辱められる正雪先生の掌編 作:一塾生
由井正雪の取り調べは、常に二人で行われた。
取調人は三十分毎に交代するが、二人同時ではなく、十五分ずつずらして入れ替わる。
より多くの組み合わせでもって責めに変化をつけ、正雪を慣れさせないためであった。
「ほら、どうだ? えぇ?」
「おらっ、言えよ。言っちまえよ、あ?」
仮にも木っ端にも、役人でありながら、三下の破落戸の如き言い草である。
「うっ、くっ……ぐぅ……」
本来ならば、彼らやこの程度の恫喝など意に介さぬ殉名の士も、このような状況にあっては、反駁も敵わず堪えるのみであった。
奉行所の問責部屋。
三面が石壁、残る一面も木製の格子である六畳の部屋は、責められる者に非常な圧迫感を与える。
正雪はさらに、部屋の中央で両手を頭上に縛り上げられているのだ。
身に着けているものこそ、普段の男装の麗人と呼ぶべき颯爽たる羽織袴であるが、その襟の合わせはがばりと開かれている。穢れのない雪白の肌も眩しい胸乳を、正雪は暴かれていた。そして、その新雪の双丘の頂点にただ二点、可憐に色づいた桃色の粒果を、下劣な男たちによって弄ばれていた。
しかも、延々とだ。
「ほらほら。いいだろ? いいんだろ?」
「気持ちいいんだろうが。固くなってるぞ? おい?」
「っ……!? いい、わけが、あるかっ……穢らわしいっ……!」
どうにかそれだけ言い捨てる。今の彼女の、それが精一杯だった。
男たちの言う通り、正雪は、正雪の乳首は、快感を覚えてしまっている。そのため、純粋で嘘偽りを為せない彼女は、反発の気勢を削がれていた。
もちろん、取調とは名ばかりである。
では色拷問、あるいは単なる凌辱かと言うと、そうとも言い難かった。
いや、色拷問ではあるのだろう。
だが、自白をさせようという素振りもなく、また変化もなく、男たちは延々と、正雪の乳首を弄るばかりなのだ。
本当にただ、延々と、乳首を弄られているだけなのである。
一人ずつ入れ替わる男たちは、三十分間、とにかく乳首だけを弄るのだ。
他の部位を責められることはなく、触れても来ない。
口吸いや下半身を狙われている気配を察したことは何度もあるが、そのたび男たちは自制した。
相当に厳しく、戒められているのだろう。おそらく破れば首が飛ぶに違いない。
正雪としては、意図が分からぬ恐ろしさもあり、また変態的で偏執的な行為にも乙女として悍ましさを覚えずにいられなかった。何よりも、終わりが見えないことが、気丈な彼女の心さえ、何度も挫きかけていた。
正雪はもう、丸一日以上も、代わる代わる二人の男に、両の乳首を、乳首だけを、弄られ続けているのだ。
男たちの中には、下手な者や乱暴すぎる者、身勝手な者も多いが、女をよく知っているらしき者、巧緻な技術を持つ者もまた多かった。そんな、左右で異なる男たちの玩弄を、もう二十時間から三十時間である。ホムンクルスゆえの超人的な体力が、完全に裏目に出ていた。
仮にも取調であるというのに、仮にも役人であろう男たちが訊ねてくるのは、「乳首が気持ち良いか」というただ一時である。当然ながら、これは質問ではなく恫喝であって、「気持ち良いと言え」ということなのだ。
「はっ、あっ、うぅ……く、くだらんっ……!」
清廉なる正雪、人ならぬホムンクルスとはいえ、女体は悲しいまでに女体であった。
巧拙など無関係に、これだけ刺激され続ければ性感は活性化してしまう。
「下郎がっ……!」
烈士たらんとする志、平らかなる世を願う心、門弟たちの顔、そして一条の光のような彼。
自分の中からありったけを搔き集めて、由井正雪は由井正雪であり続けんと啖呵を切る。
もっとも、男たちの顔はどこ吹く風、小便をかけられた蛙であった。
「ひひひ。良い女だなぁ」
「強がっちゃってまあ。可愛いったらねえよ」
余裕たっぷり、何事でもないといった態度で、やはり正雪の乳首を弄るだけである。
そうして、やがて男たちの片方がまた別の男と入れ替わるだけなのだ。
さらに二日。つまりはもう三日である。
賞賛、驚嘆、尊敬に値するだろう。彼女はよく頑張ったと言える。
もう五回目ぐらいに見た顔の男が代わり端、
「あー。やっと左乳首当番が回ってきたわ」
ま、右も左も大差ねえだろうが、と嘲笑ってきた。
それで正雪は初めて、自分の左乳首当番と右乳首当番なる役職が設けられていることを知った。
