MS訓練隊の操縦シミュレータ室は、居住区から離れた無重力区画に置かれている。
連邦宇宙軍が主に想定する作戦領域が宇宙空間なのだから、当然の配置だった。コロニー内や月面、あるいは地球上などの重力環境にはあくまで実機訓練で対処すればいい、ということだ。それよりもまずは基本として、もっとも作戦に従事する機会が多いであろう空間戦闘に習熟すべし。
そんな訓練隊にも日課時限が定められており、この人気のない一画にあるシミュレータ室にも静かな夜がやって来る。その消灯の確行と人間の不在を巡察の当直勤務者が電灯を浴びせて確認すると、壁を蹴って次の巡察先へと飛んでいった。
「…………」
訓練生の少女アイネ・クライネ一等兵は、そんなシミュレータ機のひとつの中にいた。彼女は電源を落としたままのシミュレータを操作しようとするでもなく、ひとり膝を抱えて宙に浮かんだまま。その顔はひどく泣き腫らしていて、すっかり疲れ果ててしまっている。
一日の訓練を終えた後にどうしようもなく身体が火照って、自室のベッドで自分を慰めていたところを、ひょっこり帰ってきたルームメイトの少女に見られた。
シエル。いつも怖い男の人たちのいやらしい視線からも、女の人たちの妬みや軽蔑の入り混じった冷たい視線からも、私を守ってくれるシエル。無口で潔癖で何事にも動じないけれど、本当はすごく優しくて、強くて格好良くて凛とした、大好きなシエル。いちばん大事な友達で、わたしの憧れの女の子。
そのシエルに、手慰みの最中を見られた。
そのときの自分は、いつも自分へ後ろ指をさして笑ったり、ひどいことを言ったりするときの男の人たちみたいに、発情期の動物じみたいやらしい顔をしていたと思う。
それにきっと自分を慰めながら切れ切れに、シエルの名前を呼んでいた。シエルの青みがかった細くてさらさらの黒髪や、MSを手足のような自由さで操る手指の繊細さや、自分と違って無駄な肉のないしなやかな身体の線や、小さくて華奢なのにすごい瞬発力を秘めた四肢の強さを思いながら、股間にいやらしい水音を立ててあえいでいた。
あんな顔を、見られたかもしれない。
あんな声を、聞かれたかもしれない。
無言のままでベッドの自分を見下ろしていた、シエルの冷たく冴えきった表情を思い出す。
「ううっ……」
死んでしまいたい。
もう部屋になんて帰れない。帰れるわけがない。
シエルに会いたい。でも二度と会いたくない。
ここから消えて、いなくなってしまいたい。
涙が溢れる。
やっぱり、もう、わたし――
そのとき不意に、シミュレータの筺体が開いた。
「!?」
「ふん、やっぱりここにいたか。定番過ぎる。まあ、アイネに人の裏を掻くセンスなんて無いよね」
青みがかったショートの黒髪が、連邦軍制服の肩に揺れる。シエルは自慰に耽っていたアイネを見たときとまったく同じ表情のまま、筺体内部を漂うアイネを冷たい瞳でじいっと見つめていた。
「あ、う……」
「入るよ」
そしてアイネの了承も得ないまま、シエルは筺体内でドアを閉めた。
「シエル、どうし……きゃうっ!?」
「はい、差し入れ」
強烈な冷たさを一気に頬へ押し当てられて、アイネはたまらず悲鳴を上げる。シエルが押しつけてきたのは、主にMSパイロットへ増加食として支給されるチューブ状のアイスクリームだった。きんきんに冷えている。
「私はこんな甘ったるいのなんか大嫌いだけれど、アイネはこういうのが好きでしょ。私の分、いらないからアイネが廃棄処分しなさい。いつもみたいに」
「えっ? う、うん……で、でも……どうして? 差し入れ、って……?」
「そんなの決まってる。アイネ、ここはどこ? 操縦シミュレータ室でしょう? 延灯許可は取っていないから、モグリってことになるけどね。せっかくだから活用させてもらおうよ」
目を白黒させるアイネを置き去りにしたまま、シエルは淡々と話を前に進めていく。
「通路で3班の馬鹿と目を合わせたらキョドったんで、物陰に連れ込んで締め上げてやったら吐いたよ。おかしな薬、アイネの飲み物に入れてたって」
「……えっ?」
「だから、その、女の……そういうところを刺激して……いやらしい気持ちにさせる、そういう薬。そんなものを、アイネの飲み物に仕込んだ馬鹿がいたの」
「……じゃあ、……それじゃあ……」
「そう。悪いのは全部そいつ。と、そのクズ仲間ども。ほらアイネ、シミュレータ起動」
「えっ?」
「大丈夫。スタンドアロンで動かせば管制からは見えない。稼働ログは抜け道があるから大丈夫。……今度の各班対抗模擬戦。そこであいつらのメンツをこれ以上ないぐらいに叩き潰してやったら、面白そうだと思わない?」
「う、うん……」
言われるままに電源を投入し、コンソールを操作。《ジムⅡ》や《ハイザック》を皮切りに実機への導入が進む全天周モニターが起動し、二人の周囲を無限の星空が埋め尽くす。
「女を欲望の踏み台にしか見ないようなふざけた男どもなんか、全部まとめて片づけてやる……アイネ。今のうちにアイス、溶ける前に食べときなよ」
「シエル……」
どこから入手してきたのかも知れないIDとパスワードを打ち込んでいく親友の横顔を見つめながら、アイネは自らのまなじりに、今までとは違う熱さを持った水滴が溢れてくるのを感じていた。
「シエルっ!!」
「わっ!?」
そしてアイネは衝動のままに、シエルの小柄な身体をぎゅっと強引に抱き締めていた。
