その本の表紙を飾っていたのは、一人の女だった。
否、この世界の慣習に従うなら、それは人ではなく匹で数えるべきものだった。
一輪の野薔薇、その花の中心から、美しい女性が姿を覗かせていた。彼女のドレスは薄手で、体の線が生々しく浮き出ていた。特に、形良く実る二つの果実と、ドレスの裾のスリットから覗く太股はよく目立つ。ただし、その肌は青白く、明らかに人外の気配を感じさせる。
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彼女は薄衣一枚をも脱ぎ捨て、生まれたままの姿となった。
彼女の身体は、美しかった。
支えるものが一切無いにも関わらず、たわわに実った果実は形を崩すことなく生っている。
その下、腹部は余分な脂肪や、女性美を損なうほどの筋肉はなく、すべすべとした表面と括れを維持していた。
ドレスの裾から覗いていた脚も、その全貌が明らかになることで、その真の美と価値が証明されたといってよい。
また、衣服が取り除かれたことで、それまで明らかでなかったもの――例えば、乳首や乳輪の色であるとか、陰毛の濃淡だとかが、露になった。
すべすべとした脚とは逆に、陰毛はやや濃く、その内側の秘密の部分を完全に覆い隠していた。
やや大きめの乳首と乳輪は薄い紫色で、これが人間の裸体を見慣れていると、やや奇妙な感じだ。彼女の肌の色からすると、確かに紫系の色になるのが自然なのかもしれない。肌の色が人間と同じだったら、丁度良い桜色だったのかもしれない。
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女は股を大きく開き、より派手に秘密の部分をさらけ出した。そうしてポーズとアングルを変えたことで、更なる発見があった。
例えば、茂みの奥に隠された秘裂の形状、色合いが明らかになった。鬱蒼と繁る密林の中心に咲く花は、まるでこの薔薇の魔物自身を思わせる佇まいであった。鮮やかな色合いなのだ。
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更にポーズを変え、尻をこちらに向ける。開いた薔薇の花弁と、逆に内側に向かって窄まった菊の花とが、密林の中でそれぞれ自己主張していた。ファインダーの向こう側にあって、なおも匂い立つかのような錯覚を覚えるほどに、その光景は鮮やかに目に焼き付いた。
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花の香りと美しさに誘われたオスが群がり、貪っていた。どちらの花も汚されていた。その光景は衝撃的であり、しかし官能のクライマックスを予感させるものでもあった。
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「……ふう」
少年は大きくため息をつく。川のせせらぎの音と、いくつもの獣の鳴き声が、その声をかき消した。そこは密林で、中心にはオベリスクの姿が見える。
彼は今、更なる強さを求めて、魔界にまでやってきた。魔界の景色は、歩けば歩くほど変化する。無限に続く回廊を歩き続けていると、遺跡の地下が眼前に広がっていることもあるし、今のように密林へと辿り着くこともある。
少年は以前拾ったエッチな本を一通り読み終わると、用済みになったそれを投げ捨てた。
最強のモンスターマスターを目指す彼とて、人並みに性欲はある。年頃の少年であるから、エッチな本に興味を持つことは、それほどおかしなことではない。
また、彼は心に傷を負っていた。以前、惚れ込んだ女性が、実は男性であることが発覚したからである。そのときに目撃した、股間の密林の主、あのおぞましいタイラントワームの偉容に、彼はトラウマを植えつけられたのだ。 オムド・ロレスにさえ感じなかった恐怖を覚えた。その心の傷を癒すべく、彼は本物の女体を求めていた。下世話な話であるが、そのエッチな本は、彼の心を幾分か癒したこともまた事実であった。
そんな休憩を終え、新たなモンスターをスカウトするという、本来の目的に向けて、再び活動を始めた。
辺りを見回す。名もなき無人島における最初の冒険は、密林だったことを思い出す。ヘルホーネット等がいるが、若きマスターにしてみれば論外だ。大悪魔や火竜でさえ不足なのだから、ヘルホーネットでは及ぶべくもない。
しかし、その蜂が向かう先には、巨大な薔薇中心には――
「あれは……」
なんたる偶然であろうか。先程、少年が貪っていたエッチな写真集。そのモデルと瓜二つの魔物が居るではないか!
