※この作品はR-18です。

フェニックステイル   作:KY_PT

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第三十三話 雌豚出荷作戦

「――まずいことになった」

 長期にわたる哨戒任務から久々の入港を迎え、サラミス改級巡洋艦『トラキア』の艦内は上陸準備に湧いていた。その中でも特に、MS格納庫近辺の喧騒はひときわ激しい。

 MS格納庫の大改装計画が発表されたことで、ほとんどがMS隊の領域である近辺の居住区画や倉庫までもが、にわかに「立ち退き」を強いられる羽目になったからだ。

浮かれ騒ぎながら物資を運んで右往左往するMS隊の要員たちの喧騒を背中の壁越しに感じつつ、MS隊長マコト・ハヤカワ准尉は疲れ切った顔に手を当てていた。

「まさかP-04へ入港早々、MS格納庫の大改装とはねー。まあ確かに戦力増強も必要だったし、ルスランやエゥーゴがここまで押し出してきたこのタイミングでなら、このトラキアの強化施策だろうとあの因業ババアも文句は言えない。この周到さと詰めの早さは、さすがに閣下の仕事だわ」

 小部屋で一人うなだれるマコトの前で、MS整備班長ウェンディ・アーデル曹長は楽しげに笑いながら、手元の荷物を整理している。

「で、マコトには閣下自ら強制休暇処置だって? ちょうど良かったじゃん。こっちの方は任せて、半年ぶりにゆっくり会っておいでよ」

「簡単に言ってくれる……」

「いつかは向き合わなきゃならなかったことでしょ?」

 頭を掻き、重たい息を吐きながら、マコトはようやく顔を上げた。強引に話題を変える。

「それより今いちばんの問題は『彼女』をどうするか、の方だろう。格納庫が改装されるのなら、ここにはもう置いておけないぞ」

「あー」

 言われてウェンディも、その方向に目を向ける。

 二人の視線の先――マジックミラー加工が施された防弾強化ガラスの壁の向こうに、四肢を縛られた白い裸身が揺れていた。

 そこにひとり拘束されているのは、銀色に輝くロングヘアを無重力に漂わせながら、汗ばんだ白い柔肌とたわわな乳房を惜しげもなく曝け出した美少女だった。長い髪を乱して肌のそこかしこに赤い愛撫の痕を残した彼女は、向こう側からはただの鏡面にしか見えないであろうこちら側を、単なる敵意だけではない奇妙な熱の籠った視線で睨み続けている。

 先の大規模戦闘の戦場からマコトが回収した、真空の宇宙空間で淡い光の層をまといながら、傷一つない裸身で漂っていた少女だった。マコトは自身の経験とあの戦闘の経緯から、その正体を容易に想像することが出来ていた。

 彼女は敵兵だ。それもおそらくは悪名高きジオン残党組織、『大ジオン仏道』の。

 マコトは回収した彼女を密かにトラキア艦内へ収容、ウェンディと自分だけが知る、MS格納庫内に隠された秘密の小部屋に拘束した。そして彼女が目を覚まして以来、ウェンディと二人がかりで尋問と凌辱――あるいは保護と介護を続けてきたのだ。

 疲れを隠しきれない表情で、マコトはその少女をじっと見つめた。

 

 

 

「おのれ、仏敵ッ……ビームで私を焼いておきながら、生きてこの場に捕らえて辱めるとは。この妖術、やはりお前の仕業だったか。……妖怪変化め……ッ!!」

「可愛らしい声だ。そそるな」

 

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 これ見よがしに地球連邦軍の軍服姿を見せつけながら、マコトは不敵な表情のまま、拘束された銀髪白肌の爆乳美少女へゆっくりと歩み寄った。背後から抱き着いたウェンディが思うがままに豊かな乳房を握りしめると、手指の隙間から雪のような白さと桜色の暈がはみ出て溢れる。

「いやらしい肉だ。雌豚だな。これでジオン残党は無理だろう」

 マコトは邪悪に笑いながら、少女が晒す太腿の内側を、膝上から指先でつうとなぞり上げた。少女はその刺激だけで少女は苦痛と快楽のはざまに落ちて、身をよじりながら大げさなほどに震えてのける。