「んぶっ、ちょっ、アイネ……っ……」
顔面をアイネの豊かで柔らかな胸に沈み込ませられたシエルは最初、声も出せずに抵抗したが、やがてアイネの強い力に脱出を諦めたように力を抜き、黙って彼女に身を委ねた。
大好き。
大好きだよ、シエル。
シエルとだったら、私――どんな敵とだって、戦える。
「ん……」
みずみずしい肌へ叩きつけるように噴射されてくる湯の奔流を感じて、少女は重たいまぶたを上げた。
ゆっくりと開いていく虚ろな視界から、少女は自分自身が無重力空間のシャワールームにいること、そして誰かもう一人の女性に抱かれながら、身体を洗われていることに気づく。
体が重い。ここはどこなのだろう。自分がどうしてここにいるのか思い出せない。
「あなたは、誰……?」
熱を帯びたまま零した言葉を受けて、長い黒髪を湯に濡らした女性が自分の瞳を覗き込んでくる。
東洋系の、若く美しい女性だ。その凛々しい目鼻立ちと、何事にも動じないであろう風格のある落ち着き払った態度は、少女にかつての親友を思い出させて、心臓の鼓動をいくらか早めさせた。
「私は地球連邦宇宙軍所属、マコト・ハヤカワ准尉。このサラミス改級巡洋艦トラキアで、艦載MS小隊長を務めている」
「連邦軍、……ハヤカワ、准尉……」
「今はまだ、何も気にしなくていい。ゆっくりと、休め」
「……はい……」
少女は安堵したように再び重たい瞼を閉じると、生まれたままの姿の五体を、同じく全裸の女性へ甘えるように預けた。
浴びかかるシャワーの湯よりも熱い何かが、身体の内側でたぎっているのを少女は感じる。だが眠気はさらにそれより強く、少女はマコト・ハヤカワ准尉と名乗った女性の腕の中で、その温もりに安らぎを覚えて再び意識を手放していた。
マコトが少女を真正面から抱き抱えようとすれば、背丈は大差ない二人の乳房は、真正面から押し潰し合うことになる。
その互いが互いの柔らかな乳肉の中へ潜り込もうとしつつ、しかし今現在は少女の爆乳がマコトの乳房を圧倒して、左右の乳首を突き刺していた。
マコトの乳房も十分に大きくはあったが、それでもこの眠る少女のそれと比べられれば、二周りは小さく見えてしまう。
だがそれは単純な、乳房そのものの大きさと重さ、肉質だけの問題ではない。ただでさえ大きすぎる少女の爆乳が今はさらに張りつめ、乳首は堅く尖っているのだ。
再び意識を失った少女の股間へ、マコトがそっと手を伸ばす。
その秘裂がシャワーの湯とは明らかに異なる、いくらかの粘り気を帯びた体液に濡れそぼっているのを確かめると、マコトは彼女の火照った身体を抱きながら、表情を少し険しくした。
「これで一通り、全身を洗い終えはしたが……」
頭の先から爪先まで、ショートカットの頭髪から下の毛まで。
母艦に帰投するや旧知の整備班長に身を隠せるだけの布を頼み、マコト・ハヤカワ准尉は意識を失っていた彼女を自室まで、どうにか直接は人目に触れさせずに連れてきた。
このサイド4暗礁宙域に跳梁跋扈するジオン残党に襲撃されて所属MS隊もろとも轟沈、全滅した友軍のサラミス改級巡洋艦アバリス。その緊急信号が発信された宙域に漂うデブリから、マコトは彼女を回収したのだ。
あらゆる生命の存在を許さないはずの宇宙空間で、ノーマルスーツはおろか一糸もまとわず、生まれたままの姿で漂流していた彼女を。
「さて。このあと、どうするか……」
いま目の前で起きている事態が自分の予想通りのものなら、ここから先は少々厄介なことになる。
タオルで二人分の裸身に残る水滴を拭き取ると、マコトはショーツに脚を通し、自身の形の良い乳房をFカップのブラジャーに包んだ。地球連邦軍の軍服に袖を通し終えると、少女の裸身にガウンを羽織らせ、ベッドに横たえてベルトで緩く固定する。
居住区画に重力ブロックを有する一部の艦艇ならいざ知らず、そんな高級装備を持たない地球連邦宇宙軍のワークホースたるサラミス改級巡洋艦では、就寝時にもベルトで身体を固定する処置が不可欠だった。
素肌にガウン一枚だけをまとって大きな胸を上下させ、無防備に寝息を立てる美少女のあどけない寝顔を見つめながら、マコトはこれからの動きに思いを馳せる。
厄介なものを拾ってしまった、と思う。
あの戦場跡で、光を帯びながら傷一つない裸身で漂う彼女を見つけたときにはまだ、見て見ぬ振りをしながらその存在そのものを闇に葬るという選択肢もあったはずだ。
彼女を拾って助けてしまうことでその後に起こるであろう厄介ごとと、それらを乗り切るために課されるリスクの大きさは、あのときすでに想像できていた。
冷静に考えるならば、きっと自分は彼女を見捨てるべきだったのだろう。母艦へはアバリス隊に生存者なしと報告し、部下たちは気取られぬように遠ざけて帰せばそれで良かった。それだけで元通りの、平穏な日々が続いたはずだ。
何よりもともと本来なら、自分が見つける前に死んでいたはずの少女だ。それを助けなかったからといって、なけなしの良心に呵責を感じる必要など無い。そのはずなのだ。
だが自分には、結局それが出来なかった。
それは気の迷いゆえか、心の弱さゆえか。
いずれにせよ。
いったん背負い込んでしまったからには、もはや半端は許されない。
とりあえず、まずは次に起きるはずの厄介ごとも想像できる。まずはそこからだ。
やるしかあるまい。自分が、この手で。
