俺は、世界の半分(女性)を手に入れてみせる! 作:キャプテンキャップ
01:弟に恋人ができてたんだけど
さて――今さら言う事でもないと思うが、ここらで俺の家族のことを今一度紹介しようと思う。
家族は5人。
サラリーマンの父親に、近くのデパートでパート従業員として働いている母親。
兄妹は妹と弟が1人ずつ。
末っ子の弟の紹介はあとでするとして、妹の紹介からしようか。
妹の名前は
腰まで届く艶やかな黒髪にアイドルと見紛うほどに整った顔立ち。端的に言えば美少女。訂正――超絶美少女だ。
学業優秀、身体能力も優秀、スタイルは同年代よりも発育優秀。主に胸。お尻は育成中。
性格は温厚で面倒見も良く、男女関係なく好かれている模様。
ここまで何拍子も揃えばくればモテないはずもなく、学校で受けた告白は2桁に昇るんだとか。まあ全部断っているらしいが。
家でも母さんの手伝いだけでなく、母さん不在の時は洗濯から掃除、料理まで家事全般をそつなくこなしてくれる完璧超人。
文武両道の大和撫子を地でいくのが、花蓮という妹だ。
花蓮の話からしたが、今回
今回は、弟に関わる話なのだ。
☆
8月上旬のある日。バイトが休みだったその日の朝、日課の朝フェラを妹にしてもらってすっきりしたあと、花蓮(かわいい)とともに朝食を取ろうとキッチンへと向かう途中、なにやら騒がしい母さんと弟のノリの声が廊下まで聞こえてきた。
またノリがつまみ食いでもして怒られているのかとも思ったが、それにしては楽しそうだ。俺たちは顔を見合わせ、なんだろうと
テーブルで朝食を食べている
おっと、ここで弟の紹介もしておこうか。
幸せそうにご飯を食べているのが弟の
ちなみに俺とは似つかないほどのワイルド系
力強い切れ長の目。だけどどこか表情が柔らかく感じるのは、弟の無邪気な性格のせいだろう。
天真爛漫なやんちゃボーイ。運動神経抜群、勉強は少し残念だが、そのギャップから大抵の人から好かれる。
それがノリだ。
「どうしたのお母さん、そんなに騒いで?」
「あらおはよう、2人とも」
にこにこと上機嫌に挨拶してくる母さんが、花蓮に手招きするかのような仕草をしながら「それがね」と続ける。
「今からノリの彼女が遊びに来るらしいのよぉ! んもぅ、最近の子は進んでるわねぇ」
頬に手を添えて「きゃーっ」と黄色い声――と言うにはババ臭い、黄土色の声をあげる母さん。
「「……は?」」
俺と妹の声が見事にハモった。流石は最近近所で仲が良いと評判で、恋人の
ノリの彼女がくる? どこに? ここに。誰が? 彼女が。誰の? 弟の。何が? 彼女が。どこに――って疑問が頭の中でループしてる! それくらい衝撃的だけど、しっかりしろ俺! 何度か深呼吸。スー、ハー、スー、ハー……ふぅ、ちょっと落ち着いた。
それにしてもクソっ、小6の分際で彼女だと? これだからイケメンは。実の弟に嫉妬する俺。いかん、頭に血が昇ってきた。深呼吸、深呼吸。……よし、落ち着いた。
隣を見れば、花蓮も頭が真っ白になっているのか、口を半開きにしたまま直立不動のまま固まっていた。弟大好きっ子だからな、こいつ。その大好きなノリにいつの間にか彼女ができてて、しかも遊びに来るってんだから、そりゃ固まりもするか。
再起動させるべく花蓮に声を掛けようとした瞬間、くわっ! と目を見開いた花蓮が猛然とノリへと詰め寄った。
「ちょちょちょっ、ノリ!」
「おう、おはよう姉ちゃん!」
「うん、おはよう――じゃなくて! ノリ、彼女ができたの!?」
「おう!」
歯で箸を
「お、おお、お姉ちゃん聞いてないんだけど!?」
「言ってなかったからな!」
「何で!?」
「え? だって姉ちゃんに興味ないし」
