「キャアアアアアアーーーッ!!」
反地球連邦組織エゥーゴが誇る最新鋭の航宙戦闘艦、アイリッシュ級戦艦《ジャカルタ》。その艦内通路の一角に今、絹を裂くような娘の悲鳴が響きわたっていた。
「い、イヤーッ! け、ケダモノーッ!! ああ、誰か! 犯されてしまいますわ! ひとたまりもなく孕ませられてしまいますわ!! 誰か、誰か助けてくださいましいいい~~~ッ!」
「やかましいわ!! さっきから延々と、エロい雌の身体なんぞ見せつけおって! 戦場で雄を誘う喜びを知りおって!!」
リフトグリップを頼りに無重力の艦内通路を必死に逃げ惑うのは、柔らかな栗色の髪をポニーテールにまとめた小柄な童顔の美少女が一人。若くみずみずしい四肢を、袖のないエゥーゴ制服でほぼ剥き出しにしている。
その体躯はまるでジュニアハイかエレメンタリーの学生かと見間違うほどに小さい。しかし同時にその胸元や腰つきは、豊かに成熟した女の肉感を伴っている。ノースリーブの脇からちらつく白いブラジャーや、同じく白のサイハイソックスとミニスカートのかすかな隙間から覗く太腿の眩しさが、アンバランスで背徳的な魅力を醸し出していた。
そして必死に逃げる彼女へと通路内を追いすがるのは、濃緑色の影――ジオン公国軍の一般的なパイロットスーツ。髭をたくわえた禿頭の巨漢が、もはや狂獣じみた異様な光をその双眸に宿らせながら迫っていた。
速い。
通路内の壁や天井、リフトグリップまでをも自在に蹴飛ばして三角跳びの要領で迫る巨漢の動きは、まさに彗星がごとし。もはや人間離れした通常の三倍以上の速度で巨漢は迫り、逃げる美少女の背中へと距離を詰めて肉薄する。
「ハッ!?」
少女が振り向いて背後を確認しようとしたとき、そこに男の姿はない。その瞬間にはもう、男は少女の眼前へ瞬間移動したかのように回り込んでいたのだ。敵戦艦のブリッジ前へ迫ったザクのモノアイのごとく、巨漢の眼光が異様に輝く。
「はッ、速いッ!?」
「なんじゃそのエロ制服はっ!? 軍艦の中でパンチラブラチラ見せつけとるような痴女はなぁ!! こうじゃッ!!」
「イヤーーーッ!!」
禿頭の巨漢がその豪腕を振り上げ、そして不可視の速度で振り下ろした。
それだけで童顔の美少女がみずみずしい肢体を包んでいた、ノースリーブのエゥーゴ制服は破り裂かれて消し飛ぶ。
ブラジャーまでもが制服もろとも千切れ飛び、幼い顔立ちや小柄さと不釣り合いにたっぷりと実った乳房が二つ暴れて弾け飛ぶ。少女の肌に残ったエゥーゴ制服と下着の切れ端も、濡れ紙のように素手でことごとく破り捨てられた。
だが白く柔らかな餅のごとき二つの乳房の頂に、桜色の可憐な乳輪を曝させられても、少女に隠すすべはない。
「ああ……! いやぁ、お願い、離してぇ……!」
巨漢は制服の切れ端を少女の両手首へ巻き付け、さらに壁面構造物に巻き付けて拘束したのだ。さらに自らの巨体で彼女の両足を押し開きながら、そのまま床へ押しつけた。
そして裸身に剥かれた少女の眼前に、血管浮き立つグロテスクな黒の肉棒が天突くように、ボロンッと高くそびえ立つ。
「あ、ああ! く、黒い、大きいぃっ――そんなの、入らなっ」
「連邦雌の運命(さだめ)はひとつ……ワシのチンポの、専用鞘じゃあっ!!」
「んほおーーーッ!?」
あまつさえ何の前戯もなく、ぶぢゅううっ! と男は剛棒直入した。
特筆すべきはその注挿速度。巨漢は最初からトップギアだった。
犯されることを覚悟した瞬間、自身の膣を保護すべく本能的に愛液が溢れてはいたが、男が叩き込んだ剛棒の威力はさらに大きく許容量を遙かに超える。結合部から激しく鮮血が飛び散るが、少女は最初から単なる苦痛ではなく謎の快楽に導かれていく。
「ああ、あああああ……ッ!? な、なにこれ……っ、しゅぅ……っ、しゅごっ、いいぃ……っッ……」
少女がこれまでに知るいかなる性の悦びとも異なる、生命の躍動に溢れた壮絶な交合。それはまさしく人が知るべきでなかった、禁じられた果実の味わいだった。