「くっ、くうっ……!」

「戦闘に敗れて乗機を撃墜され、鬼畜生と罵ってきた敵兵の眼前に吊るされ。捕らわれの身となった裸身を晒されながら、この女の部分はこれほど淫らに湿らせている。ふふ、そうか。武名名高い大ジオン仏道の女は、連邦の男に敗れて捕らえられながら犯されるのを、それほど心待ちにしていたのか」

「…………!」

 太腿の半ばを越えて登りあがったマコトの指先に触れる液体は、少女の汗だけではない。そのさらに上――股間の秘裂から薄く粘ついた透明な液体が溢れ、滴り伝わっているのだ。

「何を考えているのか、手に取るように分かるぞ。お前を墜とした男。戦場でお前より強いことを示した男に、犯されたいのだろう。かつて敵として憎み、今までさんざ屠ってきた連邦の男に犯され、その強い男から蹂躙されるような獣の種付けを受けて、その子を孕ませられたい。魂の芯ではそう強く願っているから、お前の卑しい『女』は荒々しい『男』の訪れをこれほど強く待ち望んでいるのだろう?」

「そ、それは……!!」

 傲岸不遜な態度を崩さない、連邦の女軍人。先の戦闘で彼女のゲルググをビームライフルで貫いて火球へ変えたのは彼女でないにしても、自ら放った必殺の狙撃を、人智を超えた何か異常な力で無力化してのけた、あのビーム・スプレーガン使いのジムⅡを操っていた『妖怪変化』本人であることは、もはや疑いようもなかった。

その妖怪変化へ反論しようとして、少女はそこで口ごもった。自身の肉体が置かれた現状は、まさにこの女に言われるとおりだったからだ。

 体が熱い。

 男が、欲しい。もう誰でもいい。

 もうとにかく誰でもいいから、このビームと核の炎で全身を洗うように焼かれて濡れそぼった肉穴を、猛り狂った雄の怒張で一度に貫いて、飢えた雌穴を埋めてほしい。魂消るような雌獣の絶叫を上げながら喘ぎ狂い、膣奥を何度も叩きながら激しく抜挿された末、濃厚な熱く子種汁を子宮目掛けて注ぎ込んでほしい――。

 たとえその合体と受精によって、自らの肉体が取り返しのつかない変質を迎えてしまうとしても。

 今までの人生で一度も感じたことのなかったその異様な欲望が、衝動が、男たちにそうされる自分の鮮明なイメージとそれに対する羨望までをも伴いながら、己の内側を埋め尽くしているのだ。

 あまりに異様な意識を自認しながら、それでも少女はキッと目の前の仇敵たちを睨んで吠えた。

「こ、この異様な熱は……そうか。おのれ、連邦の淫獣どもめっ。この私に、淫欲の麻薬を盛ったのだな!?」

 青く澄んだ瞳から涙の粒を零しながら、頬の上気しきった美少女が悲痛に呻いた。大ジオン仏道の教義に身も心も捧げたまま、彼女の美貌を求める男たちを一人として顧みることなく過ごしてきた彼女にとって、この異常な現状はそれ以外にはまったく説明のしようがないものだった。

女の性欲を異常に昂進させる媚薬――もはや人間を壊す麻薬の域まで達したそれらを、彼女らは自分に対して使用したのだ。そうに違いない。

連邦に属する者すべての魂は、人に非ざる畜生道へと堕ちる。連邦兵、ましてその中でも鬼畜外道を極めたこの妖怪変化ならば間違いなく、それぐらいのことは平気でやる。彼女はそう信じていた。

 言うまでもなく、捕虜への薬物投与は南極条約で禁止されている。

というか実際のところマコトとウェンディは彼女に対して、何の薬物投与も行っていない。拘束して移動させる以外、ほとんど触れてすらいなかった。彼女の内面を焼き尽くしている異常なまでの発情はすべて、完全に自発的なものだった。

 だが、マコトは曖昧な――何も知らない者の目からは不気味にも見えるであろう傲慢な笑みを浮かべたまま、少女から浴びせられる強烈な非難と冤罪を否定も肯定もすることなく、ただ不敵に冷たく言ってのけた。

