八 上京
マサル達四人組のうち、エリは付き合っている先輩がいるので、地元に残って短大に進み、祐二は恋している従姉妹のいる大阪への進学を決める。
そしてマサルと一緒に東京に上京した優は、親戚の家に下宿し、マサルは大学に近いところのマンションを借りる。
上京後も優との交際は続き、もっぱらセックスは優がマサルのマンションに来て泊まったりしながらしていたが、優の大学でのチア部の活動が忙しく、またマサルもフットサルのサークルに入ったりバイトを始めて時間が合わないことが多くなっていった。
それでも優はマサルを大切にして、できる限り時間を合わせるように努力してきたが、二年になり、マサルのサークルに入ってきた後輩に、咲の面影に似た子がいて、マサルは飲み会のあとかなり酔ってしまい、その子を部屋に連れ込んでしまう。
そしてそのまま、その子とセックスして眠ってしまったマサルのところに、翌日土曜日の朝、優がやってきてしまい、マサルの浮気の現場を目撃してしまったのだ。
マサルは誠心誠意謝罪し、優もマサルのことを許したのだが、それでも心の傷とわだかまりが残ってしまい、二人の関係はギクシャクしている時に、さらに追い討ちをかける決定的な事件が起きてしまう。
それは優がマサルの家に泊まった時のことだった。
セックスしてそのまま休んだ二人だが、優は夜中にマサルの声がして目が覚める。
マサルを見ると寝ているので、寝言だったんだろう。
そしてまた寝ようとした優は、驚愕の言葉を聞いてしまう。
マサルの口から寝言で出たのは「サキ、しゃぶって飲めよ」という言葉だった。
翌朝、マサルが目を覚ますと、優はもう帰ったあとで、机に書き置きが残っていた。
『マサルのこと信じようと頑張ってきたけど、もう無理です。夜中に寝言でマサルが言った言葉で、諦めました。だって寝言で嘘は言わないから。
サキって誰ですか? しゃぶって飲めよって、そういう行為をしている関係ってことですよね。今までマサルのこと大好きで、このまま将来も共にしたいと思ってましたけど、でも、ごめんなさい。もうマサルとは一緒に居れません。いままでありがとう、さようなら』
メッセージを読んだマサルは自分がとんでもないことをしでかしたことに気付いて、優を追うが、優の心はもう固く閉ざされてしまっていて、なすすべもなく諦めるマサル。
本当になんてことしてしまったんだ‥‥‥。
一度ならずも二度も優を傷つけてしまったこともそうだが、もう終わったはずの咲への未練がどこかに残っていたことも、優には失礼すぎて、自分の汚さや愚かさが本当に嫌になってしまうマサル。
結局大切な人を全部失って、ホントにバカな自分が嫌になってしまったマサルは、しばらく酒に溺れてしまい、また酔ってサークルの後輩の子に手を出してしまう。
その後も堕ちたマサルは何人かの子と性的な関係を持ったり、付き合ったりしたものの、長続きすることはなかった。
自分の愚かさで優を傷つけて失ってしまったダメージは誰と付き合っても癒えることはなく、またセックスの快楽で誤魔化そうとしても、どうしても咲とのセックスと比較してしまい、熱くなれないのだ。
気にしてくれた祐二が連絡をくれたものの、ありきたりの社交辞令しか言えない自分が嫌で、みんなとの連絡も絶ってしまう。
・・・・・
優と別れてから三年。
酒浸りからなんとか脱却したマサルは勉強に打ち込み、大学生活を無事に終了し、東京の有名なIT企業にプログラマーとして就職する。
その年の十二月、卒業から五年ぶりに高校の同窓会が開催されることになり、地元に残ったエリも幹事になっていたので、マサルは強引に誘われて帰郷することを決める。
すでに母親も父の赴任先に引っ越してしまっているので、実家もないのだが、久しぶりに四人組で集まろう、とエリの音頭で祐二も優も参加して、同窓会の前夜の金曜日に飲むことになる。
マサルは優とのことがあるので、参加をためらったが、エリは優とのことも優から聞いて知っていて、優ももう吹っ切れているから、みんなでマサルのこといじめてあげるからね、とエリらしい気配りをしてくれ、マサルも参加を約束する。
それに短大に進んだあと、付き合っていた先輩との間に子供ができてしまって学生結婚してしまったエリにも会って、遅ればせながら結婚祝いを渡したい、という気持ちもあったのだ。
十二月上旬の金曜日、夕方に五年振りに懐かしい町に戻ってきたマサルは、ビジネスホテルにチェックインして四人組が再会する飲み屋に向かった。