※この作品はR-18です。

フェニックステイル   作:KY_PT

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 長期スランプのため、たいへん長らくお待たせいたしました。一話分の分量と内容に達しておりませんが、区切りを付けるため、前編として投稿いたします。



第二十九話 姉妹の箱庭(前編)

 暗礁宙域に影が走る。光が奔る。あらぬ方向からの一閃に胴を貫かれたRMS-106《ハイザック》の緑色の機影が、次の瞬間には膨れ上がる火球に変じて弾け飛ぶ。

 前衛のハイザック隊を流れるように縫っては矢継ぎ早に撃ち砕き、爆光と化しては消える友軍機の合間を抜いて、重厚なシルエットの黒い敵機が迫り来る。

『連邦軍最高のエリート部隊』を自称し豪語していたティターンズMS隊による前衛は、敵の初弾から数秒持たずに壊滅した。

『奴らは速い! ケイティ、下がれッ!!』

「で、ですが小隊長――突出した! 単機で来るっ!?」

 ティターンズの指揮下に組み込まれて行動する連邦軍一般部隊、そのRGM-79CR《ジム改高機動型》のコクピットで、つい先日に部隊配属されたばかりのパイロットの少女は声を震わせる。

 前衛を突破し、敵編隊から頭一つ抜けながら肉薄してくる黒い機影は、ジオンの重MSを思わせるマッシブさと、同時に連邦系を思わせる直線的なフォルムを備えていた。センサー有効範囲に捉えても、データベースに照合しない――新型機だ。

 衰えることなく迸る噴射炎が、その新型機を躍進させていく。速すぎる。自分が乗るジム改高機動型の『高機動』とはいったい何だったのかと喚いてやりたい気分になった。

 それでも少女は己を奮い立たせ、小隊長のRGM-79N《ジム・カスタム》と僚機に合わせて、ビームライフルの火線を開いた。途切れることのない推進焔を曳いて自在に加速し続ける敵機は軽やかに回避しつつ、なお猛然と迫り来る。

「このおっ!!」

 数機のハイザックを立て続けに屠ってきた機体は、3機のジムから降り注ぐビームの雨を圧倒的な加速力で掻い潜る。

 その手の小型ビームライフルから、ぱっと銃口が閃いた。だが狙われた僚機はティターンズ機のように即座に受けず、高速の光弾を巧みに回避する。

 だがその回避先へ、未来の機動を読んだかのような敵弾が来た。

 事前にその回避機動先の一点を狙って放たれていた新型バズーカの砲弾が、吸い込まれるようにジム改高機動型の胴体を直撃する。コクピットブロックを砕かれた機体が、瞬時に原形を止めず爆散した。

「曹長!?」

『こいつッ!!』

 少女は着隊からわずか数日。それでも今まで厳しくも優しく指導してくれていた先輩が、目の前で死んだ。

 その一年戦争時代からの友人だったという小隊長が、敵機との間合いを詰めて巴戦に入る。距離が詰まって角速度が激増し、小隊長のジム・カスタムはもつれ合うように弧を描きながら、Eパック式の試作型ビームライフルを連射する。少女は二機編隊を崩さないよう必死に追従しながら、高機動の振動でまともに定まらない照準から闇雲に射撃を放つ。

『ぐっ!』

 敵機の反撃が小隊長機のシールドを穿つ。チタン・セラミック合金製シールドの防御性能は、標準仕様の対ビームコートを施されていてもなお心許ない。小隊長が巧みに角度を付けて弾いても、敵の連射をわずか数発受けただけで溶けてひび割れ、そして無残に砕け散る。

『おおおおおおーーーッ!!』

「隊長ッ!!」

 ジム・カスタムはバレルロールを打って軌道上に『置かれた』バズーカ砲弾を掻い潜り、シールドを失った左手でビームサーベルを抜き放った。右手構えのビームライフルに、頭部バルカン砲の火線を加えながら小隊長が迫る。

 もつれ合う両者の距離が近すぎ、もはや少女は援護射撃をすることが出来ない。少女は次に取るべき行動を逡巡し、そして次の瞬間には決着が付いていた。

 左手のビームサーベルでジム・カスタムの斬撃を受け止め、敵機は小型ビームライフルの銃口をコクピットハッチに押し付けながら連射していた。

「あ、」

 これまで数機のジオンMSを撃墜してきたという小隊長は機体もろとも、あっけなく一瞬の火球となって消滅した。

 そして少女はそこで気づく。

 次に狙われるのは、自分だということに。

「き、消えた!? ど、どこ――ひっ」

 だから一瞬の空白を見逃した少女はその光景を、全天周モニターの正面に開いたカットイン画面の内側に見た。

 

【挿絵表示】

 

 小隊長機の爆光に紛れた敵機が自身の背後へ回り込み、その手に握ったままのビームサーベルから、再び破壊の光刃を閃かせる瞬間を。

「ヴッ!!」

 ジム改高機動型のバックパックを貫いた光は、狙い過たず少女の肉体をその背中から直撃した。

 全天周モニタとリニアシートが燃え上がる間もなく蒸発し、メガ粒子の熱はパイロットスーツを業火に炙られた薄紙のように溶かすと、小柄な少女のやや未成熟な肢体を破壊の中に暴露した。

