俺は、世界の半分(女性)を手に入れてみせる! 作:キャプテンキャップ
終了を告げる鐘が鳴った。
「――お、チャイムか。はい、それじゃあ今日はここまで。黒板に書いた記号は期末に出すから、しっかり板書して覚えておくように」
教室中から「え~っ!」と抗議が上がるも、化学教師は苦笑しながら「試験に出るって教えてやったんだから文句言うな」と準備室に消えていった。
なんにせよ、ようやく退屈な授業が終わったか。まだ二時間目が終わっただけなのに、もう欠伸が出て困るね。
「元素記号なんて、化学者の頭の中に放り込んでしまえば良いのにな」
「名言だな、洋」「迷言の間違いでしょう」
「佐々木うっさい」
「それは失礼」
「それよかさっさと教室戻ろうぜ」
一樹に促され、揃って化学室をあとにする。
「……どうでも良いですがお二方、ちゃんと板書しました?」
「してない」「あとで写させてくれ」
「だと思いました。まあ良いですけどね」
☆
「あっ、いっくん!」
「彼女が呼んでるぞ、いっくん」
「彼女さんが呼んでますね、いっくん氏」
「るっせ! 美帆以外の奴がその愛称で呼ぶんじゃねえ!」
2-Aの教室前――中から一樹を『いっくん』と呼び止めるのは、コイツの彼女であり俺と佐々木の友人でもある
ちなみに俺たち4人は同じ中学だ。
「洋君に佐々木君。おはよ~う」
「おう」「おはようございます」
窓から身を乗り出しながら「にへら~っ」とほんわかした笑顔で挨拶してくる美帆。
その際、笑顔と同じくらいふるゆわな亜麻色の髪が、これまたふわりと揺れる。
ちょっと太めの眉にドングリみたいな丸い目といい、どうにもリスとかウサギなどの小動物を連想させる奴だ。
性格ものんびりしているというか、おっとりしているというか。
その反面、体は肉感的だ。胸もデカイ。
性格とスタイルの良さで中学の時から男子に人気があった美帆。
学年問わず告白もけっこうされてたけど、最終的にコイツの心を射止めたのは、隣でしまりのない顔で会話している一樹だったわけだ。知り合った当初から仲良かったしな、コイツら。
お陰で随分な数の男子生徒が失恋したはずだ。……俺? 俺は特に。夜のオカズにはさせて貰ったことはあるが、恋心とかは無かったな。いやマジで。
確かに好みではあるが――っと。そういや『フェロモン』の範囲内だった。美帆を性的な目で見たら俺に欲情させてしまうハズ。危ない危ない。
寝取りに興味はあるが、さすがに友人の彼女を寝取るわけにはいかないからな。
自省しろよ、俺。
「洋、佐々木。わり、ちょっと美帆と話しとくわ」
「ごめんね~、2人とも」
謝ってくる一樹と美帆に「気にするな」と別れて歩き出す。
「あの2人は相も変わらずですねぇ」
「だな」
「……今のは相と愛を掛けていたのですが、気付きました?」
「気付くか! ……っと」
気付けば
「C組に何か用事でも?」
「いや、別に」
目当ての榊原がいないんじゃ、しょうがない。本っ当にツイてないな、クソぅ。
……あ。そういや、さっきの休み時間にうちの委員長の田井中と何か話してたな。あとで何を話してたのか田井中に聞いてみるか。
☆
てなわけで、3時間目が終わって休み時間。俺は田井中の席を訪れていた。
「C組の委員長と何を話してたかって? ただの連絡事項だよ、連絡事項」
やっぱ業務連絡的な会話だったのか。んで、何の?
「ほら、特別棟の3階にある備品置き場になってる空き教室あんだろ? 今日の放課後、俺と榊原でそこを掃除しろって、生活指導の先生に言われたんだとさ」
それにしても、何でCとE組の委員長だけなんだ? 間のD組は? と訊ねたら「他の用事を頼んでるんだとよ」と肩を竦める田井中。そいつはご愁傷様。
……いや待て。これは榊原と2人きりになれるチャンスか?
