※この作品はR-18です。

RETURN ON THE RANCE   作:oosima

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今回、ランとの戦いもありますが最後の魔女であるあの子への戦いへの描写も多くあります。



016 芋づる式で事態解決が進むこともある

 〇NK(エヌケー)1年8月8日朝 大陸東部 リーザス王国中央部 王都リーザス城 城下町〇

 

「じねぇええええええええ! このくそがギャアアアアアアアア!!」

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!」

 

 リーザス城の城下町で、突然崩壊した迷宮による地盤崩壊で崩れた一角より下あごが砕けている四魔女の一人エレノア・ランのヒステリックな怒号と、その彼女に従ってその身を乗せている巨大なミミズ状の怪獣の咆哮が大気を震わせ、それに呼応して周囲の建物や地形が大きく変化する。

 

「なるほどなー、ここ数か月にわたって大勢誘拐事件を起こしていて気づかれなかったのは、どういう原理で従わせているかは知らんがあの怪獣の力で地形を操作して、足元へ急に落とし穴とか罠を作って迷宮まで一気に掻っ攫っていたからか…」

「そんなのんきに解析している暇があったら何とか対策も言え」

「わかっとるっちゅーに、あの姉ちゃんの気がなんか大技を繰り出そうとして意識がこっちからそれている隙に何か…あ」

 

 それへのランスのずれた感想にレキシントンが突っ込みを上げるが、そこでランスはランの上空に何かを発見し、彼女の視線が他所に向いているその隙に周囲の物質を変換して生じさせた砂鉄をそれ目がけて磁力で撃ち出す。

 

「…さぁ! 全員一人残らず生き埋めにしてあぎぇるわぁ! 死ねぇ―――!!」

「…ぁぁぁぁぁああああああああ!?」

 

 数秒後、ランが従わせているミミズ型怪獣の力で周囲の瓦礫や土砂を集めて生じさせた巨大な津波でランス達を押しつぶそうとしたその時、その頭上から男の悲鳴が降り注いできた。

 

「―――えって何よぶべぇ!?」

「あぶべぇ!?」

 

 それにいらだったランが頭上を見上げたその時、彼女の顔面に猛烈な速度で落下してきたバードの顔面が叩きつけられた。

 バードは日光の裸体を目にしたのがばれてしまった時にどこからともなく生じた衝撃波で、迷宮の壁を上空に向けて突き破って天高く舞い上がった後、今度は重力に引かれて落ちてきた途中で、その存在に気付いたランスが投げつけた磁力付き砂鉄で身を拘束されて軌道を変化させられ、ランに対する人間質量弾兵器に転用されてしまったのである。

 

「…あ、ぁ…ァアアアアーーーー…」

 

 その人間質量弾バードを鼻っ面からまともに受けたランだが、指輪の力で魔力は上がってはいるが肉体は人間女性の魔法剣士の耐久性のままだったので、バードと互いの顔面がゆっくりと剥がれ落ちると、白目を剥いてよろけて巨大ミミズ型怪獣から零れ落ちた。

 

「…よし、ジャストフィットした! さーあの姉ちゃんの身柄を縛り上げて魔力封じをして拘束…!?」

 

 それを見てランスはランの身柄を抑えるべく両手を広げるが、そこで自身の足の付け根よりビキっとあ(・)れ(・)が隆々とした時に似つつも何かが違う痛みが走った。

 ちなみに、その時のランスはエレノア・ラン迷宮で人体実験に掛けられていた時の素っ裸のままである。

 そして、その痛みで隙が生じる形になったランスに、向かい合う形で落下してきたランはバードアタックとそれに伴う迷宮崩壊の影響で服装はボロボロで特に女性の象徴はほぼ丸出しであった。

 

「!? いっヒャアアアァアアァいい!?」

「…あう?」

「ぐべぇ!?」

 

 そうして二人の身がぶつかり合った瞬間に、互いの足の付け根からブチっと何か薄い膜が破られる音が生じるが、それとほぼ同時に出たランの甲高く大きな悲鳴、それに混じる形で出たランスの隙を突かれたように何処か心地よさそうなあの呻き声、バードが首より危ない角度で落ちたことにより生じた悲鳴と落下音でかき消された。

 

 

 

 

 

