想いが生まれたのはいつだったのだろう。
ずっと前? それとも、つい最近?
振り返ってみれば、なかなか彼氏ができなかったのは『この想い』のせいだったのかもしれない。
──同性への、親友への、許されない恋。
気付いた時には親友──シシリー=フォン=クロードには好きな人ができていた。
お相手のシン=ウォルフォードは悪い男じゃない。
むしろお似合いの二人だと思うけれど、でも。
一度自覚してしまった想いはもう、抑えることはできなくて。
だから──。
◇ ◇ ◇
アールスハイド大聖堂。
シンとシシリー、それからもう一組の結婚式はそこで行われることになった。
新郎新婦にはそれぞれ別の控室があてがわれている。
当初の予定では新郎同士、新婦同士は同室だったのだけれど、少しばかり手を回して別部屋になるように仕向けた。
彼女──マリア=フォン=メッシーナはシシリーとは親友同士。
シンたちとも長い付き合いなので、そのくらいは怪しまれずに実行できる。
式に臨むにあたって自分を見つめ直す時間も必要──説得に使った理由も嘘ではないけれど。
わざわざ手を回した一番の理由は別にあって、
「おめでとう、シシリー。とっても綺麗よ」
マリアは花嫁の準備が終わった直後を見計らい、一人でシシリーに会いに行った。
純白の花嫁衣装に身を包んだ親友──いや、最愛の女性の姿は見とれるほどの美しさ。
抱きしめたい衝動を堪えながら微笑むと、シシリーは少女ではなく女性としての笑みを返してくれる。
幸せいっぱいの表情に惹かれるのと同時に、マリアの胸は黒い感情でいっぱいになった。
「シン君も喜んでくれるでしょうか」
──今話しているのは私なのに、他の奴の話をしないで。
新郎への、他でもないシシリーにとって最愛の男性への嫉妬なんてみっともないと思う。
まして、これから取るのは卑怯で卑劣な手段。
こうして部屋を訪れてもなお使うのを迷っていたけれど……。
唇を噛み、後ろ手に持った花束を差し出す。
一見すると美しい花。シシリーの髪色にも似た花弁は特徴的な甘い香りを放つ。
一部地域にしか生息していない珍しい花であり、その香りは対処なく吸い込むと『とある効果』を引き起こす。
「いい匂い」
親友から差し出された花束をシシリーはなんの警戒もなく受け取り、その匂いを嗅いだ。
『強い催眠効果』を持つ花の匂いを、たっぷりと。
「……そうよ、シシリー。もっと匂いを嗅いで」
野生の状態であれば、それは大した害を持たない。
人も獣も等しく魅了し、その香りの虜にする。
しばらくの間ぼうっとして動けなくはなるけれど、日暮れや空腹といった理由ができればその場を離れることができる。
けれど、摘んで間もない、まだ濃厚な香りのする花を束ねて差し出し、『命令』すれば。
「───はい」
対象は、一時的に命令者の操り人形になる。
シシリーの瞳がどこかぼうっとした、焦点の合わないものに変わって。
両手が脱力するように下ろされるのをマリアはじっと確認した。
それから、
「ねえ、シシリー? あなたの処女はもうあいつにあげたの?」
普段の彼女なら過剰反応するはずの質問。
シシリーはそれにぼうっとしたまま、ほんのりと頬を染めて答えた。
「……はい。誕生パーティの夜に、シン君に」
「……そう」
催眠は成功。
こうなってしまえばしばらくは効果が切れることはない。
なのに、胸にはどろどろした感情が溢れた。
自分以外の人間にシシリーの純潔が汚された。その心を奪われた。これ以上ない形でそれが証明されてしまった。
本当に、彼女のことを一番想っているのは──。
「好きよ、シシリー。愛してる。世界で一番、あいつなんかよりもずっと、あなたのことが好き」
大きく深呼吸をして。
他に誰もいない静かな部屋で、マリアは、秘めた想いを告白した。
本当なら素の彼女に告げたかった。
けれどもう、それは許されないから、せめて今。
「好き。大好き。あなたを誰にも渡したくない。あなたじゃないと駄目なの」
もちろん、シシリーはなんの反応も示さない。
ぼうっとしたまま見つめ返してくる様子はどこか間が抜けている。
馬鹿にされているように思い、小さな苛立ちを覚えたマリアは衝動のまま、花嫁の柔らかな唇を奪った。
優しいキスはすぐにディープキスに変わって。
