――数か月ほど前、東京の各地で得体の知れない化物が現れた。その化物は人間に憑りつき、様々な悪事を引き起こす恐ろしい化物だった。しかも化物には何故かどんな武器も攻撃が通じず、警察でも手に負えなかった。
だが、そんな化物を倒す力を持つ少女達が現れた。その少女達は自分達を「魔法少女」と名乗り、警察でも手に負えない化物を一方的に打ちのめせす。その中でも三人の少女は美貌が優れており、世間からも人気が高い。
その三人の魔法少女の正体がまさか自分の通う桃魅学園の生徒だと知り、そして狩人は三人の変身する姿をスマホで撮影した。彼は三人に気付かれる前に家に戻り、何度もスマホで撮影した動画を確かめる。
「やっぱり夢じゃない。まさかあの三人が魔法少女だったなんて!!」
狩人は三人が変身する動画を確認し、世間で騒がれている魔法少女と同一人物だと確信した。ネットで魔法少女を検索すると化物を倒す魔法少女達の写真や動画は簡単に見つかり、変身した三人と瓜二つである事を確かめた。
「う~ん、この写真を見る限りだと天使ちゃんは……いや、天使君はこの銀髪の美少女という事になるよな。けど、どう見てもこっちは女の子にしか見えないな」
魔法少女姿の天使は体型が明らかに女性であり、姉二人と比べたら細身ではあるが胸も大きく股間も膨らんでいない。他の二人も変身すると髪型や体型も異なり、もしかしたら変身している間は天使は本当に女の子になっているのかもしれない。
(天使君が男だったのはショックだけど、この魔法少女の正体が天使君だった方のはもっとショックだな。もしも正体を知られたら大変な事になりそうだ)
魔法少女の中でも天使が変身した少女は人気が高く、他の魔法少女よりも幼くて保護欲を掻き立てるという事から男女問わずに人気がある。無論、他の二人も男性陣から絶大な人気を得ている。
「それにしてもパンチラ写真ばっかりだな。おっ、この角度は中々かも」
魔法少女の誰もが美少女であるが故、写真の殆どはエロ目的で撮影したとしか思えない物も多い。呆れながらも気に入った写真を保存する。
「って、こんな事をしている場合じゃないだろ……どうすればいいかなこれ?」
春香達の正体を知って狩人は困り、この動画がもしもネットで晒したら三人の正体が世間に知られてしまう。そうなれば大混乱に陥り、三人は無事でいられないだろう。
「生徒会長がまさか弟君とあんな関係だったなんて……」
春香に好意を抱いていただけに狩人は天使との行為を見てショックを受けるが、不意に変身する前に告げた秋香の言葉が気になった。彼女は変身前に「補給完了」と告げ、あれはどういう意味なのかと考える。
仮に天使と姉二人がただならぬ関係だとしても、生徒会室であのような行為をするのは危険が多すぎる。実際に忘れ物を取りに来た狩人に目撃されており、もしも三人が恋人関係だとしても学校内で行為をするのはリスクが大き過ぎる。
(天使君に何か秘密があるとか……そういえばあの子、どうして女装なんかしてるんだ?そもそも何で正体が気付かれないんだ?)