「ふふ、いい目だ。……だが、残念だったな。お前のモビルスーツに股ぐらからビームを挿入し、一気に核の炎に燃え上がらせて墜としたのは、男ではない。女だ」

「何を……?」

「そして我々誇り高き地球連邦軍に、ジオン残党の雌豚ふぜいを慰めてやるためだけにくれてやれるような、安い男など存在しない。思い上がるな。つまり、……分かるか? お前の女陰がどれほど雄欲しげに雌汁を垂らそうとも、その虚ろな洞穴は今後永遠に満たされることは無い。膣奥を突かれる快楽に咽び泣くこともなく、子種汁を注がれることもなく――ただ虚しく乾いたままで、そこに在り続けるのだ」

「…………!!」

 もし万一自分が戦いに敗れても成仏を果たすことなく、敵の手に落ちた場合の結果を想像したことはあった。女に飢えた連邦畜生道の兵たる男どもが殺到し、自分は裸身に剥かれて容赦なく代わり代わりに輪姦され、戦場で猛った敵の男どもの欲望のはけ口となって終わることのない凌辱の中で、襤褸切れのように使い捨てられるのだろうと。

 今の自分は、そのおぞましい結末さえもを望んでしまっていた――だが目の前の連邦軍人の女は、その予想図をあっさりと否定してのけたのだ。

 部屋は小さく、完全に閉ざされている。自分の背中で乳房を揉む女と、目の前の女の二人以外に人の気配はない。自分を犯そうと欲望に燃えて待ち構える下卑た男たちの気配は、どこにも感じられないのだった。

「そ、……そん、な……っ……」

 

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 もはや自分が敵の男たちに犯されることなど無いのだと察するや、魂の渇望が言葉となって小さくかすれながら、少女の可憐な唇から零れ落ちた。がくりと肩が落ちる。意識から本能へと現状の理解が進んだ少女の瞳から、今までと異なる理由で――屈辱ではなく絶望の涙が新たに溢れだしていた。

 その間も搗きたての餅のように柔らかな乳房を捏ねまわし、肩越しにその絶景を覗き込みながらたぷたぷと弄ぶウェンディは、その表情にだらしのない満面の笑みを浮かべていた。今は俯いている少女が少し横を向けば、まったく緊張感のない緩んだ表情が見えてしまいかねない。膳立てが台無しだ。マコトがギッと睨みつけるとウェンディは小さく舌を出し、その表情を邪悪な凌辱者のそれに戻した。

 気を取り直して、マコトが歩き出す。ウェンディと少女への前後を入れ替えながら、彼女への言葉を続けた。

「お前ごときの相手など、わざわざ男たちの手を煩わせるまでもない。女だけで十分だ。ふふ、どれ……。確かになかなかどうして、いい乳をしているじゃないか?」

「うっ!?」

 マコトはぎゅうっ、と爪を立てながら乱暴に少女の右乳房を握りしめ、あらぬ形状へと変形させる。同時に正面へ回ったウェンディが左乳房を右手で下から持ち上げながら、その可憐な桜色の山頂部へと吸い付く。さらに左の手指を濡れた秘裂へと侵入させた。くちゅくちゅと淫靡な水音を立てて、ウェンディの人差し指と中指が揃って少女を内側から広げていく。

 

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「いっ、いやあっ!!」

 熱のこもった悲鳴を上げて、少女は拘束されたまま身をよじった。長く伸びた銀髪が揺れ、少女の肩甲骨が背後に立つマコトの乳房に当たって弾ませる。

「お、女同士で、など……っ! おのれ、汚らわしい妖怪変化めっ。犯るなら一思いに、男どもを連れてきて犯れぇっ!!」

「馬鹿め。そんな安い挑発には乗らんよ。お前ごとき戦争犯罪人に、本艦の将来有望な男子諸君を恵んでやることは決してない。盛りの付いたジオンの雌豚ごとき、女だけで相手してやると言っているのだ。楽しませてもらうぞ――観念しておとなしく股を開くんだな」