「はぐぅ!!」
ノリの容赦ない口撃に目をバッテンにする花蓮。やだ可愛い。
「おにいちゃ~ん……」
花蓮が目を潤ませながら俺に抱きついてくる。やだホント可愛い。思わずギュッと抱きしめ返す。
「……ほんと、仲が良くなったわねぇ、あんたたち。あ、そうだ。ご飯入れてるわね、食べるんでしょ?」
呆れ顔で訊ねてくる母さんに「ん、よろしく」と言い、それからノリに向き直る。
「ってか、俺もお前に彼女ができたって初耳なんだが」
俺が尋ねると、「ん? そうだっけ?」と首を傾げ「……おおっ、ほんとだ、言ってない!」と1人で納得し、
「兄ちゃん! 俺、彼女できたぜ!」
と、サムズアップで今さらながらの報告を受けた。…………見ての通り、俺の弟は顔は良いのに頭は残念なかなりのアホである。まあ、なにはともあれ弟に彼女ができたのなら喜ばしいことだ。なんせこいつ、男友達しかいないからな。兄ちゃんとしては心配だったのよ。弟はもしやホモなんじゃいかって。よく愛してるぜ! とか俺に言ってくるし。まあ、ノリがホモならホモでもいいだけどさ。同性愛者なんて昨今じゃそんなに珍しくもないからな。それでもノーマルな俺としては、弟もノーマルであって欲しいと思うわけで。矛盾してるがな。
「まあ、おめでとさん」
俺が言葉を掛けると、花蓮が涙声で「全然おめでたくない~」と俺の胸に埋めている頭を左右に振る。とりあえずその頭を撫でてやる。よしよし。
「おうっ、これも兄ちゃんのお陰だぜ!」
ノリの言葉に再び俺と花蓮の動きが止まる。
「……俺のお陰?」
はて、俺なんかしたっけ?
「おにいちゃん、どういうこと?」
ゆらりと俺から離れ、訊ねてくる花蓮。ちょ、花蓮さん!? その虚ろな瞳は何!?
「おにいちゃんのお陰ってなに? なにしたの? ノリに何を吹き込んだの? ねえ?」
「ひぃっ! ままま待て! 俺は何もしてない! きっとノリの勘違いだ! そうだろう、ノリ!?」
お願いだから勘違いって言って!
「どうなの、ノリ? お兄ちゃんのお陰なの?」
「ん? 確かに兄ちゃんのお陰だぞ?」
勘違いだって言えよ! 見ろ、花蓮が今にも人(俺)を殺してもおかしくないオーラを漂わせてんじゃねーか! てか俺が何したんだよ!
「兄ちゃん覚えてないのか? ほら、1学期が終わる前にさ、言ったじゃん? 彼女ってのも悪くないぞって」
そんなこと俺は言った覚えなんて――
「……あ」
言ったわー。俺、そんなこと言ってたわー。
あれは確か、1学期も終わりに近づいていた7月下旬のことだ――。
俺はまるで現実逃避するかのように、その時の事をこと細かく思い出した。
☆
「ただいまー」
「お帰り兄ちゃん! そしていってきます!」
「いってらー。ってちょっと待て」
帰宅した俺と入れ替わるかのように出かけようとする弟の襟首を掴まえる。
「どしたー?」
「どこ行くんだよお前」
「ケンジたちと遊びに!」
だと思ったよ。
「遊びに行くのは構わんけど、出かけるときはちゃんとどこに行くか言えって言ってるだろ?」
注意すると「おお、そうだった!」とキシシと笑うノリ。……俺の弟はかなりのアホである。
「ケンジたちと遊びに行ってくるぜ兄ちゃん!」
「それはさっき聞いたよ」
はぁ……。と溜め息を吐く。
「っていうかお前、いつもそのケンジって奴と遊んでるな」
ノリの話に必ずといっていいほど出てくる名前。家にも何度か遊びに来たことがあるので顔も知っているが、仲が良すぎだろ。
「おうっ、俺とケンジは親友だからな!」
「女子とは遊ばんの?」
俺が尋ねると、ノリが「は?」というような顔をしてきた。
「女子となんて遊んでも楽しくねーぞ?」
