つなぎ回なので、ちょっと短めです。
カーテンの隙間から差し込む陽の光で目を覚ました。目覚まし時計を見ると、8時25分を指し示している。普通なら遅刻確定だが、今日は土曜日。学校はお休みだ。
いつもならリトがいるため、朝食の準備に起きるところだが、今日は自分1人。普段よりも手を抜いたものでいいやと考えながら、シャワーを浴びるため着替えを取り出そうとして、昨日のことを思い出した。
あの後、2人は本当に私の下着を全て持っていってしまった。残っているのは、今私が来ているコレのみ。今日からの三連休はどうすればいいのかと聞いたら、出来るだけ家でノーパンで過ごせなどと言う。
そもそも、問題なのは三連休だけでなく次の登校だ。この下着を洗濯し、朝2人に渡さないといけない。あの2人に下着を管理されるということそのものも屈辱的だが、登校中にお股が丸見えになる可能性があることの方がマズい。
どうすればいいのか、LIN◯は登録させられたし、許してもらえるようお願いしようかと考えたところで、ふと思いついた。
2人に秘密でショーツ購入して、そのショーツを履いて登校し、学校についてからこっそりと脱げばいいんじゃないかと。今日は土曜日。しかも、明日になれば今履いてる下着も洗濯する必要があるため、時間に制限が出来てしまう。買いに行くなら、今日だ。
…でも、もしバレたら、どうなるんだろう。現状、ただでさえ下着無しで登校させようとしているのに、さらに指示を無視したことがバレたりしたら…
いや、弱気になっちゃダメだ。そっちよりも、何かの拍子にスカートが捲れた時の方がもっと悲惨だ。そうだ、バレないように隣町に買いに行けばいい。そうと決まれば…
早速、準備をしよう。せっかく買い物に行くんだから、気分切り替えて楽しまないと!そうして、私は出かける支度を始める。
いつの間にか、「この状況を抜け出す」から「2人を怒らせない」に考える基準が変わっていることに気付かずに。
せっかくの買い物だが、今回はおしゃれよりも動きやすさ重視の服にした。クリーム色の袖がフリルになっているTシャツに、ピンクのブラウスを羽織っている。ブラウスの袖からTシャツのフリルがちょっと見えるのがポイント。下は黒地で、裾部分が白になっているミニスカート、そしてスニーカーだ。
そして大事なことだが、スマホは家に置いてきた。私の携帯には、2人から位置情報を確認できるよう、アプリを入れられてしまっている。持って出るとすぐにバレそうなため、自室の机の上に置きっぱなしだ。もしその間に連絡が来ていたとしても、気付かずに眠っていたことにすればいい。
彩南町から電車に乗り、30分程で隣町の駅に着いた。この駅のすぐ近くにはショッピングモールがあり、そこが今回の目的地。
中に入り、1階から順番にショップを見ていく。服、靴、小物、本、アクセサリー、傘、ソックス…色々な専門店が並んでおり、時々フラリと立ち寄っては、じっくりと吟味し、また次のショップへ。
ウィンドウショッピングを一通り楽しんだあと、お目当てのリーズナブルさが強みであるショップに到着した。普段ならインナーショップで選んでいるが、今回はここにしたのには理由がある。最悪、どこかで捨てることができるようお値段が安くて特徴のないものを選ぼうと思うのだ。
このショップでは、子ども向けの下着類は売り場が別れており、中高生向けのショーツは1枚1枚インナー用ハンガーで陳列しており、小学生以下向けのショーツはワゴンに雑多に積まれている。普段なら迷わず中高生向けに行くが、今は…悩んでしまう。
もし、バレたとしても、指摘されたとおり股上が深い小学生っぽいデザインのものを選んでおけば、許されるのではないか。そんな考えが過った。…どうせすぐに捨てるかもしれないものなんだし、良しとしないと…
ワゴンの中には、“幼気なかわいらしさ”を感じる柄のショーツが多くあった。キャラクターの絵が描かれたものや、デフォルメされた動物の絵がたくさん描かれたもの、ハートや星がたくさん散りばめられたもの、など、種類は様々だ。股上が深く、ぴったりフィットするというよりは、ゆったりしていて履きやすい、といった感じのものだ。
サイズさえ合っていれば、あとは地味目のデザインのものでいいやと、ワゴンに手を伸ばした時、声をかけられた。
「も、もしかして…結城さん?」
ビクリと身体が飛び跳ねる。マズい、誰かに見られてしまった!声のした方を見ると、あの日以降、話せないままになってしまった絵里さんがいた。
「やっぱり、結城さんだよね。こんなところで会うなんて偶然だね。…ううん、そうじゃなくて、あの、えと、改めて謝らせて欲しいの。この間は本当にごめんなさい。結城さんは、私を助けるために動いてくれたのに、私は…」
「ううん、本当に気にしないで。だって絵里さんは悪くないもん。悪いのはあの卑怯者2人なんだから。」
絵里さんなら…大丈夫…かな。気にしなくていいと言ったのに、まだ気に病んでいた彼女だ。事情を説明すれば、あの2人には黙っていてくれるはず。
私は、買い物に来た経緯を話し始めた。あの日の動画を脅しのネタにされて、恥ずかしい動画を撮られてしまったこと。そして、下着を没収されて、もっと子どもらしいのを買えと言われたこと、今後下着を買うときは2人に付き添われなければいけないが、連休や登下校の際の不安感から、こっそり買いに来たこと。…流石に恥ずかしすぎて、お漏らしのことは伏せて話した。
