最初に言い出したのは誰だっただろうか、「精液検査して誰の精子が最強か決めようぜ!」という話になって、その場に悪ノリを止めるヤツが誰もいなかったので、バイト代から6000円の検査料金を払って、検査結果で競うことになった。前にも性病検査競ったこともあったしな、と抵抗感はあまりなかった。そして、自宅に届いた検査結果が載った封筒を開封する。
「うおっ……万匹って単位なんだな。運動率も9割はいいとして、奇形率28%……ってどうなんだ?」
とりあえず写真を撮って、グループチャットに貼ると、どうやら俺が一番乗りだったらしい。『これってどうなの?』と聞くと、『調べたけど、かなりの精液エリートだぞ!』と返信があり、そうなんだ……と無意識にニヤけている自分がいた。
『お前の個人情報、精液提供サイトに登録しといたわ。パスワードは◯◯◯◯◯な笑』
『ハァ!?』
慌てて検索すると、女性会員が有料で運営を支えて、男性会員は無料の異質な出会い系サイトだった。そこの活動レポートに性病と精液の検査結果の写真、俺のスペックなどが事細かに書かれており、【ホ別2万自宅可要交渉3発までOK!】と笑顔でピースをしている俺のアイコン写真をみて、全然よくねーよ!と心中で怒りが沸き上がっていた。しかも、タイムラインをみた人が残せる♡マークが+86になっており、メッセージが28件も来ていたのにはゾッとした。この世界には、知らなくていいインターネットの闇が存在していて、覗いてしまったことを後悔する。
「……許さん、文句言ってやる」
もう一度、グループチャットを確認すると、『やりすぎだろ……』と他の友人からもドン引きで詰められていた。けれど、『俺、無精子病だった。やり過ぎたわ、ごめん』と書かれていて、何も言えなくなってしまった。
「治療法とか、あるんじゃねーかなぁ……」
……全てを丸く収めるのは難しいが、サイトのことは忘れよう。俺が無視をすれば、何か起きる出来るワケじゃないしな。
なんだか気分が憂鬱で、ベッドに転がり、手に握ったままのスマホを眺める。そんなとき、登録していない番号からの着信があって警戒していたが、地元の固定電話の番号の並びだったので、後で面倒があると嫌なので出ることにした。
「はい、もしもし……」
『初めまして、この前精液検査をしていただいた病院で副院長を勤めています砂川と申します。名取さんですね?』
「はい、そうですが」
『大変重要でお話したいことがありまして、お時間にご都合がつくときに、病院に立ち寄っていただけますでしょうか?』
「はぁ……それなら、今から行けますよ」
『ありがとうございます。では身分証と印鑑、それは三文判で結構です。それらを持って来ていただけることをお待ちしております。帰りには、院内での食事に使えるサービス券もつけますね。よろしくお願いします』
「分かりました」
大変重要なことは分かったが、内容は何一つ語らなかったな。早口に捲し立てられて、相槌を打つので精いっぱいだった。
大切な物をまとめて入れている引き出しから印鑑を取り出して鞄に入れ、財布を確認してから自転車をこいだ。
◆
副院長に呼ばれて来ました名取です。と簡潔に受付の人に伝えると、怪訝そうな顔で同僚と話し込んでいた。
「やぁ、よく来てくれたね!──君達もういいよ。コホン……副院長の砂川です。名取君、こっちで話そうか」
「はい」
スタスタと歩いてきた黒縁メガネの男性がにこやかに手を伸ばしてきたので握手で応え、冷ややかな目で受付に短い指示を出す。一歩後ろから付いていくと、空いている会議室を使うようだった。
「飲み物は何がいい?」
「ホットコーヒーで」
「私も同じのを」
お盆を持った女性が扉の外に出たタイミングで、俺は話を切り出した。
「それで、大切な話ってなんですか」
「どう話そうか……そうだな。最近話題になっているマッチングアプリの利用者には、若い人のリアルな声を聞きたがるマーケティングを目的とした人々が多くいることは知っているかな?」
「考えたことはないですが、納得は出来ます」
「うん。なら、怪しげな精液提供サイトを病院がチェックしていることも納得出来るね。写真をみて、君だとすぐに気づいたよ」
「あー……まずかったですか。あれはその」
「結構結構!私にだって若い頃はあったから、名取君の気持ちが分かるよ。だからこそ、名取君には話したいことがある」
コンコン、とノックの後に入った女性がホットコーヒーを置いてくれたので、一口飲んで唇を湿らせる。
「公的な手続きや事後処理に手を加えることは、知っている者からすればとても容易いことなんだ。さらに、私には強い権力を持つ後援者がいるので、露見しないと約束しよう。……名取君、君の精液を日本の未来に役立てるアルバイトをしてみないか?」
「具体的には、どんな内容ですか」
「病院での搾精には補助員を付けるし、相手が生を希望する場合もあるので、そのときはセックスをしてもらうこともあるが、依頼の質と数は絞るので名取君には負担にはならないように調整しよう。もちろん、学業のサポートも可能だ。選べる大学は少ないけれど、手厚くサポートさせてもらうよ。これが支払われる報酬で、手当てが乗った一例を出すと70ぐらいかな?」
「……そんなにも貰えるんですか」
これはいよいよ本当に、とんでもない話になってきた。友達が勝手に登録しただけなんです、と言う機会は完全に失ってしまった。
なにより、偶然が重なったことでこの話に巡り合えたことは使命なのだと、『特別』を拗らせて自分が普通だと気づいた中学生だった頃の心が蘇り、魅力的な話だと思っている俺がいた。
「イメージするのが難しいと思うから、これをみてごらん」
「これは……?」
ノートパソコンの画面をみせられて、フルネームと年齢、家族構成、顔写真などが並んでいて、その全てが女性だった。
「この活動の女性賛同者リスト。私も若い頃はよく利用したよ」
画像をクリックすると動画画面に切り替わり、その女性の立ち姿が映る。そして手際よく服を脱いであらゆる箇所を一周して見せ、お辞儀をして動画が終了した。
「この中から好みの搾精員にする子を選んでほしい」
「もうこれ、犯罪じゃねーのかよ」
「恋人のシェアだよ、犯罪は起きない」
【長瀬雪(22)、経験5人、活動記録】カチカチカチ……。
『僕達、恋人だよね?』パンパンパン
『はいっ、愛しております。あっ、熱いのたくさん射てる♡嬉しい、もっともっと♡』
「──ほらね?彼女は学歴に恋をしている」
目眩がした。昨日までの俺が気づいていない裏側で、格差社会がここまで深く根づいているなんて。出会いがないと婚活に高いコストを払う独身男性達が、あまりにも可哀想だ。
「君は特別だ。本来は、こちら側の人間なんだよ」
俺は、俺は。
・・・・・。
「君は賢い決断をした。誰にでも出来ることじゃない。また明日、放課後に来てほしい」
ヤってみたいと、悪魔の手を取り願ってしまった。
最初のセックス相手を決めます。
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血が濃くなりすぎた一族の令嬢
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旦那との妊活が上手くいかない人妻
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昔、遊んでもらっていたお姉さん
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ネットストーカー陰キャ同級生
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自分を振った新規搾精員の先輩