「いやいや、女子もいいもんだぞ?」
まあ、小学校の頃、女子と遊ぶのが恥ずかしかった俺が言っても説得力皆無だが。
「ん~、そうかぁ?」
「ああ。っていうか、お前の顔なら彼女の1人や2人、簡単にできそうだけどな」
言って、弟の顔を見る。俺とは似ても似つかない整った顔立ちは、ワイルド系のイケメン。こいつが好きだと言えば、大抵の女子は喜んで受け入れるだろう。実際、学校ではかなりモテるらしい(花蓮&母談)。……花蓮も美少女なのに、俺だけなんでこんなにフツメンなんだろうなぁ。
「彼女って言うと、兄ちゃんと志紀姉ちゃんみたいなもんか?」
「ああ」
「ふぅ~ん。兄ちゃんは女と遊んで楽しいのか」
「そりゃ、楽しいぞ? 女子ってのはどこを触っても柔らかいしな」
「柔らかいのが楽しいのか……俺にはさっぱりだ。やっぱ兄ちゃんは大人だな!」
ノリがキラキラと尊敬の眼差しで見てくる。……どんな尊敬の仕方だよ。
「そんな兄ちゃんが彼女作れってんなら、俺もいっちょ作ってみっかな!」
いや、俺は一言も彼女を作れとは言ってないが。……ま、女子に興味を持つのは良いことか。なんせ、こいつの口から女子の話題どころか名前すら聞いたことがないからな。
「ま、頑張れ」
「おう! で、兄ちゃん」
「うん?」
「彼女ってどうやって作るんだ?」
そこからかー。
「……壁ドンでもすれば?」
面倒くさくなってきたので適当にアドバイスする。だけど、ワイルド系のイケメンのこいつならいけそうな気がするな。駄目だったとしてもノリが振られるだけで、俺に損はないし。
「壁ドン?」
弟が首を傾げる。……こいつはそんなことも知らんのか。
俺はもう一度溜め息を吐きつつ、壁ドンのやり方を実演交じりに教えてやることにした。
「いいか、こうやって好きな相手を壁際に追い込んで、こう――」
ノリを玄関の壁に押し付け、顔の隣に勢いよく手をつき、ノリの顔を至近距離で覗きこむ。
「これで壁ドンの完成だ。あとは……ってなんで顔を赤くしている」
見ればノリの顔が赤い。真っ赤だ。気持ち悪い。冷静に考えて、俺はなんで弟に壁ドンなんてやってるんだろうか?
「おぉう、これが壁ドン。胸がキュンってなったぜ兄ちゃん!」
うわぁ……弟が本当に気持ち悪い。
「で、それからどうすればいいんだ!?」
「お、おお。あとは適当に告れ」
「告る?」
「好きだ、とか、俺と付き合ってくれとか適当に」
「なるほどな! 分かったぜ、好きな相手にやればいいんだな! さっそく明日にでもやってみる! ありがとな、兄ちゃん!」
んじゃ、遊びにいってきまーす! と言い残し、元気良く飛び出していった。
「……やれやれ」
これで少しでもノリが女子に興味を持てばいいんだけど。
それが先月のことだった。
☆
「やっぱりノリに彼女ができたのお兄ちゃんのせいじゃない!」
話を聞き終えた花蓮が俺の肩を掴んでガクガクと揺さぶってくる。
「あーうん。そうみたいだな」
頭をシェイクされながら頷く。
「お兄ちゃんのバカー!」
おぉう、久しぶりに妹に罵倒された。
「ノリもなんでお兄ちゃんの言う事を鵜呑みにしたの!?」
「兄ちゃんのいう事は絶対だからな!」
「ノリのアホー!」
おお、妹がノリを罵倒した!
珍しいこともあったもんだと思っていると、花蓮がスカートのポケットからスマホを取り出すと、誰かに連絡を取り始めたかと思いきや――
「花蓮、出かけてくる!」
「いきなり!?」
「今からノリの彼女が来るんでしょ!? そんな家にいられないもん!」
「そこまで!?」
「ノリもお兄ちゃんも大っっ嫌い――じゃないけど! 嫌い!……ちょっとだけ……出かけてる間だけ……」
嫌われる時間がどんどん短くなっていく!