 〇NK(エヌケー)1年8月9日夕刻 大陸東部 リーザス王国中央部 王都リーザス城 軍総司令部所属中央病院〇

 

『…リーザス城で起きた巨大地盤崩壊ですが、救助作業は今も続いており…』

「…またしてもニュースになっているなぁ…」

 

 エレノア・ランとの戦いの予想外な決着から一日過ぎ、またランスは知人のつてで病院の一室にて魔法ビジョンで機能の戦いについてのニュースを見ていた。

 

「…あんな大規模な地盤崩壊が急に起きるなんて…何が起きたのでしょうか…?」

 

 その病室のランスに彼とは違ってほぼ無傷で脱出できた日光は巫術系回復魔法をかけていた。

 幸いにもランス自身の生来の頑丈さと幼少期からの冒険に修行や魔術強化で彼の身はむちゃくちゃ丈夫になっているので、エレノア・ラン迷宮で無茶な人体実験に掛けられていたにも関わらず、明日中にも退院できるという状況だった。

 

「おい日光、お前はあのエレノア・ラン迷宮にもなっていたあのミミズ型巨大魔物の胎内を利用した迷宮深層部にいたんだろう? 何か知らんか?」

「…申し訳ありません。私もあの迷宮崩壊が起きた時のことはよく憶えていなくて…」

 

 ちなみに、その日光はエレノア・ラン迷宮崩壊に何らかのショックを受けたのか、迷宮の深部で水浴びをしていた時にバードにその裸体を見られてしまったことも含めて、迷宮で何が起きていたのか忘れていた。

 

「…あのーランス様、明日からさっそく本当に最後の迷宮へ行くおつもりですか?」

 

 だが、日光はそんな自分のことよりも主の身を心配していた。

 

「当たり前だろう。今度の大混乱で今までわからなかった四魔女最後の迷宮の場所が分かったのだ。更に今度の大崩壊で向こうも甚大な被害を受けて混乱しているのが爺さんやケットの調べで分かったからな。立て直される前に一気に攻め込んで決着をつけるぞ」

「で、ですがー…他の方々に比べてランス様の身は丈夫すぎて且つ傷の治りが早いとは言っても…あの迷宮で打たれた薬がまだ抜け切れているわけでは…あう」

「だったら最後の迷宮攻略まで身が持つように治せるだけ治せ。それと早く攻略を済ませて治療に専念できるようにもな」

「…あ、あい…」

 

 だが、それ故に口から出た心配はその日光の頬がランスに抓られたことで敢え無く潰されてしまう。

 

「…うーーん、あのときにめいきゅうがむちゃくちゃになっちゃったときにかんじたけどー…ここにあのけはいうっすらでかんじたけどどこにいるかなー…?」

 

 その頃、病院の廊下を赤いローブを被って水晶玉を持ち、金髪で青い瞳をした小さな幼女が歩いていた。

 

「…あーもーあの大回復の舞とかも掛けろ」

「えー!? ちょっとあれをすると何日かは健常状態になりますけどそれが過ぎたら最低でも倍の時間は回復に時間が…つ、つねらにゃいでええええええ!」

「…ん? このけはいは…?」

 

 幼女はある病室の前を通りかかった時、中でもめるランスと日光の声を耳にしてしまう。

 

(…え? あのおねえちゃん…おかしおんなをやっつけてでたおかしをわけてくれたおねえちゃんだー? あれ? あのときにあのちからがすこしでたときのひめいとおなじこえしてるけど…あのときのちからはかんじられない…?)

 

 幼女はドアの隙間より病室にいる日光の姿を覗き見て奇妙そうな顔を浮かべた。

 

(…けどー、なんかほかとはちがうけはいはそのままだしー…なまえとすがたがわかったからーきょうはこのへんにしてつぎのあまみどころさがそー。もういつでもうらないできるしー)

 

 だが、その興味はすぐに消えて幼女は手の持つ水晶玉をきゅきゅっと大事に撫でながらその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 〇NK(エヌケー)1年8月10日朝 大陸東部 リーザス王国中央部 王都リーザス城 大崩落現場一角〇

 

「…よーし、諸君らがケットや爺さんが用意してくれた精兵的同志達だな」

「「「「「………………」」」」」

 

 自分達が謎の幼女に注目されていた日の次の日、そんなことなど知らないランス達はリーザス城の城下町に出来た超巨大なクレーターの一角の前に集まっていた。

 