「そっか…でも、今のお話だと結城さんの普段の下着ってこの辺りのやつじゃないんじゃ…」
「……もし万が一バレたとき、言われたとおりに股上が深いものにしておけば、まだ許されるかなーなんて…」
「…………結城さん、ちょっとついてきてくれる?」
絵里さんは私の手を取ると、試着室の方へ歩いていく。親子で入れるようにか、広めになっている試着室に2人で入り、鍵をかける。
意図がわからず絵里さんに尋ねると、絵里さんは徐に服を脱ぎ出した。
「じ、実はね、私も結城さんと同じで、下着管理されちゃってるの。」
彼女は、そう話しながらも手を止めない。
まず、羽織っていたデニム生地のブラウスを脱ぐ。次に肩を撫でるようにノースリーブワンピースの吊られている部分をずらすことによりストンと下に落とす。目に飛び込んだ絵里さんの下着は、とてもではないが小学生が着けるものではなかった。
紫色の、いわゆる“セクシーランジェリー”と呼ばれるもの…なのだろうか。ブラジャーのストラップは華やかなレースで装飾されており、フロント部分には小さな白いリボンがついている。そして何よりの特徴は、左右それぞれのカップ中央部分が縦一線に斬ったかのようにオープンになっており、それを真ん中あたりで白いリボンにより留めているデザインになっているというポイントである。
真ん中一点でしか留めていないため、上下に細い穴が空いているように見える。そこからは素肌が見えてしまっており、見てはいけないものを覗き込んでいるかのような背徳感がある。
そして、留めているリボンも小さいものであるため、よくよく見てみると、彼女の乳輪がうっすら見えてしまっている。
そしてショーツも、ブラジャーと同じデザインだった。脇部分はブラ同様華やかなレースで装飾され、後ろはなんとTバックになっていた。クロッチは大きくオープンになっているのを、真ん中あたりを小さなリボンで留めている感じ。角度の関係でよく見えないが、こちらもブラジャーと同様に、割れ目が見えてしまうようになっているのだろう。
「私は結城さんとは逆で、もっとファンシーなのが好きなんだけど、地味なんだからもっと華やかにしないとって、こういう…え、えっちなヤツを選ばされちゃうんだ…」
同性とはいえ見せるのは恥ずかしいのだろう。その気持ちはよくわかる。顔を赤らめ、両手で下着を隠しながらも、話を続ける。
「今日は、さっきまであの2人に呼び出されてたからこの下着だけど、実はお休みとか帰ったあとは、自分の好きなモノを履いてるの。ただでさえ学校とか登下校では見えないか不安で仕方ないのに、それ以外ではリラックスしたいよ…」
そういえば、あの日彼女が着ていたのはセクシーとは対極の、子どもらしいデザインのものだった。なるほど、彼女なりのストレス発散なのかもしれない。
「結城さんは、どう?せっかく内緒で買うのに、自分の好みじゃない下着でもいいの?」
そう言う彼女の手には、全体に色とりどりのハートがプリントされたかわいいショーツがあった。
「……実は、さっきお店を見て回ってた時、気になるヤツがあったの。」
絵里さんはニコリと笑って、続けた。
「じゃあ、一緒に行こっか。」
2人でショップに行き、お目当てのものを見つけた。ピンクのブラとショーツのセットだ。
同年代がまだ着けていないこともあり、普段はブラは着けていないが、プライベートで、気に入ったものを着けるなら、これが良いと思った。
ブラはストラップとカップ上部が控えめなフリルで飾られ、フロント部分のリボン先端にはハート型のアクセサリーがついていてとてもかわいいのがポイントだろう。ショーツは股上が浅い構造で、ウエスト部分が大きめのフリルで覆われていることと、両サイドにもブラと同じリボンとアクセサリーが付いていることで、一見いわゆる紐パンに見えて大人っぽさも備えている。
「これ、すごく好み。」
「…いいと思うよ。」
このセットと合わせて、いくつか好みのものを購入して、満足感を感じる。袋をバッグに入れ、しっかりジッパーを閉めたあたりで気づく。すっかり当初の目的の一つでもある“こっそり登校中に履く下着”を忘れ、休日に好きに着る下着を買って満足してしまった。
そのことを絵里さんに言うとお互いにクスリと笑い、一緒に元のショップへ戻った。心が軽くなった私は中高生向けの方へ向かい、黒無地だが、スポーティなデザインのショーツを3枚購入した。
その後、最寄りの駅で絵里さんと別れ、家に向かって歩いている。ショッピングモールを色々と見て回ったので歩き疲れがあるが、それが不思議と不快ではない。
足取り軽く自宅に着き、部屋に戻る。カバンを下ろし、携帯を見ると着信が1件とLIN◯メッセージの通知があった。
猛烈な嫌な予感を覚え、恐る恐る見てみると、着信は葵さんから。そしてLIN◯メッセージは咲希さんからだった。内容を読んだとき、驚きのあまり、ヒュッと喉が鳴ってしまった。
それと同時に、玄関の呼び鈴が鳴った。まさかと思いつつモニターを確認に行くと、そこには2人がいた。
『美柑ちゃーん、いるよねー?ちょっと一緒にお出かけしようよー』
『…さっき買ったものも全部持って、早く出てきて。』
冷や汗が止まらない。しかし、もう逃げることもできない。机に置いた携帯の画面には、“ショッピングは楽しかった?”とメッセージが表示されていた。
こういう下着を選んでるシーン大好き。
本来誰かに見せるものではないからこそ、下着選びにはその人の好みの本質が詰まってると思う。