小さな花隙間から舌を入れ、唾液をとろとろと注ぎ込む。
シンと交わしたであろうキスの感触を洗い流すように。
どちらがより彼女を想っているかわからせるように。
積もった想いをひとつひとつ晴らすように、じっくりと。
その時間は今までのどんな経験よりも尊く、幸せで。
けれど同時に、とてつもない苦しくもあった。
催眠状態のシシリーが無意識のまま、マリアに舌を合わせてきたからだ。
その技術は、これまでの経験から来るもの。
教え込んだのは──。
嫉妬の炎が燃え上がって。
「ねえ、シシリー。私じゃだめ?」
唾液の橋を築きながら唇を離し、必死に尋ねれば、
「……マリアの気持ちは嬉しいです。でも、女同士なんて考えられません。それに私にはシン君が」
「黙って!」
マリアは悲鳴を上げ、胸を押さえた。
痛い。
ようやく想いを果たせたはずなのに、逆にどんどん苦しくなる。
──式が終われば、シシリーはシンのものになる。
ここに来たのは想いに決着をつけるため。
親友の幸せを心から祝福するため。そのつもりだったのに。
「シシリーがいけないのよ。私の気持ちを無自覚に踏みにじるから」
冷静でないのを自覚しながら、マリアは意識的に自制を捨て去った。
今日この日のために準備してきた魔法を用いて、自分の身体に『とある変化』をもたらす。
「……今日だけ。今日だけでいいから私の想いを受け止めて、シシリー」
花嫁の友人として純白以外の──赤系のドレスを纏っているマリア。
その下腹部あたりに不自然な盛り上がりが生まれている。
スカートのおかげで目立つものではないけれど、マリアの手がスカートをめくり上げると、その大きさがはっきりとわかった。
マリアの想いを表すような逞しい男性器。
それは、同性であるマリアがシシリーに想いを注ぐために用意した『もの』だった。
◇ ◇ ◇
マリアのペニスは陰核──クリトリスが変化したもの。
変化は一時的だけれど射精もでき、本物同様の機能を持つのは実証済みだ。
初めて見た時は思わず悲鳴を上げてしまった凶悪なそれを一撫でして、
「ねえ、シシリー。私のこれ、シンのと比べてどう?」
「……はい。シン君のよりもずっと大きいです」
依然としてぼうっとした返答。
けれど、だからこそそれは紛れもないシシリーの本心だ。
ようやく少しだけ自尊心を回復したマリアは、笑みを浮かべて次の命令をする。
「シシリー。私のこれをお口でご奉仕しなさい」
もしかしたら、心のどこかで「どうすればいいのかわかりません」と言われるのを期待していたのかもしれない。
未経験なら仕方がわかるはずがない。
けれど、シシリーは「はい」と頷くとすぐにその場に跪いた。
ふわりと広がるドレスのスカートは到底持ち上げきれるものではなく、控室の床に白い一輪の花が咲く。
花を愛でることができるのはただ一人、マリアだけ。
ちゅっ、と、愛情を示すように先端へキスをしたシシリーは、指で輪っかを作るようにして根本を握るとキスの雨を振らせてきた。
口紅で彩られた唇が触れるたび、ぞくぞくとした快感が走る。
竿に残った紅の跡はそのままキスの回数を表している。
それはやがて十を超え、二十に至る。
マリアの下着は黒のガーターベルトに同色のオープンショーツだ。
高級な下着を施された女性器と共に大きな男性器が生えているのは、それに花嫁が奉仕する様は、とても背徳的で官能的な光景だった。
「……あぁ」
興奮が、じわり、先走りを滲ませる。
口淫奉仕は舐める動作に移行。
竿についた口紅を全て綺麗にしようとするような丁寧な舌使い。心優しいシシリーの性格をそのまま反映するようでありながら、竿への刺激は的確で。
反応を伺うような上目遣いもいじらしく。
魔法によって形成されたばかりの──精通を迎えていない童貞同然のペニスには、経験者のフェラチオはあまりにも毒だった。
魔法のお試しは済ませていたけれど──雄としては幼い童貞にすぎないマリアは、手でする自慰とは全く違う『生』の快感に、高い嬌声を上げてしまった。
「これじゃ、あんまりもたない……っ♪」
マリアの反応を察したシシリーはここでさらに動きを変化。
口内に唾液を溜めると、口を大きく開けて──マリアの太く長いペニスをすっぽりと咥えこんでいく。
