※この作品はR-18です。

「助けてノノえもん!」ホシノ・カヨコ・黒服関係回のみまとめ   作:春画屋@二次創作R18

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Final-53:小鳥遊ホシノ-(4)-もう、一人じゃないから

 

 それは、私の人生を変えた一日だった。初めてデートを経験したこと。先生の「友達」にいろいろ聞いたこと。こ(・)の(・)世界の「大人」たちが何を考え、どう行動したかを知ったこと。その後もいろんな話を聞いて……。——そして私は、エンディングへの最後の一歩を踏み出した。

 

 

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「……と、阿慈谷(あじたに)ヒフミによって、いわゆる"Blue Archive宣言"という……」

「あははっ、何それ! ヒフミちゃん、完全に主人公じゃん! カッコいい〜! んで、何? 私たち、マジで覆面水着団の格好で駆けつけたの? 言い出したの誰だろ。シロコちゃんかな?」

 

 黒服から聞く『ブルーアーカイブ』の『メインストーリー』は、思っていたより結構面白かった。いや、かなり面白かった。そして同時に、感動的でもあった。

 

 どんな世界観に変わっても、シリアスな場面にちゃんとバカバカしいネタを入れてきて、それがちゃんとストーリーに組み込まれていて、そこにキャラが生き生きとしている、いかにも『今の先生』——『彼』が好きそうなゲームだった。『絆ストーリー』に『イベントストーリー』、『カフェ』に集まるSDで表現された生徒たち。キャラの一人一人に好感度が設定されていて、親しくなれば新しいストーリーを読むことが出来る。そしてそのキャラの別の一面を見ることが出来る。

 

 そんな『ブルーアーカイブ』というゲームが好きな『彼』の「世界観」が、バカバカしいけど平和で楽しいものになるのは、当たり前だと思えた。……まあ、『ブルーアーカイブ』をエロゲーにしちゃうなんていうのは、この世界に来た直後に目の前にいたノノミちゃんに頼み込んでエッチさせてもらうような、『彼』だけなんだろうけど(苦笑)。

 

 私は『ブルーアーカイブ』を知って、それを好きになることが出来た。それをお手本として生成された「ゲームの中」の『ブルーアーカイブ世界』の一つである、こ(・)の(・)世界に生まれてくることが出来て本当によかったと思った。

 

 

「しかし、良かったのですか? ずっと興味がないとか、知る必要がないとか言っていましたが……」

「もう、知ることが怖くなくなったからね。「私」は「私」だって確信できたから、そんな風に自分に言い聞かせる必要もないかなって」

「怖かったのですか? 何故?」

「記憶が戻って、先生が少し変わっちゃったのを見たからかな。『ブルーアーカイブ』の『小鳥遊(たかなし)ホシノ』を知ることで、自分も「自分」を曲げるようになっちゃうんじゃないかってね」

「彼は記憶の有無で変わったりはしませんよ。確かに、それを前提として取る行動は変わるでしょうが」

「いや、そういうのじゃなくて。そうだね……『前の先生』と雰囲気が似てきた」

「似てきましたか? ああ、それはまあ……あの二人は似ていても別に……いえ、私は両者をよく知っているわけではありませんが、彼ら……ああ、いや」

「あんた、さっきからいちいち、あの二人の話になると何なの」

「いえ、別に何も」

 

 ……こいつ、本当に隠しごと下手だなあ。まあ『今の先生』を見ても、パッと見ではまだ見分けがつかないんだから、何かあるんだろうけど。

 

「悩むことは多くなったよ。「シャーレの先生なんていっても無力だ」なんて『前の先生』がよく言っていたらしいけど、似たようなことを言いそうな感じ。あんまり重荷を背負わせたくなくて、いろいろ言ったんだけどね。やっぱり、忘れていた『シャーレの先生』っていうものの一つの模範解答を知って、意識するようになったんだと思う。確かに、彼自身は何も変わらないけど」

「どちらかと言えば、彼は『シャーレの先生』を職業の一つとしてとらえて、割り切る方だと思うのですがね。それで言えば、職業意識は高くなったでしょうが」

「そうだけどさ、『ブルーアーカイブ』の「先生」って、ただの「主人公」ってだけじゃなく、特別な存在なんでしょ? 存在っていうか、何かを象徴するような概念というか」

「そこまで考えていたら、きりがありませんよ。我々が現実に存在する生身の人間である以上、行動の妨(さまた)げとなるほど気にして悩むべきではありません。特に『彼』はそう考えるタイプでしょう」

「いや、それはそうなんだろうけどさ」

 

 先生のことになると、何でこんなに自分の見解にこだわるの、こいつ。そんなに先生大好きか。私は、先生大変そうだなぁって言いたかっただけなのに。面倒くさいから、もういいか。

 

「まあ、何にしても私は、こ(・)の(・)世界の「主人公」だとか「世界観」を維持しなきゃいけないとか、そういう特殊な事情はないわけだし。一人ぐらい『ブルーアーカイブ』とか『メインストーリー』に詳しい人間が増えてもいいでしょ? 興味も出てきたし」

「しかし、あまりあなたを巻き込むと、私が彼に怒られそうで……」

 

 ん?

