天井には明かりがチラつく蛍光灯、クーラーの効いていないバックヤードで机を挟んだ正面には少女、不快な暑さでじんわりと噴いてきた汗をハンカチで拭い、話し出す前に舌で唇を湿らせる。
「うちでアルバイトがしたいんだってね。学生さん?」
「はいっ、近くにある奈芭女子大学に今年から通っています」
「ああ、あそこ。前にもいたよ、真面目な子でね──」
採用の方向で話を進めて、いつから出られるか、曜日や時間帯は、業務内容は……などなど、テンプレートをなぞるように言葉が出てくる口と並行した思考で、彼女を観察する。
鈴科佑佳、19歳、趣味は友達とライブハウスに行くこと、ね。それとなく面接理由を聞いてみると、時間給の高さが魅力的に感じたらしい。さっぱりとしていて、受け答えも端的にまとまっていて、接客もそつなくこなせそうだ。
幼さの残った顔立ちと、茶色に染めた髪は少女趣味なツインテールに束ね、白い襟の大きいフェミニンな服装をしながら、上擦った作り声と冷めた目のギャップが可愛らしいと感じた。
「今日はお疲れ様、これからよろしくね」
「はい、お世話になります!」
◆
あれから、二週間が経った。
変わらず蒸し暑い部屋でハンカチで汗を拭い、夕方に仕事を終えた後も居残りをしてコンセプトカフェの制服を着た佑佳ちゃんが対面に座っていた。
「どう、仕事には慣れた?」
「飾り帯の着付けはまだ慣れないですけど、先輩達が優しくて助かってます」
「それはよかった。……ところでさ、今までは仮の物を着て貰っていたけど、スカートに鈴科さん専用の刺繍を入れた物が完成したから、サイズが合っているか更衣室で試着してみて、手直しが必要な箇所があったら教えて欲しいんだけど、いいかな?」
「あー……わかりました。へぇ、私のはなんだが変わった模様ですね」
飾り帯を着け直すのが面倒だと分かりやすく顔に書いてあったが、すぐに思考を切り換えて、刺繍に興味が移ったようだった。部屋を出る背中を見送り、5分、10分、20分と時間が流れ……1時間が経過した。
ネクタイを緩め、カチャカチャ、とベルトを抜き取ってからスラックスを畳んで机の上に置き、鞄からコンドームの箱を取り出し、灯りが点いたままの更衣室の鍵をマスターキーで開く。
「鈴科さん、大丈夫ですか」
万が一の可能性を考慮して、白々しく心配をするフリをして扉を開くと、目の前の凄絶な光景に、口角がゆっくりと上がって固まる。
「ひいい゛っ♡たす、たすけ……おお゛う゛♡またいぎゅのやあン゛グッ♡ぃぎぎっ♡」
パンパンに膨らんだ睾丸がキュッと引き締まり、狂い咲きしたリュウゼツランのように突き上がった腕ほどの太さのペニスからはドクドクと間欠泉のように精子が溢れ、部屋の床や佑佳ちゃんの体を白濁で汚していた。
亜鉛サプリを飲んだ次の日に射精した精液のような臭さが部屋中に充満しているのが酷く、目に染みるような感覚すらある。
自分の精子が顔にかかっている間抜けさと、ぐったりと表情が死んでいる様に待たせ過ぎたと罪悪感が湧き、ピンク色の輝きを放つスカートの刺繍の端──悪魔の施した淫のルーン文字を掴む。
「この刺繍はね、男には無害なんだ。佑佳ちゃんの中にある雄の部分を精子に変換してから排出することは、魔の法則への抵抗力を下げるのに必要な手順でね。──俺の物になれ。そうすれば苦しみから開放してやる。いかせて、と言えば同意とみなすから」
ピトッ、と鈴口を人差し指で蓋をして、当然射精を塞き止められて逆流する精子によって目を白黒させる佑佳ちゃん。
「いかせてぇ……」
苦しさでエグエグと泣く佑佳ちゃんの心はすっかり折れていた。
そのまま指を押し込み、約束が違うと激しく首を振って逃げようとする佑佳ちゃんを抑えて、ズブズブと沈んでいって、ペニスの名残りはクリトリスとなった。そうして指でトントンと軽くクリトリスに触れると、プピュッ、と情けなく真っ白な濃い精子を吐いた後、蛇口の壊れた水道のように延々と潮を噴いては、俺の胸板をパタタッと濡らした。
落ち着いて、安らかな顔になった佑佳ちゃんが、股をM字に開いて甘えるように腕を伸ばし、太股を痙攣させている。この瞬間、オーナーとアルバイトという仮初めの主従関係が、絶対遵守の契約に昇華されていた。
『今回も上手くいきましたねっ』
一般人から見れば宙に浮かぶ制服──かつてはうらびれたフリーターだった俺が契約した淫魔は、満足そうに邪悪な笑みを浮かべて手に付いた精液を長く血のように赤い舌で綺麗に舐め取った。プチプチと石臼のように命を磨り潰して栄養にする淫魔の舌には、種の無い精液は苦いだけの汁のようなもので、しまった、とすぐに床に唾を吐き捨てていた。
『うう、まっずい……はやく口直しをちょうだい』
