時間はわずかに遡る。
僚機に曳航されてくるヌーベルジムⅡ07の胴体には、ぽっかりと暗い穴が開いていた。
今なお臨戦態勢にある連邦軍巡洋艦トラキアとそのMS隊の前で回頭し、緊張の宙域から離脱していこうとするアイリッシュ級戦艦ジャカルタ。
その後部MS格納庫は装甲シャッターに区切られ、艦前方に伸びる両舷カタパルトと直結した格納庫から独立している。
そこへ肩を貸すようにして僚機を曳航してきた先行生産型ネモが、その後部カタパルトデッキへ着艦する。そのままMS格納庫内へと押しやられるように搬入されて、ヌーベルジムⅡ07は力なく崩れ落ちた。
胴体部のコクピットハッチには、直径一メートル近い穴が開いている。チタン・セラミック複合装甲を焼き切られて生じた穴の周りには融解、蒸発しながら押し退けられてきた装甲材がへばりついてはいたが、すでに冷え固まりつつあるようだった。
地球連邦軍一般部隊のジムⅡが繰り出してきたビームサーベルの刺突は、ハッチの装甲板を突き破りながら内部の球形コクピットブロックを串刺しにして貫通。
メガ粒子の剣はその途中でパイロットが座っていたリニアシートを完全に蒸発させていたが、背面装甲とバックパックにまでは抜けずにそこで止まっていた。だからヌーベルジムⅡ07の機体に開いている穴は、ハッチ正面にある一つだけだ。
追って後部デッキへ着艦してきたリック・ディアスが、その傍らで頭部のコクピットハッチを開く。飛び出してきたノーマルスーツはまっすぐヌーベルジムⅡのコクピットハッチへ取り付くと、そのまま破孔からイジェクションポッドの内部へ入り込んでいく。
リニアシートやコンソール、パイロットスーツまでもが一瞬のうちに蒸発して飛び散り、原形を留めることなく微細な破片となって全天周モニターの残骸にへばりついているコクピットの内部をその肉眼で確認しながら、リック・ディアスのパイロットはバイザーの下に深い笑みを浮かべた。
「こちらですわ、おじさま」
「お、おう……」
ノースリーブの上衣にミニスカート、という大胆な構成のエゥーゴ女子制服でトランジスタグラマーの肢体を包んだ美少女、リアンナ・シェンノート少尉は時折八重歯を見せた笑顔で振り向きながら、ドッツィ・タールネン少佐を先導していた。
右手でリフトグリップを握って艦内通路を流れつつも、彼女の左手はミニスカートへ申し訳程度に添えられていて、白く輝くニーソックスを履いた魅惑の太股から、その奥の空間が直接見えてしまう事態だけは防がれている。
しかし無重力に泳ぐリアンナのスカートは本当に短く、ふとした拍子でシルク地らしき白い輝きが時たまちらりと視界へ侵入してくることを、ドッツィは完全に阻止できていなかった。
「あ、アカン……アカンやつや、これは……」
最後に女を抱いたのはいつだったか。そうでなくともリアンナの美貌と蠱惑的な仕草は、あまりに刺激が強すぎる。パイロットスーツの股間で、ドッツィの巨砲はもはや痛いほどにいきり勃っていた。
眼前の美少女を今すぐ組み敷いてあの扇情的な制服をこの手で破り裂き、乙女の素肌とぬくもりを味わいながら秘密の花園へ土足で踏み入って自慢の息子を暴れさせたい。そんな衝動に駆られる。
だが、それこそがエゥーゴの狙いなのだ。
彼らの戦艦の中で、仮にも士官でありMSパイロットでもある女性と肉体関係を持つなど、もうその時点で彼らに金玉を握らせるようなものだ。今後の組織間交渉にどう影響するかなど分かりきっている。
耐えるんや、今は耐えるんやドッツィ……! 耐えて耐えて耐え抜いて、後で一人になったときにこの子の髪のにおいとか腿の線とか乳の柔らかさとか、思い出しながら大事に大事に使うんや!
「……あら?」
「はおっ!?」
ぐっ、ときつく目を瞑り、瞼に焼き付かせたリアンナの無防備な姿を確認するように楽しみながら自分へ言い聞かせていたドッツィは、その動きへの反応が遅れた。
リフトグリップを離して壁を蹴り、急停止していたリアンナの尻へドッツィは顔から突っ込む。まくれ上がったミニスカートの下で肌触りの良い絹糸のショーツへ頬を擦り付けるようにしながら、そこに包まれた豊かな尻肉で跳ね返された。
「がほ……っ」
屈強なドッツィの体重は小柄なリアンナの倍近かったが、何せ打ち所が打ち所だけにただ跳ね返されて悶絶し、慌ててスカートの中から頭を出して喚いた。
「ちゃ、ちゃうねん少尉! これはな、ワシが少尉にやましいことを考えたりなんかやらしいことしようと思とったりしたわけとはちゃうねん!!」
「……どういうことなんですの?」
「へっ……?」
――いやぁ痴漢セクハラ強姦魔ですの犯されますわ誰か来てくださいまし!