 

「何それ? あんた、先生の許可がないと、勝手な行動は取れないってこと? 対等じゃないって、そういう話?」

「いや、そういうわけではなくてですね……。それにしても、先生、先生と、やけに慕(した)っている様子ですが、どちらかというと『彼』のことは、別の世界から来た単なる一異邦人のように考えているのかと思っていましたが」

 

 あ、話を変えたな。まあ、いいけど。

 

「まあ、物の見方とか人生観とか、先生から学んだことは多いからねぇ。『前の先生』からはあんまりそういうのないし。あの人、戦闘の指揮を取ってくれたり、一緒にセリカちゃんを助けに行ってくれたりはしたけど、そういう意味ではあんまり「先生」っぽくないんだよね。確かに、いかにも「ブルーアーカイブの「先生」」っぽい感じはするんだけど」

「ああ。それは、おそらく『シャーレの先生』の枷(かせ)が——あ、いえ、『シャーレの先生』という「器」に強(し)いら……いえ、その表現は少し違う……」

「自分から話を振っておいて、変に気を遣(つか)わないでくれる? 『あの人』が『シャーレの先生』でなければ……そういう、行動がかなり制約される「器」の持ち主でなければ、多分やらなかったようなことが結構あるのが少し分かってきた。『シャーレの先生』が好戦的ってわけじゃないんだろうけど、どっちかというと『前の先生』自身は、可能な限り戦闘をやめさせたがるタイプだった。そこも『今の先生』と似てる」

「私はよく知らないのですが、そうなのですか」

「うん。戦闘を嫌がってるわけじゃないのに、表情だけが微妙なことが多かった。そういうのは多分、『メインストーリー』でするこ(・)と(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)戦闘だから、やめさせるのが不可能だったんでしょ。ヒナちゃんのことだって、仮にトリニティに行ってそっちにかかりっきりだとしても、そこまで寂しがるのが分かってて手を打たない人じゃない。『今の先生』と違って、時間と空間を超えて自由に生徒に会いに行ける『シッテムの箱』だってあるんだ。でも、そんなフォローが出来るなら『メインストーリー』が成り立たなくなる。下手したら、『シッテムの箱』が逆にヒナちゃんに会いに行くのを妨害する可能性すらある」

「あり得ますね。「ゲームの中」のタイプ*1の『ブルーアーカイブ世界』では、「先生」も『シッテムの箱』も全て、『メインストーリー』の進行のために存在します。「生徒」のためではない。ストーリーとしての価値とは全く別の話として、現実におけるそれは「拘束」でしかない。ですから、ノノミさんと『彼』のこと以外にも、そこからの解放は考えていたのでしょう。その性格なら『前の先生』も『前の先生』なりに、大変だったでしょうし。まあ、そんなことは「ゲマトリア」も一緒ですから、同情するつもりもフォローする気もありませんが。まったく、そもそも何で私が……ブツブツ」

「あんた、『あの人』のこと嫌いでしょ」

「嫌いですよ」

 

 そこ、即答なんだ。

 

「考えてもみなさい。『現実世界』でそれなりに平和に暮らしていた『彼』を勝手に異世界に呼びつけて、事情も教えないまま、記憶も『シッテムの箱』も奪った上で放置していたのですよ? いいですか? 「彼ら」がどれだけ加害者意識を持ってそう表現しているか知りませんが、『彼』は文字通り「奪わ」れたのです。彼がああいう性格だからこそ許されて——」

「分かった分かった。極端だなぁ〜、もう」

 

 いまだにこれだけこだわってるぐらいだから、先生の記憶を何が何でも戻そうとしたわけだ。『前の先生』をそこまで否定されちゃったら、ノノミちゃんや先生だって困るだろうに。

 

 でも、本来は正解のない話なんだから、意見が一致するはずがないんだ。これぐらい主張する奴がいた方がいいし、何より、誰も自分が正しいと思ったことを曲げる必要はない。先生の「友達」はずっとこのままでいい。

 

 そんな当たり前のことを忘れていた。「私」は「私」のままで良かった。だから、曲げて、変えて、忘れそうになっていた「自分」を取り戻さなきゃいけない。そして、前へ進む。

 

「ところでさ、ちょっと電話していい? 先生に今日の話とか、他に話したいこともあるからさ」

 

 さあ、エンディングへの最後の一歩を踏み出そう。

 

 

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「……あ、先生? 私。ホシノだけど」

『お、良かった。こっちから電話かけようと思ってたんだけど……——』

 

 今日はどうだったのか聞く電話越しの先生の声は、いつになく嬉しそうだった。ノノミちゃんに私をビックリさせたいと押し切られたけど、やっぱりこいつの『ゲマトリアの黒服』という素性のこととか、いろいろ心配してくれたらしい。嬉しいんだけどこの様子じゃ、先生が相手だったらデートどころか、保護者同伴に見えたかも知れない……笑えないなぁ。

 