化学室や家庭科室などがある特別棟の3階は、全て空き教室だ。用がない限り教師を含め誰も訪れることはない。……というより、生徒の溜まり場にならないよう、3階へ上がる階段の防火扉は閉じられ、さらに南京錠も掛けられているので入れない、というのが正しい。
そこを掃除しろってことは、それを頼まれた榊原が南京錠の鍵を預かっているはずだ。
なんという好都合。
「田井中。それ、俺が代わってやろうか?」
「え、マジで!?」
「おう」
「や~、マジ助かる。恩に着る。昼に何か奢るわ」
「そいじゃ、適当にパンでも奢ってくれ。あと、俺と代わった事もC組の委員長には伝えといてくれよ?」
「あいよー」
特に何も聞かれずに交換してくれるのは助かる。普通なら邪推されそうなもんだけど、これも『フェロモン』の効果なのかね?
ともかく、これで榊原に『フェロモン』を当てることも、それ以上のこともできる公算が立ったな。
俺は、内心でクツクツと黒い笑みを浮かべるのだった。
☆
そんで放課後になった。
教室を出れば、すでに廊下は生徒でごった返している。これから部活に向かう者もいればそのまま帰る者もいるだろう。
「そんじゃな、洋!」「掃除、頑張ってください」
「おう。またなー」
適当に返事を返し、ごった返す廊下を進んで特別棟へ向かう。その途中、C組をチラッと見たが委員長の姿はなかった。もう向かったようだ。
2階の渡り廊下を抜けて特別棟に入れば一転、静かとなった。
リノリウムの床と上履きが
既に南京錠は外され、防火扉も半開き。……やっぱり
半開きの防火扉に体を滑り込ませ、誰も入ってこないように扉を閉めてから階段を昇り、3階廊下を歩く。備品置き場は廊下の端だ。
無人の教室たちの窓から差し込む夕陽が、誰ともすれ違うことのない廊下を黄昏に染める。
そんな中で、ガタゴトと聞こえてくる小さな音。
発生源はこの先の空き教室――備品置き場のようだ。恐らく委員長がすでに掃除を始めているのだろう。……来るの待てばいいのに。
俺は小走りで教室の後ろから中へ入った。
「すまん、遅れた」
「構わないわ……って、誰あなた?」
教室の前側を掃除していた委員長が手を止めて振り返るなり、怪訝そうに訊ねてきた。
「田井中の代わりに来たんだけど……もしかして聞いてないのか?」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたわね。確か名前は……洋君、だっけ?」
おう。と返事をすると、榊原は頷きひとつ。
「来て早々悪いけど、さっそく始めましょうか。お願いね、洋君?」
「了解」
俺は用具入れから
使われていない教室とあって、机は全て後ろ側へと追いやられているので掃除そのものはやり易い。
備品類も段ボール箱に入れられ、机の上に置かれている。注意するとすれば、それを落さないようにするくらいだな。
委員長とは少し離れた所から、掃除に取り掛かる。
離れているといっても距離は2メートル以内。完全に『フェロモン』の範囲内だ。
けれども、委員長が俺に性的興奮を覚えている様子はない。なぜなら、俺がまだ委員長を
『フェロモン』を当てられた女性が俺に欲情するのは、俺がその女性を好みと判断し、性欲の対象として見た場合のみ。
つまり、この2つを満たさない限り、女性が俺に欲情することはない。それは、俺好みであるはずの
委員長をすぐに堕とすのは何となく面白くない。
なので、『フェロモン』に当てただけの状態でエロイ展開にもっていこうと思ったわけだ。堕とすのはそれからでも遅くないだろう。
だから、委員長を好みと思わないよう気をつける。性欲の対象として見ないってのは難しいが、それくらいなら何とかなる。
気をつけながら、床を掃いたりモップをかけていく。面倒だけど、掃除を引き受けた以上ちゃんとやらないとな。
掃除をしながらも、横目で委員長を眺める。
箒を動かす度、たわわに実ったオッパイが腕の動きに合わせて左右に揺れる。
また、床に落ちている大きなゴミを拾おうとした際には腰を屈めたので、スカートが際どく持ち上がり、ツンと上を向いたお尻のラインがハッキリと分かったり、スカートから伸びる黒のパンストに包まれた足が何とも俺の興奮を
思わずもう委員長を好みだと認めて堕とそうかと思ったが、我慢だ我慢。
委員長と楽しむのは掃除が終わってからだ!