マコトは机上の片隅に用意しておいた、ごつい造りの手錠をちらりと見やる。捕虜でも犯罪者でもない傷ついた少女相手に、こんなものなど使いたくはない。
だが今のうちに、これで彼女を一カ所に拘束しておかなければ――次に起こる事態は、より厄介な状況を引き起こしかねないだろう。
「ん……」
そこまで思ったところで、呻き声とともにベッドの少女が身じろぎした。ゆっくりと、しかし、今度は確実に目を開く。意外にも、目覚めが早かったようだ。
もう少し眠っていて欲しかったのだがと思いながらも、マコトは覚悟を決めて、いちばん肝心な質問をゆっくりと問いかける。
「君の所属は?」
実はまだこの時点でのマコトは、少女の正確な正体についての手がかりを何一つ掴んではいない。
何しろ、独航していたサラミス改級巡洋艦アバリスは彼女一人を残して全滅したのだ。死人に口無しである。
そして肝心の彼女自身にしても、持ち物などはショートヘアの前髪に残った髪留め一つがある以外、衣服すらなしに漂流してきたのだ。当然、身分証明など一切無い。
だからこの少女がアバリスや地球連邦軍とはまったく関係がない第三者である可能性もあったし、最悪、実はジオン残党側の人間だという可能性も捨てられなかった。
だがマコトは今の彼女には、込み入った嘘など吐けないはずだという確信だけは有していた。
最初、少女はマコトからの質問をうまく飲み込めないようだった。不思議そうに小首を傾げ、少し考え、それからようやく、ゆっくりと答えを出してくる。
「……、あ……。じ、自分は……地球連邦宇宙軍サラミス改級巡洋艦、アバリス艦載MS隊所属、アイネ・クライネ伍長です。……、あっ……!?」
そこまで言った後、ずきん、と脳裏に鋭い痛みを感じて、少女――アイネは頭を押さえる。
とたんに蘇ってきた記憶の奔流が、少女の意識に洪水のように溢れかえっていく。
そうだ。サラミス改級巡洋艦アバリス。
ねめつけて来る男たちの視線。誰も自分を守ってくれない場所。新しい居場所。新しい居場所になるはずだった場所。小隊長、先輩パイロットたち。男たちからのなぶるような言葉。
突然の奇襲、ビームで爆散するジムⅡ。ゲルググ。脱出ポッドを貫くビームナギナタ。不気味な呪文。爆沈するアバリス。手足も首もすべてを払われ、そしてコクピットへ侵入してくるビームの刃先――
「…………ッ!!」
「落ち着け」
「う……っ、あ……ああ……っ、あうあ……っ」
内側から爆発したかのように溢れ出てきた記憶と感情の嵐に、アイネは頭を両手で押さえ込んだ。
――そうだ。そうだ……ジオン残党の襲撃を受けてアバリスは沈み、部隊は全滅した。
そして、私も……死んだ。死んだ……はず、だ。
「あっ!?」
「落ち着け」
ぎゅっと両肩を力強く掴まれ、真正面に向き直させられる。マコト・ハヤカワ准尉と名乗った美しい女性軍人の凛々しい瞳に見つめられて、アイネは頬を紅潮させながら押し黙った。
「ハヤカワ、准尉……」
「安心していい、アイネ・クライネ伍長。君はもう安全だ。
ここは地球連邦軍サラミス改級巡洋艦トラキア。友軍艦アバリスからの緊急通報を受けて私のMS隊が急行したが、残念ながら間に合わなかった」
「間に、合わなかった、って……それじゃあ……他の、人は……」
マコトは黙って首を振る。
「アバリスは撃沈された。あの宙域で、君以外の生存者は発見できなかった。アバリス隊は全滅だろう」
「……そ、そうですか……。じゃあ、私だけ……私だけ、脱出装置が作動したんですね。それで私だけ、一人だけで生き残って……。うっ……うううっ……」
「…………」
無言で肯定するマコトを前に、アイネの瞳には涙があふれ、やがて水滴となって室内を漂った。ぎゅうっ、とアイネの手がシーツを掴む。
「わっ、私はっ、私は、MSの、パイロット、なのに……誰も……誰も守れない、なんて……誰も、守れなかったなんて……。こんな……こんな情けないことになるぐらいなら、私も……脱出なんか出来ずに、あのまま、私も、死んでいれば――」
アイネの独白を黙って聞いていたマコトの表情が、そのときにわかに険しさを増す。
そして部屋に、鋭い打擲音が鳴り響いた。
「修正だ、クライネ伍長」
「……ハヤカワ准尉?」
衝撃から遅れてやってきた痛みに、打たれた頬をさすりながら、アイネはマコトの真意を問うように惚けた視線を送った。
「戦場で生き残った者は、そのとき死んでいった者に対する権利と義務を同時に負うことになる。なぜならば死者はもういかなる権利も義務も、それ以上果たすことは出来ないからだ。
どんな形であれ生き残った君には、いま出来ることを為すべき責任がある。だから本当に不誠実なのは、君がそれを為さずに終わることだ。――違うか、クライネ伍長」
「わ、……私は……そんな……私にはそんな、……大きな……こと……」
「今回、君は身をもって敗北のなんたるかを知った。それは千金を積んでも買うことの出来ない、軍人にとってもっとも大きな資産だ。活かすがいい。死んだ彼らの無念に、報いるためにもな」
「……!」
敗北の意味。
そうだ。たとえあのコクピットをビームで貫かれる瞬間の生々しいイメージが単なる悪夢や幻覚のたぐいであったとしても、目の前で墜とされていく僚機や沈められていった母艦の姿は、そこで何も出来ずに撃墜されるしかなかった自分の姿は、紛れもない現実だ。
自分は、まだ生きている。あの教訓を、ここからまた活かすことが出来る。