 先生の友達と会えて嬉しかった、デートも何だかんだ言って楽しかった、そう言った後に「でも私は、やっぱり恋愛とかそういうのはまだいいや」と言ったら、残念そうな声になった。

 

『別に、そいつとどうこうじゃないんだけど……まあ、やっぱり『あいつ』——『前の先生』が別格か。あれに関してはもう、色恋とか超えてるんじゃない?』

「多分、そうなんだろうね。どういう感情なのかは、私より先生の方が分かるのかも知れないけど」

『そうか? でもノノミなんかは絶対に恋だって言ってるしなあ』

 

 ——あれは私がずっと気を張って、キヴォトスのこれからとかアビドスのみんなの生活とか、そういう大きなことで頭がいっぱいだった頃だ。先生は私が失ってしまった、ほんの些細(ささい)な——でも一番大事だったものに気付いていた。こ(・)の(・)世界が『メインストーリー』から解放された結果、私が失ってしまった『前の先生』との絆(きずな)がどんなに貴重なものだったのか、私よりよく分かっていた。

 

 ずっと私を支えてきた、『前の先生』——『あの人』の「またね、ホ(・)シ(・)ノ(・)」という言葉は、先生がいなければきっと聞けなかった。『シャーレの先生』という「器」は一つしかない。あの一瞬だけでも入れ替わって、『あの人』が私に会いに来ることが出来たのは、「器」の持ち主である先生が、違う目的であっても私のために来てくれたからだ。『彼』は無意識に私たちが必要としているものを与えてくれる、そんな「主人公」なんだと、今日の出会いで改めて確信した。

 

 不可能を可能にしてでも、絶対に会えないはずだった相手と会わせてくれる『先生』。ノノミちゃんにとって『あの人』がそういう『先生』であったように、私にとってもあなたはそういう存在(先生)なんだと思う。だから『あの人』にまた会えると信じてこれた。ありがとう、先生。すごく感謝してる。

 

 ——だから、巻き込んじゃって申し訳ないんだけど、ちょっとだけ許してね。ま、一応、当事者ではあるしね?

 

「その話なんだけどさ。…………。……ん、そう。『あの人』のこと。ああこれ、ちょっとこいつにも聞かせたいから、スピーカーモードにしていい? ん? …………。あ、そこにノノミちゃんも居るんだ? じゃ、ノノミちゃんにもせっかくだから聞いてもらおうか…………」

 

 電話の向こうから、ゴソゴソという音が聞こえる。そして少し無音になり、それから先生の声が聞こえた。

 

『いいよ。で、何?』

「うん、あのさ——」

 

 私は息を吸い込んだ。

 

「——私は、十分待った‼︎」

『はい⁉︎』

 

 きっと、本当はずっと前から思っていた事を思いっきりぶちまける。

 

「『あの人』がいつか帰ってくるって信じて、ずっと待ってた! いい加減、待たせ過ぎでしょう⁉︎ 何やってんの⁉︎」

『そ、そうだな! 待たせ過ぎかも?』

「平和な世界をあてがって、楽しい生活を用意して、それでいつか帰ってくるから、待ってろって⁉︎ 本当に帰ってくるのかどうかも分からないのに⁉︎ それとも、いつも「画面越し」に見守ってるから、それで我慢しろって⁉︎ ふざけるな!」

『い、いや、それは……』

 

 振り絞(しぼ)るようにして言葉を吐く。全部、吐き出せ。

 

「私は別に、平和な世界じゃなくても良かった! 敵がいるなら戦えばいい! 危険があるなら一緒に立ち向かえばいい! 楽しい生活なら自分たちでつかみとれば良かった! 私は『あの人』さえいてくれれば良かった! 『あの人』がいない世界なんて私には何の意味もないって、何でそんなことが分からないんだ! みんなで頑張って、その向こうに『あの人』との絆が得られるなら、私は『メインストーリー』の方が良かった!」

『やっぱり⁉︎ 俺もそれは常々……』

「自分のことだから言ってるんじゃない! こんな風に、私みたいな思いをする子が一人でもいるならこんな世界、大間違いなんだ!」

『すみません!』

 

 ……はー、スッキリした。

 

「へっへーん♪ 言ってやった、言ってやった♪」

「いや、言ってやったって……! あのですね、ホシノさん。気持ちは分かりますが、そこはいろいろ事情がありまして……」

 

 目の前では、黒服がどうにかフォローしようと慌てている。電話の向こうでは先生も必死に謝っているみたいだ。うーん、やっぱりちょっと、かわいそうだったかな? 私がこれを言いたかった相手って、「ここにいない誰かさん」なんだけどなぁ〜?