「お、おやめなさいぃ……ッ!!」

 少女は頑是ない幼児のようにいやいやをしながら首を振り、抵抗にならない抵抗を試みる。その理性は儚く、もはや風前の灯のようにも見える。

 ――だが、足りない。

 拘束した美少女の肉体を二人がかりで思うがままに貪るという異様な環境の中で、マコトは奇妙な冷静さをもって判断していた。

 だからマコトは言いながら軍服を、ウェンディはナース服を脱ぎ捨てていった。マコトはさらに髪留めを解いて下着までもを脱ぎ捨てると、少女のそれよりはいくぶん小さくとも、形の良い見事な巨乳が二つぶるりと震えて揺れた。

 虜囚の身となった銀髪の美少女にも劣らぬ美貌を惜しげも無しに曝け出しながら、二人の雌は上気しきった汗ばむ白肌へと、自らの肌を合わせていく。

「んッ……ンンッ、ンンウウゥッ!!」

 乳房に見合った大きさの乳輪を左右から潰して搾り出すように揉みながら、マコトは自らの乳首を少女の勃起しきった乳首に合わせて突いた。今まで巧妙に直接攻撃を避け続けてきた、乳房でもっとも敏感な部分をここで攻められて、少女はそれだけでびくんと背中を跳ねさせる。

「ンッ……!?」

 マコトはそこで少女の後頭部を押さえ、一気に唇を奪った。そして文字通り有無を言わさぬまま歯の隙間から舌を流し入れ、少女の舌を捕らえて搦める。くちゅくちゅと唾液が混ざり合い、唇から飛び散った。その間もマコトは少女の乳房を揉みしだき、ウェンディは屈んで彼女の秘裂に舌を入れていた。さらにウェンディの右手が回り込んで少女の尻穴を攻めると、狂暴な愛撫の連鎖が少女の思惟を貫いた。

「――ッ!!」

 呼吸が止まるほどの長い接吻のあと、ようやくマコトは唇を離した。互いの舌から二人の唾液が糸を引いて伸びる。この間にもウェンディの愛撫は場所を変えながら続いている。少女の瞳は虚ろで、初めて経験する未知の快楽に深く溺れて喘いでいた。

「あ、ああ。い、いや。いやぁ、お姉様。おねえさまぁっ」

 

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 とどめとばかりに、ウェンディの巧みな舌技が少女の陰核、その中心部を責め上げる。これがダメ押しの一撃だった。

「あッ、ああっ……、ああ、ああああああ~~~ッ!!」

 おとがいを反らして喘ぎ、絶頂したように少女が叫んだ。股間からひときわ大きく潮が吹き、肩から力が抜けて体が崩れる。

 ――やったか?

 本当に絶頂へと達したならば、発動した『力』の残滓も霧散する。そうなるはずだ。

 今だ、とマコトが冷たく目配せすると、ウェンディは隠し持った小さな刃物を少女の指先に当てた。少量の血液検査に用いられる医療器具だ。虚ろな瞳で喘ぐ彼女からの死角に隠れて気取られぬよう、ウェンディがすっとその刃を走らせる。

 だが鋭利な刃は少女の柔肌を切り裂くことなく、傷ひとつ付けられずに弾かれていた。

ビームの直撃や至近核爆発の暴威から女体を完全に守り抜いてのけた『力』の残滓は、まったく失われていなかった。

 男と女のセックスであれば、ただ膣内射精を一度受けさえすれば、それだけで雲散霧消していたはずなのに。

 不完全燃焼、か。

 ギリッ、とマコトはきつく歯噛みする。とろんと蕩けた瞳で、もっと、と無言でせがむように次の愛撫を求めてくる捕虜の少女に向き直る。

 己の内面を貫く暗い義務感を、捕虜の美少女に欲情して弄ぶ変態女軍人の仮面を被りなおしながら、マコトは次の愛撫を再開した。

 

 

 

「いったい何時間かけたんだ。これだけやっても無理なのか。やはり、……女だけで鎮静化させるのは無理なのか。最終的には、男を使って鎮静化させるしかないというのか……」