ならばもう次は、絶対に同じことにはさせない。
「……は、……はい!」
「いい返事だ」
アイネの瞳に宿った強い意志の光を見て取り、マコトが力強くうなずく。
そのとき、壁掛けの内線電話が鳴り響いた。びくりと背筋を震わせるアイネを横に、マコトが素早くそれを取る。
「私だ。――艦長が? だが今は――、……そうか……、分かった」
マコトは手短に答えたが、途中でアイネにちらと目をやる。苛立たしげに話を聞いて、最後に回線を切る。
「済まない。艦長から急な呼び出しがあった」
「そ、そんな。ハヤカワ准尉――行ってしまわれるんですか?」
瞳を濡らしたまま、すがるようにマコトの袖を掴んでくるアイネの手のひらに、マコトはさらに自分の手を重ねた。
「心配しなくていい。すぐに戻る。クライネ伍長はどこにも行かずに、ここで待っているように。この部屋で待機、だ。いいな?」
「は、……はい……。お待ち……しております……」
「すぐ戻る……じっとしているんだ」
切なげに濡れた瞳のアイネに見送られて、マコトは部屋を出た。
後に残されたアイネは再びベッドに身を押しつけると、両手を乳首と恥丘へ同時に送って無造作にまさぐりはじめる。
「ふ……ふあああ……ふああああああ……っ」
身体が、熱い。
アイネが触れた自らの秘所は、すでに何もしないうちから自身の体液で溢れかえっていた。指先は淫靡な粘液の糸を引いてくちゅくちゅと音を立て、弄くる度に快楽の波が押し寄せてくる。
「なにこれ……、……なにこれぇ……っ」
十八歳の今まで一度も男に抱かれたことはなく、自分で自分を慰めるようなこともずっと控えていたアイネ。その彼女が今、自らの身体に眠っていた女の性の虜となったかのように、熱く煮えたぎる情欲の波に身も心も弄ばれてしまっていた。
「んむ、……はぷ……っ」
アイネは右の乳房を持ち上げ、その乳首へ唇を寄せる。アイネほどの巨大な乳房なら、その乳首を自らの唇に含むことなど造作もなかった。
唇いっぱいに含んでも、その外側にまだ余る大きな乳暈。その薄紅までをも吸い上げようとしているかのように、アイネは自らの乳房を吸いしゃぶりながら嘗めあげ続けた。
「ん……っ、ちゅぷ……っ、……ぷはぁ……っ……」
左手で女芯を愛撫し、右手で白い乳房を揉みしだきつつも桜色の尖りを舌で嘗めあげ、乳暈の広がりを唇全体で吸い上げる。ひとつひとつの動作のたびに熱い痺れが少女の芯に走り、アイネを初めて味わう牝の高みへとひたすら押し上げ続けていく。
明らかにおかしかった。これほどまでの欲情は今まで、一度として経験したことがない。異常だった。
いったいいつからだろう。
この艦に回収され、ハヤカワ准尉とシャワーを浴びたときからか? それともその前、自分があのゲルググのビームに焼き殺される幻覚を見たときからか??
いずれにせよ今のアイネにとって、確実に断言できるのはただひとつ。
もう自分の理性は欲情一色に覆い尽くされてしまい、いやらしい欲望に関すること以外、何も考えられないようになりつつあるということだけだった。
「寂しい……寂しいよぉ……。シエル、……シエルぅ……ハヤカワ准尉ぃ……」
もはや手慰めでは満たされず、アイネは親友の少女や、出会ったばかりの美しい女性軍人の名を呼びながら、切なげな瞳を虚空に投げて悲鳴をあげた。
「う、ううん……でも、今は……いまはぁ……小隊長……先輩……誰でもいい……もう、誰でもいいからぁ……おとこのひと……おとこのひとがいい……おとこのひと、わたしのなかに、きてほしいよぉ……」
今までアイネが淡い想いを抱く相手は、彼女の胸元に容赦ない欲望の視線をぶつけてくる異性よりも、同性であることの方が多かった。
彼女にとって男性とは、自分には理解できない野獣の欲望で自分を汚そうとする怪物じみた存在の総称であり、思慕や尊敬を抱くべき相手ではなかったのだ。
だがそんな彼女が今は、おそらく、生まれて初めて――男に会いたいと思っている。
「ふわふわする……」
シャワールームの中から感じていた身体の奥で渦巻く熱が、まだハヤカワ准尉と話していた間は落ち着いていたのに、今はもう信じられないほど強くなってしまっている。
早く。誰でもいいから、早くこの熱を受け止めてもらわないと。
男でありさえすれば、もう誰でもいい。今はもういないアバリスのMS小隊長や先輩パイロットでも、訓練生時代の男性同期生でも、それこそ、そのあたりにいるだろう適当なこの艦のクルーでも良かった。
男が欲しい。
自分一人ではどうしようもないこの身体の熱を、火照りを、寂しさを、荒々しい男の欲望で埋め合わせて欲しい。
いつも私の身体にぶつけてくるあの恐ろしい欲望を、今こそすべて解放してほしい。私が完全に壊れるまで、男の力強さで徹底的に犯し抜いてほしい……。
「少しだけ、……少しだけです、准尉……」
それ以上もう一人では耐えられなくなって、うわごとのように呟きながら、アイネはマコトの言いつけを破って部屋を出た。
「誰でもいいから男の人に会って、少し慰めてもらったら、すぐに、すぐに戻ります……」
そして少女はしどけなくガウンを着崩した姿のまま、無人の通路を進んでいく。
「おとこのひと、……おとこのひと、どこぉ……?」
おそらくここはこの艦――ハヤカワ准尉は、トラキアと言っていたか――の居住区なのだろうが、進めど進めど人影はない。
だが不意にアイネの視界へ、若い男が泳いできた。