リアンナにそう叫ばれながら、手ぐすね引いて待ちかまえていたエゥーゴの強面どもに囲まれる事態を想像していたドッツィは、尻から突き飛ばされながらも冷静に姿勢を立て直し、前方を注視している彼女をおそるおそる見上げた。
彼女の見つめる先には、パイロットスーツ姿の若い男二人がいる。何かいいことがあったのだろうか、彼らの表情は喜びと希望に溢れ、それを噛みしめているのがこの遠目にも分かった。
だがそんな二人を見るリアンナの目は今までドッツィに向けていた笑顔が嘘のような冷たい真剣さに満ち満ちていて、その迫力にドッツィは喉まで出かけた言葉を引っ込めた。
相手がこちらに顔を向けてくるタイミングで、リアンナはそれまでの冷たさを嘘のように和らげた表情で呼びかけた。
「あなたたち、どうかなさいましたの? 何かありまして?」
「あっ、シェンノート少尉――ちょうどいいところに!」
リアンナを見つけたエゥーゴのパイロット二人は、息を切りながら笑みをこぼす。
二人は先ほどの連邦軍トラキア隊との接触で、コクピットをビームサーベルで貫かれて戦死したマイン・ハフナー少尉が率いる列機パイロットたちだった。
リアンナが違和を感じたのは、そんな彼らの表情に浮かぶ奇妙なほどの明るさである。
彼らが出身地である鉱山衛星から行動を共にしてきたマインは、彼らにとって単なるMS小隊長である以上に、人間的な尊敬と憧憬を同時に集める『姐さん』だったはずだ。
そのマインを失ってしまった今、悲嘆と絶望と敵への憎悪に暮れることこそあれ、こんな喜びに満ちた表情を浮かべていることなど、決してあり得ないはずなのだが。
彼らは通路の壁を蹴りながら近づいてくると、リアンナの間近で身体を止めながら喚いた。
「シェンノート少尉! 生きてたんス! 姐さん生きてて、後部デッキから集中治療室に搬送されてたんス!!」
「……えっ?」
そのまま固まるリアンナに、もう一人が畳みかけるようにまくし立ててくる。
「連邦軍が突き刺してきたビームサーベルが、実はコクピットの姐さんのところをうまいこと外してたらしくて……あれでヌーベルの操縦系と通信系はやられたし、姐さんも気絶しちまってたけど、姐さんはちゃんと生きててくれてたんですよ!!」
「回収したロストフ隊長が後部デッキから機体を搬入したとき、コクピット周りをもう一回よく見てみたときに気づいたらしくて!
何日かは面会謝絶で療養に専念しなきゃならないけど、後に残るような大きな怪我もないらしいっス!!」
「そうそう! あと何日かしたらまたリハビリして、多分またMSパイロットにも復帰できるだろうって……! 良かった……本当に良かったぁ……!!」
口早に喚き散らしながら、彼らはこみ上げてきた嬉し泣きの涙に暮れる。
「それは……良かったですわね。私もマインさんがいてくださらないと、いまいち張り合いがありませんもの……」
「そッスね!」
どこか消え入るように先細ったリアンナの言葉を押し潰しながら、二人はすでにその後ろのドッツィへ挑むような視線を放ってきた。
「おう、そっちのオッサンが例のジオン軍かぁ?」
「ウチの姐さんが命張ってあんたら助けたんだ! しっかり働いてくれよな!」
「せやな……まあ、ワシらを助けてもうた分の恩返しぐらいはさしてもらうわ」
「期待してんぜ?」
「姐さん退院したら挨拶に来いよな!」
非正規軍のジオン残党とはいえ、少佐の階級章を付けたドッツィ相手にタメ口を叩きながら、ハフナー小隊の軍曹二人は逆方向に消えていった。
「なんやよう分からんけど、仲間が助かったみたいで良かったな。……シェンノート少尉?」
「…………」
「どないしたんや? 行かへんのか?」
「えっ? ああ、いえ……そうでしたわね。お部屋まではもう少しですの。参りましょう、おじさま?」
彼らの姿が見えなくなっても何か考え込んでいたリアンナは、ドッツィに問いかけられるとそれまで通りの笑みを浮かべてみせた。
その表情筋の動きは今までと同じはずなのに、ドッツィにはなぜか今のリアンナがまったく違う誰かに見えた。
目覚めたのは、薄暗い部屋の中だった。
重力はなく、身体はベッドに横たえられている。だが両手と両脚はX字を書くようにぴんと伸ばされたまま、それぞれ手首と足首を何か頑強な拘束具でベッドに堅く戒められていて、自由に動かすことが出来ない。
身体が熱い。全身がひどく火照っていて、抑えきれないだけの強い熱量を帯びてしまっている。そんな素肌に下着もなく、ただ患者用ローブ一枚を身につけたきりの姿で、彼女はそこに拘束されていた。
「……お目覚めかな。ハフナー少尉」
「っ、てめ……っ、……隊長……?」
薄暗い闇の片隅が動いたと思うと、それまで並ぶ端末の画面をじっと見ていた男の影が揺らいでいた。
それが戦艦ジャカルタのMS隊長、ベリヤ・ロストフ大尉だったと気づくまでに一瞬の間があり、そしてマイン・ハフナー少尉は彼の姿を見た瞬間、得体の知れない鈍い疼きを自らの女芯に感じていた。
「おとこ、……おとこっ……」
その存在を認識した瞬間にはうわごとのように言葉が漏れ出し、すでにたっぷりと潤っていたマインの秘所からさらなる愛液が溢れ出す。
「ずいぶん苦しそうだな、少尉」
「あアッ!?」
その剥き出しの肩にロストフが軽く触れただけで、マインの肉体に電撃にも似た鋭く、そして甘い痺れが走ってしまう。
今まで決して関係良好とは言えなかった――むしろ憎い連邦軍の出身者であるだけでなく、人間的にもどこか虫が好かないとまで思っていた男に触れられただけで、マインはその頬のみならず全身の白い柔肌をことごとく紅潮させてしまっていた。
たっぷりとした肉感的な乳房はさらに大きく張りつめて乳首を尖らせ、秘裂はいっそうの水気に溢れながら腿に愛液を伝わせていく。
「ああ、ああああああ……っ。なに……なんだよ、これぇ……っ」
「ハフナー少尉。君は出撃し、そして撃墜された」
「げ、撃墜……?」
その言葉でマインの記憶がゆっくりと、すべての起点へと巻き戻しをはじめていく。
……そうだ。あたしは連邦軍の一般部隊相手にドジを踏んだジオン残党のバカどもを助けて拾い上げるため、リアンナの奴と一緒に小隊の舎弟どもを率いて出撃した。
のんきにバズーカなんぞ構えてやがった、連邦軍のトロそうなジムⅡを真っ先に狙った。輪から弾き出してボコボコにして、いよいよコクピットを潰してやれるって段になったところで、連邦軍のジムⅡが横からもう一機割り込んできた。
そいつは生意気に、ビームサーベルなんか抜いてきやがって。それであたしもアツくなって、そいつとサシの本気で斬り合って……斬り合って、……そのあと……どうなった?