「うぅぅう……2人のバカーーーー!!」
「かれーーーん!!」
飛び出していく花蓮。……本当に行っちゃったよ。まあ、しっかり者のあいつのことだし、心配はないか。
「あら、花蓮はどこか行っちゃたの?」
「ああ。友達のところに遊びに」
のんびりとご飯を運んできた母さんに伝える。
「あらそう。せっかくノリの彼女が来るのにねぇ」
だからこそ飛び出していったんだけどね。
「てかお前、いつ彼女なんて作ったんだよ」
席に着き、ご飯を食べながらノリに訊ねる。
「兄ちゃんに壁ドンのやり方を教わった次の日にな! 適当にクラスの女子にやったら彼女になったぜ!」
まじか。……っていうか、彼女ってそんな簡単にできるもんなの? くそぅ、これがイケメンがやる壁ドンの威力か。
朝っぱらから格差社会を思い知ったのだった。……マジでイケメン滅びろマジで。そう思ったね。
☆
ご飯を食べ終えて部屋でゴロゴロしていると玄関のチャイムが鳴った。かと思うと、
「ノリの彼女ねえ……どんな子なんだろ」
全く想像できん。
興味をそそられた俺は部屋を出て一階へと下りた。賑やかな声がリビングから聞こえてくる。
どうやらノリたちはそこにいるようだ。どれ、弟の彼女の顔を拝んでみるとしようかね。野次馬根性全開で扉を開ける。
リビングにはノリを合わせて6人の小学生がいた。
ちなみに内訳は女が3人、男が3人だ。
突然現れた俺に子供たちが元気良く「こんにちわー!」と挨拶してきので、俺も適当に返す。
元気があるのは良いことだけど……どれがノリの彼女だ?
眼鏡を掛けた地味な子か。
それともフリル一杯のゴシック服を着ている気の強そうな子か。
はたまたボーイッシュな子か。
ノリの性格からして好きそうなのはボーイッシュな子のような気もするが……そもそもこいつの好きな子のタイプってどんなだ? ……さっぱり分からん。
「どうした兄ちゃん?」
「や、お前の彼女さんにでも挨拶をと見に来たんだけど……誰が彼女さんだ?」
俺の言葉を聞いて、ノリがキョトンとした顔をする。
「何言ってんだ、兄ちゃん。俺の彼女なら
「……はい?」
俺はリビングにいる小学生たちを見やる。ここにいる全員? それだけでもおかしいのに、明らかに男もいるんだが。……あ、流石に男は除くか。……だよな?
心配になった俺はノリにそのことを小声で訊ねる。
「いや、あいつらも俺の彼女だ」
「……はい?」
得意げに語るノリに、俺はもう一度気の抜けた言葉を漏らす羽目になった。
衝撃の事実。俺の弟は――両刀使いだったらしい。
マジか。……弟の様子を見るに、どうやらマジらしい。……えぇ~? 弟が同性愛者でも構わないとは言ったが、こうやって実際のこととなると、少なからず衝撃はあるな。母さんや花蓮がこのことを知ったらどういう反応をするんだろう? まあ今の俺みたいにきっと困惑するわな。
「どうした兄ちゃん?」
固まる俺にノリがきょとんとした顔で訊ねてくる。……まあ、コイツが幸せならいいか。俺に実害があるわけでもないしな。
「いや、なんでもない」
そう言ってノリの髪をクシャクシャと掻きまわしつつ、弟の『彼女たち』に顔を向ける。
男2人はまあどうでもいいや。ノリの話によく出てくるケンジがいたけど、気にしない。気にしないったら気にしない。
ノリたちから離れ、ソファーに腰を下ろして子供たちをしばらく眺めることにした。
気を取り直して女子3人を見やる。
整った顔立ちに胸の辺りまである艶やかな黒髪をカールにし、シミ1つない陶磁器めいた肌をフリル一杯の黒いゴシック服で隠している気の強そうなゴスロリ美少女。
その隣に座るのは、ボーイッシュな女の子。顔立ちはゴスロリ娘とは違う方向で整っている。可愛い系美少女だ。ショートヘヤにスポーティーな服から覗くのは日に焼けた手足。溌剌とした表情を浮かべ、いかにも運動が得意な少女といった感じ。
そして最後に眼鏡を掛けた地味な子。美少女でもないし、それといった特徴も見受けられない。どこまでも地味だ。他の2人と並ぶと引き立て役になってしまう、そんな少女。
……う~ん、見事にタイプがバラバラだ。
ケンジたちとじゃれあうノリを温かく見守る眼鏡っ
というかノリ。さっきから男子と遊んでばっかじゃないか。少しは女子とも遊んでやれよ。ゴスロリ娘が目に見えて機嫌が悪くなってるぞ。眼鏡っ子がそれを察してハラハラしてるし。……あ、ゴシック娘がノリに突撃していった。それを慌てて止めようと追いかける眼鏡っ子……あ、何もないところで転んでゴシック娘ごとノリに突っ込んだ。物理的に。あの子はドジっ子か。そしてボーイッシュな子はそれを見て楽しそうに声を上げて笑っていた。
眼鏡っ子の
さて、ノリの彼女も見たことだし、そろそろ部屋に戻るかね。と、ソファーから腰を上げたところでボーイッシュな子が声を掛けてきた。
「ノリの兄さんもこっちに来て一緒に遊ぼうよ!」
「……へ?」
「そうですわ、お
「おー、良いこと言うな! 俺らと遊ぼうぜ、兄ちゃん!」
見た目どおりの喋り口調でゴスロリ娘が相槌を打ち、それに便乗したノリがてててと寄ってくると困惑している俺の手を取り、強引に小学生の輪の中へ俺を入れて座らせる。……え、俺小学生に混じって遊ぶの? マジで?
