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001 いつの世も積極的な女性はいる
〇
この大陸世界の地表の中心部には、キナニ砂漠と呼ばれる広大な乾燥地帯が広がっている。
ゼス王国が当時共和制だったヘルマン帝国との戦争で国土防衛のため、禁呪をもって当時は肥沃な平原であった同地を砂漠地帯にしたのが誕生の背景である。
その結果、大陸中央に位置し交通の要衝になるはずだったその地は、今や外部からの侵入は極めて困難な地へと変わった。
そうして生まれたキナニ砂漠についての多くの伝説に、幻の都市シャングリラというものがあった。
その都市は多くの美女が住まう砂漠の中の理想郷で、運よく迷い込めた者を贅の限りを尽くした奉仕で迎えるという。
「…ぅ…く、朝…か…ここは、あ、シャングリラ…今のおれの家か…」
そうした多くの伝説に彩られているシャングリラの名残であった廃墟都市にある屋敷の一つの一室で、ラギシスとの激闘で遂にそれまで誤魔化し続けていたダメージが一気に噴き出た影響で意識を失ったランスは目を覚ました。
「…日付は…あれから一週間は経っているのか。気絶している間に医者が間に合って治療してくれていた間に日光達が戻してくれたのか…?」
自身が目を覚ました寝室のカレンダーや据え置かれている魔法電波時計の日付で、リーザス城での激闘からそれだけ時が流れているのを確認したランスはこの状況にいたる推測をして納得の色を見せるが、そこで窓の方より多くの人の声が聞こえてきた。
「…な、何だぁ…? 俺達が来る前のここはぁ…死体と動かなくなった人形と、あの糞蛇女とそれに率いられた魔物しかいなくて、あの糞蛇女をぶっ殺した後で魔物もいなくなったはずだから…今じゃあここに住んでるのは俺と日光を始めとした助手兼弟子の女の子たちくらい…もしかして何処か他所の勢力に見つかったか…!?」
その声に不審を感じたランスがベランダに出ると、彼が目にしたのは予想だにしない光景だった。
「あ、そこの瓦礫はこっちに運んでー!」
「水源の方はこれで全部-?」
「宝物庫にある物品の確認は終わったー?」
「食料も当分は問題なさそうー」
ランスがベランダに出ると、眼下に広がる真新しさが残る廃墟が多く残るだけで空白地が目立っていたシャングリラで、四百人もの成仏したはずの魔力美女達が闊歩し、お喋りし、働いている姿があった。
「…な、何じゃこれはーーーー!?」
「キャ! 大きな声…あ、ランスさんだ!」
「あー、目を覚ましたんだ!」
「どーも、よろしくお願いしますー」
その光景にランスが驚きのあまり声を張り上げると、美女達は驚きつつも嬉しそうな表情で一斉に見上げ、挨拶してきた。
「…ラ、ランス様ーそんな大声を出すと皆さん驚きますよー。死にそうだったランス様を治療してここまで連れてきてくださったのは魔力だった皆さんなのですからー」
そこで背後から朝食を持った状態で日光が現れた。
「お、おい日光!? これはどういうことだ!? 何で成仏したはずのあの子達がここにいるのだ!? 俺が寝ている間に何が起きた!?」
「…え、えーっとですねー…色々長くなりますけどー…」
ランスに詰め寄られた日光は仰け反りつつもこうなるに至った一週間の出来事を説明する。
「ランス様! 直ぐに助けを呼んできますから意識を保って!」
一週間前、狂化ラギシスとの激闘をどうにか勝利したものの、今までの傷が一気に開いてランスは死にかけ、その場に残された日光達は必死に呼びかけていた。
「すぐに医者は呼びに行くけど、それまで持つかどうかも…!?」
ステラも冷静さを取り戻しつつも険しい顔を消せずにいた時、彼女らの周囲を取り囲む形で無数の光の粒子が生じ始める。
「…っ!? 今度は何…!?」
それにウスピラが身構えると、光の粒子の群れはいくつもの人の形をとっていき、それはやがて先ほどの生まれたままの姿ではない、分離する前の本体のものと思わしい衣装と装備で身を固めた四百人の魔力美女達が肉体の姿で現れた。
「そのような大きな声で怪我人に無理させるものじゃない」
「我々にはその怪我でもこの場で早急に治せる技がある」
「ちょっとどいて」
「うわぁ!?」
その魔力美女達のうち、神官や僧侶に医者と思わしい者達が続々とランスを取り囲んで急ピッチでその治療を始める。
「あ、あなた達どうしてこの場に!? さっき成仏したはずでは…!?」
「あー、その辺は私が説明しますねー。さっきー、この人が我々の身も案じて言ってくれた願い、色々と解釈できる範囲が広かったですよね」