「ま、あたしは困んないけどね! いつでも発情マックスの爆乳かわい子ちゃんを愛しモードの犯りホーダイ、空気のようにレズセックスするエアーエッチの新世界、ロック開けたら5秒でレイプな貝合わせ常時接続の最高にイイモビルスーツ整備環境でこいつぁユビマンキタッスね……まだまだヤリ足りないしぜんぜん飽きない。天国では?」

「私はもう疲れたから言っているんだ」

 マコトは心底疲れ切った表情で頭を振った。

 憔悴したマコトと裏腹に、ウェンディの血色は良い。肌艶はいつにも増して輝いて動きは軽く、しぐさと表情にも余裕がある。MS整備班長として表で業務に当たっている直の時間以外は、ほぼ不眠不休でこの少女を何度も何時間もかけて繰り返し犯し続けていたはずなのだが、今なおこの状態を維持できてしまっている。

 この旧友にして悪友はやはり人間ではないのかもしれない、と今更ながらにマコトはそう思う。

「まあ、それなら最後の手段だね。そのへんの若いの誰か適当に捕まえて、ちんぽブチ込ませちゃえば? ゴム付けさせるか、それだけじゃダメで最悪中出しまでさせることになっても、気絶したあとですぐに避妊処置すればなんとかなるでしょ。たぶん。それこそガチのゲイでもなけりゃ、あの娘が相手だったら大体誰でもおっ勃つだろうし――」

「それだけはダメだ」

 大前提を崩そうとするウェンディの提案を、マコトは即座に却下する。

「ここで男を使えば彼女を確実に『安全化』することは出来るかもしれないが、男を巻き込めば、その彼に事情を知られることになる。私とウェンディ以外に、秘密を知る人間はこれ以上、絶対に増やさない」

「ま、そうだよねぇ。……これ以上、あたしらの事情に巻き込めないか……」

「……クライネ伍長の事例がある。男と合体させなくても、どこかに突破口があるはずなんだ。まずは態勢を立て直して、続ける。それでも、このまま無力化できないなら……構わない。むしろ、このままデータを集め続けるんだ」

 静かに呟きながら、マコトはウェンディを睨んだ。

「彼女には、実験台になってもらう。彼女からデータを取っていけば、この謎めいた『力』の正体について、何か新しいことが分かるかもしれない。地球圏は――そして新サイド4は、これから荒れる。エゥーゴの新型機に乗っていたあのMS隊長も、『力』の存在を知ったうえで彼女を拾いに来ていた気配があった。気のせいとは思えない。おそらくほぼ確実に、私たち以外にも『力』について知ったうえで、利用しようとしている連中がいる」

「となると――」

「一年戦争で異能を示したアムロ・レイたち『ニュータイプ』が、連邦中央へ公に存在を知られてどうなったか。雨後の筍のように林立したニュータイプ研究所とやらで、何が行われたか……。私は、……私たちは、ああなってやるつもりはない。もうこれ以上、決して誰にも知らせはしない――」

 悪いことにあの少女はすでに、自分が不死の『力』を発揮したことを強固に認識してしまっている。記憶の曖昧さに付け込んで誤魔化すことが出来た、アイネのときとは違うのだ。今さら捕虜として表に出すことは出来ない。上級部隊に引き渡して専門の情報部隊が尋問することになれば、『力』の存在をすぐに広く知られてしまうことになるだろう。

 マコトにとって、それは絶対に避けなければならない最悪の破滅を意味していた。

 部屋の一点を見ながら淡々と、しかし言葉に強い意志を込めながらマコトは続ける。

「私は私たちの平穏な未来を守る。だからあのエゥーゴ部隊は、どんな手を使ってでも、確実に、潰す。そのためには私たち自身も『力』について知る必要がある。私たちは『力』の秘密を暴いて手元に隠すが、その存在を知って利用しようとする者たちは、敵だ。このまま闇に葬らせてもらう」

 明確な殺意を込めたマコトの言葉に、ウェンディは目を眇めた。マコトはそんな彼女に視線を移し、そして目を伏せた。

「すまないと思っている。発表の見込みがあるわけでもない、こんな研究もどきに付き合わせて」

「別にいいさあ。かわいい女の子を犯りまくれるっていう、役得がみっちりだからね。あたしは堪能させてもらうだけだよ。マコトの守りたいものは、あたしが守りたいものでもあるし。――で? これからどうすんの」