アイネが待ち望んでいた、男――まだ少年の面影を色濃く残した若い伍長は紙袋を抱えながら、自室らしきドアを開けようとしている。
その少年兵――トラキアMS小隊のジムⅡ25を駆る新人パイロット、シュン・カーペンター伍長は、出撃後の汗を流して軍服姿に着替え終え、増加食を受領して部屋まで戻ってきたところだった。
今回の増加食には出撃後の火照った身体に有り難い、チューブ状の甘くて冷たいアイスクリームも入っていた。トラキアのこういう心遣いを、シュンは素直に嬉しいと思う。
「ん……?」
そこで生まれたままの素肌に薄いガウンだけをきわどく羽織って、ふらふらと艦内通路を漂ってくる人影に気づいた彼は、はっと息を呑む。
見たことのない顔だが、美しい女の子だ。明るい黒髪のショートカットで、少し控えめな感じのする奥ゆかしい美貌。今は頬を紅潮させて瞳を濡らしており、それになぜか自分を見て、蕩けるような妖しい笑顔を見せたようだった。
その得体の知れない艶やかさにどきりと胸を高鳴らせながら、シュンはひどく無防備な服装の、見知らぬ彼女に質問する。
「え……えっ、と……。き……君は……?」
「見つけた……」
「うわあっ!?」
そのままガウンを肩から脱ぎ下ろしながら飛来した彼女に、腕を絡めて身体ごと抱きつかれる。抱えてきた増加食が腕を離れ、部屋の中まで吹き飛んだ。少年は少女の肉体の存在感を至近距離で味わい、その感性を情報量で飽和させる。
(うっ、うわっ! すっ、すご……っ、この娘、すんごい胸大きいっ! やわらかっ、何か先っぽ立ってる、きれいなピンク色っ、胸の谷間深いっ、髪の毛いいにおい! 何この娘? なんでほとんど裸? 痴女? これが痴女ってやつなの母さん!?)
「ねぇ……。しよ……?」
「えっ……」
――何を?
問い返す間もなくドアが開いたままの自室へ、シュンは少女に押し倒されるように連れ込まれた。
そのまま壁に押しつけられ、後ろで開いたままのドアを気にする様子すらない彼女が、少年の股間へ頬を寄せる。
「きっ、君っ! な、なにをっ、なにをしてるのっ!?」
混乱の極みに陥って喚くシュンなど意にも介さず、アイネはシュンのベルトを外すとスラックスを一気に引き下ろした。
「うわあっ!?」
「ああ……。そう……これ……、よかったぁ……。すっごく、元気ぃ……これだよぉ……これが、欲しかったのぉ……」
迫るアイネの肉体を感じて、早くも限界まで勃起していたシュンの男根。少女はその勇ましさを愛おしげに、ブリーフ越しに頬も使って撫でさする。
「うっ……!」
美少女の荒い息づかいと手指の愛撫を下着越しに感じて、ただでさえ既に天突く勢いだったシュンの男根が、さらに大きさと堅さを増す。
なんだこれ。なんだこの子。やっぱり痴女か? それとも、艦の誰かが軍規を無視して、いつの間にか呼んだコールガール? 部屋を間違えて僕のところに来ちゃったとか??
「ね、ねえ。君、ひょっとして――はうっ!?」
「んぷ……っ」
浮かんだ疑問をシュンが問いかけるより早く、ブリーフをずらしたアイネがシュンの剛棒を口に含んでいた。
アイネの唇と舌遣いはいかにも慣れていない処女のそれだったが、それでも歯を立てるようなことはない。
「んぶっ、ちゅぷっ、んむうっ、はぷうっ……」
何より屹立した男根を口に含むために、彼女の巨大な乳房がちょうどシュンの両腿から上に当たっている。
そして同時に圧倒的な質量で下支えされた乳首が上下しながらガウンとスラックス越しに腿へ擦れれば、それだけで少年を限界へ導くには十分すぎた。
「い、いくうっ!!」
「んぶっ!?」
こらえようもなくこみ上げてきた吐精の瞬間、シュンは眼下で男根にむしゃぶりつく少女の後頭部を逃さないようがっちりと掴む。
そしてシュンの精液は最後の一滴に至るまで、その熱いほとばしりをアイネの腔内に弾けさせた。
「んっぶ……っ! えっ、えほ! えほぉ……っ!」
「あっ……。ご、ごめん! 大丈夫っ!?」
欲望でとっさに少女を捕らえて腔内射精したのは、他ならぬシュンの意志だ。
しかしたっぷりと白濁液を注がれたうえに喉の奥まで深く突き込まれ、思わず肉棒を口から外してえづく少女を心配し、少年は思わず手をさしのべる。
だが少女は口元から唾液まじりの白濁液を溢れさせながら、あの欲情に蕩けきった笑みで少年を見上げてくるばかりだった。
「あつい……にがぁい……べとべとするぅ……。ねぇ……もっとぉ……。これ、もっと、わたしに……たくさん、ちょうだい……?」
「えっ……」
ごくん、と少年の喉が鳴った。
シュン・カーペンター伍長は、童貞である。
彼がMSパイロット訓練生課程を終えて部隊へ配属されるとき、世はいまだジオン残党の脅威が冷めやらぬ時代であった。
MSパイロットとはそれでなくとも危険な職業であったし、地球連邦軍の第一線部隊にある限り、実戦で若くして命を落とす可能性は小さくない。
多くの同期生たちがあらゆる手段を尽くして童貞を捨てていく中、シュンは結局その流れに乗り損ねたまま今に至っている。
心を通じ合せた愛らしい処女の恋人と互いの想いを大切に育んだ末に交わって、二人の間で処女と童貞を同時に失いながら結ばれる。
そんな純朴な夢を思い描き、結局それを捨てきれなかったのが、シュンが未だに童貞のままの理由でもある。
