とある魔女の性癖被虐譚 作:ポムポム
ギルドの職員から受け取った地図を片手に件の古城へと向かっていた。古城の周辺は人の手が入らず整備されていない為か、鬱蒼とした森林地帯が広がっており、畦道すらも無い程であった。
「此処まで深いとは思ってもいませんでしたね。まぁ、その方がとてもありがたいのですが」
地面から生える雑草、生い茂る木々の枝葉により視界は非常に悪い。樹木や枝や葉によって日光が遮られ、まだ昼間だと言うのに薄暗く村人や子供は愚か、ベテランの冒険者や傭兵でさえ立ち入るのを躊躇するだろう。
「……こんな所で魔物に不意打ちで襲われてしまえばひとたまりもありませんね。魔物の気配もほぼ無いのが幸いでしょうか」
シノアはこの鬱蒼とした森に入って直ぐに感知能力を高める索敵魔術を使い、視覚、聴覚、感覚と言った感知能力を高めながら古城へと向かっている。
一応、ギルドには古城及び周辺地域の調査と言う名目で来ているのだ。調査報告として提出すれば別途のお礼が支払われるからだ。
「……まぁ、今回の目的は古城ですし
そう考えると魔物が然程、生息しない程の不毛の土地なのだろう。そう考えるとこの周辺。管轄するギルドの人材不足ぶり成立しているのかと考えてしまう。
そう考えながろ森林地帯を進むと木々の間から城塞の壁の色がポツポツと見え始めた。
「成程、少し低い位置に城塞が立っていたのですか。通りで遠目からでも見えなかった筈です」
木々の生い茂る森林地帯を抜けた時、見えたのは人の手から離れて久しいかつてのこの地を治めていた城主の忘れ形見である古城が建っていた。森林が広がる地帯よりも低めの崖の下にその城塞は建っている。城の大きさは中堅程で、王国の王城と比べると小振りに見えようか。
「まぁ、外見の見た目は余り関係ありません。私が興味があるのはその中身ですので」
古城の外観には興味は無い。
城壁には蔦が這い回り、屋根の上に掲げられていたあろう旗は長年の風雨に晒され布地は朽ちて持ち手のみが残されてかつての栄華は見る影も無い。
森林地帯を抜けた場所は側面の城壁側であった為に城門前方面へと回り込む。城門前に向かえば下り坂になっており、崖を飛び降りる必要は無かった。
「城門は、当然閉じっぱなしですよね」
古城の城門は立派な造りであった。両開きの扉は鋼鉄製であり今日に至るまで固く閉ざされており押しても引いても、シノアの華奢な腕ではビクともしない。仮に大の大人が数人がかりでも力尽くで推し開こうとしても難しいだろう。
「まぁ、関係ありませんけれど」
シノアは城門の扉に手を当てる。
「ふむふむ、閂による単純な構造ですね。閂を抜いて……と」
すると、長年開く事が無かった城門は鈍い音を立てながら1人でにゆっくりと開き始めた。
付与魔術。
シノアが最も得意とする魔術。対象に別の概念を付与する、エンチャントの魔術である。基本的に道具に魔術の炎や氷を付与するのが主な使われ方である。殆どの場合、そのような単純な使い方で終わる。
だが、シノアはその付与魔術を研究して更なる応用的な使い方を編み出したのだ。
「ふふ……」
今回の場合、城門に対して付与魔術で自動的に閂を外し、扉を開かせたのだ。その気になり、例えば自分が通る時には勝手に開き、そうでは無い時には城門を勝手に閉めさせる『概念』を城門自体に付与する事も可能である。
本来、付与魔術では物体に対しては此処までの概念を付与する事はほぼ不可能であり、『天稟』たるシノアだからこそ出来る芸当であった。……最も、その才能は専らシノア自身の『趣味』に大いに使われるのだが。
「さてと、一応は確認は必要ですね。本当は魔物の巣になっていましたと言う可能性も捨てきれませんし」
城門を抜け、城の正面の大手扉に手を掛ける。此方はすんなりと開いてくれ、中へと入る。
エントランスとなる大広間の状態は比較的良好と呼べるだろう。城塞自体、堅牢な造りであり年月と風雨による風化の進行は外観に留まっていた。これは……期待しても、良いかも知れない。
「…………。城塞の内部に魔物の気配はありませんね……特に城主の亡霊が居ても不思議ではありませんでしたが、未練は無かったのかも知れませんね」
索敵魔術で探知の下見をする。索敵魔術も万能とは言い切れないが外部から見た限り、この城塞の大きさ程度ならば高い精度で索敵は可能だ。その結果、特に魔物の類の気配は感じ取れはしなかった。
エントランスを抜けて、他の部屋を見て回る。玉座の間、廊下、社交界に使われてそうな大部屋を見て回った。エントランスと同じく埃や蜘蛛の巣が幾つか見えたが、比較的に状態は悪く無かった。その後に使用人控え室へと入る。
「クローゼットの中は……珍しいですね。現物が残っていたとは」
控室に置かれていたクローゼットを徐に開けてみる。其処には使用人の制服でもあるメイド服が吊るされていた。如何にも未使用らしく汚れらしい汚れは見られない。他にも使用人が身に付ける小道具も見つける事が出来た。
「少し古いのも悪くありませんね。折角ですし、貰っておきましょう。使用人の服は中々、手に入る物じゃありません、それに趣味に使えますので。……少し、大きいかも知れませんが、まぁ何とかなる筈です」
シノアはメイド服一式を収納魔術で仕舞い込む。収納魔術による空間の容量は特に考えた事は無いのだが、まだまだ容量があるので心配は無かった。
「1階以上は粗方、見て回りましたし……残るは、地下ですね。……辺境とは言え、あると嬉しいのですが」
メイド服を手に入れる事が出来たのは僥倖と言えた。地上階の散策は安全確認の為であり、本命は地下階にある。地下へと続く通路も確認済み、後は自分が求めているモノがあるかどうかと言う問題だけであった。