暴食の魔王~転生スキル、食品化で俺は世界を食べつくす~ 作:サクラサクヤ
「皆の者よ、これはこの世界の命運をかけた戦いです。かの暴食の魔王を打倒さなければこの世界に明日はありません」
「「「「「おー!」」」」」
愛と自愛の女神ビナス。彼女の号令によって世界にわずかに残った住人達、神界の天使兵、そして個別のスキルを与えられた転生者の連合軍は沸き立った。なお彼らの討滅対象の暴虐の魔王とは食品化スキルを使い、10年程でこの転生世界の生命の90%以上を食べ尽くした俺、蔵戸仁伊のことだった。
「ではこれよりあなた方を魔王の居城までお送りします。ご武運を」
そしてビナスが右手を上げると数千の軍勢は一瞬で俺の拠点へと転送され、辺りは静まり返った。一方で軍勢が転送されてきた俺の拠点は一気に騒がしくなった。
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「……ふぅ、これで後は終わるのを待つだけですわね」
俺が転送された軍勢と戦っている中、軍勢への激励と転送を終えたビナスは一人本陣へと転移すると豪華な椅子へともたれかかった。
「ビナス様、お疲れ様です」
椅子にもたれかかるビナスに一人の女天使が労いの言葉を掛けた。彼女はカタエラというビナスの秘書を務める天使だった。
「本当ですわ。いくら私が担当した転生者だからとはいえ戦線の指揮を任せられるなんて……」
カタエラの言葉にビナスは今回の討滅戦への愚痴をこぼした。通常各世界の運営については深くかかわらないのが神界の決まりだが、世界そのものが滅ぶような案件の場合には介入をすることになっていた。そして今回、ビナスがその指揮を執るようになった理由はその元凶である俺の転生を担当したのがビナスだったからだった。
「せっかく転生させてやったというのにわざわざ手間を取らせるなんて本当に迷惑な輩ですわ」
(それをいったら私達はもっと関係ないんですけどね)
(休日出勤とか最悪……)
(ってかビナス様が適当にやったツケが回ってきただけな気がするのよね)
ビナスの言葉にカタエラとカタエラ同様駆り出された侍女天使達は内心で愚痴をこぼした。
「まあ、この功績で他の女神共にマウントが取れると考えたら悪くはありませんね」
(……はあ)
(私達も特別報酬とか欲しいなー)
(適当に煽てておけばいいから扱いは楽な方だけどそういうのは一切ないからねえ)
ビナスの言葉にカタエラと侍女天使達の内心の愚痴は続いた。
「それよりもビナス様、私達はこのままで大丈夫なんですか? 今までにも何人も転生者を送ったけど失敗した相手なんですよね?」
「心配ご無用ですわ。妨害のせいで向こうの様子は見られませんが今回の転生者は20人。全く心配ありませんわ」
侍女天使の一人、ハリエラがビナスに戦況を尋ねるとビナスは椅子にもたれかかりながら余裕の笑みを浮かべた。これまでビナスは重力操作や空間操作などのスキルを与えられた転生者を8人送って来たが全員、俺に食われることになった。そのため今回ビナスはそういった転生者を20人軍勢に加えていた。
「そうそう。それにミカちゃんもいるし負けることはないわ」
「そうですね」
ビナスの言葉にもう一人の侍女天使サニエラが続けた。ミカちゃんというのは俺のような世界を滅びに導く者を何度も討滅してきた神界でも指折りの実力者である天使兵ミカエラのことだった。侍女天使と天使兵は仕事柄仲が良くないことが多いが、侍女天使になる前は天使兵をしていたサニエラにとってミカエラは立派に成長した後輩だった。
「はっきりいってミカエラと天使兵だけでも十分でしょう。転生者はおまけのようなものです。どちらかというとあの馬鹿には少しは頑張ってもらって転生者を減らしてくれると報酬が減るので助かります」
(……これはひどい)
(絶対その分を着服する気だ)
(いつか痛い目見ないと分からないんだろうなあ)
三人から内心散々な事を言われているとも知らずにビナスは不敵な笑みを浮かべていた。
「ともかく我々はここでミカエラ達の帰りを待っていればいいのです。何、相手はたった一人。そう時間は…………おっと、ちょうど片付いたようですね」
ビナスが話していると前方に魔法陣が展開し、そこから件のミカエラが出現した。
「おかえりなさい。ミカエラ。首尾はどうですか?」
「……はっ。少々手間取りましたが倒しきることが出来ました」
「流石はミカエラですね」
「はい。他の者は10秒も持ちませんでしたが一対一でここまで戦えたのは久しぶりでした」
「「ん?」」
「へ?」
「まさか!」
ビナスとカタエラ、ハリエラはミカエラの話し方に違和感があり疑問符を浮かべた。そんな中、サニエラは咄嗟に自分の目の前に障壁を展開した。
「【
「うわっ!?」
「きゃ!?」
「……あっ、やっぱり駄目か」