「馬鹿なのかわざとなのか……馬鹿だな。しばらく足を開いたまま両手で抱えてて。今から楽しくセックスしよう」
「はいっ、セックスするのが楽しみですっ!」
マジでバカ可愛いな、と佑佳ちゃんの胸を軽く揉むと「やぁん」と媚びた声を出して耳が気持ちいい。
用意していたコンドームの封を切り、半勃起しているペニスに強引に着け、ペチペチとおまんこの割れ目を叩いたり、ズリズリと肉厚さを楽しんでカリを引っ掛けたりしながら気持ちを高めていると、海綿体に充分な血液が集まってきた。
「やっぱり気持ち悪いから、シャワーにしよう」
本番前になって、精液まみれの佑佳ちゃんを抱くのは抵抗があった。淫夢の尻尾から出るドロドロと粘度が高い媚薬にまみれた汗だくトリモチセックスで髪までネバネバになるのは最高だが、それとこれとは別物だ。
『ホテルに移動しよっか』
淫魔が指を鳴らすとポーチが現れ、四角いキューブを取り出して、投げる。すると、直方体に膨らんで、薄い膜の向こうに違う部屋の景色が見える転移ゲートが展開される。
淫魔の力でラブホのオーナーと主従関係となっているおかげでいつでも使えるヤリ部屋に直通状態になっているので、かなり重宝している。
バスルームに移動して、ノズルを手に取って精液をざっくりと洗い落とし、補充されているボディソープで佑佳ちゃんの若い肌を楽しむ。どこもぷにぷにと柔らかくて、甘い香りで満ちて、耳や頬っぺたをむにむにしてから唇を重ねたり、お腹を擦り合わせてゾリゾリと陰毛の音を鳴らして泡立てて、お湯で全身の泡を洗い落とす。
ツインテールの房が枕に広がり、唇を丸めて見つめる佑佳ちゃんは、セックスを楽しむという強い暗示で脳を上書きされて、笑顔の目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ミチミチッ、と亀頭を膣に埋め、カリでクポクポするだけで、泡沫のような感情は快楽に流されて、口を尖らせて鼻息を荒くする佑佳ちゃんの鼻から一筋の血が流れた。
「せっくしゅぅう~うう゛っ♡」
腹の底から絞り出したような声に呼応して、ヌププッとあっさり全てを咥え込み、膣がキュッと絞られて、甘い抵抗を刺激に変換して、パコパコと腰を振る。
言語を失った獣のようなうめき声と高まる体温と射精感。
体位を変えて腰に手を置き背後からお尻に腰をぶつけると、白い肌を波打つ贅肉と背中の曲線美に感動する。
指を絡め、舌で口内を蹂躙しつつ、その瞬間を迎える。
『いただきまぁーーす♡』
このときを虎視眈々と狙っていた淫魔がペニスを引き抜き吐精した後に渡す予定だったコンドームを外して直接咥え込む。
ゴキュッ、ゴキュッ、と汲み上げポンプのような吸引でえげつない量の精液が全て淫魔の口内に吐き出され、ピチピチと活きのいい子種達が淫魔の舌の上で鏖殺され、美味そうに喉を鳴らす。
離れようとしてもひょっとこ顔で食らいつき、俺が諦めると根本までピカピカになるまで丁寧に舐め取り、睾丸をたぷたぷと持ち上げて余力を量る姿が不気味だった。
『ごちそうさまー、あとは好きにやってて』
「ああ、そうする」
マナーだとかエチケットだとかの理由でコンドームをしていたのではなく、淫魔の食事分を渡す契約だったのでしていただけだ。
唾液でテラテラと光る、真っ赤に赤熱しつつもくたびれかけているペニスだが、粘液と熱い膣を直接に感じて、おっぱいを揉んでいると回復してくる。
寝転がってリラックスをしている俺の上でリズミカルにぱちゅん、ぱちゅん、と騎乗位をする佑佳ちゃんの求めてくるキスに応えて、腰をガッシリと掴むと笑みを深めて「いいよ」と囁き、胸板でおっぱいを押し潰しながら抱き着いてくるのが愛おしい。
ビュルルル、ビューーッ、トプッ……。
「遅くなってごめん。これ、帰りのタクシー代ね」
「わぁ、バイト代より多い!明日もセックスしたいですっ」
「あははっ……強かだね」
外はすっかり夜になっていた。
店舗のバックヤードに戻り、4万円の入った茶封筒を渡すと、内股気味になった佑佳ちゃんがひょこひょこと帰っていく。
あー楽しかった、楽しかったけど……いや、楽しかったなぁー。
『マンネリを感じるようなら、一度、魔界に行ってみますか?日本では味わえない刺激がたくさんありますよ』
「魔界?魔界かー……それもいいかもな」
悪魔の囁きに抗ったところで、結末は変わらないだろう。ならば、易しに流されるのが気持ちのいい生き方だろう。
──ねぇ、知ってる?あそこのオーナー。
──えっ?知らない。
──悪いことして、夜逃げしたんだって。
──給付金詐欺みたいな?
──そこまで詳しいワケじゃないんだけどね。たぶんそう。
「こらーポチ、トイレを覚えてよ!」
「うぅ……あい?」
「もうポチったらお馬鹿さんねっ♡」
ぼくはいま、とてもしあわせです。