しかし結局はその後も今のところ、彼に身も心も捧げてくれるような、そして彼も身も心も捧げたくなるような、素晴らしい処女は現れていない。それが現実だった。
そして、今。
目の前にいるのは心を通じ合わせて想いを育むどころか、いま出会ったばかりでまったく正体不明、どこから来たのかも、何を考えているのかもよく分からない、痴女なのかコールガールなのかすら不明の女の子。
少なくともこれまでの態度を見ている限り、これで処女などということはまず十中八九あり得まい。
かつて夢想した、理想の童貞喪失とはかけ離れた相手だ。
だが彼女は、あまりにも魅力的すぎた。彼の心をすべて奪ってしまうほどに。
欲情に蕩けきってはいても、なお愛らしい可憐な面差し。手のひらに包んで余るどころか、腕で抱え込んでも溢れてこぼれてしまうであろう圧倒的な乳房。それでいて見事に引き締まった、健康的な四肢。
彼女の美貌と妖艶さ、そして可憐さはシュンの心へ幾重にも深く絡みつき、もはや捕らえて離さなかった。
「きれいだ……」
息を呑み、唾を呑む。
この娘といま交わることが出来れば、自分はこの先何があったとしても、一生後悔しないに違いない――。
その思いが今の欲情を後押しして、シュンに彼女との情交で童貞を捨てる道を決断させた。
「あ、ん……っ」
アイネの細い腰に腕を回し、強引に抱き寄せる。肩から外れかかっていたガウンを払い除け、少女の胸元を完全な剥き出しにしたとき、シュンは思わず息を呑んだ。
「すご……っ」
重力に引かれることもないためか、それとも元来から今の姿に近い美しさを保っているのか。
いずれにせよシュンの目の前で露わになったアイネの乳房は、汗ばんだきめ細かい白さでほぼ完全な半球形を保ったまま、ぷっくりと膨らむ桜色の乳暈から男を待ち望むように勃起した乳首を尖らせていた。
「はやく……してぇ……」
「…………!!」
彼女の求めに応じる覚悟を固め、その裸身の想像以上の破壊力に息を呑んだところで、そこへ駄目押しに来た少女の催促。
シュン・カーペンター伍長は、一切の理性を喪失した。
「はむっ!!」
「あんっ!!」
獲物に襲いかかる肉食獣の動きで、シュンはアイネの左乳房にむしゃぶりついた。とはいえアイネの乳房は口に含むには大きすぎ、乳房に見合う大きな広がりを見せる乳暈までが、辛うじてシュンの唇に収まる程度だ。
だがシュンは夢中で舌を繰り出し、桜色の乳暈を下から頂点へと何度も何度も激しく嘗めあげる。ちょうど乳暈の径とほぼ等しい唇を使って、乳房の尖端付近を締め上げるように唇の中で揉みしごいた。
「あっ! ひううっ!!」
そうして乳首を弄ばれるたび、びくびくと若鮎のようにアイネが跳ねる。シュンの肩を掴む少女の指から爪が食い込み、鋭い痛みが走った。
だがシュンは意に介することなく、解き放たれた若い雄の荒々しさで右の乳房を下から鷲掴みにすると、潰さんばかりの乱暴さで乳房全体を変形させた。握った掌の四指の付け根へ突き刺さってくる頂の尖りも少年の握力に屈して、柔らかな乳肉の内側へ押し込まれて沈んでいく。
すこぶる強い弾力と充実しきった重さで指を押し返してくる乳房に負けじと荒々しく揉みしだきながら、少年の唇は左の乳暈も徹底的に責め抜いていた。
いかに大きかろうが母乳など出るわけもない処女の乳首を、シュンは執拗に吸いしゃぶる。夢中で吸い上げる乳首を左右で替える度、少女の汗と少年の唾液が透明な糸を曳いて淫靡に光った。
「あああああっ! こんなっ! こんなぁっ! 吸われてるぅ! わたしの、わたしのおっぱいがぁ! おとこのひとに、ちゅーちゅー吸われちゃってるよぉぉ!! きゃんっ!?」
少年の未熟だが情熱的な手指と唇遣いが、少女の堅く張りつめた乳房をほぐす。その性感を遙かな高みに導いてしまっていく。
シュンに乳首へ軽く歯を立てられただけで、アイネは敏感な乳房の尖端へ電流を通されたかのように甲高い悲鳴を上げながら身をのけぞらせた。だが彼女の背中に回った少年の右腕が、少女の逃亡を許さない。
「いやあっ、こんなのぉっ……こんなのされてたら、わたしのおっぱいおかしくなっちゃうよぉっ!!」
「ああっ……! すごい! 本当にすごいよ、君の身体……っ!」
がしいっ、と両手で正面から思いきり鷲掴みにしようとしても、シュンの掌ひとつでとうてい掴みきれる大きさではない。それでもシュンはその手に掴んだ右乳房をぐにぐにと捏ね回しつつ、指先でも執拗にその乳首を責め抜いていく。
「あっ、ああーーーっ!! きもちいい!! そうやってさきっぽいじめられるの、すんごいきもちいいよおおおぉっ!! 、あっ……?」
そして乳房への愛撫から唇と左手を離し、シュンは代わりに少女の細く引き締まった腰を両手でぎゅうっと抱いた。少年の胸板に二つの乳房が柔らかく押し潰され、乳肉を溢れさせる。
同時に屹立した男根を少女の張りのある腿へ何度も擦り付けながら、濡れそぼった秘所の入り口近くに押し当てていく。
「い、挿れるよ……! 君の中に、挿れるよ……っ!」
「うん……うん……! いいよ……いいからぁ……! なんでもいいからぁ……ここだよ……はやくぅ……! はやくぅ……あなたの、おちんちんで……わたしのなかに、来てぇ……!」
シュンに照準を確認させるように、アイネは自らの秘所を二本の指で大きく広げてみせる。水音を立てながら開いていく濡れそぼった肉色の淫靡な洞窟に、シュンはごくりと唾を呑んだ。
ここが、女の子の……!