深く、ゆっくりと性器が飲み込まれていく感覚。
熱くぬるぬるとした口内は、男性の性感に慣れていないマリアには女性器の中を連想させるほどの気持ちよさで。
さすがにサイズが違うせいか、シシリーが若干涙目になるのも手伝って、支配の興奮がどんどん余裕を、性器から奪い取っていく。
シシリーもまた、親友から精を搾り取ろうとするように唇を使って竿をしごき、舌で艶かしく愛撫を敢行。
淫らな水音に意識がかき乱され──射精せずに堪えていられたのはほんの三十秒にも満たない時間だった。
「あっ……♪」
とっさにシシリーの頭を押さえ、腰を震わせる。
腰の奥から上ってきた精をそのままどくどくと発射。サイズに比例するかのように量が多く、粘性もあり、我慢した分だけ勢いもある。
竿を咥えたままのシシリーが苦しげに呻くも、
「飲み込まずに口の中に溜めなさい。受け止め終わったら、大きく口を開けて見せるの」
「……んぁ♪」
さらなる命令。
すっと目を細めたシシリーは唇を離すと、跪いた姿勢のままそれに応じた。
大きく開かれた口の中。
白く濁った精液の海を、生々しい色をした舌が泳いでいる。
ぞく、と背筋を震わせて、
「舌でたっぷりかき回して、自分の唾液と混ぜ合わせて。十分味わってから飲み込みなさい」
「んっ……♪」
催眠状態とはいえ興奮しているのだろうか。
熱っぽい吐息を漏らしながら、花嫁は命令を実行。
マリアの吐き出した精はシシリー自身の体液と混ざり、分離不可能なほどに一つとなって──こくん、と、彼女の胃へ落ちた。
精は、シシリーの体内を汚しながら消化され、そして彼女の一部になる。
あのシンにももう、取り除くことはできない。
昏い喜びが浮かぶ。
自分にこんな邪悪な一面があったなんて。
可憐で清楚なシシリーがこんなに淫らな顔になるなんて。
どんな人間も、一皮剥いてしまえば『こう』なるということか。
「だったら、もっと」
もう止まらない。止まれない。
次なる命令を口にしようとしたマリアは──ふと、部屋へ近づいてくる靴音を耳にした。
舌打ち。
時間を使いすぎた。
花嫁に会いたいのは自分だけではない。もたもたすればこうなるのは必然。
仕方ない。
一瞬の思考の後に命令を変更。
「シシリー。私があなたになにをしたか、私がどこにいるかは絶対他の人に悟られちゃだめ。できるだけ早く話を終わらせて一人になりなさい」
「……はい」
◇ ◇ ◇
催眠状態からは覚めないまま、シシリーの表情が常のそれに戻っていく。
マリアは花束を部屋のゴミ箱に投げ入れると、とっさに『下』へと潜り込んだ。
ふわりと広がった花嫁のスカートは十分なボリュームがあり、やろうと思えば人一人くらい隠れることができる。
命令により、シシリーはその場から動かない。
そのまま息をひそめていると、若干聞き取りにくいものの男の声が聞こえてきた。
「綺麗だ……シシリー……」
「あ、ありがとうございます。シン君も素敵ですよ」
新郎──シンはシシリーのスカートにマリアが潜んでいることなど全く気づいていないようだった。シシリーの対応も一見すると普段通りで怪しむべき点はない。
ほっと息を吐いたマリアは、自分が今、どこにいるかをあらためて意識する。
花嫁衣装のスカートに隠されてない、シシリーの下半身。
純白のガーターベルトに清楚な白のショーツ。
陰毛を丁寧に処理しているのが真面目な彼女らしいというか──それとも、今夜のために備えているのだろうか。
けれど、そんな貞淑さとは裏腹に、ショーツは僅かに湿り気を帯びていた。
先ほどのキスとフェラチオで興奮しているのだ。相手がシンでなくともちゃんと、その後の行為に期待している。
なら、もっと喜ばせてあげなければ。
軽くショーツを指でずらすと、女性のいやらしい匂いを感じながら、シシリーの恥ずかしい部分を指でなぞる。
「っ」
「? シシリー、どうかした?」
「いいえ、なんでもありません。それよりもシン君。あの──」
命令通り、シシリーは平静を装ったまま対応を続けた。
シンや仲間たち、お世話になった人たちが挨拶に来る中、笑顔でマリアに秘所を弄られ続けた。
愛液を舌で舐め取られ、濡れた秘所に指を二本挿入され、そのままゆっくりとかき回され、敏感になったところに息を吹きかけられ、さらにはクリトリスをかりかりと爪で引っかかれて。
