※この作品はR-18です。

お嬢様ごめんなさい、今日も別の女に抱かれました……   作:伊藤着

8 / 15
第8話

 

 

(先輩って、どうしてあんなに優しいんだろう)

 

 

 私、ジニーは夕食を食べ終え、席を離れた二人を待っていた。

 居なくなってから、10分くらい経ったけれど大丈夫かなぁ。

 

 隣りにいるシャイアはポタージュの皿を舐めることにも飽き、現在はスベリアが残していった皿を葛藤しながら眺めている。

 

 

「……食べちゃ駄目だよ。それは流石に」

 

「うっ……食べないわよ。スベリアはアタシに何度もご飯を奢ってくれた心の友。友は裏切らない、……でも、一口なら裏切ったことにはならないわよね?」

 

 

 まったく、シャイアは卑しいな。

 どうしてそんなに食べ物にこだわるんだか。

 別に彼女は悪いやつじゃないし、戦闘能力の高さや向上心については尊敬している。

 学友であることにはなんの文句もない、のだけれど。

 

 もう少し、品性を身につけたほうがいいよ。

 

 

 

「……バレたら、嫌われるよ。スベリアにも先輩にも」

 

「それは嫌っ!……分かった、我慢する…………」

 

 

 

 問題があるのは、シャイアだけではない。

 

 スベリアだって、そうだ。

 彼女は傲慢で、なんだって自分のものになると思っているフシがある。

 ドロシー様に殴られて少しは改心したかと思えば、またわざとらしくスープを零して先輩に甘えている。

 自分のことが好きなのは、結構なことだけどさ……。

 

 

 今の君、端から見たら恥ずかしいよ?

 

 

 君たちの行動は目に余る。

 あんなの、先輩が優しいから。

 優しすぎるから、許されているだけ。

 

 普通なら嫌われる行動ばかり。

 仲良くなりたいなら私のように、コツコツ真面目に働いて良いところを見せるべきなんだ。

 治療の名目で、仲良くなろうとするなんて卑怯だ。

 恥を知れ、恥を。

 

 

 

 ガチャ。

 

 

 

 扉が音を立て、そこから二人が現れる。

 やっと帰ってきたのか……。

 

 …………ん?

 

 近くないか……?

 二人の距離、近すぎないか……?

 

 

「はぁ……♡はぁ……♡シモン様……ごめんなさぁい♡」

 

「全く、治療で漏らすなんて、ダメダメだなぁ。後2日でお前が独り立ちできるくらい、みっちりしごいてやるからな」

 

「……う、ウヒ、ウヒヒヒぃ♡」

 

 

 スベリアはスープを零したためか、新しいメイド服に着替え。

 先輩に抱きつくように、ヨタヨタと歩いていた。

 二人の会話は、まるで情事の後の様。

 囁くように甘く話していた。

 

 

 先輩の、逞しく肉のついた、美しい身体。

 執事服の襟から覗く、妖艶な首筋。

 そこに恥知らずなブサイク女の、上気した息がかかる。

 ……その姿に、思わずギュッと拳を握った。

 

 

 なんで、私じゃ駄目なんだ…………。

 なんで、なんでなんでなんで…………!

 

 

 

「じゃあ、この後の予定だが」

 

 

 

 ーーー飯ーーー風呂ーー19時以降ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ジニー?」

 

 

 急に、名前を呼ばれハッと意識が戻ってくる。

 

 

「え?あ、はい!」

 

「どうした?俺の話、ちゃんと聞いてたか?」

 

「……えっと」

 

 

 聞いてなかった。

 考えるのに夢中で、聞いてなかった。

 

 言わなきゃ……。

 ちゃんと、聞いてなかったと、言わなきゃ……。

 

 

 

 

「す、すみ」

 

 

 グッ、と詰まって。

 なぜか、それ以上言葉が出てこなかった。

 

 

 