(は、はは……なんだ、それは。仮にも世を治むる者の組織が、このような有様なのか……)
正雪は、自分自身の、頑迷と裏表の崇高さがために、ひどく気力を削がれてしまった。
もはや、もうとうに、もうずっと、気力だけで持ち応えていたのである。
体はとっくに限界だったのだ。
「あっ、ああっ、うあぁ……っ!」
「ほれほれほれー」
軽薄な調子のその男は、これがまた上手いのだ。
正雪の乳首を、すでに勝手知ったる乳首哉とばかりに、的確に刺激し、雌本能を掘り返してしまう。
「あっ、うあっ……あ、あぁぁ……!」
「お。行ったか? へへ。気をやっちまったのかい? 軍学者の先生~?」
絶頂してしまうのは、これが初めてではなかった。
初めの三十分でも(これは意図的に上手を配置されていたこともあるが)、三度も達している。
断固として、男たちに言葉にして認めてこなかっただけなのだ。
「うっ、うう……うぅぅ~……!」
その、絶対防衛線が、ついに破られる。
「あぁ、あぁ……! そうさ、行ったさっ! 気をやったとも……うっ、くぅぅ……!」
ぽろぽろと。童女のように涙を流して咽び泣いてしまう。
神秘的なまでに凛々しい美貌の彼女であるから、かえって頑是なく、可憐で、そしてか弱い姿であった。
けれど男たちは、女の涙に絆されるような坊やではなかった。
「お、行ったかい。行けたのかい」
「どうやって? どうやって行けたんだ、ん? どこで行ったんだ、んん?」
涕泣してしまった正雪では、男たちの意図を汲むのは覚束なかった。
彼らもこれにはやや困りつつも、仕方なしに噛んで含めるように、正雪に言葉遣いを躾けていった。
「ほら。言ってみな。何度も教えてやったろう」
「……はい……い、いき、ました……ち、乳首で、正雪、乳首で……ち、乳首で……ぜ、絶頂して候ぅ……!」
「ぷっ……くくく!」
「ひひひ! そうかい。乳首で絶頂ねえ? 乳首、敏感なのかい? 好きなのかい?」
「……敏感、だ……す、好き……だ。私の乳首は、とっても敏感で、と、殿方に……弄っていただくのが、す、好きで好きで、たまらんのだっ……! うっ、うう……敏感、淫乱、好色な乳首をしているのだぁ……」
「それで軍学者? なあそれで軍学者?」
「……ぐすっ……許して……んうっ!? わ、わかった、わかったから、ちゃんと言う、乳首言うからっ……あぁ……そ、そうだ、軍学者なんだ、これでも。敏感で淫乱で好色な乳首をして、そんな乳首を殿方に可愛がっていただくのが大好きな軍学者なんだっ、門弟もたくさんいるんだ、道場も構えていてっ、ああ、ちょ、張孔堂と言うんだぁ……弩助平乳首軍学者のっ、張孔堂道場主っ! 由井正雪っ、我が名は由井正雪ぅ……烈士たらんと志す、す、すけべ乳首だっ……」
こうして決壊し、諾々と従うようになった彼女であるが、なおもこの取調は続けられた。
「ああ、い、いくぅ……! 乳首、乳首でいくぅ……ひっ!?」
ギュゥ、と強く抓られ、痛みに息が止まる。
「乳首なのはわかってんだよ。乳首しか触ってねーんだから。どっちの乳首だ? あ?」
「え……み、右……?」
「右か。じゃあちゃんとそう言えよ」
「は、はい……み、右乳首、右乳首が気持ち良くて、絶頂したっ、絶頂しましたぁ……!」
「ちっ。左じゃねえのかー。よし、じゃあこれはどうだ? ほら?」
「あっ、あひぃ!? ひ、左乳首、左乳首も気持ちいい、気持ちいいですぅ……!?」
「なんでだ? どうしてだ? なんで、どうされて、気持ちいいんだ? ちゃんと言うんだ」
役人たちが正雪に教え込む言葉遣いは、どんどん微に入り細に穿つものとなっていく。
「……は、はい、えと……い、痛いほど抓られた後、それを癒すように優しく指の腹であやされて、かと思えば次第に早く、擦り立てるみたいに左乳首ゴシゴシされてっ、正雪の左乳首は、平らかなる世を願う左乳首は、浅ましく気持ち良くなってしまい候ぉ……!」
「ああ、左乳首が気持ちいいっ……!?」
「おお? 右はどうした? こっちは良くねーのか? あ?」
「いいですっ、右乳首も……ひぎ!?」
「おらおら右乳首は~?」
「そんな、だって、さっき、右乳首気持ちいいって、ひうぅ!?」
「馬鹿が! 馬鹿乳首が! ちゃんと言え。とにかくちゃんと言うんだよ」