 

「別に先生が謝る必要なんかない。「こっち」に来たのは先生の意思じゃないし、事情だってずっと知らなかった。それでも今日みたいに、ノノミちゃんと一緒に、私のためにいろいろ考えてくれてる」

『いや、そうなんだけどね。結果が出せてない以上、こちらとしても何というか』

「だから、先生は気にしなくていいんだって。それより本人はぁ? 今も「あっち」からこの会話を「読んで」るのかどうか知らないけどさぁ〜」

『え? 本人って……『あいつ』だよな? 『前の先生』』

「そうそう。あっちに行ったまんまの『あの人』。そっちに何か連絡とかいってる? 私からは何度か呼びかけてるはずなんだけど、なぁ〜んにも音沙汰(おとさた)ないんだよね。あの人にもさぁ、努力してるんならしてるで、せめて誠意ってものを見せてもらわないとさぁ〜、誠意ってものを」

『いや、誠意って。昔の反社の人じゃあるまいし。何か、いきなりガラ悪くなってない?』

「だってさぁ、先生どう思う? ま・さ・か、とは思うけど、あの人、先生が元の世界に戻ったら嫌でも自動的に入れ替わってこっちに戻ってくるんだから、それを待てばいいやとか、ふざけた事考えてそうな気がしない?」

『ぶっちゃけ、それは考えてそうな気がする』

「やっぱり?」

 

 そこは、あっさりぶっちゃけていいんだろうか。本当にこの人、正直っていうのか何ていうか。でも、先生も同じ意見だったか。

 

「おじさんとしてはさぁ〜、こんな気持ちをまたノノミちゃんに味わわせるなんて論外だし、可能なら先生にはずっとこの世界にいて欲しいと思ってるわけよ。それにあんな風に言ったけど、ストーリーがどうこうじゃないでしょ? 実際には「現実」なんて一つしかなくて、問題は『あの人』が「あっち」に行ったまま戻ってこないっていう「事実」だけじゃない。おじさんに関して言えばだけどね?」

『そりゃそうだ』

「じゃ、あの人がとっととこっちに戻ってくればいいだけの話じゃない」

『そうなんだよな』

『女の子を待たせる男の人、最低ですー☆』

「今のノノミちゃん?」

『うん。何か後ろから、厳しいお言葉が飛んできまして』

「うんうん、やっぱり女の子のことは女の子に聞かないとね〜」

『ホシノせんぱ……。………————! ……!』

 

 聞こえないけど、まだノノミちゃんが後ろから何か言っているみたいだ。先生が小さく、こえー……とか何とか呟(つぶや)いたのが聞こえる。黒服も少し怯(おび)えているように見える。それぐらいでちょうどいいよ、女心の分からない男連中は。

 

「まあ、実際は簡単な話じゃないのは分かってるんだけどね。多分、「こっち」に「帰ってこられない」っていうよりは、「あっち」に「誰かいなくちゃいけない」ってことの方が大きいんでしょ?」

『「世界にあまねく遍在(へんざい)している状態」だとかいう、オリジナルの『アロナちゃん』*2と一緒に、向こうからいろいろやってるみたいだからなあ。『シャーレの先生』っていう「器」が二つないってのも問題なんだろうけど、やることを放り投げるわけにもいかないんだろうし』

「放り投げて帰ってきたりしたら、即、追い返すよ。とっとと向こうに戻って、やることやってこいって」

『あ、そうなんだー……。りふじ……いや、何でもないです』

「でもさぁ〜、そういう「や(・)ら(・)な(・)き(・)ゃ(・)い(・)け(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)」で頭がいっぱいで、誰も代わりは出来ない「自(・)分(・)自(・)身(・)」を待ってる人間がいるってことには気が回らないとか、良くある話じゃない? ねえ、先生〜?」

『ホシノさん、ホシノさん? 言葉のトゲがすごくて怖いよ? もうちょいお手柔らかに……ちょっと、ノノミはこれ以上煽(あお)ろうとするなって。おーい、やめなさい』

「まあ、言ってスッキリしたから、それはもういいよ」

『いいの?』

「それより私、『黒服』……まだ『黒服』でいいか。こいつがずっとやってること、これからは私も一緒にやろうと思うんだけど」

『は?』

「なっ、ななな、何をっ⁉︎」

 

 先生より、黒服が慌てた声を上げた。何だよ、うるさいなあ。無視して続ける。

 

『え? 手伝いたいとか、そういう話?』

「そうじゃない。大事な話があるんだ。先生、聞いてくれる?」

『え? ああ……うん』

「私が今いくら吠(ほ)えたって、自分じゃ責任も取れない一生徒が文句を言ってるだけだよ。でも、先生たちは自分で選んで、良かれと思って行動した結果に責任を持って、今もこうやって、私の話を聞いてくれている。一人の生徒の我がままだなんて片付けようとはしない。私もそんな風になりたい。思い通りにならない現実を他人のせいにしないで、自分の行動の結果だと受け止められるようになりたい。誰かに対して責任を持つ側になりたい」

『うん』

「あの人が「シャーレの先生なんていっても無力だ」なんて嘆(なげ)くなら、あの人の隣で一緒に自分の無力を嘆きたい。対等な存在として、不可能に思える事でも可能にする努力を一緒にしたい。間違いがあれば私が止めたい。だから私は、今の自分が何をするべきか考えて、まずそれをやり遂げる事でその資格を得たいんだ」