なだれ込んでくる灼熱の閃光、陽炎になって消し飛ぶコクピット内のすべて、燃え上がる間もなく破裂していくパイロットスーツ――
「っ……!?」
「落ち着きたまえ」
がち、ぎち、ぎちぃっ、とマインの四肢を戒める強固な拘束具が、悲鳴を上げるように強く軋んだ。
「そ、そんな……、あたしは……あたしは、死ん、だ……!?」
「違うな。君は生きている。生きているんだよ、少尉」
言いながら、ロストフはマインの震える青い瞳を覗き込んだ。
「君はただ、混乱しているだけだ。無理もないことだよ。普通なら死んでいてもおかしくない修羅場をくぐったのだから。
そうだ、少尉……いま、欲しいものはないかな? 何でもいいから、好きなように言ってみたまえ」
「ほ、ほしい……もの……?」
うわごとのように呟きながら、しかしマインの思考には、自分が身動き一つも出来ないよう厳重に拘束されていることや、得体の知れない密室でこの男と一対一で対峙しているという状況に関する疑問はいっさい上がらなかった。
なぜなら彼女の思考はすでに、たったひとつのものに対する強烈な渇望によって、すべてを塗りつぶされてしまっていたからだ。
「何でも構わない。好きな食事や飲み物、自由な睡眠、酒、強力な新型MS……自分がいま切実に必要性を感じているものを、何でもいいから言ってみたまえ。
任務を果たすべく、自らの犠牲を厭わず果敢に邁進した君のためだ。功に報いて労をねぎらうため、隊長として最大限の努力を尽くそう」
「な、なんでも、……!? じゃあ、……じゃあ……っ……」
四肢を拘束されたまま荒い呼吸に肩と胸とを上下させるマインを、ロストフは眼鏡越しに穏やかな瞳で見つめる。
そのマインの濡れた瞳は、ロストフの全身を嘗め回すように眺める。やがてその視線が一点に止まったとき、濡れた唇から自然に言葉がこぼれ落ちた。
「……ちんぽ……」
「ン……? ハフナー少尉。今、なんと言ったのかね?」
「えっ……!? う、嘘っ。あ、あたしは今、いったいなにを……っ!?」
自分の発言から一歩遅れて、その言葉の異常さに気づいたマインがかっと赤面しながら身をよじった。
手首足首を拘束する枷がギシギシと軋む。その上体の動きで張りのある大きな乳房が振り乱されてローブの緩い合わせを押し広げると、その内側に深い谷間と弾み飛ぶ色素の薄い乳暈が曳く桃色の残像が覗けた。
「なんで……なんであたし、あんなことをっ!? そ、そもそも……この格好は何なんだよッ! こんな……こんなヤツの目の前でっ!」
「おやおや。君の上官に対して、ひどい言いぐさだな」
取り乱すマインからこんなヤツとまで呼ばわられても、ロストフは眉の一つも動かさなかった。泰然としたまま、同じ質問を繰り返す。
「さあ、ハフナー少尉……素直になるんだ。言ってごらん。君は今、何が欲しい?」
「な、なにを……! あたしには今、欲しいものなんか……欲しいものなんか……っ!!」
いつも通りの男勝りな勝ち気さで言い返しながら、しかしマインの視線はその一カ所へと吸い寄せられていく。
連邦軍制服のトラウザスを履いた上官、ベリヤ・ロストフ大尉の股間へと。
そこに普段とは異なる明らかな屹立の気配を感じて、マインの喉がごくりと鳴った。同時にじん、と甘い痺れが、自らの秘裂から奥へと染み渡ってくる。
あれが、欲しい。
さっきからずっと全身に感じている、怖いほどの熱さ。
あの太くて堅くて大きな『男』そのものを、あたしの奥まで埋め込んで、もっともっと熱くして、どこかずうっと遠くまで飛ばしてほしい。
あたしの足りない部分を、肉体と精神の両方にぽっかり開いたこの空洞を、こらえきれない寂しさを埋めてほしい……。
「困ったものだな。君がはっきり口にしてくれない限り、私の方からは何もしてあげることが出来ないのだがね」
「……てめぇ……っ!!」
戒められている手足が恨めしい。これさえなければ自分の方からこの男へと襲いかかって、四の五の言わせず組み敷きながら無理矢理にでも男の逸物を自由にすることが出来るというのに。
ロストフは股間を堅く勃起させてはいても、その逸物をマインに対して使おうとする素振りはまったく見せていなかった。
渇望するものが目の前にあるのに、触れることはおろか、直接目にすることすらかなわない。その絶望が彼女にきゅっと唇を引き結ばせ、目頭を熱くさせた。
「わ、分かったよ……。言えば……言えば、いいんだろ……?」
マインは恥辱に耐えながら、火照りきった顔に薄く涙を浮かべる。目を伏せながらも、ついにその懇願する物を口にした。
「ちんぽ、……ちんぽが欲しい……っ。あんたの……隊長のちんぽが、ほしい……それで、あたしを……あたしを、むちゃくちゃにしてほしい……っ!」
