※この作品はR-18です。

RETURN ON THE RANCE   作:oosima

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今回、原作と違って散々な目に遭っているあの(元)魔女さんが戦況を大きく動かします。


005 強者はあちこちに援軍で駆り出されやすくなる●

 ○NK(エヌケー)2年3月12日朝 大陸東部 リーザス王国西部 パラパラ砦○

 

「…ふう、何とか呪いの症状も収まったし…現場に戻れたなレイラさん…」

「…ええ、そうね。不思議と君が来てくれたら負ける気がしないわランス君…」

 

 絶対メイティングモルルンの危険症状をフィール指輪魔力受肉組の一人の魔女リリガナに一旦鎮めてもらいつつも状況の詳しい説明を聞いたランスは、翌朝にて早速魔術で前線へ戻っていた。

 

「…で、致命的なのは敵のヘルマン軍の方に…普段は西の方にひっこめられているあいつらが味方しているということだな…」

「ええ、“魔人”が何故か味方していることだわ…」

「「「「「………………」」」」」

 

 ランスが来たことでいくらか恐れの色が和らいでいたリーザス軍だが、レイラが口にしたその名で周囲の強張りが再び強まる。

 魔人とは、この世界の地上で最強の存在である魔王から血の一部か、その代替わりのたびに新たに生じるそれの新たな一部と言うべき“魔血魂”を取り込むことで、主の魔王ほどではないが強大な力と、主と同じく一部の者のものを除いた攻撃を一切弾く“無敵結界”と不老の肉体を得た強大な魔物だ。

 長らく、先代魔王であるガイの命令で長らく西の魔物界に移り、ここ千年間は人間界への干渉は数えるほどしか確認されていない。

 

「…確か正式な呼び名とか正体はほとんどわかってないが、今の魔王が許したとかなんかあるのか?」

「いいえ、諜報部も今回の侵攻が起きるまでは魔物界へも気を払っていますが、依然として新魔王の姿は確認されておらず、魔物界は依然として複数の派閥に分かれて冷戦状態です」

「…………」

 

 その議題に上げられている敵の主戦力の一つであるその魔人に対し、この作戦会議の場にいるが周囲の多くには魔人の新たな一人であることは隠されている、魔人の方であるお姉さんの日光は複雑そうな顔を浮かべる。

 

(…前の世界でも、今この時期にあたるLP2年あたりで、前のランスさんはリーザスや自由都市の解放軍を纏め上げて対峙していたというけど、まさか…違う歴史をたどったこの世界で…私が…本来なら敵であるはずの魔人の一人になってしまって加わるなんて―――)

「でも、今回は本当に良かったですねー。なんだかんだでジ(・)ル(・)様がおられなくても一人だけでなら魔人もある程度は倒せる手段があるランス様と、今回は同じ存在であるお姉さんな方の日光さんもおられるしー…」

「―――え…!?」

 

 だが、複雑そうな顔をしつつも自分の正体はまだばれていないための少しの安堵があった魔人である方の日光のどこか他人事じみた感覚は、ランスの助手の方で自分をいくらか若くしたような感じで同じ名を持つ日光の安堵とした声で一気に引きつりへ変わった。

 

「…え? 日光殿…そちらにいる大人な方の日光殿も…ランス殿と同じく魔人と戦える手段があるとー…?」

「ええ、そうですよ。だって同じ魔―――!?」

 

 魔人である方の日光が動揺して言葉を失っている間に、助手である方の日光は空気も読めずに期待から彼女を追い詰めそうな発言をかまそうとするも、そこで宙から巨大な盥が降ってきてガンっと大き目な音を添えてその脳天を直撃した。

 

「―――じってあああああああああああ!?」

「(あほか! この場で余計なことを言うんじゃねえ!)あー、こいつのこの発言は以前にアダルトな方の日光さんが魔人に依然絡まれて上手く調子に乗らせて他のそれと喧嘩させてうまく共倒れさせた時のことをだいぶ誤解混じりで憶えていただけだ。だからこっちの日光さんには単独で魔人と戦える手なんてないから」

「そ、そうですか…」

「それよりも今回の戦争で参戦している魔人の詳細についてわかっていることを教えてくれ」

 

 魔術による磁力操作で金盥を呼び寄せて助手のKY過ぎる発言を物理で阻止すると、ランスは即座に話を自然な方向に逸らす。

 

「そ、そうですね。詳しい情報はこちらの資料に乗せていますが。今現在は五人ほど確認されています。まず一人目は…!?」

 

 それにうまく乗せられたリーザスの諜報員が詳しく説明しようとしたその時、バンとドアが乱暴に開かれた。

 

「たたた大変です! 我々とは別ルートで脱出して同盟国カスタムに退避したリーザス魔法部隊“紫の軍”が、亡命を受け入れてくれたカスタムごと攻撃を受けています!!」

「「「「「!!!???」」」」」

 