それに戸惑う日光達には別の魔力美女達が質問に答え始める。
「それで初めは普通に来世へ転生しようとしたんですけどー」
「その人が目の前で死にかけている状況でー」
「それを放っといてさよならは薄情な気がしたからな」
「その人が言ってくれた願いの解釈を変更してー」
「本体の情報を元にして」
「この場で受肉してという形の転生をしたんですよ」
「これなら肉体もあるから本体から引き継いだ技能と知識で彼を救えますから」
「「「「「……‥………」」」」」
主が倒れる前に良識と良心で行った願いが、早々に今この場で救いとなって現れたその光景に、日光達はポカンとするほかなかった。
「…そういう感じでランス様が寝ている間に治療が終わって一息つくと、このままこの場にいては多すぎて目立つということで、何処か安全かつ静かに話しできる場所はないかって話になって、それで色々あって空き家と使われていない物資が多いここを思い出して皆で帰ったんです。幸いにも魔力だった皆さんの何名かにランス様と同等の魔術師の方が何名かいたので、その人たちの助力であの日のうちに皆がここへ着けて、今は大勢になったことで生活環境をよくするためにあれこれしてる最中でー…」
途中で霞も説明に加わって現在の状況の理由が話されたところで、ランスは今現在の現実のここへ意識が戻ったのであった。
「…何と言うか、日光がドジやらかしてあの蛇ババアに拉致される前、蛇ババアに滅ぼされる前のシャングリラに入った気分だな…」
「あら、あなたの周囲は元からそんな感じだった気もするけど?」
ファンタジー世界にしても現実離れした光景で惚けたランスに、ステラがきっぱりと突っ込んだ。
「…とりあえずー…色々あってすぐには返せんがー…ありがとう!!」
そして、周囲を色々と見渡して聞いた話と現実を符合させた後、ランスはシャングリラ中に響き渡る声量でお礼を口にして土下座した。
「きゃあ!? ま、またすごい声…」
「い、いやお礼を言うのはこっちだし…」
「そうよ、家主はそっちで私たちは居候させてもらってる身だし…」
「所有主はないも同然で宝の持ち腐れになってるからってそっちの物資や建物も使わせてもらってるんだから…」
「あ、頭を上げてください!」
それに受肉した美女達は驚きつつもランスの誠意もまた感じて慌てて急いで頭を上げさせようとする。
だが、今度はランスが土下座したままピクリとしない状態となり、そのあまりの固さに女性達は困惑の色を強める。
「…あ、あのー…ランス様…皆さんがお困りですから早く頭を上げ―――」
「ま、またあの痛みが…!」
「―――え…あ」
それに日光も加わったところでランスが苦悶の声を上げ、彼女達はその理由をすぐに察した。
「…あー、この一週間は怪我の治療を優先して、魔術や医学を駆使して引き延ばしていた絶対メイティングモルルンの危険症状が一気に噴き出た感じねー」
数分後、シャングリラで元魔力美女に属していた女医や回復魔法の使い手たちが、病棟と指定した建物に連れ込まれたランスを治療しながら診断結果を口にしていた。
「…つまりー、この症状を治めるにはー…」
「治まるまで惹かれて集まってきた女の子に種を仕込み続けるしかない」
「…おい、あのバッドラギシスの中にいた時に俺の魔力から俺の体質も色々知っちまったあの子達でそんな菩薩メンタルなヘルプしてくれる子なんているわけないだ―――」
「仕方ない。恩人を死なせるわけには行かないからな」
「ええ、これを機会に失われた一族の血も増やせる。本体の方は歴史書の方で族滅にされてしまったようだしな」
「―――あって何を脱ぎだしてるのこの子達?」
今現在出来る治療法でランスが遠くを見る表情浮かべる中、同じ部屋にいた元魔力美女の何名かが脱ぎだした。
「…と、というわけで不束者ですがよろしくお願いしますランスさん、井伊直虎と言います。JAPANにある本体の子孫の家はどうやら新聞によると妖怪狸さん達に乗っ取られたようなので、改めて井伊家再興のための世継ぎもいるのでよろしくお願いします…」
数分後、色々と仕切り直しとなった病室の中で、魔力美女受肉転生者の一人である井伊直虎が、ランスと同じベッドの上でぺこりと正座で頭を下げた。
直虎は日光と同じJAPANの主要民族日本人の色が強い美少女だが、見た目はクール系の日光に対して彼女は同程度の長躯ながらほんわかとしたあどけない感じのする美貌の持ち主で、黒髪の後ろは二つに分けて結っており、日光に劣らない武家の娘らしい引き締まりと豊満さを併せ持った理想的なグラマーボディをしていた。
