※この作品はR-18です。

お嬢様ごめんなさい、今日も別の女に抱かれました……   作:伊藤着

15 / 15
15話

 

 

「シモン、喉が渇いたなぁ」

 

「はいはい」

 

 

 半袖が良いか、長袖が良いか分からない季節のこと。

 ガタゴトと揺れる馬車の中で。

 俺は水筒を取り出してお嬢様の口元に近づけた。

 

 ゴクゴク

 

 

「うーむ♡甘美甘美♡」

 

「全く……これくらい一人でできるでしょうに……」

 

「えへへ、人にやらせるから良いんじゃない」

 

「そんなこと言ってたらロクな大人になれませんよ?」

 

「いいじゃん!旅行のとき、くらいはさ!今日は特別な日、なんだからっ!」

 

 

 仕方ないなぁ。

 膝の上に座り、俺の胸に顔を埋める彼女。

 そんなこの世界では大ハレンチな少女の、サラサラの髪を撫でた。

 

 

「今日だけですよ、まったく……」

 

「へへへ、学校卒業して良かったなぁ」スーハースーハー

 

 

 中等学校を卒業した彼女。

 彼女は再来月には、今よりも厳しい高等学校に入学することになる。

 場合によっては、頻繁に会うこともなくなるかもしれない。

 だから、『今のうちに旅行なんて、どうかしら?』なんてドロシー様の一声によって二人で旅行することになった。

 

 まあ二人と言っても、馬車の御者さんとか最低限の護衛の方もいるのだが。

 

 

「しかし、ドロシー様が来られないのは残念でしたね。忙しい方なので、仕方ないのでしょうが」

 

「あー!残念だねっ!でも仕事じゃねっ!仕方ない仕方ないっ!」ママダイスキアリガトー……(ボソッ)

 

 

 お嬢様が何か呟いた気もしたが、馬車の音でかき消されよく聞こえない。

 でも、お嬢様って結構独り言話すから気にしないことにした。

 

 

「えーっと、今日はね!釣りして、ご飯食べて、観劇して、ご飯食べて、ボクの身体を洗ってもらって、一緒のベッドで寝てもらうからっ!」

 

 

 すでに予定が決まっているみたい。

 長い一日になりそうだなぁ……。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「……僕を呼び出すとは、一体どういうつもりだ?」

 

「決まってるでしょ?……いい加減、お前とは縁を切ろうと思ってね」

 

「なんだと……?」

 

 

 私、ドロシーは屋敷の客室にて、この世で最も憎んでいる相手と対峙していた。

 コイツの顔を見るだけで殺したくなる。けれど、こんな奴でも現魔王ゆかりの血筋を持つ相手。

 我慢しなきゃね……。

 

 

「離婚。って言わないと分からないかしら?」

 

「……ハッ、離婚。離婚だと?今さらか?」

 

「ええ、今さら、よ。でも、私はずっと離婚したかったのよ。別に、お前もいいでしょう?」

 

 

 ニコちゃんのことがあったから。

 こんなエルフのクズでも離婚には踏み切れないでいた。

 もしかしたら、改心してくれるかもしれない。もしかしたら、親子3人で暮らせる日が来るかもしれない。

 私はソレを望む気もなかったけれど、ニコちゃんは違うだろうから。

 だから、離婚だけはやめておいた。

 

 でも、シモンくんがいる今は違う。

 もう、こんな奴いらない。いても迷惑なだけだ。

 

 ……このままじゃ、結婚もできないし。

 

 

「おいおい、困るよ急に……。離婚となったら、月々買っている宝石や衣服は誰の金で買えばいいんだ?」

 

「ハッ!手切れ金くらい、くれてやるわよ。100万くらいが離婚の相場だから、それぐらいでいいでしょ?」

 

 

 コイツは本当に。

 金と女と博打の話しかしない。

 シモンくんとは、男としての価値が違いすぎる。

 ……いえ、比べるのも失礼ね。

 

 今度、謝罪も兼ねてお仕置きしてもらいましょ。

 

 

「……桁が4つ、足りねえよっ!!!」

 

「イチイチ、声を荒げないで貰えるかしら?」

 

「舐めるなよっ!お前のようなブスと結婚してやった恩を忘れたかっ!?ああっ!?」

 

「それは、こっちの台詞でもあるからね?この三国一のブサイクが……」

 

 

 私は、人の容姿を貶すことはしたくない。

 だって、私自身がめちゃくちゃブサイクなんだもの。

 間違いなくブーメランになるから、やらない。

 

 でも、コイツにだけは言われたくなかった。

 

 サラサラとした金髪。冷たさの感じる翠の瞳。

 ニコちゃんに似てはいるけれど、娘と違って愛嬌がゼロ。こんなにブサイクな奴を見たことがない。

 どの口で、ブスなんて言えるのか……。

 

 

「ふん!……ブスのくせに粋がりやがって」

 

「近寄らないでくれる?」

 

 

 奴は逆上したのか、ツカツカとこちらに歩み寄る。

 近寄られるだけで、鳥肌がゾワゾワと立った。

 ……本当に、シモンくんとは対極みたいな奴だわ。

 

 

「なあ、……構ってほしかったのか?ドロシー」

 

「さわんな」

 

 

 なにか勘違いでもしたのか。

 ブサイクな男は演劇のように気取りながら、大きく腕を広げた。

 

 

「…………仕方ない、お前みたいなブス抱きたくないんだが。まあお前もセックスを知らないまま死ぬのは可哀想、か……。いいだろう、抱いてやるよ。この僕が」

 

「チッ……いらねえよ」

 

 