絶頂しそうなほどの快感を与えられ、がくがくと足を震わせながら、決して表に出すことなく「式まで一人になりたいから」と時間的な猶予を作って。
最後の面会を終え、靴音が十分に遠ざかった直後。
マリアがスカートから顔を出すと同時に、口を半開きにし、甘い声を小さく漏らしながら床に崩れ落ちた。
「♪ っ♪ 〜〜っ♪」
感じている。絶頂している。
我慢していた分だけその快感は深く、強く、花嫁の身体を侵して、翻弄している。
催眠状態ではあっても、この経験は身体に残り続ける。
そしてもちろん、これから行うことも。
隠れている間にマリアのペニスも十分に回復している。
マリアは自分のドレスのスカートをたくし上げ、適当に結び目を作って竿を晒すと、シシリーの瞳を覗き込みながら命令した。
「スカートをめくって、足を開いて」
「……はい」
床に腰を下ろしたまま、花嫁があられもない姿を披露する。
女性らしさと可憐さを併せ持つプロポーション。
シンでなくとも放っておかないだろう身体は、快感によってほんのりと上気していた。
下着はもう隠しようのないほどに湿って、高級な品に恥ずかしい染みを作っていて。
このままだとスカートが汚れてしまいそうなので、床に敷く形となっていた分もめくり上げさせてから、
「ショーツを脱いで、私にあそこを開いて見せなさい」
「……はい……♪」
明るい場所で人目に晒される、シシリーの一番大事な場所。
愛液をたっぷりと蓄えたそこには確かにもう処女膜はない。
再び怒りを覚えるマリアだったが──もう、それはいい。だったらあの男以上に自分を刻み込むだけだ。
「愛してるわ、シシリー」
頬にキスをし、指でそっと撫でてから、竿の先端を入り口へとあてがう。
床に寝そべった花嫁に半ば覆いかぶさるようにしながら腰を落とすと、竿が秘所を割り広げるような感覚と共に熱い感触が駆け上がった。
「っ♪」
口淫奉仕より数段上の快感。
女の子の中──好きな人の中というのはこんなにも気持ちいいものなのか。
男に対する羨ましさを覚えながら、さらに深く、腰を沈めていく。
熱く、柔らかく、それでいてきつく、まるでペニスを求めるように締め付けられて、ただ挿入しただけなのに射精してしまいそうになる。
なんとかそのまま、奥まで入れて。
竿が僅かながら余ってしまった。「ね? シンのはここまで届いた?」。熱に浮かされた気分のまま尋ねると、「いいえ。シン君のはもっと小さいです」。淡々とした回答。
「そっか。なら……この形をしっかりと覚えなさい……っ♪」
繋がってしまった。奪ってしまった。
一度きりの過ちであっても、他人のものである花嫁を穢した事実は変わらない。
後戻りなんてもうできるはずがない。
なら、行き着くところまで行ってしまうほうがずっといい。
愛しい人の感触を確かめるように、自分の形を刻みつけるように、ゆっくりと、けれど強く、腰を引いては打ち付けていく。
一突きごとに淫らな水音が響き、シシリーの口からも喘ぎ声が漏れる。
「声はできるだけ抑えなさい。でも、感じるのは我慢しちゃだめ♪」
「っ♪」
突けば突くほど、シシリーの秘所はマリアの竿に馴染んでいく。
繰り返せばそのうちシンのサイズでは合わなくなってしまうかもしれない。
愉悦。優越感。
けれど、それもだんだんとどうでもよくなっていって。
「好きっ♪ 大好きっ♪ 世界で一番、シシリーが好きっ♪」
結ばれることができるとは思っていない。
この想いはここで終わらせる。全部吐き出して親友同士に戻る。
だから今はただ、シシリーの全てを味わい尽くしたい。
交わるうちにマリアも少しずつコツがわかってきた。
女同士、シシリーの感じる場所もなんとなくわかる。それを突いてやると面白いように感じてくれるので執拗に狙って喘がせた。
互いの肌がリズミカルな音を立てるのを感じながら。
溢れるほど愛液を分泌させた膣内、その奥に、限界まで我慢した精をたっぷりと注ぎ込んで。
明らかに演技ではないとわかる絶頂の痙攣を愛する人の身体から感じた。
荒い呼吸。同時に思ったのは、「足りない」ということだった。
