もしリムルが仮面ライダービルドが好きで性欲が強かったら? 作:鋼色
彼女は無敵のエージェントである。仕える組織はなく、何を動く支柱にしていたかも覚えていない記憶喪失の少女である。ただ一つ分かっているのは、エージェントの力と夢の力を保有する事。
なんで、なんて疑問は尽きない。戦う理由すらいまだに不明瞭。しかし、人々を苦しめる者がいる限り、ベルトを回す。
『インパクト!!』
『メツァメロ!!メツァメロ!!』
「I'm on it」
『グッモーニング!!ライダー!!』
『ゼッツ!!ゼッツ!!ゼッツ!!』
黒煙から形成される体は筋肉が浮き出る暗黒の体。持ち得るカプセムの中で最も肉体強化を施してくれる形態だ。真正面からのぶつかり合いならば、これが一番向いている。
「覚悟して、アーマーサウルス」
「……やらかしたな」
「ホントっすよ。何やってんスカ。少しの煽りで思いっきり威圧をしちゃうなんて」
「リムル、アナタが強いのは分かったから少しは自重してちょうだい」
「うへ〜、すぐ帰るって連絡しちゃったのにな〜」
いや、うん。ちょっとうざったいから威圧して追い払おうとしたんだ。クロガネから流れてきたエクストラスキル『宇宙覇気』を使ったんだ。オーバーキルだったんだ。
なんか失神してたよ。泡吹いて倒れてたよ。『治癒者』を使ってなかったら色々と危なかったぞ。
まさか覇気系スキルまで警戒しなければいけないとは………おみそれしました。
「よぉ、あんちゃんら。とりあえず、アイツらが全面的に悪いってのは把握できた。今回は甘く見るが、次はすんなよ…?」
「今回は加減を間違っただけだから!次はないよ!」
「ならいいが……」
「大変だー!!鉱山にアーマーサウルスが出た!」
「なんだと……!?アーマーサウルスは倒されたのか!」
「あぁ、仮面が倒した!……でも、怪我人が酷い。すげぇ酷い傷だ」
『大賢者』。アーマーサウルスってそんなヤバい魔物なのか?なんか倒した気がするんだが……。
『告、アーマーサウルスはB-ランクであり、村一つが滅びるかもしれないレベルです』
オーマイガー……そりゃ大変だ。だったら酷い傷って度合いが予想以上って事になりそうだな。
そんな怪我人を見捨てられないし、恩を売ったら人材が確保できそうだ。だとしたら完全回復薬かスキルどっちの方が良いんだ…?
『解、ヒポクテ草が主成分の完全回復薬を推奨します。ドワルゴンでも98%が限度の回復薬しか作れません。しかし、この完全回復薬は99%を誇ります。作り方をチラつかせれば優遇してくれる可能性が高まります』
あぁ、それは確かに。
(そういえば『大賢者』さん喋りが流暢になっている気がする…。前までチラつかせるなんて言葉使ってたか?ま、いっか)
さすが『大賢者』さんだ。んよし、じゃあ『捕食者』から完全回復薬を取り出して、ドーン!
「なぁ、回復薬、必要なんだろ?使っていいぜ?」
「なっ……、礼を言う!」
「いやいや!下手ごとを犯したヤツの事を信じるんですか!?」
「この場に下手ごともクソもあるか!!治療できるヤツを待っていたら怪我人が死ぬんだぞ!」
憲兵さんがそう走って消えてから30分後くらい。憲兵さんが鉱山夫と一人の女の子を連れて帰ってきた。
「あんちゃん!助かった!」
「あんたが薬くれたんだってな!ありがとよ!!」
「腕がちぎれかけてて、生きれるかどうかも分かんなかったんだ。アンタは生かしてくれて、腕も繋げてくれた!本当にありがとう!!」
「……」(ウンウン!
最後のやつ以外熱烈な感謝を伝えてくれた。いや別に最後のヤツも感謝が伝わって来なかったって訳じゃないけどさ……ちょっとは喋って!?
まあ、何はともかく、恩を売ろう大作戦中間経過は無事って感じかな?