「……家に連れていく。使える部屋があったはずだ」

「ん? それってつまり、サブリナん家に入れるってこと?」

「ああ。とりあえず薬で眠らせて荷物に隠し、誰にも知らせずにここから連れ出す。ここに置いておけないなら、それしかない」

「やれやれ、やっぱりそうなるよねえ。ま、やってみますよっと」

 ぱっと手元に麻酔薬を取り出し、ちょうどいいサイズの空のトランクケースを引き出しながら、ウェンディはにいっと笑った。マコトも苦笑する。

「よし。それでは、大ジオン仏道雌豚の出荷といくか」

 

 

 

「これで良し、と……」

 同室のマコトが帰ってこないまま、アイネ・クライネ伍長は早々に荷物の整理を終えていた。何しろ彼女は乗機を撃墜されての宇宙漂流から、文字通り「体一つ」でこの艦に拾われている。ここに来てから受け取った物資以外には、私物も官給品も本当に皆無だったのだから、荷造りが早いのは道理だった。

 先の戦闘で機体が大破した後、しばらくはトラキアに滞在していた訓練生課程同期の親友シエル・カディス伍長も、P-04への入港後は早々に母艦であるサラミス改級駆逐艦『アルマーズ』へ戻っていた。

 せわしなく通路を行き交うMS隊の要員たちの多くは、既に上陸に備えて私服へ着替え終えていた。聞けばウェンディらほんの一部の要員のみが改修作業要員との調整のために残るものの、他はほとんど下艦させられるらしい。

 だがそんな中でもアイネたちパイロット要員は、いつも通りのパイロットスーツのままだ。彼女らの愛機、RGM-79R『ジムⅡ』を改修工事に入る艦から出して、指定されたP-04の基地MS格納庫まで移動させなければならないからだった。

「私の手荷物は、コクピットに持ち込むだけで足りちゃうなあ……」

 大ジオン仏道の襲撃で撃沈された、初めて配属されたサラミス改級巡洋艦「アバリス」のことを思い出す。初の航宙展開に胸を躍らせながら荷造りしたカバンと私物は、もうどこにも存在しない。彼女にろくでもない「歓迎」を仕掛けてのけた乗員やMS隊の先輩方もろとも、新サイド4外縁軌道で宇宙の塵になってしまった。つい数日前のことなのに、もう遠い昔のようにすら思えてしまう。

 MS隊長のマコトはしばらく休暇を取らされるらしく、他の要員も多くは休暇の消化を命じられているようだ。部隊配属間もないアイネはトラキアから降りた先で整備期間中も何かしらの勤務を継続することになるはずだが、その内容はまだまったく分かっていない。

「遅いな、ハヤカワ准尉……」

 移動任務の開始まではやることもなく、マコトが帰ってくる気配もなく、アイネは部屋から出てすぐそこにあるMS格納庫を覗いた。この区画がこれから拡張・整理されて、MSベッドが4基から6基に増えるらしい。今ある風景も見納めだろう。

「ん?」

ぼんやり愛機を眺めていると、MS格納庫内へ貨物車型のエレカがゆっくりと乗り入れてきたのに気付いた。荷台の側面にアイネには読めない日本語文字で、「みけり屋」と表記されたロゴが入っている。

工事関連資材か何かの搬入かな、と思うアイネに向かってエレカは近づいてきた。停車するなり降りてきた女性運転手に、アイネは目を丸くした。

「あれ、サブリナ少尉?」

「よっ」

 アイネへ気安く話しかけてきたトラック・ドライバーは、サブリナ・ミケリヤ少尉だった。

前回の戦闘後から妙に忙しそうになり、なぜか非番時に姿を見かけることも少なくなったマコトに代わって、サブリナはアイネの面倒をよく見てくれるようになっていた。

 だが作戦行動中に合流したゲンナー・ウェズリー少尉のRGM-79GSR「ジム・ゲシュレイ」とサブリナのRGC-80SR「ジムⅡキャノン」は、もともとP-04基地所属のため、入港直前にトラキアから発艦して本来の拠点へ戻っていたはずだった。