繋がったままのペニスはきつく膨張したまま。一度や二度の射精では収まりそうもない。
幸い、式までにはまだもう少し時間がある。
蕩けた表情の彼女を笑みと共に見下ろして、
「シシリー。立ち上がって壁に手をつきなさい」
「……はい……っ♪」
もう、花嫁の声にも隠しきれない喜びの色があった。
生理的な反応に過ぎない。
シンとの行為を思い起こして興奮しているだけだと思う。
それでも、シシリーが感じてくれているのが嬉しくて。
後ろから抱きしめながらバックで突き、ぐりぐりと竿を奥へ押し付けながら子宮へたっぷり精を注ぎ込み、
「私の膝に乗ったまま挿入して、私にキスしなさい」
「はい……っ♪」
上等な設えの椅子を二人分の体重で軋ませながら舌を絡め、腰を揺らし、既に十分すぎるほどに溜まったところにさらなる白濁を追加して。
最後は、控室の窓を背に、片足を大きく上げさせながら挿入した。
誰かに見られてしまうかもしれない。
そんな興奮をシシリーも感じているのか、それとも本当にマリアのサイズに慣れてしまったのか、今までで一番の締めつけを見せて。
ようやく竿を引き抜けば、花嫁は立っていることもできずにその場に崩れ落ちた。
おそらくマリアの倍は絶頂していただろう。
余韻でなおも身を震わせながら、過剰に注がれた精を秘所から溢れさせている。
「……ありがとう、シシリー。私の想いを全部、受け止めてくれて」
乱れた呼吸を整えて。
マリアは静かに、呟くようにそう呼びかけた。
大量の精と共に嫉妬も慕情も使い果たしてしまったのか。
自分でも意外なほど心はすっきりしていた。
これなら気持ちにきちんと区切りをつけられるかもしれない。
もちろん、マリアのしたことは重罪だ。
このことは誰にも言わない。
絶対に墓場まで持っていく。
仮に露見することがあれば言い逃れするつもりもない。
それに、胸の炎はまだ、完全に消えてしまったわけではなく。
マリアは、汚れた竿をシシリーに掃除させながら、最後の命令を口にした。
「ここで私との間にあったことは全部忘れなさい。もし覚えていたとしても絶対に秘密にしなさい。これは催眠が解けても必ず守りなさい」
問われれば罪は認めるけれど、できる限りの対処はする。
ハンカチを裂いて小さな玉をいくつも作り、栓の代わりにシシリーの秘所へと詰め込んで。
下着を穿かせ直してから命令の続き。
「式の間、私の精液をずっと子宮に入れていること。……式の後は誰にも、特にシンには絶対に気づかれないように綺麗にしなさい」
「……はい♪」
後はシシリーを休憩させ、行為の跡を丹念に消すだけだった。
魔法で作ったふたなりペニスは跡形もなく消し、汚れは拭き取り、花はゴミ箱の中で燃やしてしまう。
女同士なのでドレスを整えたり応急処置をするのはわけない。
式が始まる前までには一見しただけではわからないレベルまで花嫁の姿は回復した。
取れてしまった化粧は持ってきた自前の品でやり直し。
元の品よりもやや明るい色合いに塗り直された唇は、マリア自身と同じ色で。
「さあ、シシリー。元のあなたに戻りなさい」
瞳と表情を元に戻していくシシリーを見つめながら、マリアは『親友』の仮面を被った。
なにがあったか思い出せないと語る彼女に当たり障りのない説明をして、何食わぬ顔で人が呼びにくるのを待って。
付き添い人として、シシリーと共に式場へと向かう。
親友であるマリアがシシリーにべったりでも誰も怪しまない。
催眠状態はまだ残ったまま、命令で普段通りを再現しているだけだけれど、香りの効果が切れれば自然と素のシシリーに戻る。
そうなっても、催眠中に「こうしろ」と言われた命令は無意識のどこかに残ったままきちんと履行されるはずだ。
上手く行けば、シシリーのお腹に残る精液も誰にも知られることなく洗い流される。
それで、表面上はすべて元通り。
──シシリーのお腹の奥、子宮に注がれた精液までもが綺麗に洗い流されるか。
洗浄しきれず残ったとして、それがその後どうなるのかは、まだ、マリア自身にもわからない。
「あらためて結婚おめでとう、シシリー」
式はつつがなく執り行われ、シシリーは誰がどう見ても幸せいっぱいな花嫁としてシンの妻となり、やがて可愛い女の子を出産した。
シャルロットと名付けられたその子の髪の色は──。