「実を言うと俺はアクマに狙われてるんだ」
「えっ!?」
「さっき襲って来たアクマは俺の身体を乗っ取ろうとしたんだ。きっと、魔法少女の身近にいる人間に成りすまして襲うつもりだったんだろうね」
「そんな!?あり得ません!!アクマに僕達の事が知られているというんですか?」
「その可能性は十分にあるよ。証拠に俺は襲われただろう?」
「そ、それは偶然なんじゃ……」
「アクマに襲われたのは初めてじゃないんだ。それは二人も知ってるでしょ?」
「「えっ!?」」
急に話かけられたモモカとシリカは戸惑うが、そんな二人に狩人はウィンクを行う。それを見て察しの良いシリカは話を合わせてくれた。
「……そうだね、狩人君の言う通りだよ。狩人君がアクマに狙われてる話は本当だよ。ねえ、お姉様?」
「ええっ!?そ、そうだったけ?」
「もう、しっかりしてよ!!狩人君をアクマから守るために頑張ってきたでしょ?」
「あっ……そ、そうだね。そんな風に考えられるよね」
「ほ、本当の話なんですか?お姉ちゃん達が先輩を守っていたって……」
「ああ、二人のお陰で俺は助かったんだよ」
この話は真実と嘘を入り交えており、狩人の肉体にはアクマが憑依している。そして春香と秋香は普段から狩人の性欲処理を行い、アクマが暴走しないように尽力していた。これは味方を変えれば二人が狩人をアクマから守ろうとしていると考えられる。
アクマに狩人が乗っ取られない様に二人は頑張ってきた事は事実であり、話を聞いたエンジェルは困り果てる。三人の話が事実だとしたら自分にだけ隠していた事にショックを受けた。
「ど、どうしてもっと早く言わなかったんですか!?」
「君に心配を掛けさせたくなかったんだよ。普段から皆のために頑張ってるのに俺一人のために迷惑を掛けたくないから……」
「迷惑だなんて!!」
「それに三人全員が俺の傍に居たらアクマ達に怪しまれるよ。もしかしたら魔法少女の正体を知られるかもしれない。特にエンジェルちゃんは正体を知られるのは一番まずいんでしょ?」
「ううっ!?」
純粋な魔法少女であるエンジェルの正体がアクマに知られた場合、必ず彼女の命が狙われる。実際に天使がこちらの世界に訪れた時、徒党を組んだアクマの群れに深手を負わされて貴重なライフジュエルを一つ失ってしまった。
「春香と秋香は俺を守るために頑張ってきてくれた。だから俺も魔法少女の力になりたいんだ。アクマの狙いが俺だとしたら、奴等を誘き寄せる囮役としては最適でしょ?」
「だ、駄目です!!一般人の狩人先輩にそんな危険な真似はさせられません!!」
「でもさ、アクマを浄化しないと他の人に迷惑が掛かるんでしょ?エンジェルちゃんはこの世界の人を助けるためにアクマを退治しに来たんじゃないの?」
「そ、それはそうですけど……」
「凄い、天使ちゃんが納得しかけてる」
「先輩、口が上手いから……」
狩人の言葉には一理あり、当てもなくアクマを探すよりも彼を囮役にしてアクマを誘き寄せる方が効率的である。実際に現在の狩人はアクマから狙われる立場であり、彼の命を狙うアクマは急増すると思われた。
(おい!!何を考えている!?まさか本当にこいつと組むつもりか!!)
(他に方法はないだろ。それともここで消されたいのか?)
(ぐぬぬ……)
アクマは狩人の言葉に言い返せず、今の時点ではエンジェルに太刀打ちできない。この場はどうにかエンジェルを納得させない限りはどうしようもなく、一世一代の博打に出た。
「俺だってこの世界をアクマなんかに支配されたくないんだ!!だから協力させてほしい!!」
「はうっ!?せ、先輩はどうしてそこまで?」
「俺は魔法少女が好きなんだよ。平和のために戦うなんて格好良いじゃん」
「す、好きって♡」
「えへへ、なんだか照れちゃうな♡」
魔法少女が好きと言われてはモモカとシリカは満更でもない表情を浮かべ、一方でエンジェルは真剣に悩む。最近はアクマ狩りが思うように進まず、もしもアクマを誘き寄せる話が本当ならば協力して欲しい。しかし、一つだけ気になる事があった。
「どうして狩人先輩はアクマに狙われてるんですか?何か理由があるんですよね?」
「それは……」
上手く誤魔化せそうだったが、アクマに狙われる理由は咄嗟に思いつかない。だが、この時に勝手に狩人の口が動いた。
「……俺は前にアクマに乗っ取られた時、アクマの記憶と共有したんだ。その時、エンジェルちゃんからライフジュエルを奪った事を知った」
「えっ!?まさかそのアクマは!?」
「俺はここにいる二人に助けてもらったたけど、俺に憑依したアクマは浄化される前に逃げたんだ。多分、そいつが今でもアクマを送り込んで俺を狙っている。きっと俺に憑依して君たちに近付くつもりなんだ。ちなみにそのアクマはエンジェルちゃんを襲った時は女の人の身体を乗っ取ってたはずだよ」
「た、確かに襲われた時に一人だけ女性が居ましたけど、まさかあのアクマが狩人先輩を狙ってるなんて!!」
狩人の話を真実だと信じたエンジェルは怒りに震え、同時に狩人はアクマが上手い理由を考えたと思った。もしも狩人がアクマに狙われるのがエンジェルを襲ったアクマの残党だとした場合(実際に本当の話だが)、全ての発端はエンジェルにある。
エンジェルがアクマに大切なライフジュエルを奪われなければこのような事態には陥らず、彼女は自分のせいで狩人に迷惑をかけたと知って記憶消去を行えるわけがなかった。そしてこれからは狩人を守るために協力する事を約束した。
「分かりました……狩人先輩、僕のせいで迷惑をかけてすいませんでした!!これからはお姉ちゃん達と一緒に僕も先輩を守ります!!」
「あ、ありがとう」
「良かった~これで解決だね」
「そ、それはどうかな?」
エンジェル改め天使は狩人に協力を誓うが、狩人を守る名目があれば隠れて春香と秋香と会う必要はなくなった。それどころか護衛という名目で春香達を傍に置けることができる。
(こいつは好都合だ。よくやったぞ)
(ふうっ、命拾いした)
(こっちの台詞だ)
とりあえずはアクマは狩人の機転で生き延びれた事になるが、これからは油断は許されない。狩人がアクマに狙われやすい体質になったのは事実だが、都合よくアクマを誘き寄せられるか分からない。
(お前はこれでいいのか?仲間を誘き寄せる役目なんて与えられて……)
(構わん。我が目的は世界の支配……むしろ、競争相手がいなくなる方が好都合だ)
(そんな目的があったんだ)
(荒唐無稽な話に聞こえるか?だが、魔法少女さえ手中に収めればアクマに勝てる存在はいない)
(……なるほど)
アクマはこちらの世界の兵器は一切通じず、唯一の天敵である魔法少女を支配下に収めればアクマに敵う存在はいない。世界を支配するのも不可能とは言い切れなかった。狩人はもしかしたら自分が世界の命運を握っているのではないかと思った――