「帰られたのでは??」

「帰ったからまた出直して来たんじゃない。聞いたよ。トラキアは格納庫周りの大改装で、MS隊はみんな艦から下ろされちゃうんだってね。アイネ、トラキアから降りたらどこへ行くの? 下宿はもう取った?」

「えっ?」

 連邦宇宙軍の軍人のうち、いつも決まった拠点や基地で勤務している者はともかく、複数の拠点間を往来する艦艇の勤務者は展開先の港にも下宿を持っている場合が多い。

 トラキアはもともとP-04を母港としていたから、古参乗員の大半はそちらに下宿というか自宅を持っているようだ。だが当然アイネにそんなものはないし、聞けばMS隊先任のイベル・ガルノフ軍曹、ロブ・サントス伍長やシュン・カーペンター伍長らにしても、P-04に下宿は持っていないらしかった。

「それが、迷っていまして……アバリスが沈んだ時に現金から何から全部なくしちゃいましたから、いま一文無しなんです。だからホテル暮らしみたいなことも出来そうにないですし……基地の宿舎を借りる手続きが間に合わないなら、トラキアの中で工事しない区画になんとか泊めてもらえないかなあ、と思ってるんですが」

「よーし。それならアイネ、ウチに来なよっ」

 爽やかな笑みとともに、サブリナはウインクしてのけた。

「ここ来るとき、P-04の小惑星本体の周りにプラント群が見えたでしょ? アレの一つにウチがあるの。ってか、ここの住民は大体そういう住み方してるんだけどね。この辺もともと、ルウム戦役でジオンが潰しきれなかったプラントの生き残りを集めて作った町だし」

「えっ。いいんですか?」

「もちろん。重力もあるし、農業プラントだから空気もいい。産地直送の新鮮な食い物も山ほどある! メシの旨さは保証したげる」

「え、ええ……で、でも……」

 明るいノリで迫るサブリナに対し、アイネは申し訳なさが先立って話へうまく乗れずにいる。途中でサブリナは何かに気づいて勢いを緩めた。

「あ、そうだ……。ウチはマコトとシェアしてるから、アイネがウチに来たらマコトとも毎日顔を合わせることになるな。ごめん、アイネ。自分は仕事中なのに、休暇中の上官の顔を朝から毎日見るのが嫌なんだったら――」

「ぜひ入居させてください。よろしくお願いいたします」

「え? そ、そう?」

 ガシッ、とサブリナの手を力強く取りながらアイネは即決し、鼻息荒く入居を申し込んだ。ぐっと拳を握りこむ。

 これで毎日、ハヤカワ准尉の顔が見られる……。

煮え切らなかった態度から瞬時にいきなり切り替えてきたアイネに、サブリナは目を瞬かせながらも、すぐに頷いてのけた。身を翻し、格納庫内で思い思いに待機していた他のパイロットたちにも声を掛ける。

「オッケー、まずアイネちゃん確定! そんじゃあ、そこのシュン、ついでにロブとガルノフも! あんたらも下宿ないんでしょ? まとめてウチ来ない?」

「えっ、……俺らもいいんすか?」

「大丈夫! ウチ広いから、いけるいける。まあ、お前らはアイネちゃんの部屋から離すけどな!!」

 一瞬固まりかけたアイネを素早くフォローしつつ、サブリナはどーんと来い、と大きく胸を張って見せる。

「じゃ、じゃあ、お願いします」

「う、うっす……オナシャス……」

「マジかー……」

「任せとけい!」

「が、ガルノフ軍曹と、カーペンター伍長とも一緒に暮らすのか……」

 アイネにとって不可抗力だったとはいえ、危うく男女の関係を持ちそうになってしまった二人である。前者だけでなく後者に対しても、先ほど出会ったルウム農協所属という予備役兵の、不穏な美少女パイロット二人組の言葉でかき立てられた警戒心が沸き起こる。