『それが、黒服の手伝い……いや、一緒に行動することなのか? 後ろで騒いでるみたいだけど、多分思ってるより危険だぞ? おじさん、今までだってヒナに一人で会いに行ったり、いろいろしてきただろう。それは正しいし、立派な事だと俺は思ってる。でもそれじゃ、自分を納得させる事はできない、そういうことか?』

 

 ずっと頭の中にあった、「ホシノ先生」という言葉が頭をよぎる。それを目指したいって言えば、『あの人』だけじゃなく、私の周りのみんなも喜んで応援してくれる。でもきっと、先生は違う。私の本当の気持ちを理解してくれる。

 

「……私も同じことを考えたよ。でも目の前に、間違いなく「私」を必要としている人間がいる。先生、『ゲマトリアの黒服』があなたと対等な何者かになれるとしたら、異世界なんかに行くより前に、まずやらなきゃいけないことがあるって言ったんだって? 行く資格があるって自分を納得させなきゃいけないって」

『ああ、それ聞いたんだ。じゃあ、おじさんには他人事に聞こえなかったか』

「うん、先生なら分かるよね。似たようなことで悩んだ私なら、こいつを理解出来ると思う。そんな私と一緒に行動して、必要なら一緒に戦うことで、こいつは『現実世界』へ行くための資格を得られると思う。きっとそれは「私」とじゃなきゃ出来ない。先生たちがノノミちゃんの望みを無視しなかったように、私も「生徒」だとか「大人」だとか関係なく、先生の友達の力になりたい。その望みを叶える事ができて初めて、自分も次に進めると思うんだ」

『でも、『前の先生』は反対するかも知れないぞ? 危険な道なんて選ばずに、やれる事があるならそっちをやって、他は「大人」に任せてくれって言うかも知れない。そもそもその話は、本来はあいつが自分一人で解決する問題だし、俺だっている。それでも、おじさんが力になるべきだと思うか?』

 

 一つ一つ、噛(か)み含(ふく)めるような先生の声音(こわね)は、私を責めたりとか、止めようとするものじゃなかった。言葉の一つ一つが、私の覚悟を試してくれている、そんな重みを感じる。

 

「もし何か言うことがあるなら、「向こう」から見ていないで、この場に来て自分で直接言うべきだよ。どっちにしたって、危険だからやめろ、なんて過保護な意見なら聞く気はない。別に、ここにいないからって、拗(す)ねて当て付けてるわけじゃない。真剣に考えて言ってるんだ。いつか私は先生にたんかを切ったことがあるよね? 私は間違っていると思ったら、相手が『シャーレの先生』だろうがなんだろうが絶対に従わないって」

『うん、言ってたな。……そうか』

「今がその時なんだ。私はもう自分を曲げたりしない。他人がどう思うか気にして顔色をうかがって、気持ちを押し殺したりしない。絶対に譲(ゆず)れないんだ」

『…………』

 

 先生の冷静な判断なら信じられる。先生が私の気持ちを分かった上でやめろって言うなら、そうするしかない。でも、甘やかすようなことだけはしないはずだ。そう信じてる。

 

「……先生? それでも、先生は止める?」

『え? あ、ごめん。止めない止めない。いや、何か感動しちゃって。俺、おじさんが我慢してるみたいだから、ずっと心配でさあ。俺たちが不甲斐ないにしたって、こっちが困っちゃうようなことでいいから、言ってくれればって』

「ああ、やっぱり?」

 

 多分『メインストーリー』を少し思い出したあたりから、ずっと気にしてくれてたんだろう。私も、先生が困った顔をするたびに心が痛んだ。でも少なくとも、誰も幸せにならないようなそんな状況を、自分の意思で少し変える事ができたはず。私自身が立ち上がる事でしか変えられないものを。

 

『……——あー、ほらほら。スマホ貸したげるから、自分で言いなさい』

 

 電話の向こうから、「はーい☆」と元気のいい声が聞こえる。ノノミちゃんだ。

 

『ホシノ先輩、カッコいいです!』

「え、本当? うへ〜、照れるなぁ〜」

『ホシノ先輩は強い人だって、ちゃんと信じてました! 十六夜ノノミ、これからもホシノ先輩のことを全力で応援します!』

「うんうん、おじさん、先生とノノミちゃんは応援してくれるって信じてたよ」

『——ノノミ、ちょっと代わって……。……あ、おじさん? もし『あいつ』が何か言ったって構わないよ。俺が許可するから、思うようにやんなさい。ただし、無茶はしないこと。一人で思い詰めたり、背負い込んだりしないで、必要だと判断したら即、俺とシャーレに連絡する。それでいいか?』

「うん……うん! ありがとう、先生!」

『でも、出来るだけ自分たちだけでやってみろ。それで、もしダメだったとしても……そんな時に頼れる友達なら、もういっぱいいるよな? 今までやってきた事だって、きっと無駄じゃない。それを確かめてみろ』

「うん! その自信ならあるから、大丈——ちょっ、何すんの! 今いいところ……あー! スマホ返——……!」

 

 せっかくの感動のシーンに、黒服が割り込んできた。何すんの。

 

