辱められる正雪先生の掌編 作:一塾生
張孔堂の大道場。
その中心に、由井正雪は立っていた。
周囲を囲むたくさんの男たち。
これだけならば、軍学道場の日常風景である。
しかし、正雪を取り巻く男たちは、彼女の門弟ではなかった。
一様に脂下がった笑みを浮かべた彼らは、幕府の役人である。
そして、彼らの中心に、自らの意思で立っているのではなく、立たされている正雪は、抜身の刃を正眼に構えていた。
男性にしても高い上背に、凛々しく整った顔立ちをした彼女が、白刃を手にした様は、さぞや絵になるところ――であるのだが。
絵は絵でも、淫猥破廉恥な春画と化していた。
なぜなら彼女が身に着けているものは、神秘的な白い髪を後頭部で一つにまとめる髪留めと真剣の他には、褌だけだったからである。鮮やかな、花魁の唇を彩る紅のように烈しく赤い、褌であった。
「うっ……くぅ……」
悔しさに歯噛みする正雪であるが、門弟たちの命を握られている。
堪え難く悍ましい辱めにも、従うより他はなかった。
辱めというのは、裸身を晒させられているばかりではない。
軍学道場というが、果たして女の身で何を教えているというのか。
その稀有な美貌を、さらに男装の麗人というべき異装を纏って引き立て、色香でもって若い男たちを集める不逞、不貞の淫売の徒ではないのか。
幕府の役人たちは、そう嫌疑をかけてきたのだ。
生真面目で誇り高い由井正雪にとっては、度し難い侮辱であり恥辱であった。
さらに、「違うというのならば証明しろ」と言って課されたのが、この状況である。
「ほれほれ。由井正雪殿。御手前、拝見させてくだされよ!」
役人たちの中で最も身分の高いらしい正面の男が、嘲りを隠そうともせず煽ってくる。
悔しくて堪らないが、正雪は言いなりになる他ない。
「……せいっ!」
正眼に構えた刀を振りかぶり、一歩踏み込みつつ切り降ろし、また一歩下がって、正眼に戻した。
最も基本的な正面打ちである。
女を売りにしているのではなく、軍学で集めているというのなら。
女体を晒しつつ武芸を見せて、我々がどちらに魅かれるかで判断すればよかろう?
あまりに勝手な言い分であり、戯言にも程があるというものだ。
「うーん。一度では流石に判断しかねますなあ。
正雪殿。ひとまず十本、お願いできますかな?」
「……承知した。ん……せいっ……!」
正雪が刀を振りかぶるため、頭上に両腕を上げれば。
引き締まった痩身に比して驚くほどに豊かなその胸乳は、ぷるんと揺れ。
踏み込むために下肢に力を入れれば、赤褌が食い込んだ白い双臀は尻えくぼを刻む。
男たちは、たとえ幕府の役人ならずとも、もしも彼女の門弟たちであろうとも。
正雪の剣術などより、乳と尻ばかり見てしまうのは明らかであった。