「…ええ、皆さんが僕の選んだ信頼のおける友人達です」

「うむ、今回の伏せられている諸事情は知っておる。皆があなたに恩義のあるもの達ばかりじゃ。じゃから迷宮の制圧は我らに任せてランス殿は本丸の捕縛を最優先して下され」

 

 そこでランスは大勢集まってきた傭兵たちの前にいたが、その彼らは服装や装備はともかく目つきや動きや一般傭兵のそれと比べて非常に統率が取れたものをしており、ランスに今回の依頼を持ち込んできたケットやヴァンスの言葉をよく聞いていた。

 

「それでは…突入開始!」

「「「「「!!!!」」」」」

 

 そして、ランスがクレーターの一角にある大岩をどけると、それで姿を見せた深い穴目がけて彼らは無言だが高い指揮で内部に突入した。

 

「…バレ…ヴァンス殿! 最後の迷宮と思われる空間に出ました!」

「…むう、これは…!」

 

 数分後、ランス達が坑道を抜けて出たところは、下を溶岩の海が広く敷き詰めている広大な地下空間で、その上を小島のように浮かぶ幾つかの岩場が点在し、それらを結ぶ岩の橋の先に大きな館があった。

 但し、エレノア・ラン迷宮崩壊及びそれに伴う大規模地盤崩壊の影響のためか、迷宮内部の各所は館含めて所々が崩れており、この迷宮の主の配下と思わしい白装束の男達が復旧作業に取り掛かっていた。

 

「ランス殿、あ奴らは主に自由都市地帯で活動している傭兵集団“風の戦士”ですな。これまであなたが攻略してきた迷宮で抑えた資料や、洗脳が解けた彼女達の証言からしてあの館にいるだろう最後の魔女の配下でいるのは間違いないかと…」

「そうか…だったら遠慮はいらんな爺さん…」

「ええ、そうですねお二人とも…そして皆さん、行きますよ!」

「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」

 

 それからもこの迷宮の立て直しで防衛線復旧は終わっていないことを確認したランス達は、即座に傭兵たちを率いて迷宮内部で交戦に入った。

 

「うわぁ!? て、敵だぁ!?」

「ば、馬鹿なぁどうしてここが…あぐぅ!?」

 

 その攻勢を受けた風の戦士達は驚くが、奇襲だったこともあって上手く防戦が取れず、瞬く間にランス達は崩壊の個所から館の周辺を抑えてその内部に突入していく。

 

「…何ですって!? ここまでもう侵入者が!?」

 

 館の奥でその攻撃の報告を聞いて驚きの声を上げる少女がいた。

 青い大きなとんがり帽子を被って同色のローブを羽織ってその下に浅緑色の超ショートワンピースを着て、緑色のストレートロングヘア―に同色に瞳で一見クールそうに整った美貌の持ち主だが、その彼女がいる奥の部屋にも剣戟の音や怒号は徐々にだが近づきつつあった。

 

「は、はい! もうすでに一階の部屋にまで突入されており、ここにまで到達されるのは時間の問題かと…! それで主様にも防衛に加わってもらわねば…」

「そんなのあんた達がしなさい! 私はこっちで手が離せないの! 即座に装置を起動させて! 幸いにラン達が集めて改造した魔力タンクでもう魔力は十分にそろってるわ! 私は目的さえ果たせばそれでいいの! さっさと行きなさい!」

「し、しかし…うぐぅ!?」

 

 だが、状況の悪化を伝えに来た風の戦士の一人を、その少女は無情にも追っ払って部屋の中にある巨大な装置に向き合う。

 

「…絶対に! 絶対に私の悲願の邪魔をさせない! 待っていて…! お父様とお母様…!!」

 

 その装置で無数に並ぶ巨大なフラスコを見据え、この迷宮の主にして四魔女最後の魔想志津香(まそうしずか)が機器にある一際大きなボタンを押すと、装置が鳴動してフラスコは怪しく青い光を発し始めた。




今回、かなり早い展開になりましたけど、原作においてそのツンツンツンデレぶりで人気になったあの魔女さんが登場となりました。
次回は、この世界における魔女さんの親御さんの原作とは大きく違いすぎる過去が中心になる予定です。
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