昨日の夕方までは狩人は天使の事を少女だと思い込み、実際に彼は学校で生活している時は女性の格好で過ごしている。しかし、昨日の夕方の時の彼は間違いなく男性の一物を生やしていた。
(少し探ってみるか)
天使は何か秘密を隠しているのではないかと思い、狩人はスマホを見て仕掛けを行う事にした――
――学校の登校時間を迎えると、狩人はいつもよりも早い時間帯に家を抜け出し、そしてスマホでネットを検索して昨夜のニュースを確認する。
「魔法少女三人組がまたもや活躍か。時間帯的にはあの三人がいなくなった後だな」
昨日も化物が現れて魔法少女が退治したというニュースで盛り上がり、やはり三人が本物の魔法少女だと狩人は確信した。その上で狩人は生徒会室を調べ上げる。
三人がこの場で行為を行ったのは確かだが、髪の毛一つないほどに綺麗に掃除されていた。どうやら三人は化物退治した後に一度戻ってきたらしく、綺麗に掃除してから戻ったらしい。
(流石に証拠は残してないか。なら、やっぱりこいつの出番か)
証拠がない以上は自力で調べるしかなく、狩人は自宅から持ち出した道具を取り出そうとした。だが、彼が道具を仕掛ける前に生徒会室の扉が開く。
「あれ?狩人さん?」
「わっ!?て、天使……ちゃん?」
「どうしたんですかこんな時間帯に?」
扉を開いて入ってきたのは女子学生の制服を着こんだ天使だった。彼は中等部の生徒なので高等部の校舎に来るとは思わなかったが、姉二人に会いに放課後来る事は多々あった。だから生徒会役員である狩人とも面識があった。
「い、いや、実は昨日忘れ物をしちゃってさ。そういう天使ちゃんはどうしてここに?」
「あれ?姉さんたちはまだ来てないんですか?僕より先に外に出たはずなんですけど……実はお母さんから春香姉さんが忘れた弁当を届けてほしいと頼まれて」
「え!?あの二人も学校に来てるの?」
「はい、そうですけど?」
天使の言葉に狩人は驚き、もしも道具を仕掛けている途中で二人と出くわしたら大変な事になっていた。狩人は鞄から取り出そうとした道具を戻し、天使に怪しまれる前に話題を変える事にした。
「そのお弁当は俺から会長に渡しておくよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!!良かった~高等部の生徒や先生に見つかる前に狩人さんと会えて!!」
天使は狩人の言葉に安堵し、特に怪しむ事もなく春香の弁当を渡した。天使から弁当を受け取る際、間近で天使の顔を見て狩人は不思議に思う。
(こうしてみると女の子にしか見えないんだけどな。でも、昨日のは見間違いなんかじゃない)
どう見ても女の子にしか見えない天使だが、昨日の夕方で彼は男性の一物を生やしているのを目にしている。しかし、改めて女子学生の姿をしている彼を見て本当に彼が男なのかと疑問を抱く。
「え、えっと、どうかしました?僕の顔に何かついてますか?」
「あ、いや……」
「そ、そんなに見つめられると照れちゃいます」
狩人に顔を見られて天使は恥ずかし気に頬を赤く染め、その顔を見てこれで男だとしたら危ない道に踏み外しそうな気がする。
(こうしてみると可愛い女の子にしか見えないんだけどな)
天使は弁当を狩人に預けると自分の校舎へと戻り、残された狩人は困った様子で春香の弁当を見る。二人が既に学校内に来ているのならば早々に道具を仕掛けなければならない。
狩人が鞄から取り出したのは「盗聴器」であり、こちらは母親の私物を拝借したものだった。実は狩人の父親は浮気癖があり、家の中に他の女を連れ込んでいないのか調べるために母親が購入した代物である。
(さてと、どんなのが聞けるかね)
昨日の夕方のように三人だけが集まった時、何らかの情報が得られるのではないかと考え、狩人は盗聴器を仕掛けた――
――盗聴器を仕掛けた後、狩人は教室に戻ると春香の姿があった。彼女は自分の席で鞄を漁っており、困った表情を浮かべた。
「あれ?あれれ?」
「会長、もしかして弁当を忘れたんですか?」
「わあっ!?か、狩人君!?もう来てたの?」