「ミカエラ!?」
その直後、ミカエラの左手から謎の光線が放たれた。光線はサニエラの展開した障壁に一度弾かれたものの、再度ぶつかると障壁を突き破りカタエラ、ハリエラ、サニエラに浴びせられた。そしてその直後から三人の体が震え出し、その震えは段々と強くなっていった。
「……まさかこれは……嘘……そんなあああああん♡♡♡」
「……ちょっと待って……いっ、いや……やめ、やめてえええぇ♡♡♡」
「……あっ、駄目。駄目よ、こんな終わり方、こんな終わり方なんていやあああああ♡♡♡」
壊れた人形のようにガクガクと震えながら三人はほとんど同時に絶頂し、通常では考えられない量の潮を派手に噴き出した。そしてその直後、ポン! と音を立てて白い煙に包まれた。
「ま、まさか……っ! お前は」
「【
「……くっ⁉」
三人が小箱に変わるのを目の当たりにしてようやくビナスは目の前のいるミカエラが物の数分で軍勢を全滅させた俺の【
「やあ、ビナス様。久しぶり」
ビナスを拘束した俺はゆっくりとビナスの前まで歩くとミカエラの【
「この恩知らずが! 一体誰がお前を転生させてやったと思っているのですか!!」
「うん、最初は草原のだだっ広いところに送りやがってとか、翻訳スキルぐらいつけろとは思ったよ。でもこの食品化スキルをくれたビナス様には感謝してもしきれないぐらいだ」
ビナスは拘束されながらも精いっぱいの罵倒を俺に浴びせてきたが、それはどう見てもただの強がりだった。そしてその程度の罵声はこの10年で今更聞き飽きたので、俺は近くに転がっている食品化した天使たちが入っている小箱を魔力で動かして俺の目の前まで移動させた。そしてそのうち一つをビナスにも見えるように開けた。
「これは青髪の子だね」
「……カタエラ」
小箱の中には大股開きのアヘ顔Wピースの状態でフライドチキンならぬフライド天使になったカタエラが入っていた。
「そうか。カタエラっていうのか。……むぐ」
「……ひっ!」
俺はフライドカタエラを一通りビナスに見せつけるとその頭部にかじりついた。それを見たビナスは思わず目をそらした。
「……う~ん、プレーンな味付けながら中々の美味。やっぱり天使は普通の人間より気持ちさっくりしている気がするな」
「……いや、聞きたくない! 言わなくていい!」
俺がフライドカタエラを食べながらその味について評価を述べると、手足を拘束されて耳を防げないビナスは必死にそれが聞こえないよう首を振りながら叫んだ。
「いや、ちゃんと評価しないと彼女たちに失礼だろう」
「……ああ、ハリエラ」
カタエラを食べ終えた俺は次の小箱に手を掛けた。その小箱に入っていたのはカタエラ同様のポーズでフライド天使となったハリエラだった。
「……おっと、この子は辛みが効いてるね。いいピリ辛具合だ。この子もさっくりした感じだしやっぱり天使共通っぽいな」
「……やめて、もうやめて」
「いやいや、この小箱の中に入っている間は腐ったりはしないけど放置はどうかと思うよ。ちゃんと食べてあげなくちゃ」
ビナスは俺にこれ以上食べるのを辞めるよう懇願したが、俺はそのまま3つ目の小箱を開けた。もちろん中には前二人と同様のポーズでフライド天使となったサニエラが入っていた。
「……サニエラ」
「この人は反応も良かったし、一瞬とはいえ俺の攻撃を防いだから中々の逸材だったね。この人がミカエラと一緒に来ていたらもう一分ぐらいは楽しめたかもしれないね」
今まで俺が戦った中で一番強かったのはミカエラだったがサニエラも4、5番目ぐらいの強さだった。とはいえ食品化されてしまえば食べ物には変わりないので俺は躊躇なくフライドサニエラにかじりついた。
「……おお、これは醤油ベース。それににんにくが効いていて食欲が沸く。味の方も一味違うな」
三つ目ともなると飽きが来るものだが俺はフライドサニエラをあっという間に完食した。
「ふぅ~、おいしかった」
「……」
フライド天使を三人分食べて俺が満足する一方で、目の前で秘書と侍女天使を食べられ、その感想を聞かされたビナスは抵抗する気も失せ項垂れていた。
「それじゃあ最後はビナス様の番だけど何か言い残すことはある? せっかくだから何になりたいかぐらいは聞いてあげるけど?」
「……は?」
俺の言葉に項垂れていたビナスは目を見開いた。
「特にないならこっちで決めるよ。何がいいかな?」
「私まで食べる気なのですか!?」
「そりゃそうだよ」
焦るビナスに俺はきっぱりと肯定した。
「あなた、私に恩を感じているのでしょう? それなら私を開放しなさい。……いえ、開放して下さいませ」
「悪いけどそれは無理だ」
神としてのプライドよりも食われる恐怖が上回ったビナスは俺に必死に頭を下げてきたが、俺は首を横に振った。