「どや! 身食らう蛇のように、抉りこむ突きッ! これがジオン幻の漢体結腺性器、ヨガルンチンポじゃッ!!」
「そ、そんなぁ……っ、ぜ、前戯もなしで、こんなぁ……ッ……こんなのぉッ……!」
少女の膣内をその動きは拡張しながら確実に最深部まで抉りこみ、しかも毎回必ず最奥のGスポットを微妙に異なる角度と強さで狙撃していく。性の大量破壊兵器を無差別投入する電撃戦は、まさに一週間戦争のジオン軍のごとし。少女の肉体は何の対応も出来ないまま、ただ快楽の波に蹂躙されていくしかない。
「やかましい! 射撃諸元なんぞ送られてくるの待っとったら、会戦なんぞ終わっしまうわ!! 男は黙って直接照準、直接射撃! これで決まりやッ!!」
言いながら男はさらに加速し、その腰の回転速度を高めていく。パイロットスーツを脱ぎ捨てた男の裸身からは大量の汗が放散され、空気中に一瞬留まっては消えていく。巨漢の形を伴った男汗の霧は、あたかも質量を持った残像のように見えた。
「ッ!? こ、腰使いがぁっ、アムゥッ、激し、すぎてぇ……ああんッ! おじさまがぁっ、三人にぃっ、見え、るぅ……ッ!?」
「どうや!! 見たか!! これがワシの三位一体! 一本のチンポで女を三倍ヨガらせる、黒いチンポの三連性! 夜のジェットストリームアタックじゃあああ~~~ッ!!」
「あああああああッ、いいいいい~~~ッ!!」
回転はさらに高まる。ついにはザクマシンガンの最大連射速度にも匹敵しようかという高回転で、巨漢は少女を犯し続けた。
「フンフンフンフンフンフンッ!!」
「アッ! アッ! アッ!! アアア~~~っっ!!」
二人の結合部から溢れ出る雌の愛液と雄の先走り汁が溶け合うように混じり合い、膣奥から子宮口へと突き抜けていく熱い衝撃波が少女の性感を、そしてその意志までもをぐずぐずに溶け崩させていく。
「こっ、こわれりゅっ……こわれりゅぅっ、わらくひのおまんこ、おまんここわれりゅううう~~~ッ!」
「なに言うとるっ!! もうお前のオメコはぐっちょんぐっちょんじゃろがぁっ!!」
「身体が……身体が熱い……すごい……嘘、こんな……無理矢理ですのに、どうしてぇ……っ……」
「やかましいわっ!! オーストラリアは今は夏やぞ!! ここがお前のシドニー湾ッ!! これがホンマのコロニー落とし……乾坤一擲、プリ乳ッシュ作戦じゃあ~~~ッッ!!」
「クッ、アウウゥッ、すっ、しゅごっ、いいい~~~ッ――!」
コロニー落とし。史上最大の大量破壊兵器になぞらえた自称にも決して恥じることのない威力で男が腰を落とせば、宇宙移民の怒りを乗せた極太コロニーが恥丘を超えて子宮を突く。
そして八年前に地球へ落とされたコロニーが数千万の人間を育んでいたように、いま少女の恥丘へ落とされ続けている肉コロニー棒も、雄から雌への植民者たる数億の精子を送り込む威力を秘めているのだ。
「チンポはこのまま! 雌パイロットの膣内で出さしてもらうッ!!」
「あ、ああ! だめぇ、だめですのぉっ! なかで、膣内で射精されたらっ! わらくひっ、はらんでぇ、こどもがぁぁあ――っ」
「ソロモンの、白き子種汁! 白漏、出るゥッ!!」
「いやあああァ~~~ッッッ!!」
最後の突きを膣奥で受け止めたその瞬間、少女の脳裏で閃光の嵐が溢れた。
リズミカルに突き続けるどびゅうううっ、と女の腹の奥から異音が轟く。
消化用ホースの尖端を押し込んで最大出力で放水したかのような圧力が、少女の下腹で一気に弾けた。ジオン伝説のエースパイロットの熟練技に突かれ続けていた子宮口から、数百万の精子が狩るべき獲物を目掛けてなだれ込んでいく。
そして極太のペニスに押し開かれた合体部からその周囲へと、大量の白濁液が溢れて飛び散る。その激しい精液の漏れ具合は、まさに魔法王に仕える白き狼が射精したがごとしであった。
「どうや……! ワシの特濃ジオン優良子種汁は、ティッシュの屑になど成らん! 雌の腹で成就するのや!!」
「…………あ、……あ、……う、……あ……っ……」
