もしリムルが仮面ライダービルドが好きで性欲が強かったら? 作:鋼色
俺は三上悟。ただのサラリーマンで、ただの仮面ライダー好きだ。
昔は特撮が恋人なんて言う程に好んでいた。まあ、そのせいで俺は年齢=非モテ期間となっている訳だが。
好きを突き通しても、あまり良くない事がある。仮面ライダー事件で俺が学んだものだ。
「先輩。お待たせしました!」
そんなくだらない事を思考していれば、爽やかな青年が笑顔でこちらに向かって歩いてくる。
俺の後輩の田村で、会社のマドンナ、沢渡さんを射止めたヤツである。
今回、休暇を取ってまで外出した理由としては田村に相談に乗って欲しいと言われたから。
結婚の相談なんて、俺にするモンじゃないと思うんだが。既婚者組にでも聞けば良いのに。
「どうも、初めまして。沢渡美穂です」
「どうも、三上悟です。あと、沢渡さんは会社で有名ですし、紹介されなくても知ってますよ」
「有名ってなんですか!?なにか、まずい噂でも……?」
「まあ、色々と」
含みのある言い方をすると、沢渡さんは大変に顔を動かす。
ついつい揶揄ってしまった。俺のジョークはデリカシーが無いから辞めとけって言われるんだけど……どうしてもしちゃうんだよな。
「先輩、それぐらいにしてくださいよ!美穂も揶揄われてるだけだって」
うーむ、流石田村だ。この爽やかイケメン、この場を笑いながら取りなした。
コイツは何故か馬が合っている。だから憎めない。
しょうがない、素直に祝福をしてやるとしよう。
「すまんな。性格が悪いもんで。まあ、ここで話すのも何だし、場所を変えて飯でも食いながら話そうか」
ココの近くには俺のお気に入りの店がある。安い割にシャレてるし、デートの味方みたいなスポットだ。俺は分かんないけどな!
「「「キャーーーーーー!!!!」」」
突然の悲鳴、突然な混乱。
俺は仮面ライダーなんかじゃないからコレには冷静の対処なんてデキませんが!?
この騒ぎ、一体何が起きてるんだ。イケメンアイドル降臨なんてモノじゃないだろ。時間的な騒ぎだ!
「どけ!殺すぞ!」
その声に振り向けば、そこには包丁を持った男が走ってくるではありませんか。
ははっ、通り魔かよぉぉっ!なんでこの日に居るのか問い詰めたいぞ。
こういう時は逃げるに限る。俺、まだ仮面ライダー見たいし。
待て、待てよ……アイツ、どこ向かってる?
俺、じゃないよな。ギリギリ進行方向外だ。
だったら、どこ向かってる。もしかして、と最悪が思考を巡る。
そうだ、そうだよ。俺の後ろには田村と沢渡さんが居る。
田村と沢渡さんは驚いて動けそうにない。このままだったら間違いなく刺されて死ぬぞ!?
……だから、先輩の俺が助けにゃならん!
俺が仮面ライダーに憧れたのは格好良かったからだ。苦しくとも、挫けても、誰かの為に歩いて行く姿に心を奪われたからだ。
それは今でもそうだ。誰かの為に動くなんて、できる事じゃないから。
断じて、命惜しさに後輩とその恋人を逃げるものじゃない!