そしていよいよ本番となったとき、シュンは脳裏で自分自身が避妊具を装着していないことに気づいた。その件に関して、目の前の少女が一切言及していないことも。
このまま二人が性交に及べばまず間違いなく、シュンは俗に言うところの『生で中出し』というかたちでフィニッシュを迎えることになるだろう。
少女のよく鍛えられて見事に引き締まった肉体を見れば、秘所の締まり具合も相当のものと推察できる。奥まで貫通して少女のすべてを味わうピストン運動から射精に至るまでの衝動を完全にコントロールしきれる自信など、今のシュンにあるはずもなかった。
子供が出来るかもしれない、という警報がシュンの脳裏に鳴り響いたが、初めて迎えた美しい牝との交わりの熱に浮かされるシュンの中で、それは簡単に吹き消されてしまった。
MSパイロットとして、明日をも知れぬ命なのだ。これほどの美少女を己の子種で妊娠させてしまうなど、むしろ望むところではないか――彼女を犯せ。そして、孕ませてしまえ。その責任など、後で取ればいい……。
「もうダメ、おねがい……はやく、……はやくぅ……っ」
シュンの脳裏に巣食う情欲の悪魔と同時に、待ちきれないとばかりに少女も耳元でささやいた。
息遣いが荒くなる。眼前に迫った童貞卒業に目は血走り、濡れた瞳でその瞬間を待ち望む少女の秘所へと自分自身を導きながら、シュンは少女を部屋の隅へと寄せていき、彼女の背中を壁へと押しつけさせる。
「あ、でも……」
――本気で腰を使うなら……彼女には、逃げられない場所にいてもらったほうがいいよな。
そうだ、ちゃんとベッドの上がいい。二人で寝具に入って、ベルトでお互いを固定しよう。そこなら何度も激しく腰を叩きつけても彼女の背中と腰を痛くさせずに、この無重力空間でも彼女を反動で逃がさないように追いつめながら、欲望のまま獣のように貫き続けることが出来るはずだ。
「ちょっと、動くよ……。こっちに来て……」
「えぇ……? まだなの……まだ、きてくれないの……?」
「もう少しだから……もうちょっとだけ、待ってて……」
濡れた瞳で切なげに自分を求めてくる少女へ荒い息づかいで微笑み返し、シュンはアイネを自分のベッドへ導いていく。
「あっ!?」
「きゃっ――」
だがそのとき、少しずつ床や壁を蹴りながら無重力空間に反作用を得てアイネを導こうとしていたシュンは、足下で滑る何かを踏んづけてバランスを崩した。
そして空中を漂っていたチューブ状の何かが、壁へ転んだシュンの五体で一気に押し潰され、ひとたまりもなく弾け飛ぶ。
「きゃっ!?」
そのチューブから蓋を弾き飛ばしながら勢いよく噴き出した中身は、溶けかかった白い半液状物をアイネの裸の胸から顔へとぶちまけた。
「ああ、ごめん! 君、大丈夫!?」
「きゃううっ、つっ、冷たっ……! …………、あっ……?」
それは地球連邦宇宙軍からMSパイロットへ増加食として支給される、官給品のバニラアイスだった。シュンがいま受領してから持ち帰ってきたところで、アイネに襲われて部屋を漂っていたものだ。
その冷たさと香りと味わいが、劣情によって埋め尽くされ、霞んでいたアイネの意識に、暖かな懐かしい記憶を連れてくる。
かつて親友の少女から、ただ甘いだけで品がないと称されたその冷たさが、ふっと、彼女との宝物のような記憶の一ページを引き連れ、鮮やかによみがえらせていく。
消灯後のMS訓練隊シミュレータ室。
二人だけの秘密の訓練。
仲直りが嬉しくて思いきり胸に抱き締めていた彼女から、反撃とばかりに横から顔面へぶっかけられたアイスクリーム。
冷たさと甘さとべとべとに悲鳴を上げる自分を見ていた、呆れたような嘲笑うような、それでいて穏やかな優しい微笑み。
シエル、――わたしのいちばん、大切な友達。
「…………!!」
アイスクリームが運んできた記憶の洪水を浴びた後では、情欲の興奮は一気に流れ去っていた。
その後に残っていたのは、いつも通りの内気で性に臆病な少女、アイネ・クライネだけだ。
そして目の前の少年は、溶けゆくバニラアイスの白濁にまみれた美少女の裸身に、いっそう欲望を高めてにじり寄ってくる。
女性的とも言える容貌の少年から注がれる『雄』が『雌』を見る目に、冷めたアイネは本能的な恐怖を感じて身を竦ませた。
(す、すごい興奮……やだ……この子、目が普通じゃない……怖いよ……私、犯されちゃうんだ……。
あのフランクフルトみたいに勃起した、大きくて堅いおちんちんを何も着けないまま私の奥まで挿れられて……この子にレイプされて、最後の最後まで無理矢理されて、わたし、むちゃくちゃに壊されちゃうんだ……!)