「フム。そうか……。君が欲しいのは……これか?」
言いながら、MS隊長はその配下にある美人小隊長の目の前でジッパーを下ろし、そこから己が分身を取り出していく。
「ああっ……!」
すでにその尖端を淫靡に濡れ光らせている巨根の凶悪な赤黒さに、マインは息を呑みながらただ目を奪われた。ただ目にしたというだけのことで、彼女の剥き出しの秘裂は熱い蜜を溢れさせていく。
「さあ、少尉……。私のこれを、君の自由にさせてあげよう。どこだ……? 君はこれを、どこに欲しい……?」
「どこに、って……そんなの、決まってるだろ……っ!」
それを目にしてしまったことで、マインの股間に走る甘い痺れがいっそう強くなってきている。しかし欲する場所まで口にするには、まだマインに残る羞恥心が邪魔をする。はっきり言葉に出すことが出来ない。
ロストフはそんな彼女へ穏やかに笑うと、ものを取り出したまま不意にマインとの距離を詰めてきた。
「少尉。こういう大事なことは君の口から、はっきり言ってもらわないと困るな」
「ん……ッ!?」
視線を逸らして俯いたマインの頬に、ロストフの怒張がその尖端を押しつけてくる。
これほどの至近距離で男の勃起したペニスを見るのは、マインが生まれて初めてのことだった。立ちのぼる雄特有の異様な臭気が、彼女の意識を支配していく。
「あ、ああ……すごっ、……おっきい……っ……」
間近で感じるその存在にただ圧倒され、小さく口を開けながら食い入るように見つめるだけのマイン。ロストフは彼女の後頭部を不意に右手で抱き寄せた。そして腹へ付くほどに反り返っている逸物を、その唇へと押し付け、そのまま突き入れる。
「んむ!? はぷうぅっ!!」
「ああ、……いいぞ……少尉……」
突如として、上官の男根をその腔内へと押し込まれたマイン。巨大な逸物はただの一押しで喉元近くまで易々と達して、マインをえづかせる寸前で侵攻を止めた。
「少尉。まずは、味わいなさい……歯を立てないようにね……」
「ン、……んぷ……っ、んく……んむ……あむ……っ」
最初は文字通りに面食らっていたマインも、ロストフの熱を帯びたペニスをその腔内いっぱいに感じるとその双眸を蕩けさせ、自ら愛おしげに頬張ると前後しはじめた。
唾液を絡ませながら舌を繰り出し、不器用で不慣れな動きながらも粘膜で搾るようにしながら健気に愛撫し、初めて頬張る男性自身を味わっていく。舌を絡みつかせながら頬の全体で搾るように鈴口を吸い上げ、陰茎の全体を味わい尽くそうとするかのように嘗め回していく。
「そう、そうだ、少尉……いいぞ……ううっ!」
「んっ!? んっぶぅっ!?」
その途中で、ロストフの雄が爆発した。マインの喉奥から逆流して腔内を埋め尽くすほどの白濁液が雄の熱量とともに放たれて、青い瞳を大きく見開かせる。
シャギーの掛かった長く美しい金髪ごと後頭部を押さえ込みながら、ロストフは最後の一滴までを彼女の腔内に射精した。
ぬめつく粘液の余韻を味わいながら逸物を唇から引き抜いていくと、別れを惜しむようにすぼめられた唇から唾液と精液の混じり合いが糸を引き、そして恍惚とした表情のマインがごくんと喉を鳴らした。ロストフの子種汁を、一滴残らず飲み込んだのだった。
マインは荒い息を吐き捨てながら、青い瞳に涙を滲ませて食いつくようにロストフを睨む。
「おい、これだけ……? これだけじゃねぇだろうな……? もっとぉ、……もっと寄越せよぉ……っ……!」
「分かっている」
言いながら、ロストフは彼女の正面で身を屈めた。今度は彼女のそれより自分の目線を下げて、再び身体を寄せていく。
「少尉。実にいい乳房だ」
「あ……ッ!」
そして賞賛とともに、ロストフの手がマインの胸に伸びた。すでに開いていたローブを肩から落とすと、はちきれそうに膨らんだ十九歳の若い乳房を、男のごつい両手が左右同時に握り込んでいく。
敏感な桃色の頂への不用意な直撃だけは避けながらも、ロストフが硬軟織り交ぜた握りで巧みにその山体を変形させていくと、マインは切なげなあえぎ声を掠らせながら乳首を男の手指へ触れさせようと身をよじった。
「あ……ッ! てめぇっ、なにあたしの乳揉んでんだよ……ッ、あふッ!!」
「素晴らしいな、少尉。この艦の女性たちの中でも、トップクラスの大きさではないかな。ノーマルスーツや君たちの小隊がよく着ている作業服のときもずいぶん立派に見えていたものだったが、こうして直に触れるとなると格別だね。さて、少尉。この乳房……今までこうして、男に触れさせたことはあったのかな?」
「そんなこと……っ、あるわけないだろうがぁ……っ!」
「ほほう。では――」