「なあ憲兵さん。残った回復薬は全部あげるから頼みがあるんだけど、大丈夫?」
「頼みが何かによるな。だが、多くの鉱夫を救ってくれた恩を返さなくてはならない。言うだけ言ってみてくれ」
「ちょーっと職人を紹介して欲しいんだ。ウチの村には職人たちが足りていなくてな」
「そんぐらいだったら構わねえよ!色々な職人って言えば、こいつらがそうだしな!」
俺のポーションで救われた鉱夫たちはミルド、ガルム、ドルドと言い、職人たちが集まるドワルゴンの中でもトップレベルの技術力を保持しているらしい。
ぶっちゃけそんな人たちが協力してくれるってだけで満足なんだが、あと一人協力を要請できるかもって事だ。でもお昼時だから飯食ってかららしいが、それでも大変満足な結果だ。
俺とゴブタ、ホシノとヒナを連れ、憲兵さんから教わった美味い店に行こうと思ったんだが……
なんか一人ついてきた。
憲兵さんの話ではアーマーサウルスを倒した戦士らしく、一番怪我が酷かったの事。片耳や腕がほぼちぎれていて、横っ腹に大きな穴が空いていたらしい。
二度と戦えない事を覚悟していたようであり、それを挽回してくれた俺にはとても感謝をしているとの事。
その恩返し的なヤツで奢るとかなのかなと考えたり。
「ご主人。これからよろしく頼む」
「ご主人ねえ……悪いけど、俺は君の主人になった覚えはないよ?」
「僕は主人を探していた。この身を救い、この身よりも特殊であり、この身よりも強い。そんな主人を。それが、ご主人、アナタなんだ」
「特殊…?」
「うん。小さいけど、頭にツノが生えてるんだ。ガルムさんが言うには夢鬼っていう夢に潜入する鬼らしいんだけど。ドワルゴンは武装国家でもあるけど、中立国家でもあって、差別はない。だけど、怖がる気配は少しはある。だから、ちょっと皆に遠慮してた。でも、ご主人なら遠慮しなくてもいい!だから、だから……」
「僕を連れてってください。ご主人」
今の環境が辛い訳じゃない。ただ、上手く呼吸ができなくて、息苦しい。その気持ち、少しはわかる。周りが悪い訳じゃないけど、ほんの少しだけ波長が合わなくて。周りの環境を変えたくて、逃げたくて。
俺も高校生時代、そうだったから。だから、できるのなら。俺はこの子を一緒に連れて行きたい。
「俺たちは魔人だ。ここよりかは、優しくないぞ」
「それが良いんです!ご主人!」
職人のツテを手に入れるつもりだったんだが、まさか戦力追加を手に入れるとはな。上手く行けばホシノ、ヒナのチームメンバーも一気にこっちに引き入れるだろうし、最高だな。
………上手く行きすぎて、逆に不安感があるが。何やら近い未来バカデカい出来事が起こりそうな気がする。
そんなの気にしてても仕方がないんだけど。
「先輩、やっと見つけた」
「あ〜、シロコちゃん〜。そういえば行ってなかったね〜」
「ほんとよ!何してるのホシノ先輩!」
「……そちらの人が関係しているのでしょうか…?」
「んー、まぁそんな感じ。ホシノもヒナも、君ら全員こっち側に来てもらおうと思ってて」
警戒心と銃を動かす音が重なる。銃口を向けられるってのは予想していたけど、まさか街中でやるとは。俺自身、あんな銃程度じゃ傷もつけられないけど、発砲して憲兵たちに捕まるのは不味い。
出来たら仲間にしたいと思っていたから、不味い。理想から遠のいてしまう。
だとしたらどうするか。……うん、決めた。スライムのカケラを発射して銃口を埋めよう。これなら危害を加えたくてもできないでしょ。
「別に俺は君たちに危害を加えたい訳じゃない。冒険者活動を辞めろって言いたい訳でもない。ただ、こっちサイドについて欲しかっただけなんだよ。俺たちの村は全員名付けの魔人と魔物で構成されているが、衣食住が整っている訳じゃない。そんな状況で襲われたら被害は甚大だ。だから、少しでも無害アピールをしてくれると助かるんだ。もちろん、自身らに被害が及ばない範囲でね。それを了承してくれるのなら、俺は何だってやろう。君たちの望みを全て叶えよう」
全員名付けの魔人で構成されているという言葉に動揺一つ。了承してくれるのならば何だってやる発言に動揺一つ。
うん、予想通り。ホシノやヒナと話していて思ったが、このパーティは救いたい人がいる。そのためなら誰だって、どんな条件だって入り込む。警戒心が高いホシノがこっち側に降った理由の一つがそれだろう。
事実、俺が保持しているスキルよりも上位のスキルが絡まなければ殆ど何とかなるのが現状だ。
「ほんとに、何とかしてくれるのか?」
イオリが不安そうに聞いてくる。自分たちが軍門に下ってもその大切な人が救えなければ意味がない。
それを理解しているからこその確認。
「あまりにも強すぎる能力が関与していない限り、何とかできる」
「その相手が、上位精霊イフリートでも出来るんですか?」
鋭く真偽を確かめる質問が飛び出る。アコだ。
つかイフリートってなに……?
『告、火の上位精霊イフリート……自由になれば街一つを全て燃やす事も可能な精霊ですが、十分に対処可能です。個体名:ゴブタでも容易に対処可能かと思います』
「イフリートねぇ……あんな雑魚上位精霊じゃ俺の目の前に立つ事すら出来ないと思うけどな。近づく前に部下にやられる」
「そんな、そんな馬鹿な話が……」
「信じられないのなら、見せてやるよ」
魔素が漏れないように極楽結界を張る。透明であり、不透明な結界が周囲展開された事に意識が向くが、次の圧倒的な魔素に結界の事などどうでも良くなる。
魔素の量は二回進化した事も関係しているが、一番はハザードレベルだ。ハザードレベルが上がるに連れて魔素も上昇を果たす。
その条件で一番のマッチポイントは、この体はハザードレベルが上がりやすいとの事。まだベストマッチは一回しか経験していないが、ハザードレベルは5.2へと至っている。
このレベルになってくれば大体の変身は可能である。何ともありがたい限りだ。
「こんなもんで良いか?俺の実力、分かってもらえたかな?」
返答はない。だけど、答えは伝わった。