最後の一滴までの濃厚な膣内射精を終えた、深い満足感の中で巨漢は叫ぶ。そして犯された少女は、その意識を未知の快楽の中で真っ白に宇宙へ飛ばしたまま、放心とともに見開いた瞳から、つう、と二筋の涙を流している。
コロニー落としの衝撃は地球の地軸を歪め、自転速度という地球のリズムまでをも狂わせたと言われている。それと同様に巨漢が叩きつけた巨根と性技も少女から生理のリズムを狂わしめて、子宮からその排卵を強制していたのだ。
「…………、あぁ……っ……」
そして少女はその見開いた虚ろな瞳の奥底で、子宮口を抜いた精子の群れが通常の三倍以上の速度で迫り来て、そして無防備な卵子に次々と結合――受精する瞬間を、確かに『見た』。
それを認識した瞬間、少女の乳房に急激な変化が生じはじめる。
可憐な桜色だった乳首に色素が急激に沈着し、どす黒いほどに染まっていく。同時に乳輪に浮かぶ乳腺のひとつひとつから白い液体が染み出していた。
男のごつく大きな掌が左右の乳房を乱暴に握りつぶすように搾ると、黒い乳輪からは新鮮な母乳が無数の飛沫となって放出された。
ただ数分の交わりと一度の膣内射精だけで、ジオン残党兵の巨漢がもたらした超絶の交わりは無垢な巨乳美少女の肉体を、一瞬にして妊娠と出産を待つだけの妊婦に作り替えてしまったのだった。
「フム、……ええ乳になったやないか……!」
巨漢は強引な性交の渇きを癒すように両方の乳首を口に含むと、凄まじい勢いで蓄えられた母乳をあらかた吸い尽くした。乳首から唇を離すとその尖端を軽く舌で突つき、さらに大きく勃起してきた乳首から、ぴゅっと母乳が一筋跳ねるのを満足げに見下ろす。
「これでお前はワシのもんや……産めよ、国民! 元気な赤ん坊、産んでもらうでぇ……!」
「……しゅごっ、……いい……ぃ……っ」
これが一年戦争緒戦からその後の掃討戦までを力強く生き延びてきた、真のジオン残党兵の生命力。
地球連邦の三十分の一とも言われた国力で五十億人を焼き滅ぼした、地球人類のより良く支配してその再生を導くべき「優良種」。自分は今、その優良種を宿す母となったのだ。
「ジーク、……ジオン……」
力なく震える唇でそれだけようやく呟くと、少女の意識はどこまでも深い闇の底へと墜ちていった。
「…………」
禿頭にびっしりと浮かぶ脂汗が、薄暗い照明の下で鈍く光る。
巨漢の眼前には少女趣味の手書き文字で綴られた、可愛らしい意匠の日記帳。震える指でページを繰る端から浮かび上がる、猥雑奇怪な性妄想――その文面の一語一語から漂う言い知れぬ迫力を前に、ジオン残党兵ドッツィ・タールネン少佐は打ちのめされ、ついにその禿頭を抱え込んだ。
「なんや、……これ……」
ドッツィが巨体を丸めてうなだれているこの場所は、エゥーゴ戦艦《ジャカルタ》居住区の士官個室である。
つい数時間前、連邦軍巡洋艦《トラキア》MS隊と交戦の末に撃破されたドッツィ率いる三機のMS小隊は、あわや連邦軍による鹵獲寸前のところでジャカルタ隊の介入に助けられた。
小隊の機体はいずれも手ひどく大破し、反地球連邦組織《エゥーゴ》の擁する新型戦艦ジャカルタへと収容された。部下も戦闘で一人が気絶したまま覚醒せず、ドッツィはやむなく残る一人に機体を託し、戦艦ジャカルタ艦長デミトリ・スワロフ中佐との会見に臨んだのだ。
そこで要求されたのは、ドッツィがいま所属するジオン残党組織《ルスラン・フリート》と彼らエゥーゴの、反ティターンズ闘争における同盟。そしてドッツィに、その交渉のパイプ役だった。
今や地球圏を席巻する巨大勢力と化した、地球連邦軍特殊部隊《ティターンズ》。ドッツィたちも今までその一部と交戦する機会は何度かあった。
しかし本格開戦ということになれば今までのように、新サイド4などという見捨てられた辺境暗礁宙域とその周辺ばかりで行動しているものとは違ってくる。
だが急激に変化していく地球圏の情勢の中、スペースノイドの大勢を基盤として台頭するエゥーゴと結ぶことで得られるだろう、外界とのパイプと新技術は間違いなく魅力だ。うまくすれば地球圏の大勢に影響を与え、巨大な権利を手にすることすら出来るかもしれない。