言いながら、ロストフは白い乳房の峰のその頂へと唇を寄せた。恥ずかしげにその尖端部を眠らせていた陥没乳首を口に含むと、マインがひっと息を吸い込んで身をよじる。
「あっ!? あああーーーっっっ!!」
ロストフは逃すことなく舌を使って乳暈を裾野から舐め上げ、続けて直上から火口を攻め抜く。
――初物、というわけだ。
「あ、あたしの乳! あたしの乳がぁ、こんな奴なんかに揉まれて吸われてェッ……変にッ……、変になるぅぅ! 何これぇ! 何だってんだよっ、どうなってんだよぉぉぉ!!」
頭上で響くマインの甘い悲鳴を聞きながら、ロストフは乳房を両手で裾野から搾り出すように揉みあげ、むしゃぶりつく。頬張った乳暈ごと、出るはずのない母乳を狙うように吸い上げていった。
何度も乳首を替えながら、マインの双乳を丹念に吸いしゃぶり上げたロストフが唇を離す。てらてらと汗と唾液に濡れ光る乳頭は、恥ずかしげに隠れていた暈の中からその頭を突き出し、今にも母乳を分泌しそうな授乳器官としての威容を誇っていた。
「そうか、初物だったか、少尉。これほど見事に育った乳房が、たったの一度も男に愛でられることも、赤子を産み育てることもないまま、危うくビームに焼かれて原子の塵に還るところだったとはな」
「もう……もう、我慢、できないぃ……っ。はやく……早く、チンポ寄越せよ……さっさとあたしに挿れろぉっ!」
その唇と喉で逸物を味わったうえ、乳房を弄ばれて性感をさらなる高みへと導かれていながら、まだ男の指にすら触れられていない雌の部分がマインの魂へと上げる悲鳴は、もはや一瞬すらも耐え難い域に達していた。
いやいやをする頑是無い赤子のように、滂沱に溢れた青い双眸で男の慈悲を乞うようにすがりつきながら、マインは必死にロストフの肉槍を求める。
だが必死の哀願を穏やかな表情で受け止めながら、ロストフは腰の動きを止めてひどく冷ややかに言い放った。
「ハフナー少尉。君が本当にこれを欲しいと思っているのなら、私に対してもそれなりの態度――お願いの仕方というものがあるのではないかな?」
「な、なに……?」
「君の誠意が感じられないようなら……これの今この場での君への提供は、見送らせてもらうとしよう」
「…………ッ!!」
ロストフが勃起したままの肉棒をジッパーの内側へしまいこもうとした途端、がちがちがちぃっ、と手首足首の拘束具が異様な音を鳴り響かせた。
頑強な造りのベッドそのものが不気味に軋む。それはおよそ人間の力とは思えないほどの強烈な破壊力を想像させたが、ベッドと拘束具がそのマインの暴力をもどうにか耐えきってしまうと、彼女は息を切らせてうなだれた。
「うっ、ううう……っ。わっ、分かった……分かったよ……。……ください……」
「……どうした? ずいぶん声が小さいようだが、何か言ったかね、少尉?」
「…………!!」
女の唾液と己が精液の混合物に塗れたままの分身をトランクスの内側へしまい込み、淡々とジッパーまでを上げていくロストフの仕草に、マインは涙も唾液も鼻水さえも垂れ流しながら喚いた。
「ロストフ大尉の、隊長のおちんぽくださいっ!! お願いしますっ、あたしのメス臭いぐちょぐちょのおまんこに、隊長の立派なすごいおちんぽ挿れてください! お願いします! おねがいしますっ!!」
そこまで一気に吐き散らして肩で息するマインは、近づいてくる男の気配に紅潮しきった頬を上げた。
「ほう、そうか……。君に、そこまで求められてしまっては……な?」
「……!!」
目の前にあれほど望んだ男の剛直がそびえ立ち、それが自分の股間へ迫ってくるのを目撃して、マインはすべもなくあえぎ散らした。
「あっ! あっ! あああっ!! ひううっ!!」
肉棒の尖端に秘裂から溢れかえった愛液へ触れられると、それだけでマインは反応して呼気を吐き出す。
ロストフの剛直はもはや、彼女を最奥まで一突きに貫き通してなお余るほどの堅さと大きさに張りつめたまま、美しき金髪処女の膣口へと添えられた。
ロストフの口許が歪む。
「よく言えた、少尉」
「ああ、あッ! おちんぽ……隊長の、隊長のおちんぽ来るぅ……っ!!」
そして少しずつ、少しずつ、ロストフはマインへの侵入を開始した。むっちりとした安産型の尻肉を両手で掴み、その侵攻経路を安定させる。
「くるぅ……おちんぽ、あたしのおまんこに、はいって……はいって、きてる……きてるぅぅ……!!」
愛液に水没して海中洞窟と化したマインの秘所はただ貪欲に、ねっとりと媚肉を絡みつかせながら締め上げて味わうように男を受け入れ、呑み込んでいく。
それは素晴らしく滑らかな、男に心地よい挿入だった。女は男の侵入が深まる度に高まっていく天井知らずの性感に、ただ目を見開きながら耐えるしかない。
「あ、あ、あ、あ……ッ!!」
「……ほう……」