「き、聞いてました!!!」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

「あ~、し・あ・わ・せ。ですわ~。とっても胸と股間が熱いですわ~」

 

「……アタシこんなに満たされたの、初めて。ここで働けないかなぁ?……もう魔王になれなくてもいいから、シモンさんの下で働きたいなぁ。そして、いつかお仕置きエッチされちゃったり……♡うへへ♡」

 

 

 あの後すぐに解散となり、私達3人は与えられた部屋でゴロゴロしていた。

 使用人なので当然ながら相部屋。

 

 でも、普段なら相部屋に文句を言っているであろうスベリアは、なぜか上機嫌。

 枕を抱き枕のように抱え、右に左に転がっていた。

 

 一方、シャイアは毛布でくるまり、どこか怪しげにモゾモゾ蠢いている。

 

 

「ああんっ♡シモン様っ♡おやめになって♡スベリアは限界にございますっ♡……そんなっ♡無体なぁ♡いけませんっ♡このままではアナタの顔にぃっ♡」

 

「うへへへ♡今夜は眠れないかも♡朝までオナニーできちゃう♡おヘソの感覚思い出すだけでイケちゃう♡」

 

「チッ」

 

 

 ……猿どもめ。

 ベッドで横たわる二人は、与えられたメイド服を雑に脱ぎ裸になる。

 奴らが、これからナニをするかなんて明白。

 

 抗議する気持ちすら起きなくて、私は部屋を出ていった。

 

 今日は、疲れた。

 風呂に入って、すぐ寝よう……。

 

 

 

 ◇

 

 

 …………

 …………………

 

 

「あれ?今ジニー出ていった?」

 

「……みたいですわね。お風呂かしら?」

 

「いや、でもさ……」

 

 

 

「この時間帯は男が使うから入るな、ってシモンさん言ってなかったっけ?」

 

 

 ◇

 

 

「ふぅ…………」

 

 

 ノーヴィ家の脱衣所に私の暗い声が響く。

 思わず、漏れてしまうため息は何を思ってなんだろう。

 

 

 『学友の蛮行に巻き込まれたから?』

 

 『学友が部屋でオナニーし始めたから?』

 

 『シモン先輩が、私だけ撫でてくれないから?』

 

 『シモン先輩との間に、壁を感じているから?』

 

 『頑張っている私が、報われないから?』

 

 

 多分、そのどれも正解なんだろう。

 

 ブサイクとして生まれ落ちた私が、誰かに愛されたいと思うことは間違っているのかもしれない。

 努力すれば愛してくれるなんて幻想は、かなり前に捨てている。

 

 だから、シモン先輩に会ったときだって期待なんかしなかった。

 好かれたい、よりも嫌われたくない。

 ブサイクな私には、それだけで十分だった。

 

 十分だった、のに……。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 

 また、思考がループして意識が飛んでしまった。

 

 早く、風呂に入ろう…………。

 

 

 

 ガラスでできた風呂場の扉、その前に立つと薄ぼんやりと中に人がいることが分かる。

 他の使用人の方、だろうか。

 まあ、気にすることはない。

 私はガラガラと、戸を開けた。

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

「……えっ?あっ、ご、ごめんなさい!!!」

 

 

 

 全裸。

 全裸のシモン先輩がそこにいた。

 

 なんで、なんでなんでなんで!

 ここ女子風呂でしょ?なんで、先輩がここに……。

 シモン先輩が間違えた……?いや、なにか違和感が……。

 なんで、なんで…………。

 

 

 

『ーーー飯を食べ終わったら、風呂に入っておけ。ただ、今男子風呂が壊れてて、女子風呂を時間帯で分けて男女で使ってるから。お前たちが入るのは19時以降にしてくれよ。…………ジニー?どうした?』

 

 

 

 あっ!!!??