その判断は無論、組織全体の運命を左右しかねない重大局面である。ドッツィは即答を保留したが、課せられた判断はあまりに重かった。
スワロフ中佐は返答の保留を受け入れるとともに、ジャカルタにおいてドッツィらに個室を貸し与え、彼ら三人を客分として遇することを約束した。そしてドッツィはその個室まで、連邦軍との戦場で彼の機体を確保・曳航した女性パイロット、リアンナ・シェンノート少尉に案内されたのだ。
案内されたのだ、が。
「ふんふん、ふふ~ん……」
「…………」
奥の磨り硝子の向こうに、湯煙を帯びた影が見える。未成熟なローティーン以前の少女のように小柄ながらも、その身長とは裏腹に要所要所へと豊かな量感をたっぷりと蓄えた、トランジスタ・グラマーを感じさせる女体の影。そして響く流水音に絡み合いながら、甘く鼻にかかった少女の歌声が届いてくる。
「うふふ。おじさま、本当にいいお湯ですわよ。ご一緒いたしませんこと?」
「ファッ!?」
彼女が目の前で脱ぎ捨てていったEカップのブラジャーを握りしめながら、ドッツィはビクンとその場に跳ね上がった。
股間の息子も一緒に跳ね上がっているが、応じられるわけがない。今の彼は組織間の重大交渉を控えた身だ。
「や、やめとく……遠慮さしてもらうわ……。あのな、少尉……それより、ここから、出し……」
「あら、ご一緒しませんの? ふふ。でも、そうですわね……おじさまは汗をかかれたままの方が、残党狩りの七年間を生き抜いてこられた獣の野性を、これから存分に味わえますものね。……うふふ……今夜は思いきり内から外から私を汚して、いちばん奥まで濃厚な、おじさま色に染め上げてくださいましね……」
「…………。……アカン……」
まったく要領を得ない受け答えに、ドッツィは頭を抱えてふらつく。この境遇で、あの幼さと豊満さを具備した背徳的な美少女と同じシャワー室に入るなど、どう考えても社会的自殺行為以外の何者でもない。
そしてエゥーゴは間違いなく、その行為の一部始終を録画するだろう。外部組織の女性と肉体関係を持った男など、誰が信用するだろう? そうなってしまえばこのあと組織へ戻った後も、ドッツィはエゥーゴの便利な傀儡として動かざるを得なくなる。
「あ、アカン! アカン!! ワシが! ワシとしたことがっ!! 男をハメさせる罠にっ、ハメられてしもうたっ!!」
気づいたときには遅かった。リアンナはドッツィを部屋へ導き入れるや、即座に内鍵を掛けて閉じこめ、そのままノースリーブの大胆なエゥーゴ制服を一気に脱ぎ捨てたのだ。その流れるような一連の動きは、ただ見事な早業と言うほかなかった。
美少女の汗と体温の気配を残したブラジャーとショーツが無重力の空間を泳いでドッツィの顔面へ掛かると、リアンナは惜しげもなくその美しい裸身を晒してシャワー室へ消えた。
全裸のリアンナをシャワー室から腕ずくで連れ出してドアを開けさせることも出来ず、ドッツィはただ美少女の下着を握りしめたまま震えるだけである。傍目にはもはや単なる変態親父なのだが、その内心には組織と直属の部下たちを憂うるジオン公国軍将校としての高潔な精神と、そして本能には勝てずに勃起する股間のジャイアント・バズがせめぎ合っていた。
と、ガラスの向こうで流水音が止まった。無重力下のシャワールーム用のマスクを壁に掛け、バスタオルで髪や体を拭きはじめている。間もなくここまで一糸まとわぬ姿で戻ってくるだろう。
「あ、あああああ……! ワシは! ワシはっ……どないすればええのやぁぁぁあああ!!」
頭を抱えたドッツィは、ついにゴロゴロと床へ転がりはじめた。ブラジャーはまだ握っている。
このままリアンナの妄想日記に描かれた変態絶倫親父のごとく、開き直って彼女を犯せば良いのだろうか? 股間のタールネンJr.はその方針を熱烈支持しているが、しかしドッツィには自分を『兄貴』『兄ィ』と慕う二人の部下がいるのだ。己の欲望のために彼らを裏切る真似は出来ない。