 チタン・セラミック合金の装甲を瞬時に蒸発させる超高熱の中で、人体などは瞬時に骨まで焼かれて消え去るはずだ。

 蒸散するスポーツブラジャーの内側から、小振りだが弾力のある乳房が弾け出て、やや大きめの乳輪が顔を出す。

 

【挿絵表示】

 

 少女はそんな超現実的な光景を、死の直前に時間がコマ送りになるのってこういうことなのかな、とどこか他人事のように考えた。バカバカしい。もっと思い出すべきことが他にあるはずなのに。それとも――空っぽの人生を生きてきた自分には、こんな最期が相応しいということなのか。

 そして裸身に剥かれた少女に、熱の暴力が襲い来る。

「アアアアアアアアーーーッ!!」

 装甲を、座席を、宇宙服を焼き尽くした炎が、次は少女の肉体を貪り喰わせよと押し寄せる。

 無数に伸びた炎の舌が、白い柔肌を破ろうと嘗め回す。しかし荒れ狂う灼熱は彼女を包む光に阻まれたきりそこを破れず、少女の肉体に火傷の一つも負わせられぬまま、その神経へ被虐の悦びばかりを深く刻みつけていく。

 うなじを、耳を、乳首を、陰核を、尻穴を、柔肌のありとあらゆる性感の源を、余すところなく炎の舌に責め尽くされる。乳首は勃起し、秘裂からはどろりと愛液が溢れ出る。

 まだ男と交わる悦びも知らぬ少女は瞬時にオーガスムの頂点へ達してそのまま突き破り、快楽の許容限度をその一瞬だけで振り切った。

 

【挿絵表示】

 

(――いクウっ――)

 真っ白な光に染まりきったまま少女は絶叫し、その意識はそこでふつりと途切れた。

 

 

 

『流石です、大尉。手慣れたものですこと』

 連邦軍とティターンズのMSをあらかた片づけて追いついてきたRX-107《ロゼット》が、RMS-099《リック・ディアス》に肩を並べた。艶のある女の声が、接触回線越しに笑っている。リック・ディアスは背後から刺し貫いたジム改高機動型のバックパックから、ビームサーベルをゆっくりと引き抜いた。

 どろりと溶けた装甲材が急激に冷え固まっていく中、リック・ディアスが機体を片手でどんと押すと、その破孔から、光をまとった少女の裸身が流れ出てきた。

『あら、幸先いい。――早速『当たり』を引きましたのね』

『情報部に感謝しないといけないね。事前情報で敵追跡部隊の新兵に、ルウム出身の女子がいると知れて良かった』

 リック・ディアスのパイロットは言いながら不適に笑う。裸身のまま漂う少女をマニピュレータに掴むと、機体首元のコクピットハッチを開いてそこへ放り込む。その光景はさながら、生贄に捧げられた乙女を貪り食う異形の単眼巨人のごときであった。

 コクピット内に空気を満たすと、少女の全身を覆う光が消えた。顔色に血の気が戻り、静かに呼吸を再開する。

 その上下する二つの乳房を満足そうに見つめながら、パイロットの男は彼女に手枷足枷を填めていく。慣れた手つきだった。

 いつの間にか到着していたMSA-003《プロト・ネモ》がロゼットとともに油断なく周辺警戒する中、悠々と少女の拘束を終えたパイロットは、MS隊を失って逃げゆく敵艦隊へ視線を戻した。

「用件は済んだ。では、あれらに消えてもらおうか」

『了解』

『承知』

 含み笑いと感情のない、二人の女の声が響く。エゥーゴ戦艦《ジャカルタ》MS隊の中核を成す三機は、そこでようやくスラスターを全開した。足並みを乱して相互支援も出来ないまま、暗礁宙域を這う這うの体で逃げる敵艦隊が放つ、おざなりな対空射撃をあっさりと抜いて砲口を向ける。

 ティターンズ第117戦隊は全滅した。

 

 

 

「ん、――」

 身体が熱い。下腹が疼く。股間から腿へと何か、熱い滴が広がっていく。

 少女が目を開くと、薄暗い一室の中だった。手足には枷が填められ、天井と床に繋がれている。身動きが出来ない。

「ここ、は……?」

 その密室で、少女は裸身のままだった。全身が火照っている。

 少女は渇いていた。喉が、ではない。もっと下の、いま夥しい愛液を垂れ流している、まだ一度も本来の目的で使われたことのない桃色の裂け目が――その空白を埋めてほしい、熱いほとばしりを奥までどっぷりと注いでほしいと、その燃え盛る雌の欲望と衝動が、少女の思考を一色に塗りつぶしてしまっているのだ。

 今や軍人として挑んだ初陣の帰趨も、共に戦った戦友の無事よりも、自身の置かれた境遇も省みることなく、少女は何より強い自身の肉欲に囚われてしまっていた。

「ぐっ……!」

 身をよじっても拘束は堅く、とても抜け出せそうにない。戒められた手首と足首ばかりに痕が滲む中、少女は闇の片隅に佇む気配に気づいた。

 

【挿絵表示】

 

「だ、……誰……? おとこ、……おとこの、ひと……!?」

 欲望に濡れた瞳が、熱い吐息に乗せて言葉を唇から吐き出す。闇に立つ男は少女の視線を受け止めながら、ニヤリと笑ってみせた。

 

 




イラスト:はお様(http://www.pixiv.net/member.php?id=164461)

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