いつもよりも大分早い時間帯に現れた狩人に春香は驚くが、そんな彼女に狩人は天使から渡された弁当を渡す。自分が忘れて来た弁当を持って来た狩人に春香は驚く。
「あれ?このお弁当もしかして私の?どうして狩人君が持ってるの?」
「会長の妹が持ってきてくれたんですよ」
「あ、そうだったんだ。秋香ちゃんが持ってきてくれたの?それとも天使ちゃん?」
「……天使ちゃんの方です」
春香は妹と言われて「秋香」と「天使」の名前を上げ、この反応から彼女は二人の事をちゃんと妹として認識していた。
(会長は天使君を妹と思っているみたいだけど、それなら昨日の件が気になるな。もうちょい踏み込むか)
天使の正体を探るため、他の生徒が来る前に狩人は春香に話しかける。
「会長は本当に姉弟仲がいいんですね。俺は姉弟いないから羨ましいですよ」
「えへへ、そうかな?あ、でも私達は姉弟じゃなくて姉妹だよ」
「あ、そうでした。つい間違えました」
さりげなく姉弟と呼んでも春香はすぐに否定し、彼女の反応から天使の事はあくまでも妹と認識しているのは間違いない。それに漫画じゃあるまいし男性が女装しながら学園に通うのは無理がある。
その後も春香と会話を続けて天使の情報を探り、少なくとも春香は天使を妹として溺愛している事は分かった。そこで狩人は話題を魔法少女に変更する事にした。
「そういえば会長は魔法少女の噂を知ってますか?」
「えっ!?う、噂って!?」
「最近凄く有名じゃないですか。あの魔法少女三人組」
「そ、そうなの?」
魔法少女の話題を口にした途端、春香はあからさまに慌てふためく。そんな彼女を見て狩人は世間話をするようにスマホに保存しておいた魔法少女の画像を映す。
「ほら、見てください。この三人の女の子が魔法少女なんですよ」
「へ、へえ~この子達が魔法少女なんだ」
「会長も興味ありますか?」
「ど、どうかな……私はあんまりアイドルとか見ないから」
「アイドルとは違うと思いますけど……」
スマホに移された魔法少女の三人を見て春香は平然とした態度を貫こうとするが、明らかに動揺していた。それを見て狩人は春香が変身した魔法少女を指差す。
「俺が一番気になる女の子はこの子ですね。他の二人も可愛いけど、やっぱりこの子が一番可愛いと思うんです」
「えっ!?そ、そうなんだ。えへへっ……何だか照れちゃうな」
「か、会長?」
「あ、ううん!!何でもないから!!」
自分が変身した魔法少女を狩人が気になると告げられ、春香は照れくさそうな表情を浮かべる。その反応から狩人はやはり春香が魔法少女だと確信した。
スマホの動画だけでも十分な証拠だったが、春香の反応から魔法少女だと断定し、さらに話を続ける。
「実はこの魔法少女、この学校の男子の間でも人気があるんですよ。でも、あんまり人気がありすぎて休み時間や昼休みにスマホばかり見る生徒が増えたでしょ?」
「あ、そういえば……あれって魔法少女を見てたの!?てっきりアイドルか何かを見てると思ってたけど」
「まあ、男子にとってはアイドルみたいな存在ですけどね」
これらの話は事実であり、男子学生の間では魔法少女は大人気だった。自分達と年齢が近い美少女達が化物を相手に戦い、しかも露出度の高い格好をしているため、際どい姿の画像や動画が流出していた。男子の殆どは少女達の活躍よりも恥ずかしい恰好をみるために夢中になっている。
「男子があんまり魔法少女に夢中になり過ぎて、女子から冷たい視線で見られてるんですよ。どうしたらいいですかね?」
「ど、どうしたらと言われても……」
「あ、すいません。会長にこんな事を話しても困りますよね……忘れてください」
「あ、ううん。教えてくれてありがとうね」
話を打ち切ると狩人は自分の席に戻り、春香の様子を伺う。春香は魔法少女が学園中で話題になっていると知り、自分で調べる気になったのかスマホを取り出す。だが、それを見て狩人は笑みを浮かべる。
(さあ、会長はどう反応するかな?)
魔法少女の話題を口にすれば必ずや春香は反応し、そして他の二人にも報告するはずである。そこで生徒会室に設置しておいた盗聴器が役立つはずだった――