「いや……」
「えっ……?」
アイネへの挿入に向け、自らの右手で助走を付けさせるように男根をしごきあげていたシュンが、アイネから漏れたか細い悲鳴を理解できずに顔を上げる。
「いや……おねがい……やめて……。あなたのおちんちん、私に、挿れないで……イヤなの……私の中に、入ってこないで……!」
「挿れないで、って……え、えええええ!? そんな! ここまで来ておいて……さんざん君から誘っておいて……どうして、急に今さら!?」
突然のアイネからの懇願に、シュンは困惑とともに怒気を吐き出す。
そうだ。ここまで一方的に自分から仕掛けてきておきながら、いざ本番というときにイヤだと言い出すなんて、あまりにも卑怯ではないか。
それとも、彼女は最初からそのつもりだったのか? 女を知らない自分を誘惑してその反応を楽しみ、最後の最後にすべてを止めさせて弄ぶつもりだったのか?
裏切られた怒りがシュンの内側で燃えさかるが、組み敷かれたままのアイネは身をよじり、涙ながらに眼前の少年へ哀願する。
「ご、ごめんなさい! でも、さっきまでの私は変だったの! 理由は分からないけど、普通じゃなかったの! いつもの私なら、あんなすごいこと……いやらしいことなんか、絶対にしないの! だから……だから、もう許してぇ!」
「何を、言って……! 君! そんなの、勝手な理屈だよっ!!」
シュンは詰め寄って腰を進め、アイネの秘所に自身の男根を突きつけた。それでもアイネはきゅっと両足を閉じ、あくまでシュンの欲望を拒否しようとする。
だが少女の身体には、まるで力が入らない。
意識は元に戻ったのに、まだ身体の方が付いてきていないのだ。これでは、まともな抵抗など出来はしない。愕然としながら、それでもアイネは必死に涙声を張り上げた。
「いやっ! わたし、わたし初めてなの! まだ男の人とはキスしたこともないの! 初めてが……はじめてがこんなのなんて、ヴァージンをこんなふうになくしちゃうのなんて、イヤなの……ごめんなさい、でも、どうしても、イヤなの……!」
「君の方から逆レイプみたいに、あんなにいやらしく誘ってきておいて……! 実はまだ処女だって? キスしたこともないって? 口ではさっき一生懸命、僕のをあんなにおいしそうにしてくれたのに?」
「本当なの……。おねがい、信じて……」
今までの淫らな攻勢から一転し、おびえきった涙目で恐怖に震えながら、犯さないでと哀願する少女。
だがその可憐な抵抗はかえって、すでに燃え上がってしまっている牡の欲望の嗜虐的な部分に油を注ぐだけだった。
「そう……。でも……関係ないね!」
「えっ!?」
けなげな抵抗の証として、少女が必死に閉じようとしている両足が、シュンが身体ごと押し込んでくる腰の勢いで無情に、そして強引に押し開かれていく。
凌辱の興奮でいっそう堅さを増した肉棒はグロテスクに、本人の意志に反してまだ濡れそぼったままのアイネの秘所へと迫っていく。
――貫かれる。犯される――
「いやっ! いやあああああぁっ!!」
肉棒の挿入とアイネの破瓜、シュンの童貞卒業は――そして避妊具も無いまま少女の最奥で放たれるだろう膣内射精は、もう完全に時間の問題だった。
「ああっ、いやあぁぁ……! こんなの、こんなの……っ! たすけてぇ……シエル……ハヤカワ准尉ぃ……!」
「君が……っ、君が最初に誘ったんだ……僕を誘惑したんだっ……!」
もうこのままシュンに犯されるしかない絶体絶命の少女が泣き叫んだ名前のうち、シエルという人物に心当たりはないが、なぜ彼の小隊長らしき名前など呼ぶのだろう? とシュンは一瞬疑問を抱いた。
疑問を抱きはしたが、もはや子孫繁栄のために遺伝子へ本能レベルで刻みつけられた欲望に突き動かされるだけのシュンには、その腰の動きを止める理由など何一つ無い。
「ごめん……ごめんなさい、シエル……私やっぱり、あなたが思うような、あなたの友達になれるような女の子じゃなかったよ……。
ほんとの私はただの下品でいやらしい、一時のえっちな欲望に流されただけで誰にでも犯されていいと思えるような、不潔な女だったよう……」
少女はもはやこれ以上の抵抗によるレイプ回避を完全にあきらめたようで、迫り来る合体の瞬間から顔を背けながら涙に潤んだ遠い目で、シュンには意味の分からない独り言を呟くだけになっていた。
だがここまで来たら、もうそんな少女とでもいい。肉棒の切っ先が、ついに少女の膣口に触れた。あと一押しで、すべてが終わる。
爆乳美少女との合体による童貞卒業に万感の思いを込めて、彼女へでもなく、といって自分自身へでもなく、シュンは最後の一押し前に言葉を吐き出す。
「あああああっ……! イク……っ、イクよ……っ!!」
「カーペンター伍長。どこへ行くつもりなんだ?」
まさにその瞬間に耳元で聞こえた、聞き間違えるはずのない女性の声。
まさか。
そんな。
シュンが振り向いた先に、直属上官の氷のように冷たい美貌があった。