だがその途中で征服行為に抵抗を感じ、ロストフは緩やかな腰の動きを止める。口許の笑みを深めた。
マイン・ハフナーという女性が、今までの人生で一度もここまで他の男を迎え入れたことがなかったという、その純潔の証――そこにロストフは、足を踏み入れようとしているのだ。
「君の処女を、奪うぞ……いいな?」
「はい! きて……来てぇっ!!」
答えの分かりきった質問のあと、ロストフは躊躇もなく、それまでの穏やかさが嘘のような鋭さで一気に腰を突き込んだ。
「……ふッ!!」
「アグゥッ!?」
声にならない娘の絶叫。儚い抵抗のすべてを一瞬のうちに蹂躙して突き破り、ロストフはマインの最奥へと到達した。
子宮口まで突き抜かれたマインは全身を痙攣させながら、同時に今までにない強い力で、侵入した異物である雄の剛直を締め上げに掛かる。
その強引な誘惑は二発目の射精を即座に搾り取ろうとするかのようだったが、ロストフは下腹に力を込めてその吐精感をこらえ、ベッド上で尻肉を掴みながら、獣じみたピストン運動を開始した。
「あッ! あッ! あッ! ああッッ!!」
雄そのものの荒々しい前後運動に、マインの胸に実る二つのたわわな果実が円弧を描くように大きく、激しく揺れ弾む。
かつての陥没が嘘のように左右で勃ち上がったその可憐な尖端は、薄暗い室内照明の下で弾み転がる白い双肉塊の頂で、鮮やかな桜色の軌跡を曳きながら乱れ飛ぶ。
「ああ! あああッ、あああああああ~~~ッ!!」
シャギーのかかったセミロングの金髪を振り乱して身も世もなく絶叫し続けるマインを、ロストフはひたすら激しく犯し続けた。
二人の結合部から無重力空間へ溢れ出し、水滴となって室内へ漂う体液の中へ次第に、亀頭で掻き出されてきた破瓜の鮮血がにじみ出てくる。
四肢を拘束された金髪巨乳美女と、獣の激しさの中にもどこか冷ややかな目を眼鏡の下に隠した男の合体。それは彼女が時を忘れるほどに長く続き、その意識を蕩けさせていく。
そしてロストフもまた、この金髪の乙女との交わりから得られる深い満足感の累積が、彼自身の生殖本能を新たな領域へ押し上げつつあることを感じていた。
犯しながら耳元に囁く。
「少尉、……どこに射精してほしいんだ?」
「ふえっ、ひゃっ、ひゃへい……っ?」
ロストフの激しい腰使いにぬめる膣内を何度も激しく抉られながら、押し寄せる快楽の圧倒的な荒波に、マインはその思考能力を完全に麻痺させられてしまっていた。
「私は、もうすぐ射精する……いま君の中にある私自身の切っ先から、精液をたっぷりと吐き出す。それを君は、どこに出してほしい? 顔か? 胸か? 尻か? それとも――」
「はぐうっ!」
ひときわ鋭く押し進められたロストフの腰使いが、マインの奥を抉り込む。
「このまま、中、……か? どこがいい、少尉? 君が望む場所に、私の精液を残さず注ぎ込んであげよう」
「ど……どこ、って……」
すでに性欲の牝獣と化しているマインに、まともな思考能力などほとんど残っていない。そんな彼女でも意識の端で、避妊具も付けずに行われる膣内射精に伴う危険ぐらいは認識することが出来ていた。
このままナカに出されたら、自分は妊娠するかもしれない。
デキてしまったら――妊娠してお腹が大きくなったら、もうMSに乗り続けて皆の仇を討つために戦い続けることも出来なくなる。エゥーゴの戦士ではなく、お腹の子のために、ひとりの母親として生きるしかなくなる。
戦えない身体になるのも、母親になるのもイヤだ。
そこまで認識していながら、マインは肉の内側から沸き起こってくるその欲求を拒むことが出来ずにいた。
だって、子宮が望んでいる。
早く精液を飲みたいって。
いちばん子宮に近い場所までたくさんの精子を送り届けに来る、太くて堅くて長いちんぽを絞り上げて、金玉の奥から最後の一滴までを吸い上げながら子宮の中に飲み干せ、って。
子宮があたしに命じている。
こんなの、逆らえるわけがない。
衝動が、マインを蹴飛ばすように叫ばせた。
「……にゃかっ! ぜったいに、じぇったいにぃっ、せーえきはあらしの、にゃかぁぁあっ!!」
「中か。膣内でいいのかっ。私が中に出せば、君は妊娠してしまう可能性が高い。本当にそれでいいんだなっ」
ロストフに言われるまでもない。マインはその危険を知っている。身も心も認識したうえで、それでも子種を欲してしまっている。
絶え間なく繰り返されるピストン運動と愛撫に魂までも蕩ける中、涙でぐちゃぐちゃになりながら、マインは声を振り絞って叫んだ。
「いいのおっ。にゃんでもいいっ、濃くてドロドロで熱いのほしいっ、隊長のあの苦くてくっさいせーえきぃっ、あたしのなかに、おまんこの奥にぃ、あるだけ全部ぶちまけて出してえええぇぇぇぇっ!!」