「あいつをスカウトをする」
「良いのか、マスター? あの魔物は……」
デュランはあまり良い顔をしていない。マスターの下心を十二分に理解していたが、だからこそ警告をしようとした。デュランは全てを理解していた。
「きゃっ!?」
ローズダンスは魔物使いの存在に気付くと、驚いて悲鳴をあげる。その姿は、肉感的な身体で男を挑発していた写真の魔物とは、趣が異なっていた。乳房や脚のセックスアピールを駆使して、男を挑発し、誘惑する魔物との決定的な違いは、恥じらいだった。
一説によると、この魔物――ローズダンスは、黄道十二宮の処女宮、つまり乙女座を象徴するという。
だからだろうか。若きマスターはローズダンスと出会うのは初めてで、上に挙げたような仮説のことも知らないが、花も恥じらう乙女といった風情の姿を見せるローズダンスの姿が、エッチな本で見せた姿よりも、彼女にとって自然であるように感じられた。
「……お前をスカウトする」
若きマスターは宣言する。これは挑戦だ。同時に、じごくのマドンナによって植えつけられたのである心の傷を完全に癒す儀式なのだ。
「……受けて立ちましょう」
対するローズダンスも、先程の恥じらいの様子はなりを潜め、毅然とした態度で迎え撃った。
ローズダンスの抵抗は激しかった。彼女は強力な吹雪を吐き、敵対する魔物の体力を削ぎ、確実に死の淵へと追い詰めてゆく。また、花弁から伸びる二本の蔦は鞭のようにしなり、容赦の無い一撃を見舞った。吹雪も蔦も、死神の鎌を思わせる冷たさと殺傷力を秘めていた。もしスカウトに成功すれば、これは思わぬ拾い物だ。
だが、若きマスターの従える魔物も負けてはいない。
黄金の魔獣バッファロンは、その大柄で筋肉質な体格に相応しいパワーとタフネスを誇り、吹雪にも鞭にも耐え、ひたすらスカウトアタックの機会をじっと待つ。彼のパワーこそが、スカウトアタックの決め手となるのだ。
アンクルホーンも同じだ。こちらは荒っぽいだけでなく、頭も切れる知性派マッチョである。スカウトの成否を決める重要な要素である補助呪文を唱えつつ、じっと力を溜める。
何より、戦いと強さを追い求める魔神であるデュランは、その剣の技巧において卓越していた。その繊細な斬撃が、ローズダンスを追い詰めてゆく。
スカウトアタックは、相手の敵対心を折ることに極意がある。そのために、ダメージを少しずつ蓄積させ、精神的にも追い詰めることで、スカウトアタックは成功しやすくなる。デュランはその役割を買って出た。
「今だ!」
少年がスカウトリングを天に掲げた。最高のテンション、充実した補助呪文。千載一遇のチャンスだった。青白い不思議な光が、若きマスターの魔物を包み込む。
ローズダンスは戦いの手を止めた。
「……貴方の力は、よくわかりました。どうぞ、わたしをお好きになさってください」
ローズダンスは戦いの手を止めた。スカウトは成功したのだ。
改めて見ると、やはりローズダンスは抜群のプロポーションを誇っていた。
「……その、あんまり、見ないでください。恥ずかしいです」
何より、以前仲間にしたじごくのマドンナとは違い、その素晴らしい肉体を誇示するのではなく、あくまで乙女らしい恥じらいを見せる。ドレスは先程の戦いで損傷が見られ、豊かな乳房が露出している。だからこそ、腕でそれを覆い隠していたので、その先端の突起までは見られない。しかし、それが大きく、美しい形をしていることまでは隠せていない。その細腕からこぼれ落ちそうになっているのだから。
その様子が、先程のエッチな本とも、かつて仲間にしたじごくのマドンナとも異なっており、新鮮味を覚える。
「きゃっ!」
一陣の風が吹く。風の妖精は悪戯好きのようだった。ドレスのスカートが舞い上がる。ローズダンスは慌ててそれを押さえた。
「……」
悪戯好きなのは、何も風の妖精ばかりではなかったようだ。運命の女神もまた、茶目っ気に富んでいるらしかった。
若きマスターは目を擦る。そして深呼吸し、自分の頬を強く叩く。
そして今度は、マスター自ら手でローズダンスのドレスの裾を持ち上げ、その隠された秘密を明らかにする。ローズダンスは羞恥で顔を紅潮させながらも、マスターの意思には抵抗を見せなかった。
「……た、タイラントワーム」
やはり潜んでいた。鎌首をもたげる密林の主がそこにいた。それは、以前仲間にしたじごくのマドンナ以上の攻撃力を持つであろうことが伺えた。まさしくメガボディの大型モンスターに相応しいサイズの雄しべと、その機能を支える、袋に守られたゴールドオーブが備わっていた。
「……」
「エッチな本を使った直後に会う魔物は、全てオスだぞ」
デュランが補足する。
「……変ですよね。ここだけ男の子なのって。その、ちゃんとした女の子じゃなくて、ごめんなさい」
若きモンスターマスターの目の前が真っ暗になった。
エッチな本を使うと、次の戦闘で現れるモンスターは全てオスになります。最新作でも、本来メスしかいない種族の魔物もオスになります。
また、イルルカの図鑑によれば、色仕掛けで獲物をおびき寄せるのは、じごくのマドンナよりもむしろローズダンスの方なので、本来はこういうキャラじゃないと思われます。