「田村ァァァーーー!」
刺されそうになっている田村を突き飛ばし、代わりに俺が刺される。
刺された背中を中心として、激熱と言えるような痛みが襲う。
立つ事すらもままならない。刺された瞬間に俺は地面に倒れ、うずくまる。
通り魔が叫んでいるのを耳に届き、逃げている姿が目に映る。
はは、良かった。これで田村と沢渡さんは無事だ。命の危険性なんか無くなった。
《確認しました。ユニークスキル『
ああ、やばいな。安堵してたら痛みが全開になって襲ってきた。
というか、痛み通り越して熱くなってきた。背中が地獄のように熱い。
ココは現世な筈だろ。
《確認しました。『耐熱耐性』獲得……成功しました》
クソ、刺されるってキツイんだな。死への恐怖がふつふつと沸いてくる。
仮面ライダーだったら変身して、怪我にならずに済んだのかもな。
《確認しました。『刺突耐性』を獲得……成功しました。続けて、『物理攻撃耐性』を獲得……成功しました》
《確認しました。ユニークスキル『
「先輩、血、血が出て……血が止まらないんですぅ!」
なんかウルサイと思ったら、お前か田村。ならしょーがねーな。
というか、血が出るって当たり前だ。俺は人外じゃなくて人間だからな。
だからより痛みには敵わないんだが。
《確認しました。『痛覚無効』を獲得……成功しました》
やばい、マジで混乱しちまってる。
田村が喋ってないのに、田村が喋ってるように聞こえる。俺の頭、幻聴聞こえるぐらいにイカれちまってる。
「た、田村……ウルサイ、ぞ。こんなの、た、大したものじゃない……。だから、心配するな…」
「で、でも。先輩、血が……!」
ったく、そんなに泣いてちゃ男の顔が台無しだ。恋人の前なんだ、少しは格好つけろよな。
沢渡さんもほら……見えないな。視界が霞んでよく見えない。
それに、背中の痛みもなくなってきて、寒さが訪れてきた。
これ、相当まずいな。人間って、血液なかったら死ぬんだよな。
《確認しました。血液が不要な身体を作成します……成功しました》
何言ってるんだ、田村。悪いけど、聞き取り辛い。
何を言っているのか問おうとしても、声が出ない。本格的に死期が見えてきた感じか。
加えて、体が凍えそうだ。誰も熱さと痛みが嫌だから全て寒さに等価交換してくれなんて言ってないぞ。
《確認しました。『耐寒耐性』を獲得……成功しました。『耐熱耐性』『耐寒耐性』を獲得した事により、『熱変動耐性』にスキルが変化しました》
死ぬ前のその時、俺は一つを思い出した。
pcのハードディスクの中身!中身見られたら精神的に死ぬ自信がある!
「田村ァァ!万が一、万が一だが、俺が死んだら、俺のpcを頼む。風呂に沈めて、電気を流して、データを完全に消去してくれ…」
死にかけの体の気力を振り絞り、大声を放つ。
田村は信用できる男だ。心残りを絶対に処理してくれる。
《確認しました。電流によるデータの消去……情報不足により実行不能。失敗しました。代行措置として、『電流耐性』を獲得……成功しました。付属として、『麻痺耐性』を獲得……成功しました》
田村は一瞬キョトンとして、その数秒後に涙を浮かべながら苦笑をする。
「ははっ、先輩らしいですね」
そうだ、笑え、田村。男と男の別れに涙なんて似合わない。
それに、そっちの方がお前に似合ってる。
「ごめんなさい、先輩。俺、実は沢渡の事、自慢したくて」
「知ってるよ…。俺相手に相談してるんだからな。彼女、幸せにしてやれよ。先輩との約束だ」
「……!は、はい!」
《確認しました。ユニークスキル『
***
振り返ってみれば、俺の人生は普通。大学出て、ゼネコンに入社して、一人暮らしで、彼女いなくて。
そのせいで俺は未だに童貞。うぅ、すまんな、息子よ。
来世があったらガンガン攻めてガンガン喰おう、人間だろうと何だろうと。女性なら関係ない
……いや、ナシだな。人間じゃなかったら動物とでもヤルのか?
《確認しました。ユニークスキル『捕食者』を獲得……成功しました》
《確認しました。ユニークスキル『
《確認しました。ユニークスキル『
30で童貞なら魔法使い。40まで行けば賢者だったのに。
大賢者もなれるかもしなかったのに。色々な意味で惜しいんだよな。
《確認しました。エクストラスキル『賢者』を獲得……成功しました。続けて、エクストラスキル『賢者』をユニークスキル『大賢者』に進化させます……成功しました》
さっきから『変態者』やら『性欲者』やら『大賢者』やら……バカにしてんのか!
めっちゃめちゃにふざけてるだろ!
はあ……少し疲れたな。眠るとするか。
さよなら