ユイと再会してしまった日から2週間が経っていた。DMで何度もメッセージを送って来る以外、少女とは出会っていない。送って来る内容もどこかに行っただの、何を食べただのという内容でいやらしい内容は全くなかった。どこか拍子抜けした気分になりつつも、極力返信はせずに時折既読にするだけ。既読しても返信しなければいずれ諦めると思ったが、だいぶ長期戦になっている。
そんな事よりも俺はミユキとの連絡に必死だった。お互い仕事をしている身なのでなかなか出会う機会がなかったのだが、今日は仕事帰りにスーパーで出会う予定だ。たまにお互いの家に寄り、酒を飲みながら仕事の愚痴を言ったり悩みを聞いたりする。そのため買い物をしてからというのが習慣になりつつあった。
今までの女性と比べれば、お互いだいぶ打ち解けてきた。まだ性行為をしていないが、そろそろ今後のことを考えれば求めても良い時期だろう。明日が休日という事でミユキから泊まることを伝えてきたので、きっと彼女の方も期待しているはずだ。今まで泊まることなんてなかったのだから。
そんな具合に少しばかり浮かれていた。営業でもないのに営業課の人間に連れ立って相手先に謝罪行脚したり、同僚のミスのために社内の課を跨いで作業をした苦しい一週間だったことも頭の片隅に追いやって鼻歌を歌うぐらいには。
約束のスーパーに着くと、ちょうどミユキも来たようだった。軽く手を振りこちらの存在をアピールして――そこで息をのんだ。ミユキの傍にブレザーを着た少女、ユイがいたからだ。
まるで知り合いのように二人は俺の元に歩いてくる。
「ミユキさん、その子は、いったい……?」
声が掠れてしまったが、幸いにも声は届いたらしくミユキが返事をする。
「さっき会った子なの。どうもこの辺りに不慣れみたいで、道案内したところなんですよ」
「はい。ミユキさんに助けてもらいました」
何食わぬ顔で俺達の会話に入り込んできたユイは、純真そうな女子生徒の振る舞いをしている。だが、笑みは浮かべていながらしっかりと俺を見据えていた。気が付くとさり気なく俺の傍に寄ってくる。
思わず近寄るなと怒鳴りたくなったが、今はミユキもいるし周囲の目がある。以前の喫茶店のような振る舞いは出来るわけがない。それでも警戒心を解くことなく俺は初めて会ったように演じる。
「そうか。もう道案内は済んだかな? そろそろ遅い時間になるから自宅に戻ったほうがいいよ」
「ありがとうございます。でも塾や部活でこの時間ぐらいまで出歩いてるなんて、普通ですよ?」
「19時ぐらいなら私が学生の頃でも出歩いてましたよコウヘイさん。それに買い物してから帰りたいそうです」
思わぬ所からの反論で答えを窮してしまう。ミユキからすれば単なる小さな女の子にしか見えないのだから、当然といえば当然の反応といえる。確かにこの時間帯はまだ学生の姿がちらほらと見掛けられる。自分の価値観が古いままであるのと周囲をよく確認できていなかった俺のミスだ。
「とはいえ、早く帰った方がいいのは確かね。言われた通り買い物が終わったらすぐ帰った方がいいわ」
「……はい。そうですね」
ちゃんと釘を刺してくれたか。
不満を隠しきれないユイから離れてミユキは俺の元にきた。
「それじゃあ行きましょうコウヘイさん」
「そうですね」
そうだ。いちいちユイの、少女の存在を意識する必要なんてないんだ。ミユキと付き合っていけば、二度と過ちを犯すことはない。ロリコン、少女性愛である事に抗えるはずなのだから。
新たに決意を固めて少女を置いてミユキと共にスーパーに入った。