 反吐が出る。

 とは、まさにこのことだろう。

 髪に手を触られた瞬間に、私は生ゴミに顔を突っ込んだかのような不快感を覚えた。

 思わず固く握った拳で、奴の掌を叩き落とす。

 

 

「うぐっ!!!……おい、貴様っ!僕の手に何をする!……お前は今、人生で唯一のセックスできるチャンスを失ったんだぞ!?頭が悪くて、それも分からないか!?」

 

「ハッ……」

 

 

 昨日の昼にも、パパに子宮に届くくらいハメてもらったつーの。

 なにが、唯一のチャンスだ。

 お前にどれだけ言っても、信じないだろうけど。

 私を愛してくれる人は、いたんだよ。

 

 

「お前が相手じゃ、濡れねえんだよ。お前みたいな顔も性格もブサイクな奴なんて、お断りだわ」

 

「貴様ぁっ…………!!!」

 

 

 これは、私がお前に言われた言葉なんだけどな。

 やっぱりコイツは、私をどれだけ傷つけたかなんて覚えちゃいなかったか。

 ……まあ、知ってたけどね。

 

 

「もう、離婚は決まったことよ。後はお互いの弁護士を通して話しましょ。……お前の顔、見たくないし」

 

「くっ……ドロシー、覚えておけよ……!」

 

 

 コイツは、感情表現がオーバーだ。

 ここだけは、ニコちゃんに似ていると思う。

 

 歯をギリギリと噛み締めながら、憎々しげに顔を歪めるアイツ。

 まるで感情を隠そうともしない輩は、こちらを指さして声高く叫ぶ。

 

 

「僕は魔王にも顔がきくんだ!凄腕の弁護士を雇ってやる!そして、お前から全てを奪ってやる……!そう、……すべて、すべてだっ!!!」

 

 

 

「フン……やれるもんなら、やってみなさい!!!」

 

 

 これから、コイツと離婚調停を進めることになる。

 ……けど、この剣幕じゃすぐには。

 1年以内には終わらないかもしれないわね……。

 シモンくんと娘には、こんなやり取り見せたくないから旅行に行ってもらったのに。

 最後まで、厄介な奴だわ……。

 

 

「お前がちゃんと務めを果たしているかどうか!しっかり調べさせてもらうぞ!少しでも怠慢があってみろ、お前の全てを貰ってやる!タダで離婚できるなんて、思い上がるなよっ!」

 

 

 本当に、最低…………!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【R18】貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話(作者:ぽぶきち)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

男女比1:1000。貞操観念逆転。▼そんな世界で、異能を持ち国際的戦力でありながらも、「男性の精子を定期摂取しないと眠りから目覚めなくなるが、それでいて孕むことができない」という体質の "眠り戦姫(ソメイユ)" 。▼彼女たちはその体質ゆえに貢献値のスコアが低く、男性の奉仕を買うために富も築けない。▼前世の記憶を保持し日本で3人しかいない「…


総合評価:5475/評価:9.15/連載:85話/更新日時:2026年08月31日(月) 17:02 小説情報

悪徳領主に転生して死亡フラグを折るために勇者パーティを育てたら、激重感情を向けられて逃げられない件(作者:激重大好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、プレイしていた百合RPGの「序盤のやられ役」である悪徳領主ルシアンに転生していた。▼しかも、すでに悪魔と契約済みであり、このままだと勇者に倒されなくても魔力タンクとして悪魔に殺されてしまう完全な『詰み』状態。▼どうしても死にたくない俺は閃いた。▼「原作開始前の勇者たちを見つけ出し、俺が育てて悪魔を倒す。これしかない!」▼悲惨な過去を背負うはずだ…


総合評価:3021/評価:8.33/連載:6話/更新日時:2026年04月02日(木) 18:30 小説情報

【完結】鶴が恩返ししないんだが(作者:エタリオウ)(オリジナル現代/恋愛)

生まれつき鳥に好かれやすい高校生・佐鳥鳳介の家に、ある雪の夜、一人の美少女が訪ねてきた。▼これはまさか、現代版・鶴の恩返し――?▼だが、その出会いを境に、鳳介の日常は少しずつ鳥に侵食されていく。▼彼を守ろうとする居候。▼クラスメイトはストーカー。▼完璧すぎる幼馴染。▼そして、彼の過去へ踏み込んでくる後輩。▼鳥に愛され、鳥に狙われ、鳥に振り回される。▼これは、…


総合評価:5161/評価:8.88/完結:26話/更新日時:2026年06月26日(金) 20:07 小説情報

貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る(作者:しば犬部隊)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

死にゲーに転生した主人公(男)が遺伝子的に湿度が高く重い女達に囲われていく話。▼なお、主人公は自分に価値を見出していないので、自分を犠牲にしたりする。▼だが それが逆に重い女の琴線に触れた!▼無自覚にヒロインを沼らせていく、ただ平穏に生きたいだけの男。▼書籍化決定 5月20日 オーバーラップノベルス様より発売! ▼


総合評価:31885/評価:8.89/連載:54話/更新日時:2026年08月25日(火) 12:14 小説情報

【書籍化】男女比が壊れた世界でギスギスする話(書籍タイトル:恋奪の教室)(作者:月島しいる)(オリジナル現代/恋愛)

男女比1:200の壊れた世界で人間関係もぶっ壊れていく話。▼■MF文庫J様から9月25日に1巻発売予定です。▼■カクヨムにも投稿しています。▼https://kakuyomu.jp/works/822139837919807587


総合評価:47358/評価:9.19/連載:95話/更新日時:2026年09月12日(土) 13:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>