「あなた達ねえ! 肝心の私を無視して、何を勝手に決めてるんですか! 過保護だとかどうとか関係ありませんよ! そんなに危険はないとはいえ、あなたに伝えているよりは危ない話なんですよ⁉︎」

『んじゃ、何で最初からそう言わず、そんなもん一人でやってんだよ。一応自主的に協力してもらってる手前あんまり言わずに来たけど、連絡ぐらいはちゃんとしてくれって散々言ったよな? お前の手に余るようなら、早めに言ってくれれば、こっちだって対応のしようがあるんだからさ』

「いや、それは……」

『連邦生徒会周りの金の動きの調査だって依頼してあっただろ? あれ、まだなの? 手こずってるんなら俺がやるからさ、まず進捗(しんちょく)を報告してくんない? お前が俺と顔を合わせづらいとかは知ってるし、一応ケアも考えてるけどね、やる事だけはちゃんとやってくんないかな』

「いやしかし、今はその話では……何ですか、ホシノさんは! えーえー、そうですよ! さっき言われた通りに怒られましたよ! 彼に連絡しなかったせいで!」

『何だ、お前。おじさんにも言われてんのかよ。しっかりしてくれよ』

 

 ほれみろ、やっぱり先生に怒られてやんの〜、と黒服を指さして煽(あお)っていたら、キレられた。

 

『第一お前、自分が面倒みてもらう側だって分かってんのか? 女の子がこれだけしっかりしたことを言ってるんだから、こういう時こそお前が守らなきゃいけないんだろ? この状況でそれすら言えなくて、それこそ『現実世界』なんて行って何するつもりなの? それとも、具体的に何が危険とか今説明できんの? 出来るなら聞くけど』

「ぐっ……!」

 

 やっぱもう、自分で納得出来ないだけで、ちゃんと「友達」じゃん。遠慮のない、男二人のやり取りを聞いていると、私はそう思う。いや、私じゃなくたって思うよね。それにしても先生、厳しいっていうより、本当に口も悪いし感じも悪いな。こんなノリ、女の子にやったら泣いちゃうんじゃないの?

 

「しかしですね、この状況を「向こう」から「読んで」いるなら、『前の先生』だって止めますよ? そもそもあの者の意向に沿(そ)わないとしたら、それが一番の問題なのですから」

『何つー、情けないことを言うんだ、お前は。ここで他人を頼るか? まあいいけど、それならあいつだったら、お前のところに連絡なり何なり出来るだろ。ほれ、メールとかメッセージとか、時間を遡(さかのぼ)って届いていたこ(・)と(・)に(・)す(・)る(・)とか、そういうやつで』

「ああ、確かにそれなら……。…………」

 

 自分のスマホを取り出して、メールが来ていないか確認し始めた。あれで連絡取れるのかな……——なんて思っていたら、いきなりスマホを床に叩きつけた。おいおい、何すんの。あんたのスマホ、壊れちゃうぞ。すごい音がしたし。

 

「【どうしよう】だそうです」

『うっわ』

 

 あ、それはスマホを床に叩きつけてもしょうがない。言いそうな気はしてたけど。

 

「ええ、分かりましたとも。私だって、何故このような話になっているのかぐらい分かっています。是非、私と組んでください、ホシノさん。よろしくお願いします」

「よし! んじゃ、あんたの事これから、『黒服』じゃなく『相棒』って呼んでいい?」

「『相棒』、ですか? 『黒服』ではなく? 『相棒』……ふむ、悪くないですね。悪くない……」

 

 

 ——こうして、私は背中を預けることの出来る、信頼できる「相棒」を得た。「友達」とか「仲間」ではなく、「恋人」でもない、「相棒」と呼ぶことのできる特別な相手を。

 

 長い長い物語(ストーリー)だった気がする。でも、エンドロールなんてなくても分かる。ここが「私」の「エンディング」だ。気を遣(つか)ってもらっても、心配してもらっても、見守ってもらっていても、ずっと一人だった。『あの人』が『現実世界』に行ってしまってから、ずっと胸に穴が空いたままだった。それに気付いてから、必死にその穴を埋めようとして、『あの人』が用意してくれた世界を肯定(こうてい)して、何とかそこに馴染(なじ)もうとあがいてきた。それが出来なくて、その穴を埋めることの出来る唯一の相手が帰ってくるのを、足を止めて、ただ待っていた。

 

 胸の穴を埋めるのは、用意された答えじゃなくてもいい。その事にやっと気付いた。「友達」じゃなくていい。「恋愛」じゃなくていい。死んでしまった人や、別の世界に行ってしまった人、それだけだと思い込まなくていい。もっと違う関係、違う相手でいい。だから『メインストーリー』や、『ブルーアーカイブ』の『小鳥遊ホシノ』と違って構わない。こ(・)の(・)私が選んでいい。

 

 「私」は「私」だ。もしずっと『あの人』と会えなくても、それは「私」の人生にとっては大した問題じゃない。もしユメ先輩を忘れてしまっても、「私」はちゃんと生きていける。一歩踏み出して誰かと出会うことが出来れば、前へ進める。それを知ったこ(・)の(・)小鳥遊ホシノだから、「私」はこれからも『あの人』を待つことが出来る。ユメ先輩を忘れたくないと思うことが出来る。何かにとらわれることなく、自分の意思で。