「……分かった」
「あぐっ!?」
マインの腰を抱き寄せていっそう深く突き上げながら、その肩口でロストフの口元が歪む。
「アッ、アッ……アッアッアッアッ、ああ、アアア……ッ」
ロストフの腰使いが、その頂点めがけて激しさを増していく。ご無沙汰のまま胸を弾け飛ぶ乳房がそのたっぷりの質量でマインの顎を打ったが、腰ごと抱き寄せてきたロストフの厚い胸板に二つまとめて押し潰された。
「出すぞ……ッ」
「イクッ、……イクウウウッ!!」
――あたしは、妊娠する
最後の瞬間、そんな警告が意識のどこかで生まれた。だが快楽の圧倒的な怒濤の前に、そんなものはたやすく流し去られてしまっていった。
そしてマインの最奥まで突き込んだまま、ロストフは己の逸物のカリ首を膣奥へしごき上げるように押しつける。
「……ふッ、うぅっ……!」
「あっ!? ああっ、あああああああーーーッッッ!!」
恋い焦がれるように待ち望んでいた肉の脈動を膣奥に感じて、マインは雷に撃たれたように背筋を跳ね返らせながら、声も限りに絶叫した。
おびただしい量の精液が、子種を求めるように下がってきていたマインの子宮めがけて一気に注ぎこまれていく。
尽きることを知らぬかのように汲み上げられてくる精液を放ちながら、延々と脈打ちつづける亀頭の凶悪な震えに、なすすべもなくマインは絶頂した。
「れてるぅ……あたしのなかで、たいちょーのせーえきがいっぱい、いいっぱい出てるうぅぅぅ…………ぅっ!!」
無防備に排卵されていた自らの卵へと雄の子種を受け入れ、新しい生命の芽吹きをその胎内へ宿していくという雌の悦びのなかで、マインは限界まで目を見開いておとがいを反らし、声も限りに絶叫していた。
想像をはるかに越える喜悦。
鉱山衛星の男所帯に生まれて十九年、汚れを知らぬままに強く美しく育った乙女が、その人生で今まで一度も知ることのなかった雌の無上の悦びを、ロストフの肉棒と自分の子宮が教えてくれた。
「はあっ、あっ、あっ、ああっ……ああ、あああああ……っ」
濁流のように押し寄せた限界以上の快楽はマインの意識と、わずかに残った理性までもを完全に押し流してしまっていた。
電源を断たれた照明のように、彼女の意識がふっつりと失せる。ロストフの剛直にその最奥までを貫き通されながら、滂沱に濡れる青い両目を見開いたままでマイン・ハフナーは気絶した。
「ふむ、ここまでか……。私もまだ、もう少し楽しませてほしかったのですが……完全に落ちてしまいましたか」
意識を失ったマインの紅潮しきったままの頬を撫でさすると、彼女ではない誰かに向かって言いながら、ロストフはマインの乳房に手をかけた。にわかに張りと重みを増したようにも思えるそれを、ロストフは遠慮なくぎゅうっと揉む。
途端に勃起した乳首とその周囲から、びゅびゅっ、と勢いよく白い飛沫が放たれる。ロストフがさらに左右の乳房を数度揉み込むと、乳首と乳暈はその度に無重力の室内へ母乳を飛び散らせた。
直接に乳首を唇を含んで強く吸い上げると、確かについ先ほどまで処女であったマインの乳房は確かに母乳を分泌して喉を潤す。ロストフはひとしきりその人肌の乳を飲み下してからそっと離れた。
「フム。不死鳥の乳房は、やはり今回も気が早い。膣内射精を受けたばかりで、出産はおろか、生物学的にはまだ妊娠してもいないというのに……あるいはこれも『反動』の一端、ということでしょう」
ひとり言いながら、ロストフはその怒張を秘裂の最奥から引き抜いた。ぬめる水音が男の名残を引き留めようとするかのように大きく響きわたり、白濁液と破瓜の鮮血と愛液が混じり合った粘液が二人の間に糸を引きながら溢れ、そして途切れる。
ロストフは元いた端末の位置まで戻り、それらの動作状況を確認する。この部屋に配置されていた、多数の観測機器を。
二人が繰り広げた情事の一部始終はあらゆる角度から観測され、記録され、分析されていた。
「マイン・ハフナー少尉。やはりP因子保有者でしたか」
ちょうど観測機器の陰になる位置から響いた声にも動じることなく、ロストフは陰茎にぬらつく二人の粘液を拭き取って収め、トラウザスのジッパーを上げた。
「ええ。彼女の場合は鉱山衛星をティターンズに襲われた際の、鉱山側の記録映像にアクセス出来ていましたのでね。P因子の有無については、早い段階で確信していましたよ」
「それにしても――何度見ても、理解に苦しむ現象ですね。発現を間近で観測できた今でも、信じられません」
機器の向こうでキーボードを叩きながら、理知的な声の女は唸るように続けた。
「……ビームサーベルの直撃ですよ? ガンダリウム合金の装甲さえたやすく貫き蒸発させる、超々高熱高圧のメガ粒子です。そんなものの直撃を受けた人体が消し飛ぶどころか、かすり傷の一つも受けず、ただ気絶しただけで生き残るなど……」