 思い出した…………。

 シモン先輩が言っていた、じゃないか。

 風呂を時間帯で分けて、使ってるって……。

 じゃあ、じゃあ今の、私は……。

 

 

「す、すぐに出ます!」

 

「あっ」

 

 

 何か聞きたそうな、先輩の声を振り切ってガラガラと扉を締める。

 早く、早く着替えてここを出ないと……。

 

 脱衣所の籠に入った服の中からパンツをひっ掴み。

 足に通していく。

 だが、その瞬間近くで物音がした。

 

 

 

 

 ガチャ。

 

 

 

(ま、まずい……!)

 

 

 

 開かれたのは、通路側。

 シモン先輩が居る浴室とは逆の方向。

 

 この時間に入ってくるってことは、男の可能性が高い。

 シモン先輩だけなら、黙っていてくれるかもしれないが他の人はそうではないだろう。

 もし、修行先のノーヴィ家で男子風呂に混ざろうとしたなんて風聞が立てば…………。

 

 せめてパンツだけでも履こうとするが、変な力がかかって思うように履けない。

 

 こ、このままじゃ…………。

 

 

 

 

 

 硬直し、動けない私。

 そんな私の身体は、何かに動かされ。

 壁にドン!と押し付けられた。

 

 

「隠してやる、誰かに見られたら、困るだろ?」

 

 

(あ、あわわわ、はわ、ほわわっ!?)

 

 

 全裸の男。

 視界の80%が、全裸のシモン先輩で埋まっている。

 

 彼は私を隠すため、大きなバスタオルを広げ。

 壁側にいる私と向き合いながら、その身で私を隠してくれた。

 風呂上がりの、汗の滲んだ身体を私に晒しながら。

 

 

「しばらくこうしてて……。後でこっそり出してあげるから」

 

 

 騒ぎにならないよう、隠してくれるというの……。こんな、ダメな私に全裸の姿を見られてまで……?なんで、なんで先輩はそんなに優しいんですか……?

 

 

「ご、ごめんなさいっ……!」

 

「静かに、あんまり声出さないで……」

 

 

 

 思わず頭を下げた。

 その先にシモン先輩の胸板があり、彼の身体にぶつかってしまう。

 

 ぷに。つんつん。

 

 

「はぐっ……。んっ♡ぐっ♡」

 

 

 声を出すな。

 そう言われてはいるが、無理かもしれない。

 

 目の前には、見たことないくらい美しい、それでいてお世話になっている身近な人。

 そんな人の裸があり。その人の乳首も、顔も、股間もすぐ近くにある。

 

 いや、それどころか、もはや密着している。

 彼の胸板は、やさしく私の頬をなで。

 彼の股間は私のヘソ下を突くように、ピクピクと脈動している。

 

 

「ふーっ♡ふっー♡おひ♡うひ♡」

 

「お、おいジニー。やめろ、くすぐったい」

 

「す、すみません♡ひひっ♡」

 

 

 汗がムワりと、私の周囲に巻き上がる。

 そこには多量のフェロモンが入っているはずだ。

 だって、こんなに興奮してしまうのだから。

 

 

「ふーっ♡ふーっ♡」

 

 

 ああ、この乳首をしゃぶりたい。

 もう捕まってもいいから、しゃぶっちゃおうかな。

 こんなチャンス、もうないよ。

 シモン先輩なら、許してくれるかもしれないし。

 …………。

 

 

 

 

 

「こら、なにしてる。せっかく助けてやったのに、まったく……。仕方ない奴らだなぁ……」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方、その頃お嬢様は。

 

 

「ジニー…………弱者の気持ちが分からないキミのことは好きじゃない。けど、キミはっ!真面目なキミならシモンを守ってくれるよねっ!?お願いっ、どうかあの二人からシモンを守ってぇっ!」

 

「うるさいざますよ、ニコさん。静かに入るのがマナーざんす」

 

 

 露天風呂から見える星を見上げ、遠くの友に祈っていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。