 

 

『相棒さん、頑張れー☆ せっくんも……ふぐ』

「ノノミさん? そこにさん付けするのは何か……「せっくん」って誰です?」

『——……やめろ、ノノミ! やめ……本当に、バカみたいに力強いな! 大体それ、俺の本当の名前と関係なかったら……。………。……だから、「先生」でいいだろ⁉︎ 理由を言うのはやめろ! それだけはやめ——いたっ、痛い!』

『「せっくん♡」っていうのはですね〜、彼が「先生」だか……あーん! 痛いです〜——』

 

 ああ、なるほど。「先生」だから「せっくん」ね。…………。……その呼び方はかなり恥ずかしい……ダメだ、大笑いしそう。今度先生に会ったら、そう呼んでやろう。電話の向こうから二人のやり取りが漏(も)れ聞こえて、相棒が笑い転げている。そりゃあ、さっきまであれだけいじめられてたもんねぇ。

 

 ——そんな楽しそうな光景を見ながら私は、『ブルーアーカイブ』のキャラの心の中をプレイヤーはどれくらい「読め」るんだろう、そんなことを考えながら、小さくつぶやいた。

 

「口で言ってるほど急(せ)かさないからさ。ちゃんと帰ってきてよ? 私にとって『あなた』が特別なのは、ずっと変わらないんだから」

 

 その日、私には内緒にしてくれと断った上で、相棒のスマホに『あの人』が【黒服、ホシノを守って】とメッセージを送っていたのを聞いたのは、かなり後のことだった。

 

 

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「うへ〜、ひと仕事終わった後は、風が気持ちいいねぇ〜」

 

 戦闘で少し身体が火照(ほて)っていたみたいだ。邪魔だし、ボディアーマーは脱いじゃおうか。多少、汗で下着が透けたって、ここには相棒しかいない。

 

 ——ただの人生の区切り目に過ぎなくっても、「エンディング」のその先の風景って違うもんなんだなぁ。

 

 あの後、たまに先生——『彼』に会うたびに、いろいろ『現実世界』での昔の話を聞かせてもらった。高校を卒業して、専門学校を出て、就職して……その度に見える世界が変わったと言っていた。初彼女が出来た時のこと、別れた時のこと、しんどい時はやっぱり世界が灰色に見えたこと。でも、嫌でもそれは自然と元の色に戻ってしまうこと。ノノミちゃんも、「先生」にではなく『彼』に告白した時、ずっと前から好きだったと明かした時、そんな小さな「エンディング」のたびに見る風景が変わったんだろうね、そんな話もした。

 

 私は、今はもう一人じゃない。でも、それもいつまでもじゃない。次のエンディングの、その先の風景はどう見えるんだろう——

 

「後始末、終わりまし……考え事ですか? 最近、多いですね」

「——ん? ああ、いろいろ思い出してた。相棒と初めて会った日のこととか、このゴツい装備を引っ張り出した日のこととか。結構いろんなところに行って、二人で戦ったよね。それに、私たちだけじゃない。ヒナちゃんたち風紀委員会や、シャーレを通してアリウスの子とかRABBIT小隊のみんなとも一緒に戦った。みんなだっているし、相棒がいつ『現実世界』に行っても、やってきた事は私が引き継いでみせる」

「ただただ、感謝しかありません。『前の先生』だけでなく、あなたたちがいるからこそ、安心して私も「あちら」の世界へ行けます」

「残ってシャーレで働いてくれればいいのに、なんて声もあるけど? あんた、評判いいんだよねぇ〜」

「それは光栄ですが……」

「でも、やっぱり行くんだよね?」

「はい。それより、私が「あちら」に行くというのは、すなわち——」

 

 そう。相棒が『現実世界』に行き、『前の先生』がこの世界に帰還するという事は、『彼』が『現実世界』に帰還するという事だ。私たちが『デカグラマトン』や『預言者』を処理している間も、SRT特殊学園が閉鎖されるなんて話は出たことすらなく、今後もその気配はない。ミレニアムの件と同じように、おそらく何(・)も(・)起(・)き(・)な(・)い(・)ことはもう確定している。ヴァルキューレや連邦生徒会が抱える問題にも、先生が独力でたどり着きつつある。

 

 『シャーレの先生』が解決すべき問題がほぼなくなりつつある今も、先生の帰還の具体的な話はまだ誰もしていない。

 

「相棒、『ブルーアーカイブ』の「終わり」って考えたことある?」

「あるにはあります。ただ、真に神の領域の事柄には触れるべきではない、今はそう考えています」

「真に神の領域……か。『ブルーアーカイブ』は、失踪した『連邦生徒会長』に呼ばれた『シャーレの先生』が来た時から始まる。そして、『現実世界』ではまだ『ブルーアーカイブ』は「サービス終了」していない。つまり「終わり」はまだ来ていない。そうだよね?」

