俺は、世界の半分(女性)を手に入れてみせる! 作:キャプテンキャップ
重々しい雲が空一面を隙間なく覆っているせいで蒸し暑く感じる、ある日の昼下がり。
両親は仕事に出かけ、
俺は独り寂しく冷房の効いた部屋でベッドに寝ころりながらマンガを読んでいた。
シンと静まり返った自宅。部屋に響く音はクーラーの駆動音とマンガの
そんな静寂を破るように外からゴロゴロと響いてくる重低音。
うん? 窓へと目をやった瞬間、空が光った。一拍遅れて、けたたましい轟音が空気を振動させる。
雷だ。
「こりゃあ、雨も降ってきそうだ」
読んでいたマンガを閉じて独りごちる。と、窓ガラスにぽつりと雨粒一つ。間を置かずに二つ、三つと数を増やし、すぐにどしゃ降りの雨へ。窓を伝う雨が滝のようだ。……こりゃ凄い。しばらくほへーと寝転びながら窓の外を眺めていた。……あ、そういや洗濯物とか干してなかったっけ?
スマホを手に階下へおりて居間からベランダを覗く。おし、何も干されてないな。
部屋に戻るのも面倒だし、このままテレビでも見ながらネットを
……そこにはおっきな濡れ
「ヨー
雨の音に負けないくらい大きな声で、濡れ鼠――じゃなくて
あと、妹ではないけど俺をヨー
「雨宿りはいいけど頭を振るな。さっきから俺に飛んできてるっての」
「ありがとー!」
「抱きついてくんな! 俺まで濡れるだろうが!」
「にひひ♪ いいじゃん別に~。こういうのなんて言うんだっけ? 一連たくあん?」
「それを言うなら一蓮托生だ」
そう、それそれ♪ と楽しそうに笑う茜。相変わらず元気なヤツ。
「ほれ、とっとと入れ」
屋根のついた玄関先とはいえ、それでも少しは雨に打たれるからな。うちに入るよう茜を
「おっじゃましまーす!」
「前に来たからリビングの場所は分かるだろ? タオル持ってってやるから、先に行ってろ」
はーい! と返事をしながら靴をぽいぽい脱ぎ散らかして家に上がる茜。あ~あ~あ~……。相変わらずこういうところ無頓着なヤツ。
苦笑しながら離れ離れになった茜の靴を揃えてやり、俺も中へ。
玄関の扉を閉めると、途端、雨の音が小さくなった。さて、タオルを取りに……って、廊下にリビングまで続く茜の足跡が。そういや、靴も随分と濡れてたなあ。濡れ鼠と化していた茜を思い出す。……着替えも用意してやるか。
着替えは弟ので十分だろう。見た限り、背も近いし。廊下を拭くのは……まあ、あとでいいか。
急いでタオルと着替えを用意してリビングへ行くと、茜が立ったまま勝手につけたらしいテレビを見ていた。
立ったままなのは、濡れたままソファーに座るわけにもいかなかったからだろう。えらい! ……ただ、勝手にテレビをつけるのはどうなんだ? まあ小学生なら仕方ないとも思ったが、小6だと考えるとやっぱどうなんだと思いなおす。けど、やっぱどうでもいいかと終決し、茜に声をかけた。
「ほれ、タオル」
「わーいっ、ありがとー!」
「あと
「あ、嬉しい! やー、服がひっついて気持ち悪かったんだー」
言って、服の
ロリ巨乳といっても差し支えないDカップオッパイ。
日に焼けた小麦色の手足と、焼けていないお腹の白さがなんとも……。
「お? ヨー兄がエッチな目であたしを見てる気がする!」
「正解だ」
「わーい当たったー! なんか景品ちょうだい!」
クイズじゃないんだから景品はありません。と返すと、茜は「ぶーぶー!」と口を尖らせた。
「いいからさっさと髪を拭いて着替えろ。風邪ひくぞ」
「ほーい」
茜が服のすそに手をかけ、引き上げる。途端、なだらかな起伏に水滴をつける白いお腹がこんにちわ。
「って、俺の前で服を脱ごうとするな!」
相変わらず無防備か! 男はケダモノだと身をもって教えたはずなのに!
「
良くないっての。……いや、良いのか? 良いには良いけど、もしも今、母さんや花蓮が帰ってきたら……うん、死ぬな。
閑話休題。
「ともかくポンポン脱ぐな。分かったな?」
「はーい。あ、着替え終わったらさ、遊んでよヨー兄。雨が止むか弱まるまで帰れないし」
「へいへい」
俺の言葉に「わーい♪」とはしゃぐ茜の声を背に、俺はリビングを出た。ふぅ。とため息を零していると、ポケットのスマホが震えた。誰からだ? 取り出して画面をみれば――花蓮だ。噂をすればなんとやらだなあと思いつつ電話にでる。
『もしもしお兄ちゃん? 花蓮だけど』
「おう、どうした?」
『うん、雨が酷くてすぐには帰れそうにないから、一応連絡を入れとこうかなって』
可愛い妹の天使な声を聞きながら、さっき見た外の光景を思い出す。確かにあの雨の中を歩いて帰るのは
妹の半濡れ姿を俺以外の野郎どもに見せるわけにはいかないので、「分かった」と答えた。
「ちなみに今は――」
『大丈夫、ちょうど友達とファミレスに入ったときに降ってきたから、全然ぬれてないよ』
俺の台詞にかぶせるように言ってくる花蓮。お見通しですか。まあ濡れてないならいいけどさ。と返すと、くすりと笑う花蓮。それから妹は話題を変えるように『あ、そういえば』と言葉を続けた。
「んー?」
『今、お家に誰
「…………」
お気づきだろうか、今の妹の言葉。『誰
「だ、誰も来てないぞ?」
『……ふ~ん……』
思わず嘘を
ババッと辺りを見渡す。
『やだなあ、カメラとか仕掛けてないから、そんなに慌てて探さなくても大丈夫だよ? お兄ちゃん♪』
クスクスと楽しそうな花蓮の笑い声。いや全然笑えないよ! ……え、本当に見えてないのん? だったらなんでこうも的確に俺の行動が読めてるの!?
