやらかした場合。

「お仕置きですよ〜☆ 全弾発射〜♣︎(実弾)」→死ぬ

 

・誰か孕(はら)ませた場合

「待て! こいつは悪くない! いや、多少は悪いけど、子供は悪くな……がはっ!(庇う)」→死ぬ

 

・ユウカあたりが孕んだ場合

「先生、一緒に死んでください!(刺される)」→死ぬ

 

 よーし、この世界がどうなるかは知らないが、その場合確実に俺は死んでるな! ……いや、マジで洒落ンなんねえ。

 

「だからさ、私からもお願いするよ。ノノミちゃんを大事にしてあげてね、って。うへ、何かこの言い方照れるね」

「大丈夫だよ。俺も、俺のノノミへの愛情は本物だって自信があるから」

 

 俺がそう言うと、おじさんは親指を立てて、俺に笑いかけてくれた。

 

 

------------------------

 

 

「? 先生、どうなさったんですか? 考え事でも……?」

「いや、何。おじ……ホシノはすごいなって思って」

「ホシノ先輩ですか?」

 

 ノノミと腕を組んでショッピングモールを歩きながら、俺はあの夜の会話を思い出して、ある意味で感動していた。世界がエロゲーになるとか、変態がどうとか、あのひっでえ会話を綺麗にまとめられるんだからすげえよ、おじさん。汚れたダメな大人には眩しくて正視できねえよ。

 

 最後に、「ていうか俺が好きなのはノノミっていうか、主に(ノノミの)おっぱいなんだけど」とかいらんことを言って台無しにしなくて良かったと思う。

 

「それにしても、良かったですね☆ 先生のお目当てのゲームも買えましたし」

「うん。これは年齢制限ないやつだから、ノノミにカードで買ってもらえたし。「女の子にマッサージするだけのゲーム」はこの世界でも配信停止なのは悲しいが……。何が引っ掛かったんだろう」

 

 キヴォトスなら審査通ったんじゃないかと、一縷(いちる)の望みを託してダウンロード販売に接続してみたんだが、やはりなかった。まあ、家庭用ゲーム機のエッチなゲームのジャンルを、「実用」とか言って売るような会社だしな……。

 

「先生、帰ったら後で一緒に何かやりましょう☆ 私、麻雀のゲームやってみたいです!」

「ああ、そうだな……」

 

 脱衣麻雀は、この世界でも何回も謎の光の入れ方を修正させられたり、全部セット入りと単品版で細かく変えさせられたりしているんだろうか。どうやっても最終的に乳首が解禁されるわけじゃないとはいえ、どちらの世界も世知辛(せちがら)い。

 

「それでは、あとはカフェでお茶したら、先生のお部屋に帰りましょう☆」

「そうだな。……あ、悪い。荷物持ってやるよ」

「そんな! 悪いですよ。買った物の大半は、私のものや対策委員会のみんなのためのものですのに……」

 

 その、「みんなのためのもの」という言葉を聞いて、今更ながらに思う。

 

 ——ノノミは、俺とデートなんていってもみんなのこともいつも忘れない、いい子なんだよな、やっぱり。だったら、おじさんには悪いけど、大層な理由なんていらない気がする。

 

「俺が持ちたいんだから、持たせてほしいんだけど、ダメかな?」

「……はい! そういうことでしたら! でもその代わり、私は先生と手を繋ぎたいです☆ いいですよね?」

 

 はしゃぐノノミから荷物を受け取り、空いている方の手を繋いでやる。ノノミは本当に嬉しそうな顔をしていた。

 

 

 そんなわけで、俺とノノミは買い物が終わった後俺の部屋に行き、夕飯を作ってもらい、二人でそれを食べた後でめちゃくちゃセックスしたわけだが、それはまた別の話。

 

 

話の分割の仕方について、別の形に分けるなら以下のどれがいいですか?

  • キャラごと(ホシノ、黒服、カヨコの3つ)
  • 内容ごと(ホシノ・黒服、カヨコの2つ)
  • 本編外にまとめたもの全部で1つ(今のまま
  • その他(お気に入り登録や検索をしやすく等
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