 あの二人の船団もP-04へ帰港した。おそらく、また会うことになるのだろう。

MS隊でもマコト以外のパイロットは比較的新参が多い一方で、整備兵らは古参がほとんどらしかった。話の流れにも、特に関心を示していない。

 そんな空気の中だったから、整備兵たちの中でなぜか一人だけ凍り付いていたマリエル・エイムズ軍曹の存在は特に目立って、アイネの目に付いたのだった。

「あ、あの――エイムズ軍曹」

「……ひゃっ!? な、なにっ!?」

 アイネが近づいて後ろから声を掛けると、なぜか水でも掛けられた猫のような動きで飛び退かれてしまった。アイネも驚くが、怯むことなく続ける。

「良かったらエイムズ軍曹もご一緒に、サブリナ少尉のご自宅に下宿しませんか? エイムズ軍曹も下宿、ないんですよね?」

「……え? えっ……?」

 いつも勤務中に見せていた鋭敏さが嘘のように、マリエルは不自然なほど魯鈍な反応を返してきた。遠慮しているのかな、とアイネは思う。

「あれ? マリエル、あんたは下宿持ってなかったっけ? 展開中に解約したの? まあいいや。まだ部屋あるから、あんたも来なよ」

「行きましょう、エイムズ軍曹!」

 周りに知己の女性が増えてくれるのは心強い。アイネから文字通りに背中を押されても、マリエルはまだ「ああ……」とか「うう……」とかよく分からないことを言っていたが、やがて機械仕掛けのような動きで顔を上げた。

「わ、分かりました……少尉、私も、お世話になります……」

「よーし。じゃあお前ら、トラックの荷台に荷物を載せな! ウチに荷物を下ろしたら、パイロットどもは移動先の格納庫まで迎えに行ってやるよ。マリエルは助手席な!」

「さっきから何なんだ、この騒ぎは……。サブリナ、ずいぶん大きな車で来たな?」

 ここまで来てようやくMS隊長が整備班長と、大型のスーツケースをふたつ引きながら顔を出してきた。怪訝そうな顔でサブリナのトラック・エレカを見ている。

「あー、マコト? いろいろ話が急だったから、ここに下宿持ってない子たちの行き先が無いだろうと思ってさ。あんたんとこのパイロット全員と、ついでにマリエルもうちで預かることにしたから、ヨロ!」

「…………」

 アイネが聞いた限りでは、サブリナの自宅とはすなわちマコトの自宅でもあるはずなのだが、サブリナはどうやら完全に事後承諾で進めるつもりだったらしい。マコトを迎えに来るところまでは打ち合わせていたのだろうが、マコトは少し顔に手を当てて考え込むしぐさを見せ、隣のウェンディと一瞬視線を交わしたものの、やがて諦めたように頭を振った。

「確かに、そうか……そうだな。やれやれ……これはどうやら、展開中と変わり映えしない休暇になりそうだ」

 自嘲するように言い捨てると、ふっと微笑んで、マコトは部下たちに向き直った。

「すまなかったな、気を回してやれなくて」

「? は、はあ……」

 マコトが見せた予想外の素直さに、ガルノフが毒気を抜かれたように答える。

 それからマコトは表情を引き締め、全員に告げた。

「各人、サブリナの私有車へ私物の積載を終え次第搭乗せよ。各機所定の武装を携行のうえ、トラキア整備工事間の暫定拠点となる第113整備場までの移動を開始する。到着後、自分とガルノフ軍曹は休暇に入る。休暇間の編隊指揮はサントス伍長が執れ――質問。よし、かかれ!」

 マコトの号令で、MS隊が動き出す。めいめいがスーツケース類を持ち上げ、大荷物を次々とトラックの荷台へ積載、固定していくと、結構な量になっていた。

 ジムⅡのコクピットに潜り込んで機体と全天周モニターを起動しながら、アイネは新生活への期待に胸を膨らませていた。




※ 当面の間、ご感想いただいた方からの新規リクエストは凍結いたします。申し訳ございませんが、不死鳥のカケラのリクエスト消化完了までお待ちください。

※イラスト:はお様(http://www.pixiv.net/member.php?id=164461)、b10b10アットzoho.com様
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