『とりあえず、雨がやんでから帰るから。それじゃあね、お兄ちゃん』
「お、おう」
通話を終えようとしたタイミングで、
『あ、茜ちゃんにもよろしく言っといてね♪』
プツンと、通話が切れた。
「………………えぇ~~?」
ホントのほんっっとぉーーーに! 隠し――監視カメラないんだよなあ!? なんで最後に茜の名前が出てきたのさ!? もうホラーの類だよ、今の電話!
「着替え終わったよー」
「うひぃっ!?」
背筋を寒くさせていると
「どうしたの?」
俺の様子に首を
「それじゃあ約束どおり遊ぼう、ヨー兄!」
「あいよー。それじゃあリビングに――」
戻ろうとした足を止めた。さっきの花蓮とのやりとりを思い出したから。
誰か来ていることを断言した花蓮。最後に茜の名前を出してきた花蓮。……本当に、監視カメラはないのか? …………うん、とりあえずリビングは止めよう。いや、可愛い妹を疑うわけじゃないよ? でも、ほら、こう……ね?
「茜、リビングじゃなくて俺の部屋に行こう」
「お、ヨー兄の部屋かー。興味ある! どっち? こっち!?」
「そっちは台所だ。俺の部屋は2階」
「よし突撃ー!」
「階段上がってすぐの部屋だからなー」
ドタドタと階段を走りあがっていく茜の背中に声をかけると、「あれ、ヨー兄は?」足を止めて振り向いてきた。
「リビングに散らかってるだろうお前の服の回収してくる。それと何か飲みもん持ってから上がるよ」
「お~、優しい」
「だろ?」
「ご褒美にあたしの脱ぎたての服の匂いを嗅いでもいいよ!」
「嗅ぐか! ってかどこでそんなの覚えた!」
「
俺が怒鳴ると茜はケタケタ笑いながら階段を上がっていった。……ったく。
響子ってのは、確かあのゴスロリの子だったか。見た目も口調もお嬢様っぽかったけど、案外、
なんてことを考えながらリビングへ。すると案の定、脱ぎ散らかされている茜の服。……おぉう、下着まである。
てことはアイツ今、ノーブラノーパンなのか。……ほほぅ。いや、別に他意はないぞ?
適当な袋に服を回収し、冷蔵庫からキンキンに冷えたレモン水の入ったボトルとコップ、あとポテチをお盆に載せて部屋へと向かう。……ちなみに、茜の服の匂いなんて嗅いでないからな? 鼻を押し当ててクンカクンカなんてしてないから。ホントだぞ?
「ほれ、これに服が入ってるから袋ごと持って帰れ」
ミニテーブルにお盆をおき、物珍しそうに室内を眺めていた茜に袋を渡す。
「わーお、ありがとー。ついでに洗って乾燥までしてくれたらもっと嬉しかったんだけど」
「厚かましいにも程があるわ。そんくらいは家に帰って自分でやれ」
「とか言いつつ、ヨー兄はあたしから袋を受け取って洗濯してくれるのであった」
「しねーよ」
「かーらーのー?」
「しないって」
「またまたーぁ」
「……これ、いつまでやるんだ?」
「飽きるまで!」
「よし、飽きたからやめよう」
俺が真顔でそう言うと、何がおかしいのか笑い転げる茜。え、俺の真顔がウケる? 失礼な。そんな彼女に文句を言いつつテーブルの前に腰を下ろし、持ってきたコップにレモン水を注いで飲む。
「あっ、あたしも飲みたい!」
「へいへい」
「このポテチ開けていい!?」と続けて訊ねてくる茜にレモン水を注ぎながら頷く。わーいと嬉しそうに袋の上部を開ける茜。それから底の部分を潰してどうにかすると――なんと袋が立ったではないか!
「オイオイなんだよ、そのオシャレな開けかた」
「え? 知らないの?」
え? それ有名なの? ……マジか。SNSで紹介されて流行っている? マジか、全然知らなかった。
「……ヨー兄、もっと流行のアンテナ伸ばそうよ?」
くっ、小学生に憐れみの眼差しを向けられながら肩を優しくぽんぽんと叩かれるとは!
「いーんだよ。今知ったんだから全然問題ないんだよ」
「うんうん、だよね。ほら、ポテチ食べよ? はい、あーん♪」
誰目線だよ! 文句を垂れつつも差し出されたポテチに
「ふとんがふっとんだー」
「……え?」
「いや、お前、真顔で見てくるのはやめようよ」
心が傷つくからさ。
どうやら茜は、棒が転がるだけでも楽しい年頃というわけではないらしい。