「物理が物理に働きかけて生じるがごとき弱々しい力など、しょせんその程度だということです」
事も無げに言い放ちながら、ロストフは端末を操って次々に観測データをチェックしていく。
その中には事情を知らない人間にとっては、単に四肢拘束された若く美しい金髪巨乳娘が地球連邦軍人とのセックスをせがんで、犯されてよがり狂った末に膣内射精を受けての絶頂で気絶する、そんなポルノビデオにしか見えないだろう光学映像記録も含まれている。
「恐ろしいことをおっしゃるお方だ。……その物理の弱々しい力に頼って生きる今の世界など、あなたが理解するその力にとっては砂上の楼閣のようなものだとでも?」
「いえいえ。私にも理解など出来ていません。だが確かにこの力は、現実として存在している。だからあなたがたに協力を依頼し、こうして少しずつ分析と研究を進めているわけです」
核爆発にも匹敵すると言われる熱と破壊の中で、生身の人間を無傷のままで生き残らせるなど、人智をはるかに超えた力によるものだとしか言いようがない。
それを解析し、もしも自在に利用することが可能になれば、世界はドラスティックに激変する――かつてトレノフ・ミノフスキー博士が発見した粒子が、その後の世界の有り様を決定的に変えてしまったのと同じように。
そしてその新たな力の秘密を握った者は、世界を支配するにも等しい力を得るに違いなかった。
「いま必要なのは、少しでも多くの研究資料を収集することです」
「分かっていますよ。今回でまた一つ――いや、二つ追加、ですか。ハフナー少尉と、たったいま彼女のお腹に生じた、あなたとの受精卵を加えて」
「そちらの処置もよろしくお願いしますよ。我々にはジオンの残党を引き込みながら、ティターンズの戦力をこちらに引きつけるというという『表』の任務もある。まだ彼女には、MSを降りてもらいたくないのでね」
「医療班と調整しておきます」
「しかし、やはりここに来て良かった」
傍らから取り上げた電子端末のページをめくりながら、ロストフは満足げに言った。
「アイリッシュ級にディアス、ネモにヌーベル。モンブランなぞとたった二隻でグリプスへ向かう羽目になったブレックス准将には申し訳ありませんが、わざわざこれだけの戦力を仕立ててきた甲斐はありそうですよ。
私もさっそく、面白そうな相手を見つけてしまいました……」
自分で言うほどの罪悪感など欠片も感じさせない愉快そうな声に、女性研究者が訊いた。
「大尉が接触したという、現地部隊のMS隊長ですか?」
「ええ。マコト・ハヤカワ准尉。資料をよくよく見返してみれば、彼女もなかなか面白い経歴を持っているようです。実に興味深い……一度じっくり、話を聞いてみたいものだ」
「ですが先ほどの現地部隊――トラキア隊、でしたか。エゥーゴには非協力的な部隊だと聞いていますが?」
「ええ。ですから、次に会うときは戦場です」
ロストフは笑みを深めた。端末画面に映る人事資料。その女性軍人の顔写真に、そっと目を眇める。
「彼女もまた、なかなか美しい女性のようだ。あの古めかしいモビルスーツも、無粋なノーマルスーツもすべて宇宙の塵と焼き捨てて――続きは彼女の素肌へ、直接尋ねるに限ります」
「確かに敵ならば、P因子の有無を『確認』する手間に遠慮は要りませんからね。なるほど、むしろ好都合でしたか。ここまで無理を押し通した手前、上も目に見える成果を欲しがっています――自由に使える新しい試料、期待してますよ」
フェニックステイル第一章『灰燼の少女』、これにて完結です。
ビームに直撃されようが爆発に巻き込まれようが、さらに宇宙空間へすっ裸で放り出されようが死なない、それどころか復活するや欲情全開で男に襲いかかる、という無茶な少女たちの奇天烈MS戦記にお付き合いいただき、ありがとうございます。
MSにしたってガンダムが出ないどころか、主役機はジムⅡだわ主役艦はサラミス改だわと、もはや誰得ですらない俺得の極北です。
マイナーメカ×特殊性癖。すごいなこれ。
皆様、よくぞここまで読んでくださいました。
さて。不死の少女たち、というU.C.世界に似つかわしくない『裏舞台』の輪郭が見え始めたところで、物語は『表舞台』に移ります。
サイド4復興再開発を目指す人々と、それを執拗に阻むジオン残党、そして抑圧者たる中央派遣の連邦軍部隊。様々な思惑が絡み合って危うい均衡を形成していた魔の宙域に、エゥーゴという来訪者が新たな波乱を巻き起こします。
それでは第二章『墓守の荒城』、しばしお待ちくださいませ。
※イラスト:b10b10アットzoho.com様