それでいて武将は赤を基調とするJAPAN鎧を身に付けていたが、豊かな胸の谷間が露わで下がミニスカートとなっており、赤いロングソックスと合わさって魅力的な絶対領域を構成している。
「…おい、ちょっとマジでいいのか? 一応爵位持ち貴族と言っても自由都市の田舎の他に後継ぎはいなかったり他がクズ過ぎて足の引っ張り合いで全滅したところで庶子の子孫だったのが別の依頼の煽りで発覚したおかげで去年になったばっかだし、それも爵位だけで財産なんて前はボロボロの屋敷だけだったし、そこで立て直そうとしたところで何度目になるかわからん日光誘拐でたどり着けたここで元々の主を殺してふんぞり返ってた魔物達をボコボコにして追い出して、そのまま家主が無くなったこの廃墟群を税金がないからってラッキーと勝手に居ついた男だし…」
「そ、それ以上にランスさんの賢さとかその自分の良くない点を隠さない優しい誠意とかいろんな意味で強すぎるのがいいんです! ここここれからランスさんはその体質や呪いのおかげで他にもいる子を必要とする方々に授けねばいけない多忙な身なのは知ってますから! 子は井伊家の後継ぎとしてわわ私が育てますからご迷惑はおかけしません!」
その猛々しさと色っぽさを併せ持った恰好で何だかんだ呪いとは別に肉体由来の肉欲を刺激されつつ、ランスは確かめるように言うが直虎が顔を赤くしつつも言い放った反論を、幼少期からの過酷な冒険者稼業で身に付けた鋭さから嘘はないことをすぐに悟る。
「(ま、眩しーーーーー!? こんなマジで真面目な子が俺なんかとの子を求めるなんて何でじゃーーーー!? だ、だがここで拒んだら股間に溜まった魔力とかが限界超えて大爆発して周囲をめっちゃ巻き込むから強くなれ俺ーーー!!)そ、そうか…そこまでの覚悟なら俺も心配はいらない。まーここで生活する限りは衣食住とそれを得られる食い扶持の心配だってそっちもしなくていい。こっちからもよろしく」
「は、はい! それではまず何を…!?」
「あー、まずは四つ足を付いて…」
それ故に直虎の純真さで、自分が色々な経緯で普通なら女性受けしない汚れ切った身を思い出してランスは内心で気後れするが、彼女や周りに対する気の悪さで表に出さず、交わりで彼女を仕切っていく。
「こ、これでよろしいですかぁ…?」
「…ああ、呪いとか体質とかで胡散臭い部分はあるだろうけど…優しく丁寧にするぞ」
「そ、そんな! 胡散臭いだなんて私は…にゃああひぁ❣❓」
そして、尻を高く突き上げる犬のような姿勢になって顔を真っ赤に染めた直虎のショーツのクロッチで隠された淫裂に、ランスが通常のセックスで浮かべる頬に薄く小さな朱色を浮かべた真顔を寄せて舌を触れさせた時、直虎から驚いた雌猫のような悲鳴じみた嬌声が起こった。
〇大陸東部 リーザス王国西部 パラパラ砦城下町〇
「…ウゥ…お腹空いた…け、けれど…路銀はもうほとんどないし…」
ランスが誘拐中と違って、訳ありとはいえ相手の女性との合意の上で本来の意味でのセックスに臨んでいた頃、その彼に臨まぬ意味での本来の意味でのセックスを相手の誘拐されていた女性達と強要させていた首魁である、魔想志津香は彼方此方が汚れて破れている衣装で、リーザス王国の辺境で身を隠しながら進んでいた。
(…あの砦を越えれば、魔法使いが大事にされるゼスに入れる…そ、そうすれば…例え魔力を失っている今の身でも…元からの魔法の知識と…王女を操っていた時期に知られた…リーザスの機密情報で…保護してもらえるはず…)
今の志津香が目指しているのは、この世界の文明を支える魔法が現代では最も進んでいる魔法大国のゼスであった。
「…そのためにも、何とかして…密航業者を見つけないと―――」
『速報です。ゼウ王国新四天王が決定しました。授与式にはガンジー王陛下と賢杖太師様が揃って出席される予定です。この度は今回就任される新四天王の方々のお一人に直接インタビューがかないました。それでは行きます! ナギ・ス・ラガー…』
「―――お…え??」
だが、裏路地で人目を避けて進んでいた志津香の耳に近くの食堂に据え置かれていた魔法ビジョンからその音声が流れ出た時、彼女の記憶が良からぬ意味で刺激された。
今回も最後の所で、あの魔女さん(?)絡みで何やら不穏な気配…果たして、この世界でのあの姉妹の結末は…!?
とりあえず、次回は主人公の今の家での生活の様子の続きも見られる予定です。