それに、リアンナ妄想日記に描かれていた怪人並みの超人絶倫種付けテクニックで、あの頭のネジが外れた妄想日記を書き上げた彼女を満足させられる自信も、ない。
「うッ……うおおおおおおーーーッ!! イーデン! デティ!! マイ・サン!! ワシは、……ワシは、どないすればええのんやァーーーッ!!」
みっともなく喚き散らしながら、ドッツィは美少女士官の個室内で激しく上下左右にのたうち回る。ブラジャーとショーツを握りしめたまま。巨漢変態中年男性が暴れ狂う、もはや動物園の檻にも等しい魔境と化した室内へと、シャワー室からドアが開く。
「ホアッ!?」
「うふふ……お待たせいたしましたわね、お・じ・さ・ま。さあ、……私を食べてくださいまし……」
溢れる湯気の中、上気した肌にバスタオル一枚だけを帯びた美少女は、獲物を狙う雌獣の表情で舌をなめずった。
『――兄ィが危ない』
『お、おう……なんや、デティ。いきなりどうした』
戦艦ジャカルタ、MS格納庫。
ドッツィからMSの見張りに残されていたデティ・コイヤー軍曹は、自らの愛機MS-21C《ドラッツェ》のコクピット内で慄然と呟いた。
連邦軍との戦闘で敵機にコクピット・ハッチを強打されたきり気絶していた相棒、MS-09R《リック・ドム》パイロットのイーデン・モタルドゥが目覚めて間もない。彼に対する通信越しの状況説明もそこそこに、デティは顔を上げるやそう不意に呟いたのだ。苛立たしげに続ける。
『イーデン、お前には……! お前には、なんも感じられへんかったんか!? 兄ィがいま腹ン底からワシらへ向けて振り絞った、助けを求める静かな叫び(サイレント・ヴォイス)が……お前には、なんも聞こえへんかったんか!!』
『いや、……特に、なんも……』
イーデンは若干引き気味に答えたが、デティはひとり思い詰めた表情のまま、その妄想を加速していく。
『――アイツや……。最初に出てきたエゥーゴの、あのチビのくせに乳と尻だけデカいメスジャリや……兄ィにふざけた色目使いよってからに……! アイツは最初から、兄ィの肉体を狙うとったんや! アイツはいま兄ィを暗がりに連れ込んで、身体を貪っとるんや……!!』
『お、おう……さ、さよか……』
ぶるぶると拳を震わせて力説するデティの瞳は、MS格納庫の外壁を射貫かんばかりに睨みつけ、遙かその先を見通している。彼が人の話を聞きそうな気配は、無い。
『星屑帰りの辻斬りドラッツェ』ことデティ・コイヤー軍曹は細面の、女性――それも美少女と見間違わんばかりの、端整な顔立ちの美少年である。
色黒で髭面強面のイーデンとはまったく対照的な容貌だったが、しかしデティはどこか独特の『スイッチ』を有しており、それが入ったときの押しの強さは圧倒的だった。こうなるともう誰の言うことも聞かない。
三人の出会いは三年前、デラーズ・フリートによる連邦軍観艦式への襲撃時に遡る。
宇宙要塞コンペイトウ周辺の戦闘で被弾損傷し、ドラッツェで漂流していたデティを、宙域周辺で火事場泥棒に勤しんでいたドッツィとイーデンが救助したのだ。
その後すぐ作戦第二段階へ向けて転進したデラーズ・フリート本隊にデティは復帰できず、以来三年、行き場のない三人は《キャリホルニヤの悪夢》として行動している。
決して楽な日々ではなかった。草創期のティターンズが主導した残党組織への激しい掃討戦で、三人は幾度となく死線を潜った。そして力を合わせて乗り越える度、戦友の絆を深めていったのだ。
だがイーデンとドッツィはその三年間で、デティのある特徴に気づいていた。
ドッツィがたまに女がらみの下卑た冗談を言うと、デティは赤面しながら露骨に機嫌を悪くした。
またデティは決して人前で肌を見せず、個室以外では共用シャワーも浴びず、不自然なほど薄着になろうともしなかった。
逆にドッツィやイーデンが鍛えられた肉体を露わに晒していると、彼はひどく居心地悪そうに意味ありげに視線を動かし、やはり赤面しながら席を外してしまうのだ。
それらの繊細な仕草は戦いの時に彼が見せる、狂獣じみた猛加速でドラッツェを操る戦闘技術とはひどくかけ離れたものだった。
