「俺はここにいる!!早く助けに……うわっ!?」
『狩人君!?』
『どうしたの!?返事してっ!!』
『二人とも落ち着いて!!まずは変身を――』
会話の際中に狩人はスマホを落とし、彼の姿が見えなくなった事に三人は不安がる。しかし、実際の狩人は無事であり、スマホをわざと壁際に立てかけて工事現場の映像を映し出す。
三人が魔法少女に変身すればスマホに映し出される映像の場所に瞬間移動で駆けつけるはずであり、その間に狩人は大男の位置を確認した。大男は狩人の姿を発見すると、猛獣のように突進してきた。
「がああああっ!!」
「見てられないな。おい、力を貸せ!!」
正面から突っ込んて来た大男に対して狩人は両足に力を込めると、アクマの能力で身体能力を限界まで引き出して跳躍した。その結果、大男の頭上を跳び越える事に成功し、慌てて大男は立ち止まろうとしたが、勢いが強すぎて資材置き場に突っ込む。
「うがぁっ!?」
「ば~かっ!!お前なんかに捕まるかよ!!」
「ぐぎぎっ……!!」
自分の突進を華麗に回避した狩人に大男は怒り狂い、全身の筋肉を肥大化させて再び飛び掛かる。だが、狩人の肉体を掴む前に閃光が迸り、大男の顔面に柔らかくて弾力のある物に挟まれた。
「ふがぁっ!?」
「こ、この変態!!」
「いやぁっ!?離れてっ!!」
大男の顔面が突っ込んだのは魔法少女に変身したモモカとシリカのお尻であり、二人はお尻を突き出すと大男は派手に吹き飛ぶ。
「うぎゃあっ!?」
「変態男!!絶対に許さないんだから!!」
「狩人君!!大丈夫?」
「あ、ああ、助かったよ」
「先輩良かった!!もう大丈夫ですからね!!」
狩人の前に現れたのは魔法少女の姿に変身した三人であり、瞬間移動の魔法が間に合った事に狩人は安堵する。その一方で大男は鼻血を垂らしながら魔法少女達を前にして敵意を抱く。
「魔法少女ぉっ……犯して殺すぅっ!!」
「どうしようもないクズだね!!二人とも行くよ!!」
「うん!!」
「はい!!」
大男に対してモモカ、シリカ、エンジェルの三人は駆け抜け、最初にシリカが腹部に強烈な蹴りを喰らわせ、続けてエンジェルが杖で顔面を撃ち抜き、最後にモモカがハンマーを振りかざして叩きつける。
「「「成敗!!」」」
「うぎぃいいいっ!?」
「うわぁっ、容赦ないな」
アクマに憑依された人間とはいえ、三人の魔法少女の攻撃を受けて無事ではいられず、全身に酷い怪我を負って倒れた。しばらくすると身体から黒煙が舞い上がり、それを見た狩人に憑依するアクマが心の中で呟く。
(あの煙に見えるのがアクマの魂だ。浄化されたアクマはもう二度と蘇る事はない)
(そうなのか。なんか悪かったな……お前の仲間を)
(変な同情はするな。憑依した人間を暴走させなければ支配もできない低能アクマが浄化されようとどうでもいい)
(あ、そう……)
同族が浄化されたというのに狩人に憑依したアクマは全く同情せず、むしろ自分に襲い掛かるような知能が低いアクマが消えて清々していた。その一方でアクマを浄化したモモカは狩人の元に戻って怪我がないのか確かめる。
「狩人君!?大丈夫だった?」
「うん、平気だけど……」
「よ、良かった。もうびっくりしたよ~」
「あ、あのお姉様……今はちょっとまずいんじゃないかな」
いつもの調子でモモカは狩人に抱きつくが、それを見てシリカは冷や汗を流す。彼女の言葉にモモカは不思議に思うと、杖を構えたエンジェルが立っている事に気づく。
「お、お姉ちゃん!!これはどういう事ですか!?」
「あっ!?え、えっとね……」
「エンジェル君、ちょっと落ち着いて……」
「落ち着いてなんかいられません!!どうして先輩に抱きついてるんですか!?」
「えっ、そっちなの?」
エンジェルが怒っているのが狩人にモモカが抱きついている事であり、慌てて二人は離れると改めてエンジェルは三人に話を聞く。
「もしかして先輩、僕達の正体を知ってるんですか?」
「……うん、こっちの子が春香でそっちの子が秋香でしょ?」
「あちゃ~……もう、お姉様のドジ」
「ご、ごめんね……」
「やっぱり前から気付いてたんですね!!」
春香と秋香の正体が魔法少女である事を狩人が知っていた事に天使は怒り、本来であれば魔法少女の秘密は決して他人には知られてはいけない。天使は杖を構えると、魔法の力で狩人の記憶を消そうとした。
「先輩にはすいませんけど、僕達の事を忘れてもらいます」
「忘れるって……」
「そ、それってまさか……」
「駄目だよ!!先輩に手を出さないで!!」
いくら尊敬する先輩だとしても天使は魔法少女の正体を知った彼を見逃せず、記憶消去の魔法で魔法少女に関する記憶を全て消すつもりだった。もしも魔法少女の記憶が失われた場合、これまでの春香と秋香の出来事も忘れてしまう。
窮地に追い詰められた狩人だったが、彼は天使の性格をよく知っていた。下手な言い訳は通じず、だからといって全ての出来事を明かすわけにもいかない。狩人の肉体に憑依したアクマは焦る。
(お前のせいでこうなったんだぞ!!何とかしろ!!)
(たくっ、これも楽して金稼ごうとした罰なのかな……しょうがないか)
狩人は春香と秋香を押し退け、堂々とエンジェルの前に立つ。エンジェルは自分から近づいて来た狩人に驚くが、そんな彼女に狩人は語り掛ける。
「確かに俺は君達の正体に気付いてる。君の正体が天使ちゃんだという事もね」
「や、やっぱり……」
「でも、気づいたのはずっと前の話だよ。二人がばらしたわけじゃない」
「え?」
「一か月ぐらい前、三人が生徒会室の放課後で何をしていたのかを知ってる」
「「「っ!?」」」
まさか生徒会室のやり取りを話題に出されるとは思わず、三人は頬を真っ赤に染めた。
「俺は最初に春香から事情を聞こうと思った。天使君が女の子なのにち〇ぽが生えてた理由とかも聞いてる」
「ちっ……は、恥ずかしいことを言わないでください!?」
「二人に毎日恥ずかしいことをしているのはどっちなの?」
「はうっ!?」
エンジェルは狩人の言葉に言い返せず、マナ補給のためとはいえ天使は春香と秋香に精液を注いでいた。よりにもよって狩人に事情を知られて恥ずかしくてどうにかなりそうだが、狩人は話を続ける。
「三人がしていた事を攻めるつもりはないよ。アクマからこの世界を救うためには必要な行為だとは分かってるし、止めるつもりもないよ。勿論、正体をばらすつもりもない」
「そ、その話を信用しろというんですか?」
「俺の事が信じられないなら今すぐに記憶を消せばいいよ。でも、これだけは覚えておいて。俺は敵じゃない、君達の味方だ」
「せ、先輩……」
真剣な表情と眼差しで見つめられたエンジェルは戸惑い、彼女がその気になれば記憶消去の魔法で狩人の記憶を消せる。だが、先日に狩人に助けられた出来事を思い出し、本当に彼の記憶を消す必要があるのかと思う。
今までの話は全て事実であるため、狩人は真っ直ぐな瞳で天使の顔を見れた。ここで彼女を説得できなければ全てが終わりとなり、何としても誤魔化す必要があった。