「当分は終わらないでしょう。『メインストーリー』も順調に更新されているようです」

「なら、一般的な「ゲームの中」のタイプの『ブルーアーカイブ世界』はどれも、それと一緒に時間軸の先に向けて、今も拡大し続けているはずだ。でも、こ(・)の(・)『ブルーアーカイブ世界』に限っては、『シャーレの先生』が箱舟から帰還して迎える「エンディング」を終着点として設定されている。こ(・)の(・)特殊な世界は、そういう閉じた形だからこそ、因果を操作できる世界として成立している*3」

「そうです。それは確かです」

「なら、『ブルーアーカイブ』の「エンディング」のその先にはどんな世界があるの? 『メインストーリー』はもう用意されていない、『シャーレの先生』も必要ない、そんな世界でも先生はこ(・)の(・)世界にいられる?」

 

 『先生』や『ゲマトリア』のような特殊な「器」は、おそらく『ブルーアーカイブ』の始まる以前には存在していない。『ブルーアーカイブ』の「始まり」と同時に、『シャーレの先生』が生まれる。そんな無から有が生じるような変化があり得る世界なら、逆はどうなる? 実際に起きる「現象」としての「ハッピーエンド」——「エンディング」という「終わり」と同時に、有が無に還る可能性は?

 

「……私はもともと、何としてでも『彼』を安全に『現実世界』に送り返すつもりでした。その件が問題になる前に、力づくででも、です。今もそう考えています」

「…………。「恋愛」っていうのは一人じゃ出来ないっていうのが持論なんだって。だから『彼』は、今も一人だけでは自分の『ブルーアーカイブ』を終わらせることが出来ずにいる。本当の意味で『彼』のストーリーを終わらせることが出来るのは、一人しかいない」

「『十六夜(いざよい)ノノミ』だけ、ですか。恋愛というのは本当に難しい……」

「だから私は今も、怖くて恋愛ってものに踏み込めないんだよ。言わないだけで、ノノミちゃんはもう全部決めちゃってるのかも知れないけど。『彼』が今度こそ『現実世界』に帰還する時、相棒も「向こう」へ行くことになる。そして『前の先生』がこの世界に戻ってきて、私は再会を果たす。そして、ノノミちゃん。その全員が同時に「ハッピーエンド」にたどり着かなきゃならない。私は、それ以外の結末なんて認めない。でも、その全てが二人が離れ離れになるのが前提だとしたら、せめて本人たちが納得——」

 

 ポン、と「相棒」が私の肩を叩いた。

 

「肩の力を抜きなさい。ノノミさんのためなら、彼が絶対に何とかします。事実、今までずっとそうだったでしょう?」

「……そうだったね。ま、それしかないか」

「それより、目の前のことです。私たちの仕事はまだ終わっていませんし、『シロコ*テラー』の呼び出しには立ち会うのでしょう? 少なくとも、それが終わるまで『彼』が帰ることはありません」

「出来そうなの?」

「『ガチャ』でどうにかなりそうだという事です。それはあの二人に任せましょう。それよりも、この世界に現れ保護された後、あなたを一番必要とするのはおそらく彼女です。よろしく頼みます」

 

 私は、くくっと笑った。

 

「すんなりそのセリフが言えるなら、やっぱり相棒はいつでも『現実世界』へ行けるよ」

「は? それはどういう——ああ」

 

 相変わらず、黒づくめの私の「相棒」は、どこか抜けている。しっかりこいつを『現実世界』へ送り出してやらないと。そして、クロコちゃん、プラナちゃん、先生、ノノミちゃん……みんなまとめて、全員ハッピーエンドへ連れて行く。それから、私の「ハッピーエンド」には絶対に欠けてはならない、一番大事な『あの人』。

 

「今も「画面のそっち側」から「読んで」見守ってくれてるよね? もう少し、頑張ろう。あの二人をちゃんと「ハッピーエンド」に導(みちび)くことが出来たら、そこで会える。そう信じてるから」

 

 『あの人』と再会するエンディングに辿り着くまで、私の物語(ストーリー)は、もう少しだけ続く。

 

 

 

*1:
ここでは主に、アニメやスピンオフといった別メディアとの違いが問題になる。アニメ先生や便利屋先生といった一キャラではなく、ゲームの「先生」はプレイヤーと同じ視点を持つ、システムに組み込まれた存在なので、ストーリーの展開に縛られることになる。作中設定。

*2:
上記のように『メインストーリー』から解放されるために『シッテムの箱』は消滅し、その中にいた「何か」は世界に遍在して因果を操作している

*3:
簡単に言うと、最初と最後が固定されていれば、つじつま合わせがしやすいということ。その『つじつま合わせ』によって、こ(・)の(・)世界での超常的な現象が可能となっている。上記の、黒服へのメッセージもその一つ。詳しくは設定まとめなどを参照。

話の分割の仕方について、別の形に分けるなら以下のどれがいいですか?

  • キャラごと(ホシノ、黒服、カヨコの3つ)
  • 内容ごと(ホシノ・黒服、カヨコの2つ)
  • 本編外にまとめたもの全部で1つ(今のまま
  • その他(お気に入り登録や検索をしやすく等
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