「わ、わかった、わかりましたっ、承知仕ったぁ……! 左乳首気持ちいい、右乳首きもちいい、左乳首きもちい、右乳首きもちい、左乳首きもち、右乳首きもち、左乳首きも右乳首きも左乳首き右乳首き、左っ右っ左っ右っ、ひだっ、みぎ、ひだ、みっ、ひっみっ、ひっみっ……ああぁぁ~~~どっちも! どっちの乳首も気持ちよい! 両乳首快感っ、愛撫感謝っ、恐悦至極ぅ! 左右乳首両者十全十二分愛撫快楽、助平乳首淫乱喜悦絶頂っ、絶頂賜るっ、法悦への通行手形賜って候ぉぉおぉぉっ……!!」
極稀に正気を取り戻しつつ、大半は狂気に浸かっている正雪に、役人たちも流石に飽きつつあり、いささか粗雑になっていった。
「おおぉ~~左乳首感謝っ、右乳首歓喜ぃ~……」
「ああ。はいはい。全く。平らかなる世を願うだの、烈士を志すだの、こうなっちまえばお笑い草にも程があんなぁ」
「おお。日本一の大草原が出来ちまうぜ」
「ちげえねえ。ははっ」
「っ……ああぁ……うぅ、そうだ、私は……烈士、たらんと……平らかな、世を……」
「お。ちょっとは楽しめるか? おりゃ!」
「そらそらそらぁ! どうだい軍学者先生ぇ~?」
「んおっ、おぉぉ!? 烈士たらんと左乳首快っ、快なりぃぃ……! 平らかなる右乳首を世に絶頂ぉぉん……!」
「阿保か! 乳首のどこが平らかなんだ! でっぱりまくりじゃねーか! 特におめーのはよぉ!?」
正雪が囚われてから。即ちひたすら乳首を弄られ続けて、三か月が過ぎていた。
男たちの無骨な手で、無遠慮に弄られ続けた結果、可憐な桃色の粒果であった正雪の乳首は、すっかり変わり果てている。痛々しいほどに赤らみつつも、穢れを感じさせる黒ずみを帯びて、陰核よりも数倍も敏感かつ貪欲になっていた。そして何よりその形。腫れたように肥大化するにしても、全体が等倍にではなく、長く伸びてしまている。由井正雪の乳突起は、その指の第二関節から先よりもまだ長いほどに伸びて、奇形的な醜悪さ、否。奇形そのものの醜いものに成り果てていた。
ところが、それでいて、男心を、下半身を、雄本能を駆り立てて止まない魅力が、その異常伸長乳首にはあった。
役人たちも、辟易した感を覚えつつも半ば中毒のようで、その乳首に、彼らの成果である由井正雪の変形長乳首に魅入られて、当番が回ってくるのが待ち遠しくて仕方ない始末である。
「ったくよぉ。こんな長い乳首で烈士たるのか~? ああ~ん?」
「そうだそうだ。淫乱ど助平な唐辛子似の乳首ちゃんで平らかな世を作れんのかぁ?」
「んおっ、おおっ、長乳首っ、左の長乳首っ、烈士、烈士、烈士たれないっ、こんなの烈士たれない滑稽長乳首ぃ……シコシコシュッシュされるの、して頂くの、気持ち良いっ、気持ち良すぎりゅっ、こんな乳首の烈士、烈士ぃ……! あひぃ……槍の穂先みたいなビンビン勃起乳首っ、そうだ! 何かに似てると思ったら、ああ、唐辛子っ……唐辛子……うぅぅ……。こんな、こんな唐辛子みたいな凸り散らかした乳首で平らかな世なんて、平らかな世なんて、嗚呼……もし作れても、ないっ……! 平らかん世にっ、こんな淫乱長乳首の、右の淫乱長乳首の居場所、ないっ……ああ、救いなき右乳首っ、長々と伸びたのベチンベチン弾かれて行くっ、行きますっ、どこまでもっ! ああでもどこにも行けないっ、どこにも行けなくて行くっ、右乳首長々延々法悦揺蕩ぅぅぅ~~、おっほぉ……!!」
「お、おお、んほぉ♪ 左乳首、くりくりこねこね、的確転がし最高で候♪ ビンビン右乳首っ、長々突起をぺちぺちお弾きイイっ♪ 気持ちイイんっ♪ あっ、も、もういっちゃうぅ~……! 正雪、いくっ、烈士たらんとしつつ長すぎ左乳首ちゅーちゅー吸って貰うの良すぎて志す♪ いいえ志せないっ、せないぃ~~んっ……おほっ……! あっ、ああ? そんな、左も右も、同じ感じでいい? 気持ちいい? あっ、はぁ~~んっ……息ぴったりなお二人に正雪乳首ちゅーちゅーちゅっちゅ、吸って舐めてしていただいてぇ……! どっちも気持ちいい!? 同じように気持ちいい!? あぁん平らか! ここに平らかな世っ、あった、ありましてござりゅぅ~~~んっ♪ 右乳首は時計回りで、左乳首は反時計回りでっ、ぺろぺろ頂いてる舌の回転は逆だけど、でもっ、どっちも気持ちいいっ、平等に気持ちいいぃ……! 平らかなる世はここに成就っ♪ 乳首で成就! 左右の淫乱長乳首がどっちも満足大満足至福極楽で成就っ、成就ぅ~~~ん! おほ♪ 烈士烈士、馬鹿長唐辛子乳首で烈士志して法悦飛翔ぉぉおぉおおぉぉんっ……!!」