ともに数々の苦闘を乗り越え、戦友としての絆が日々深まっていく中でもデティのそうした反応は続き、イーデンはある日とうとうドッツィへ疑念とともに問いかけた。
『あのな、兄貴……ワシ思うんやねんけど、……デティな、あいつは、……実は……』
『ええ。ええのや、イーデン』
重い口調で口を開いたイーデンを、ドッツィはすうっと片手で制した。すべて分かっている、みなまで言うな――そんな調子を言外に強く宿した言葉に、イーデンは静かに震える。
『兄貴は、……兄貴は最初から、分かっとったんか』
『……デラーズ・フリートは男所帯や。ガラハウ中佐みたいな指揮官級はともかく、あそこは昔の公国軍ともまた違う、徹底的な男社会や。――そこでデティが一兵卒として生き残るために、どんだけ自分を殺さなあかんかったか――ワシはそれを思うだけで、胸が詰まる』
『兄貴……!』
同質的かつ戦闘的な環境に放り込まれた少数者が受ける、異端者としての境遇。
遠く地球のアフリカに生まれ、地球連邦からの民族独立を求めて一年戦争前に単身ジオン公国へ留学したイーデンは、そうした少数者の辛さを身に染みて理解していた。
『イーデン、ワシはデティのすべてを受け入れるで。ワシらは戦友や。戦争が終わって祖国はワシらを裏切ったが、ワシは戦友を決して裏切らん。あるがままのアイツを、ワシは戦友として尊重する』
『兄ィ、……そこまで……!!』
ドッツィの吐露した熱い想いに押され、イーデンはこみ上げるものをこらえてきつく拳を握りしめる。ドッツィはフッとニヒルに笑い、そして遠い目で呟いた。
『まあ、……アイツがどうしてもワシを掘りたい、と言うてきたら、……そん時は、……そん時、やな――』
『……お、おう……。せ、せやな……』
信じて戦場で背中を預ける美少年に寝室で組み敷かれ、半裸で背後から己を貫かれる光景を想像し、二人はぶるり、と背中を震わせた。
イーデンとしてはドッツィがエゥーゴの女とよろしくやろうが、この状況では特に問題は感じない。むしろ相手から求めてくるのなら、応じてやればよいとも思う。
エゥーゴの仕掛けたハニートラップという線は捨てきれないにせよ、自分たちが支えるドッツィの度量なら、それも巧みに巻き取り乗り越えていってくれるとイーデンは信じているのだ。
だからこそ、今のデティが示す反応は過剰に思えて、そして遠い日にドッツィと交わした会話を思い出させもしたのだった。
『イーデン……ワシは行くで。エゥーゴのクソ女の毒牙から、兄ィを守りにな! お前はここでワシらのMSを、しっかり見張っとってくれや』
そこまで思っていながらも、モニター越しに爛々と光るデティの目は獲物を狙う野獣のそれで、イーデンはきゅっと尻に力を入れて巨躯を縮こまらせてしまうのだった。
(すまん、デティ……やっぱりワシはまだ、お前に掘られる覚悟は出来とらん……!!)
『お、おう……デティ、気ィ付けて行けよ……』
『お前もな。頼むで!』
言うやドラッツェのコクピットハッチを開き、素早くジャカルタ艦内へ消えていくデティを見送りながら、イーデンは戦友を信じる覚悟を固めきれない己の浅はかさを一人呪った。
「あ、ああ……行ってしもたか……。せやけど、兄貴……修羅場になってまうんとちゃうか、……これ……」
※イラスト:b10b10アットzoho.com様、はお様(http://www.pixiv.net/member.php?id=164461)
フェニックステイルのご感想を400文字以上お答えいただいた方を対象に、感想特典を限定公開しております。細部は以下をご参照ください。
フェニックステイル感想提供者限定・R-18短編限定公開企画(試験的運用中・意見感想募集)
http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=88942&uid=57256
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