 それは今回の戦争がさらに拡大と悪化を続けていることを示す報告であった。

 

 

 

 

 

 ○NK(エヌケー)2年3月14日朝 大陸東南部 自由都市地西部 有力自由都市カスタム○

 

「「「「「わあああああああああ!!」」」」」

 

 ランスも加わったリーザス解放軍の一つに報せが入ってから二日後、その大本である自由都市地帯で有力な都市の一つカスタムは剣戟と怒号に悲鳴が立ち昇る地となっていた。

 かつてのカスタムなら今現在攻め込んできているヘルマンの大軍の前に、なすすべなく陥落させられていただろう。

 

「くそぉ! 一昨日から攻撃しているのにどうしてまだ落とせないのだぁ!?」

「そ、それがカスタムは例の“三魔女”が実権をとってから、独自に技術力を高めていたようで…特に兵器には珍妙だけど強力なものが多く…!?」

 

 だが、今回のヘルマン軍のカスタム攻撃部隊の本陣でのその報告が示す通り、戦況は彼らにとっては芳しくなく、その主因の一つが近づいてくるゴゴゴとした地響きに似た音が近づいてきた。

 

「…ひ!? き、来たぁ!」

「あ、あの鉄の車の化け物がぁ…!?」

 

 その音がした方角にヘルマン兵達が怯えを隠せない顔で音と揺れがしてくる方角を見やると、そこには土煙を上げながら近づいてくる異形の車の姿があった。

 

「ふふふふ! さー行きなさい! チューリップ三号!」

 

 その土煙と共に景気の良い叫び声をあげる、カスタム防衛軍司令官の一人マリア・カスタードを乗せて動くその異形の車は、ランスの前世の記憶にある戦車とそっくりな姿かたちと機能をした、彼女の新兵器“チューリップ三号”であった。

 

「ひぃ! は、早く魔法や矢を放てぇ!」

「馬鹿! 止せぇ!」

 

 それを見たヘルマン兵が大量の弓矢とお国柄から少ない魔法兵を、制止の声を無視しながら投入したが、それは彼らの絶望を深めるだけであった。

 

「そんなの私のチューリップには効かないわよー! さーお返しよー!」

「「「「「ギャアアァアァアアアア!?」」」」」

 

 マリアが内部に戻ったチューリップ三号はその厚く丈夫な装甲で矢や魔法をはじき返し、逆にその砲塔についた巨大な大砲を発射させて多くのヘルマン兵を爆砕して見せた。

 

「うおおおお! すごいぞぉ!」

「メルフェイス副長! カスタム軍のあの新兵器に押されてここのヘルマン軍は大きく崩れ出しています!」

 

 その光景を近くで別のヘルマン軍部隊と交戦していたリーザスの魔法部隊、特にその副将で今は同地におけるリーザス軍の司令官となっている、ブロンドのショートヘアーが特徴的な魅惑的ながらのどこか苦悩している感じの美貌をした美女メルフェイス・プロムナードが驚きの表情で見やる。

 

「…えぇ! そうですね! 呼ぶ部隊の内の二隊を投入して追撃をかけて敵の損害を増やしましょう!」

「はッ! 続けー!」

 

 友軍の活躍にリーザス軍も勇気づけられて前線へ兵力が大きく移動する。

 

「…連中、先日の勝利にも勢いづけられて町の中にいる部隊も大きく移し始めましたね…」

「…ええ、そうね…!」

 

 その様子を戦場から少し離れたある山中より、金髪紅瞳の整った容姿を持ちつつも人外の気配を放つ長躯の男と、その傍に立つフードで姿を隠しているがわずかに見える髪は緑色の流れるような長髪を見せるが、風でフードが揺らめいて見えた同色の瞳は整いつつも淀んだ恨みに支配されている少女が見ていた。

 

「…よし! これでこの地域に展開したヘルマン軍は半壊させられそうだ!」

「不幸中の幸いで今のヘルマン軍の大将であるパットンは本国の皇帝や皇后及び宰相と不仲で援軍の望みは薄い! 更にこのまま損害を増やしていけば本国に見切りを付けられる理由となって更に敵戦力を削れる!」

「このままいけばリーザス全土奪還も夢ではないぞー…!?」

 

 数十分後、戦況を有利に押しすすめていたリーザス・カスタム連合軍だが、彼らがカスタムよりやや離れた地点まで前線を押し上げていたその時、彼らの背後より爆音と震動が響いてきた。

 

「…え、な、何だこの揺れに音は…!?」

 

 それに戸惑う同盟軍が背後を振り返ると、そこには巨大な火柱と無数の悲鳴を立ち昇らせているカスタムという、我が目を疑わせる光景があった。

 

「きゃー! 町の中心が爆発してできた穴からヘルマン軍や魔軍が出てきたー!」

「逃げろー!」

「うおお! 主力が離れている今の内に町の中心部を押さえろー!」

「今ここにいる人間どもは非戦闘員共ばかりだー!」

 

