アタシは、結城美柑が気に食わない。
勉強は出来るしスポーツ万能、何より容姿も優れてる。クラスの男子…というか、学年男子のほとんどがあいつのことが気になるんじゃないか。アタシがひっそり好きだった男子も、結城のことが好きだという噂が立ったし、実際に告白までしたそうだ。フラれたらしいが。
そして何より気に食わないのが、先生ウケのいいあの優等生気質だ。いつもつるんでる咲希と一緒に地味子をイジっていたらツカツカ近寄ってきて、いじめはダメだだの、卑怯者だの言ってくるし、たまたま通りかかった先生に見つかって、罰として空き教室の掃除をさせられたのだ。
掃除を指示されたのは旧校舎の教室であるため、滅多に使わない…というか、ほぼ倉庫のようになっており、元々教室にあった棚には運動会の小道具などが詰められているほか、今年新しい机を入れたことにより、使わなくなった机や古い跳び箱などが隅に色々と置かれていて、片付けに苦労した。
「ねぇ、結城美柑に仕返ししてやろうと思うんだけど、一緒にどう?」
「…面白そう。葵、何か考えあんの?」
アタシの誘いに、咲希はニンマリと笑みを浮かべてノってくる。アタシらをナメた報いは絶対に受けさせる。この屈辱を、何倍にもして返してやるのだ。そのために作戦を立てた。まずは、下準備からだ。
旧校舎を出て図書室を目指していると、ちょうどお目当ての地味子が図書室から出てきたところだった。もうやることも終わったのか、ランドセルを背負ってこのまま帰る様子だ。最高のタイミングで獲物を見つけることができたアタシは、咲希と2人で素早く地味子の両側を固める。
「え、ぁ、な、何ですか、2人とも…」
「そーんなビクビクしないでよぉ〜地味子〜」
「…そうそう、ウチらトモダチじゃん?傷つくわぁ」
地味子の肩に腕を回し、密着しながら明るい声で話しかける。地味子は怯えた様子で逃げようともがくが、アタシが肩に、咲希が腰に腕を回して密着してるため離れられない。側からみれば仲良く3人横並びで歩いてるように見えるが、地味子の目には涙が浮かび、若干震えている。
「ねぇねぇ、地味子…いや、絵里。ちょっと【お願い】があるんだけどさ、言うこと聞いてくれるよね?」
アタシの【お願い】を聞いた地味子は必死に首を横に振り嫌だと訴えるが、再度アタシが【お願い】をしたところ、顔を俯け、諦めたかのようにコクンと頷いた。
楽しみだ。とてもとても、楽しみだ。
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「こ、こんにちは、結城さん」
学校から一度家に帰り、夕飯の買い出しに行くため歩いていると、後ろから声をかけられた。黒のセミロングでメガネが特徴の絵里さんだ。以前、クラスメイトからいじめられていたのを止めるため、声をかけてから良く話しかけてくれる様になった。
いじめをするクラスメイト、夢野葵と木島咲希はいわゆる『やんちゃ』な女子コンビだ。不良というほど外れているわけではないし、先生の言うことも聞くが、自己主張が強いタイプ。周囲から煙たがられているわけではないが、ちょっと恐れられてると言った2人だ。彼女らのいじめターゲットにされてしまった絵里さんを何とかするべく声をかけ、タイミングよく先生方通りかかったため、2人は指導された。それをきっかけに、絵里さんの方から話しかけてくれるようになった。
「た、たまたま見かけたから声をかけたんだけど…それは買い物バック?お手伝いしてるんだ」
「お手伝いというか、普段から夕飯作るのは私の係なんだ。親は仕事が忙しいし、リト…うちの兄は料理とか全くできないしね。絵里さんはどこかにお出かけ?」
「すごいね…結城さん。私はちょっとお散歩かな。そうだ、結城さん、この前助けてくれたお礼をさせて欲しいの。お礼といっても大したことできないけど…そうだ、そこのコンビニで何かご馳走させて欲しいな」
お礼を言われる様なことでもないし、気にしないでいいと言ったが、絵里さんから是非にと言われたので、お言葉に甘えることにした。
今は初夏であり気温もそんなに高くなく、私の服装も半袖Tシャツの上にキャミソール、下はスカートと涼しい格好なこともあり、そこまで暑さを感じないが、コンビニに入ると心地よい涼しさを感じる。
お菓子コーナーはお店の奥にあるらしく、ガムや冷蔵スイーツ、お弁当などの区画を通り過ぎて向かう。3つ選んでいいとのことなので、少々悩んだが3つ選び絵里さんに渡すと、絵里さんはもう選び終えていたようで、私からお菓子を受け取るとレジに持っていく。よくあるコンビニではなく、個人経営のコンビニなのだろうか。ラインナップも少々独特であり、あんまりお客が入ってそうには見えない。現に、私たち以外にはお客はおらず、店員さんも若い女性の1人だけだ。店内BGMが寂しげに響いてるように感じられた。
「は、はい、結城さん。改めて、この前はありがとう」
「本当に気にしないで。むしろこちらこそ、お菓子ありがとう」
絵里さんからお菓子を受け取り、肩からかけている買い物バッグを少しずらしてファスナーを開け、お菓子をしまって肩に掛け直す。彼女もまた、持っていたトートバッグにお菓子を入れ、2人でコンビニを出たとき、レジにいた店員さんに肩を掴まれて引き止められた。
「お嬢ちゃんたち、ちょっと待ってくれるかしら。」
「え、何ですか?」