「そういえばまだ自己紹介してませんでしたわね。わたくし、
優雅に名乗るゴスロリ娘改め響子。淀みのない喋り方といい、もしかしたら良いとこのお嬢様なのかも。……最後のお兄様呼びのイントネーションが気になるけど。
「それじゃ、次はあたしだな。あたしは
言い終え、ニカッと笑うボーイッシュ娘。いや、茜だったか。
「あ、あの……
モジモジしながら眼鏡っ子の丹子が小さな声で言いながら頭を下げてきた。
「ああ、うん。よろしく。ノリの兄の
俺もつい頭を下げる。頭を上げたときには子供たちは話に花を咲かせていた。
しまった。完全に抜けるタイミングを逃した。……しゃあない。適当に付き合うか。
幸い、子供たたちは俺そっちのけで盛り上がっているみたいだし。
俺は苦笑しながら頬杖をつき、その光景を眺めた。
☆
それから数時間、子供たちはソシャゲや据え置き型ゲームに熱中し、それに飽きれば家中を舞台にした鬼ごっこに隠れんぼ、疲れたらボードゲームにトランプと遊び倒した。俺も結局最後まで付き合わされた。……つ、疲れた。
5時を回ったところで響子の門限が近いとのことでやっとこさお開きとなった。
「今日はお招き頂いてありがとうございました」
「それじゃあねー、ノリ! ヨー
「ま、またね、ノリ君」
「おう、またなー!」
玄関先までノリと一緒に見送るに出ると、女子3人が口々に別れの挨拶をし、手を振って帰っていく。男どもも同様だ。……って、俺に挨拶したのって茜だけじゃねえか。
姿が完全に見えなくなったのを確認し、家へと入る。
「あー、今日は楽しかったー! 兄ちゃん、彼女ってのはいいもんだな!」
その意見には賛成だが、お前のいう彼女のってのはちょっと違うと思うぞ。普通は複数いないし、男を『彼女』に含めたりしないからな? ……まあ、なにが普通かなんて人それぞれだろうから、コイツが良いというなら良いけどさ。
俺は隣で笑うノリの髪をクシャクシャにしてやった。弟は「やめろよー!」と言ってるが、嬉しそうだった。
……んで、家を飛び出した花蓮はその日、帰ってこなかった。向かいの志紀の家に泊まるとメッセージが来た。……どんだけショックだったんだよ。
その翌日の朝、昼からのバイトに向かうまでの間、志紀の家で時間を潰すことにした。ちなみに花蓮は入れ替わりで家に帰っている。
「ノリ君に彼女ができたんだって?」
「ん? ああ」
志紀に膝枕してもらいながらイチャついていると、志紀が訊ねてきたので頷く。
「花蓮から聞いたのか?」
「うん。花蓮ちゃん、相当ショックだったみたいだよ?」
「知ってる。泣きながら家を飛び出してったからな」
昨日の
「で? ノリ君の彼女さんは可愛かった?」
「ん~、そうだな。1人は綺麗系の美人、1人は可愛い系。もう1人は普通。男2人は――」
「いやちょっと待って。何で3人? しかも男って何?」
志紀の突っ込みもごもっとも。
「いや、あいつ恋人が5人いるんよ。女が3人、男が2人」
「……へ、へぇ……5人も。それに男? 男……う、うん、最近じゃ普通だよね。普通。…………普通ってなんだっけ?」
無理するな、志紀。声が震えてるぞ。
「……でも、ノリ君に恋人が5人もいるって知ったら、花蓮ちゃん気絶するんじゃない?」
「あー……まあそうかもしれない。けど大丈夫だ。問題ない」
「問題ない?」
「ああ、花蓮が気絶する時は俺が受け止めるからな!」
「……全然解決になってないよ? それ」
志紀に「いや、ホントに最近2人とも仲よすぎでしょ」って引かれたんだが。……あれぇ?