 一方その頃、町の中心部は巨躯を分厚い黒き装甲で固めたヘルマン兵と、色々な色や詳細な装備で別れる魔物兵スーツに着替えた魔物の大軍が現れて蹂躙していた。

 

「そんな!? あそこにあるのは確か一部しか知らない地下を走る町の大型排水路だけなのにどうやって―――!?」

「それはその一部に私も嘗て入っていたからに決まっているでしょう…!!」

 

 それに町に残っていた守備部隊の指揮を執る、カスタムの現都市長であるエレノア・ランが必死に防衛指揮を執りつつも疑問も口にするが、それに答えたのはかつて姉妹同然に育ったもののだが今は怨嗟と憎悪に支配された女の声であった。

 

「―――え…ってあ、あなた…まさか…!?」

「そう! 私よぉ!」

 

 そこで振り返ったランが見たものは、山林の中より戦況を盗み見ていたフードの女である、かつて彼女と共にカスタム四魔女と呼ばれてそのリーダー格であった魔想志津香の憎悪と怨嗟で非顔を酷く歪めた姿であった。

 

「…あんた達ねぇええええ! よくも私を見捨ててこの町でも懸賞金手配なんてしてくれたわねええええええ!」

「おい! 町の方で何が起きてんだ…ってぇお前はぁ!?」

「志津香ぁ!?」

 

 その場に町の前線からかけて戻ってきた女戦士ミリ・ヨークスと、その妹でカスタム四魔女の一人で幻獣使いのミル・ヨークスが驚きを隠せない表情になる。

 

「…し、志津香…どうしてこんなことを…!?」

「…はあ、状況からして…リーザスでやらかしたあれがでかすぎてリーザス及びあそこと仲がいい自由都市地帯(ここ)じゃ懸賞金手配されちまったから、ヘルマンの方に逃げたけど向こうのリーザス侵攻の話を聞きつけて、食うものに困ったのと逆恨みの復讐で、魔女時代に握った機密情報を餌に潜り込んだって話だろ…」

「ううぅぅ煩い! そもそもあんたらが私を見捨てたせいよ! 大体リーザスの時だって私と一緒に好き勝手してたくせに!」

「…いや、あれだってフィールの指輪で狂っていたところを志津香に操られていたし…その時のあなたって一人だけ自力で指輪による狂化を自力で解いていたから情状酌量の余地はー…!?」

 

 あまりにもひど過ぎるかつての友との再会に、カスタム側からショックと呆れ混じりの言葉が返される中、逆切れしている志津香の上空がきらりと光った。

 

「…しゃあ! 間に合ったぁ!」

「あぶぶぶーーーー!!??」

 

 その光の正体は、パラパラ砦で今回のカスタム侵攻の話を聞いて援軍として魔術の超高速で向かってきたランスで、その彼の着地点にいた志津香は脳天から足蹴にされて地面とキスをさせられてしまう。

 

「ラ、ランス!?」

「あ、マリア、まだ無事そうでよかった。カスタムが襲われているって話を聞いたから援軍に来たけど間に合って良かった」

「あ、い、いやー…私達は助かったけどー…その代わりに一人がとんでもないことになってるけどー…」

「え? 何その安堵しつつも微妙そうな感じもしている表情でこっちの足元をー…あ」

「…あ、あう…」

 

 カスタムでの知人のまだ無事な姿に安心するランスだが、彼女たちの半ば呆然とした顔に戸惑うも、足元で自分の足によって踏みつぶされたゴキブリの如くぴくぴくと痙攣している志津香の姿があった。

 

「…ラ、ランス…そ、それ…じゃなくて…その子…どうする?」

「え、あ…いや、マリア…そっちが俺に聞くのそれ? と、とりあえず…こんなのでも敵の要人っぽいし…そっちにとっても友人だし…一応は捕虜として…!?」

 

 カスタム組の(向こうの自業自得なのが理由だが)あまりに冷淡な、何というかあまり関わりたくないという感じの反応にランスは戸惑いつつも志津香から足を退けるが、そこで強大な力が凶暴さはないが静かな怒りを宿した殺気を自分達に向けられだしたことに気付く。

 

「…え!? な、なにこれ…!?」

「…この気配は…魔物…の上か…」

「…ほう、気配だけでその種類に気付くとは、足癖はともかく目は悪くは内容ですね…」

 

 周囲がその殺気で恐怖を隠せない顔になる中、一人だけ剣呑とした顔色になったランスが視線を上げると、その建物の上にはまだ山中より戦況を盗んでいた時の志津香と共にいた男の姿があった。

 

「…魔人アイゼル」

「「「「「!!!!????」」」」」

 

 ランスが静かに口にしたその男の正体に、周囲の多くは震撼を覚えた。




次回、原作のランス02よりも大幅に早い魔人アイゼルとの戦いが始まりますが、また色々と原作とは異なる展開がありますのでご注意をお願いします。
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