「……た、助けて下さるのであれば今後は神界にあなたには絶対に手を出さないよう手を回します。それに……お望みでしたら他の世界から何人でも何百万人でもあなたが食べるための人間を用意しますわ。……ですから私だけは、私だけは助けてください!!」
「駄目」
ビナスは必死に助かろうと他の世界の人間を生贄にしてまで食い下がってきた。もっともそんなことをされたところで俺がビナスを食べない理由にはなりえなかった。
「ひっ、やめ……」
「チョコレートになれ。【
「……どうして、どうしてですのおおほほほ♡♡♡♡♡」
そのまま俺は独自開発した強制絶頂の魔法をビナスに向かって放った。女神としてそういった魔法の類にも一応耐性を持っていたビナスだったが単純な力の差によって天使三人同様あっけなく一瞬で絶頂した。そしていつも通りのポン! と音を立てて白い煙に包まれた。
「どうしてってそりゃあ食べたいからだよ」
俺は小箱を開け、アヘ顔Wピースチョコになったビナス相手に理由を答えた。俺にとって他者とは食べ物以外の何物でもなく、特にそれが初めて食べる女神とあっては見逃す理由がなかった。
「……いただきます」
初の女神チョコの胸を膨らませた俺は大口を開け、ビナスチョコを景気よくバリバリと噛み砕いた。
「……女神チョコ、おいしいにはおいしいけど上の下ってところかな」
しかし一転、ビナスチョコを食べた俺は渋い顔になった。ビナスチョコの味は美味しいは美味しいが精々100万人に一人程度の美味しさだった。100万人に一人というと聞こえはいいかもしれないが数億人を食べて来た俺にとってそれはベスト100にも届かないと期待外れだった。もっとも後に女神を数百人食べた結果から言えば単純に女神の中でビナスが中の下ぐらいだっただけで、女神という種族自体は食品化する種族としては最優といっても過言ではなかった。
「……おっ、やっぱり異世界転移系のスキルがあるな。とりあえずこれで食いっぱぐれることはなさそうだ」
ビナスの味については消化不良気味だったもの、ビナスを食べたことで俺は世界間を自由に行き来するスキルを手に入れた。こうして俺の暴食の旅路はまだまだ続いていくのだった。
犠牲者その6
ミカエラ
年齢:965
身長:165cm
バストサイズ:C
職業:天使兵
好きなもの:かわいいもの
嫌いなもの:下品なもの、野蛮人
変化食品:フライドチキン
天界の兵である天使兵の中でも指折りの実力を持ち、下手な軍神以上の戦闘力を持つ天使。討滅対象には一切の慈悲はないが、プライベートではかわいいもの好きの普通の感性の持ち主。またその圧倒的な戦闘力から周囲の天使から恐がられているのが悩みの種。
仁伊討伐の際、まず転送直後に約99%が待ち受けていた仁伊のトラップにやられた。その後、残った人員もほとんどが一撃でやられていった。その中でミカエラは50秒ほど持ちこたえたが最終的に負けることになった。
犠牲者その7
カタエラ
年齢:587
身長:175cm
バストサイズ:E
職業:秘書天使
好きなもの:特になし
嫌いなもの:無能、面倒な上司
変化食品:フライドチキン
ビナスに秘書として仕える天使。事務、戦闘の両面において優秀ではあるがプライドが高め。天使としてはまだ若い方で実戦経験も少ない。
ビナスの側近には不満であり、いずれ他の神の元へ異動したいと考えていた。
犠牲者その8
ハリエラ
年齢:145
身長:155cm
バストサイズ:B
職業:侍女天使
好きなもの:辛めの食べ物
嫌いなもの:苦い食べ物
変化食品:フライドチキン
ビナスの侍女として仕える天使。天使としてはかなり若い。小柄で愛嬌があるので同世代はともかく、上の世代への受けはいい。
ビナスの側近に不満はあるものの、他の神の元への異動については考えていなかった。
犠牲者その9
サニエラ
年齢:1668
身長:173cm
バストサイズ:F
職業:侍女天使(元天使兵)
好きなもの:平和な日常
嫌いなもの:面倒ごと
変化食品:フライドチキン
ビナスの侍女として仕える天使。普段の言動は軽いが天使としてはかなりのベテランで天使兵を引退した現在でも並の天使兵よりも格段に強く、ミカエラをはじめとした現役天使兵にも慕われていた。
現在のビナスの侍女という立場もビナスの目付け役的な意味合いが大きかったが、ビナスのやらかしがここまで発展するとは流石のベテランも考えが及ばなかった。
犠牲者その10
ビナス
年齢:1460
身長:162cm
バストサイズ:G
職業:女神
変化食品:チョコレート
好きなもの:イケメン、イケメンにちやほやされること
嫌いなもの:仕事、イケメンにちやほやされる他女神
本作の全ての元凶。見た目も能力も並み以上にはあるが自分勝手で基本的にやる気がない。そのため周囲からの評価は低い。それでも最低限の仕事はしてきていたが今回ついに痛い目を見ることになった。