なぜ止められたのか分からず、思わず問いかけると、彼女は素早く私の買い物バックと、絵里さんが持っていたトートバッグを取り上げて思わぬことを言った。
「お会計してない商品、あるわよね?事務所まで来てもらえる?」
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「誤解です!!そんなことしてません!」
場所を移し、今私と絵里ちゃんはコンビニの事務所にいた。私たちを事務所に連れていく際、入り口に『準備中』のふだをかけ、施錠していたので他のお客さんは入ってこないだろう。いや、今はそれどころじゃない。私たちはそんなことしてないと、無実だと言い続けているが、店員さんはジトッとした目でこちらを見続けている。そして、一つ軽いため息をつくと、重々しく話し始めた。
「無実だって言うなら、このバッグの中見ればわかるわよね?あなたたちも見てただろうけど、私はあなたたちからこのバッグを受け取ってからそのままこの事務所まで来た。その間、このファスナーは開けてないから、あなたたちが無実なら、この中はお会計したものだけが入っているはずよね?」
「はい、その通りです。元々お財布とタオルしか入れてないので、それ以外は入ってません。」
キッパリ言い切る私を見ても、店員さんは全く動じない。そして、絵里さんに向かってあるものを要求した。それは、先ほど絵里さんが受け取っていたレシートだ。そのレシートに記載がないものがバッグに入っていたら万引き確定という意図らしい。店員さんは絵里さんのバックから確認するといい、中を改めていった。まず、財布を取り出したのち絵里さんに渡し、中からレシートを出させる。
「今から確認していくけど、言った言わないにならないようにお互いに主張を撮影しましょう。」
店員さんはスマホを取り出して絵里さんに渡し、自身を撮影するよう言った。言われるままに絵里さんがスマホを向けると、レシートをこちらに掲げて店員さんはハキハキと宣言した。
「宣誓。私、彩南マートの夢野なぎさは、あなたたち2人のバッグからこのレシートに記載してある商品以外が見つからなかった場合、謝罪のうえ、賠償金10万円をそれぞれに支払います。」
宣誓を聞いて驚いた。サラリと10万円を払うと言った。こちらとしては誤解を解きたいだけであるため、お金はいらないと言ったが、ケジメだと譲らなかった。そして、スマホを受け取ると今度はこちらにスマホを向けて言った。学校名、クラス、名前の後に、自分と同じように宣言しろと。
そして、私たちは、宣言してしまう。
「宣誓。私、彩南第一小学校6年結城美柑は、私のバッグからこのレシートに記載してある商品以外が見つかった場合、万引きを行ったことを認め、夢野なぎささんの指示に従います。」
「せ、宣誓。私、彩南第一小学校6年田中絵里は、私のバッグからこのレシートに記載してある商品以外が見つかった場合…万引きを行ったことを…認め…夢野なぎささんの指示に…従い…ます。」
3人の宣言がちゃんと録画されているのを確認すると、店員さんはスマホを絵里さんに渡して再度撮影するよう指示し、バッグの中身を机に並べていく。
まずは、絵里さんのバッグだ。タオル、本、水筒、そして、お菓子が3つ。3つとも先ほど購入したものであり、レシートにも確かに記載があった。
「あなたは大丈夫ね。返すわ。次、あなたのバッグよ。」
店員さんは絵里さんのバックを机に戻し、私のバッグを確認していく。お財布、タオル、絵里さんにもらったお菓子が3つ、そして、そして、そして、入れた覚えのないお菓子が3つ、机に並んだ。
何も考えが浮かばない。意味がわからない。だって、あんなもの、入れてないだから。私が何もできずにいると、絵里さんからスマホを回収して、こちらに画面を見せて動画を流した。
『宣誓。私、彩南第一小学校6年結城美柑は、私のバッグからこのレシートに記載してある商品以外が見つかった場合、万引きを行ったことを認め、夢野なぎささんの指示に従います。』
「さて、どうしようかしらね?」
店員さんの言葉にハッとなり、私は慌てて口を開いた。
「ご、誤解です!本当に知らないんです!だって、私、本当に入れてない!」
「今更そんなこと言っても、証拠もバッチリ撮影出来てるわよ。認めることも出来ないの?子どもだし、穏便に済ませようと考えたけど、これはダメね。警察もだけど、親御さんと学校の方にも来てもらわないと。」
その言葉に体が凍りつく。私はやってない。でも、なぜか証拠があって、それが向こうにある。それが、とても怖かった。何も言えなくなってしまった私の横から、店員さんに向けて声がかかる。
「ど、どうすれば、お、穏便に済ませてもらえますか…?」
絵里さんだった。震えて涙目になりながら、何とかしようと話をしている。その姿に躊躇いを覚えたのか、一瞬哀れんだような顔をした後、確認してきた。
「……他には盗ったものはない?何も隠してない?」
「は、はい」
「はい…」
私たちは揃って辿々しく答える。すると、店員さんがこちらに提案してきた。
「まぁ、コレで人生真っ暗になるのも可哀想だし、穏便に済ませてあげる。ただし、他に何も盗ってないことを証明することと、もうしないと誓ってもらう。いい?」
黙って頷く私たち。そんな私たちに信じられない言葉が投げかけられる。
「じゃあ、2人とも、そこに立って服を脱いで。」
感想よろしくお願いします。